▼オープニング ご通行中のみなさん、ご出勤途中のみなさん、私たちは、国の行政機関に勤務する職員で組織する労働組合、国公労連です。本日はこの場所をお借りいたしまして、社会保険庁の見直しや、その中で議論されている分限免職の危険性について宣伝を行っております。ぜひ、私どものビラをお受け取りいただき、お読みいただきますようお願い申し上げます。 さてみなさん、政府は3月13日、社会保険庁改革関連の法案を国会に提出しました。そこでは、社会保険庁を解体して、公務員ではない新たな法人を設置して、年金業務を行わせることとしています。さらに、この法人の業務は、できる限り民間企業に委託して、リストラを進める方向が示されています。これには、制度の安定的運営などの点で、さまざまな問題があると考えます。みなさん、社会保険庁で起こったさまざまな不祥事は、徹底的に原因を分析し、再発を防ぐ必要があります。しかし、民間企業の不祥事は連日報道されています。社会保険庁を民営化すれば不祥事がなくなるというものではありません。法案は、不祥事根絶の対策を、本気で考えたものではないと言えるのではないでしょうか。 ▼分限免職 みなさん、社会保険庁の「見直し」あたって、いま社会保険庁ではたらく職員の雇用に、分限免職を発動することが検討されています。 社会保険庁改革法案では、社会保険庁を廃止して、あらたに非公務員型の「日本年金機構」を設置するとしています。この日本年金機構は民間委託などによって徹底的にスリム化するとされています。 そして社会保険庁職員は、徹底した選別採用によってふるいにかけて、採用されなかった職員は国家公務員法の規定によって分限免職とすることが検討されています。 もちろん、社会保険庁長官には解雇を避ける努力を果たさなければならないとしています。しかしその内容は、厚生労働省内や他省庁への配置転換とならんで、勧奨退職があげられています。分限免職を避けるために、肩たたきをするというのが、解雇を避ける努力だというのです。 さてみなさん、国家公務員には、身分保障が法律で規定されています。そのため、国家公務員法第78条第4項に定める分限免職は、40年にわたって発動されてきませんでした。しかも、過去に行われた分限免職では、業務そのものがなくなったため、従事していた公務員が分限免職とされました。しかし、今回の社会保険庁改革で、年金業務や健康保険業がなくなるわけではありません。単に組織を見直すだけの理由で、職員を分限免職しようというのが社会保険庁改革です。 国家公務員として働いているみなさん、今回、社会保険庁で分限免職を許すなら、みなさんの職場でも、組織を変更さえすれば、自由に職員を解雇できるという、とんでもないルールを作らせることにつながります。 みなさん、国家公務員に対する解雇の自由化とも言える社会保険庁改革を許すわけにはいきません。ぜひ、ビラをお受け取りいただき、お読みいただきますようにお願いします。 ▼厚生年金空洞化 さてみなさん、厚生年金制度は、すべての法人事業所と、従業員5人以上の事業所は強制加入です。しかし実態は、なんと3割もの事業所が厚生年金制度に加入していません。また、加入事業所であっても、年間6,000億円もの保険料滞納が起こっています。このように、厚生年金の空洞化が深刻になっています。いまこそ、その原因をさぐり、対策を立てる必要があります。 現在、厚生年金と健康保険を合わせた社会保険料負担は、賃金の25%にも達します。厚生年金に加入すれば、この高い掛け金を負担しなければなりません。しかし、労働者の賃金はここ何年も低下し続けています。生活するのにぎりぎりの賃金では、社会保険料負担はたいへんな負担になります。この低賃金構造をまず改善する必要があります。 非正規雇用の拡大も、年金制度空洞化の原因となっています。いま、ワーキングプアと呼ばれる働く貧困層が社会問題化しています。短期契約の業務請負で働く人や、携帯電話で呼び出される「日雇い派遣」の労働者は、厚生年金には加入できません。本来、厚生年金を支えるべき若い労働者をきちんと処遇したうえで、制度に加入させることが必要です。しかし与党や財界は、さらに非正規雇用を拡大させようとしています。これでは厚生年金が成り立たなくなって当然です。 みなさん、厚生年金の空洞化は、事業主側にも要因があります。それは、やはり高すぎる負担にあります。現在、大手企業は空前の利益を上げています。こうした企業が、社会保険料を納めるのは当然です。しかし、下請け単価を抑えられ、景気回復などまったく実感できない中小企業は深刻です。赤字経営の場合、法人税などは免除されますが、厚生年金保険料にはこのような減免措置はありません。まじめな中小企業の経営者には、社会保険料を払いたくても払えずに、保険料を滞納している方も数多くおられます。ここに手を差し伸べる対策こそが必要ではないでしょうか。 ▼国民年金空洞化 ご通行中のみなさん、ご出勤途中のみなさん、私たちは、国の行政機関に勤務する職員で組織する労働組合、国公労連です。本日はこの場所をお借りいたしまして、社会保険庁の見直しや、分限免職の危険性について宣伝を行っております。ぜひ、私どものビラをお受け取りいただき、お読みいただきますようお願い申し上げます。 さてみなさん、老後を支えるはずの国民年金は、いま決して十分機能していると言えない実態にあります。現在の国民年金の掛け金は、月に14,100円という高い金額です。しかも、毎年引き上げられています。低所得に苦しむ人々が増える中で、この掛け金を払えない人も急増しています。 その一方、年金給付額はあまりにも貧弱です。国民年金は、25年以上掛け金を支払わなければ、いっさい給付はありません。40年間掛け金を払い続けても、給付額はわずか66,000円です。これでは生活できません。現在受けている国民年金額の平均は、平成16年度では46,600円に過ぎません。 