国公FAX速報 2005年5月25日《No.1625》

政党への要請行動を展開、応対を拒否する日本経団連にも

 5月20日の中央行動の概要は「国公FAX速報No.1624」のとおりですが、本号では、国公労連独自にとりくんだ日本経団連や民主党、社民党、新社会党への要請行動と、24日に行った日本共産党への要請について掲載します。(後段に「『市場化テスト』など公務の民間開放、減量化に反対する要請書」を添付)

日本経団連に政策課題での議論の場を要請

 日本経団連に対しては、4月20日の中央行動の際に要請する予定でしたが、「連合以外の労組とは会わない」との対応でした。しかし、4月19日に「さらなる行政改革の推進にむけて(国家公務員制度改革を中心に)」とする文書を公表したことから、5月20日に要請を実施したものです。要請行動には、国公労連から小田川書記長と山本調査部長、全法務の西山書記長、全厚生の杉浦書記長、全通信の狩野書記長、全運輸の今井中執、全労働の山口中執、全建労の近藤中執が参加し、日本経団連側は総務本部総務管理グループ長の若林氏と平田氏が対応。
書記長 先に出された「さらなる行政改革の推進に向けて」とする文書に対する我われの意見も多くあるとともに、真意のはかりかねる部分もあることなどから、意見交換の場をもつことについて検討してもらいたい。
経団連 日本経団連としては、連合との意見交換などを定期的にしている。多くの提言などを出していることもあり、個別の労組などから話を持ち込まれるが、これにすべて対応することは大変厳しく困難であるため、あらゆる個別の組織と意見交換などをすることについては統一的にお断りしている。意見書などについてはおあずかりするが、今後意見交換の場を持つなどについては勘弁願いたい。
書記長 文書上で疑義あることなどについて、どのような対応をしてもらえるのか。
経団連 問い合わせいただいたことについて、可能な限り、答えられる範囲で広報を通じて回答させていただくことになる。
書記長 関係のない部分にまで言及するつもりはないが、我われに関係する案件いついての認識不足、認識違いがあることから、政策課題についての前広な議論の場を持つことを強く要請したい。引き続き、こうした要請行動をさせてもらうこともある。よろしく。

民主、社民、新社会の各党にも要請、自民・公明は拒否

 政党への要請では、書記長から要請趣旨および主張についての考え方を説明し、各単組から現状などについての訴えを行い、政党としての考えを聞くなど意見交換を行いました。
 各単組からの訴えの要旨は以下のとおり。
全法務 保護観察、入国管理、登記業務全般について繁忙のレベルを超えている。地方の現場には、定員削減の中でしわ寄せがきている。何でも行政の切り捨て、民間開放ではなく、国民の生活権利を守るため、国の行政の必要性を考えた働きかけをお願いしたい。
全厚生 社会保険庁業務の1円入札問題にも見られるとおり、価格競争の枠を越え、公務の根本的あり方が問われるとともに、本来目的からも外れてきている。民でできれば官にはさせないとする乱暴な考えで進められることは、公務の本来目的を無視している。公正な社会のための行政が必要であり、効率性ばかりを重視することはおかしい。
全運輸 運輸交通関係のニュースが増加している。労務的災害が増えている中で、安全行政の必要性を考えさせられる状況である。しかし、国の行政にも安全安心よりも効率性を求められる状況になってきている。安全安心が犠牲になってはいけない。
全通信 IT政策の推進の中で行政領域が増大しているとともに、国民との多面的なつながり(苦情処理など)が増えている。その前面に立つ地方組織に定員削減の大きな動きがかかり、しわ寄せとなっている。規制緩和が国民の不利益にもつながってしまうなど、問題が大きくなっている。
全労働 市場化テストのモデル事業となっている業務があるが、民間だから効率的との声がある中で必ずしもそうであるとは言えない。規制緩和や民間化、市場化テストを万能とする考えは認められない。日本の公務は世界から見ても非常に小さいものになっている。これ以上の効率化がどこにあるのか。定員削減には賛成しかねる。
全建労 監督検査体制を民間化する動きがあるが、公共工事における手抜き工事(阪神淡路震災の新幹線支柱問題など)の抑止にかかわって、民間には責任の所在をはじめとして大きな問題をはらんでしまう。公務としてすすめる必要性が高い。業務委託についてもかえってコストアップになってしまう。

 各政党の対応要旨は以下のとおり。

◆民主党 対応者:岩佐政策調査会部長代理
 民主党は、要請された案件について反対とする姿勢にはなく、公約で進めるべきとしているものもある。しかし、小泉改革を全面的に支持しているものでもない。規制緩和を進めることだけが重要としておらず、必要とする規制があることも十分理解しているつもりである。地方と国の権限のあり方、国の役割がどこまでであるかについて考えている。定員削減についても考えている。国家公務員のこれ以上の削減が難しいという認識はもっている。しかし、民間の状況も考えざるを得ない。民間に国を合わせるべきとはいわないが、民間、国民の目があることも事実である。あらゆることについて慎重に検討していきたいと考えている。なお、規制緩和について全体的に取り扱う委員会がないことなどから、党内での統一した考え方をまとめる状況の難しさがある。

◆社会民主党 対応者:兼古組織・労働・自治体委員会事務局次長
 公務労働のあり方は、国づくりとかかわってくる問題と捕らえている。小さな政府を目指すとしているが、もうすでに十分小さくなっている。たとえ赤字であっても、国立医療のように国ですべきだからこそ行ってきた業務があるはずだ。現実に公務で働いている人たちの実態がもっと明らかにされていかなければならないと感じている。その他公契約条例の動きの広がりが重要であると考えている。規制緩和の流れの中で、公共性の強いところにあまりにも持ち込みすぎているのではないか。大きな問題として捕らえている。要請の趣旨は理解した。

◆新社会党 対応者:初期次長 横堀
 公務員制度、自治体合併などをはじめとする小泉改革には一貫して反対してきている。趣旨は十分理解できる。今後の取り組みで協力できることはさせてもらいたい。

◆日本共産党の吉井衆院議員に要請
 5月24日に衆議院第1議員会館の吉井英勝議員を訪ね、1時間余にわたって要請と懇談を行いました。要請は、山瀬・盛永両副委員長と川村中執で行い、日本共産党は吉井議員と秘書の稲葉氏と向氏、国民運動委員会の米沢氏が対応しました。
 国公労連から、要請書と資料にもとづいて、市場化テストをはじめとする公務の民間開放の問題、定員削減やルール無視の人件費削減問題などについて説明。日本共産党の対応要旨は以下のとおり。
米沢氏 民間はめちゃくちゃなことをやってきて、それに公務をあわせていくというもの。底支えをどこでするのか、全労連は「公契約」運動にとりくんでいるが、下支えする賃金が必要。市場化テストは民間賃金を前提にした入札であり、人件費削減が狙いだ。日本経団連などは比較対象を5人以上とし、地方を下げることを求めている。国公労連には防波堤の役割を期待する。
吉井議員 民でなく公務で行う意義、公務労働とは、についての論立てが大事。安全やプライバシー、人権の問題などは民間の商売になじまないから官が担っている。バブル崩壊、財政破綻のもと、公共事業よこせだけでは進まない。ビジネス拡大の思いから官から民へとなっている。規制緩和万能論が共産党を除く政党全体に蔓延しているが、10年たっての検証が大事。JR西日本の事故、JALやANAの事故、関電美浜原発事故など安全に対する国の基準を緩和してきたことが要因。国の検査や保安部門のリストラ、民間の下請け化など、検証しなければならない。規制緩和や民営化は諸外国でも失敗しており、真正面から反撃することが大事。民営化するとどうなるか、わかりやすい説明すが必要。

以上



2005年5月20日
○○御中
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 堀口士郎

「市場化テスト」など公務の民間開放、減量化に反対する要請書

 政府は2004年12月24日、「簡素で効率的な政府を構築し、財政の建て直しに資する」ことを目的とする「今後の行政改革の方針(新行政改革大綱)」を閣議決定し、スリムで効率的な政府」の実現を図るとし、国の事務・事業の見直し、民営化、民間委託、独立行政法人への移管、組織・業務の減量化等を掲げています。
 地方支分部局等の事務・事業の縮小や民営化・民間化、市場化テストによる官民競争の導入、一律の定員削減などは、国民の権利保障にかかる国の役割・責任をあいまいにするだけでなく、行政サービスの重大な低下をまねき、公務員労働者の身分・労働条件にも深刻な影響を及ぼしかねません。
 経済財政諮問会議では、公務員の総人件費削減に向けた本格的な議論が展開され、民間議員からは国家公務員「純減」目標の設定や公務員賃金決定の在り方にも踏み込んだ提案がされています。
 定員削減の悪影響が職場で表面化していることは無視され、労働基本権の制約の下における勤務条件決定のルールを踏みにじるこうしたやり方は、財政危機がその口実であっても、容認されるべきではありません。そもそも今日の財政危機の原因が公務員の人件費によるものであるとの実証は行われていません。
 「市場化テスト」のモデル事業である社保庁の適用促進業務について「一円入札」が行われましたが、これで公正な業務運営が行われうるのか疑問です。また、JR福知山線での脱線事故の背景として、民営化のもとでの利益至上主義による安全軽視が指摘されています。現在の状況でも社会的格差が拡大し、そのことに起因する国民の不安、不満が急速に高まっていると感じています。これらの点からも、進められようとしている規制改革や市場化テストには賛同できません。
 行財政改革の今日的な課題は、「競争より公正な社会を」を実現するため、国民生活本位の行財政・司法、公共サービスの確立にあることを主張したいと思います。
 以上の点についてご理解を賜りますとともに、下記事項についてご検討いただきますよう要請いたします。


1. 何でも「民間開放」の規制改革・民間開放施策(公共サービスの商品化)に反対いただくこと。
2. 行政サービスや地方を切り捨てる一律の定員削減、勤務条件決定のルールを無視した総人件費削減に反対いただくこと。


以上


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