ただでさえ掛け金が高いうえに、とても生活できない年金しか受けられないのでは、加入したくないと思ってあたりまえです。憲法25条では、すべての国民が最低限の文化的な生活を保障しています。その水準が月額46,000円であるはずがありません。すべての国民が安心して老後を暮らせるため、国民年金制度をどう立て直すのかの議論が必要です。しかし、政府が国会に提出した社会保険庁改革法案には、制度改善には一言も触れられていません。 みなさん、社会保険庁を解体しても、年金制度はまったく変わりません。いま必要なのは、空洞化してゆく年金制度をいかに改善するかの議論であって、その制度の担い手はどのように考えるかという議論です。年金制度には手を付けず、社会保険庁分割・民営化のみを強行することは、国民の苦しい生活をまったく改善しないということを、強調したいと思います。 ▼生保ビジネスチャンス さてみなさん、年金制度は、毎年掛け金が引き上げられて、給付額は引き下げられています。2004年度の年金大改革は、「100年安心」を謳い文句に、現役時代の収入の半分を保障するとしていました。しかしわずか2年後、出生率が予想を下回ったという理由で、早くも給付水準の引き下げが検討されています。 ところがみなさん、公的年金制度の縮小は、日本やアメリカの生命保険や損害保険業界からの強い要望によるものでした。公的年金の給付額が下がって、それだけでは生活できないとなれば、民間の保険会社の年金型保険に加入するしかありません。実際に、民間の個人年金加入契約件数は、この数年で2倍以上に増加しています。公的年金では生活できないということは、民間の生保・損保会社にとっては、大規模なビジネスチャンスの拡大に他なりません。 そこで問題になるのが、民間年金保険に加入する余裕のない人達です。国民年金額は満額でも66,000円で、平均では46,000円です。自己責任で上積みできない国民は、生きていけない社会が作られようとしています。老後のセーフティネットである公的年金制度は、民間ビジネスには決してなじみません。今こそ、誰もが安心して暮らせる公的年金を、国の責任で作る必要があります。しかし、政府が国会に提出した法案は、年金制度改善とは無縁の中味です。 みなさん、ぜひ私どものお配りするビラをお受け取りいただき、お読みいただきますようお願いいたします。 ▼競争入札の問題点・情報管理 霞が関をご通行中のみなさん、ご出勤途中のみなさん、たいへんお騒がせしております。 私たちは、国の行政機関に勤務する職員で組織する労働組合、国公労連です。本日はこの場所をお借りいたしまして、社会保険庁の見直しや、分限免職の危険性について宣伝を行っております。 さてみなさん、社会保険庁を解体して、公的年金の運営業務を、分割・民営化する法案が国会に提出されています。しかし、年金制度の運営を、競争入札で民間委託することには、数々の問題があります。 まず、年金制度を維持するには、長期間の安定的な運営が欠かせないという点です。年金の加入記録や保険料の納付状況は、何十年にもわたる管理が必要です。その間少しでも空白が生じれば、制度全体が信頼を失うことになります。競争入札で、1年とか3年で業者が入れ替わったのでは、とても安定した運営は期待できません。 また、競争入札では、質が同程度なら価格の低い業者が落札することとなります。そのため、労働者の賃金も、どうしても抑制される方向に向かざるを得ません。こんにち、フルタイムで働いていながら生活保護水準以下の賃金しか得られないワーキングプアと呼ばれる働く貧困層の増加が社会問題になっています。社会保険庁の民間委託化は、結果的に社会保険の業務で、大量のワーキングプアを発生させることにつながりきかねません。 みなさん、年金制度の運営では、国民のみなさんの大切な個人情報を取り扱います。社会保険庁では、年金の加入状況、保険料の納付状況、個人の収入状況、家族構成、雇用保険の加入記録など、実に幅広い個人情報を扱っています。しかも、国会に提出された法案では、住民基本台帳ネットワークシステムの情報まで取り出せることとされています。みなさん、このような個人情報を、民間委託して営利企業に扱わせて本当に大丈夫でしょうか。年金記録からは、みなさんの将来の年金受取額が簡単に予測できます。生命保険会社にすれば、年金型保険商品の営業に活用できる貴重なデータです。これは違法行為ですが、もしも実行されたとしてもそれを検証することはきわめて困難です。年金の記録管理は、データの流用などやりようのない、国が責任を持って行うべきです。 ▼健康保険でペナルティ みなさん、いま開かれている国会には、公的年金の運用に関する法案が提出されています。そこでは、低い所得に苦しむ人達に、さらに鞭を打つ内容が含まれています。 それは、「保険料を納めやすい環境の整備」として、国民年金保険料を滞納している人は、健康保険証の有効期間を短くするというとんでもないものです。国民年金と国民健康保険はまったく違う制度です。それを年金のペナルティーを健康保険で課すことなど、まったく筋が通りません。 また、住民基本台帳ネットワークシステム、いわゆる「住基ネット」の内容を、厚生年金や国民年金の記録に反映させるとしています。市役所や区役所に住人登録するとき、私たちは社会保険庁への連絡まで頼んだわけではありません。国が、国民のあらゆる情報を管理しようとする社会を、また一歩進めようとするものです。 みなさん、これまで述べてきましたとおり、社会保険庁の分割・民営化には、国民生活にとって大きな問題が含まれています。組織の見直しだけに注目するのではなく、安心して暮らせる年金制度をどうやって作るのか、その議論が必要であることを、改めて強調いたします。どうか、私たちのお配りしておりますビラをお受け取りいただき、お読みいただきますようお願いいたします。 ▼エンディング ご通行中のみなさん、近隣の省庁にお勤めのみなさん、たいへんお騒がせいたしました。これをもちまして、この場所での宣伝行動を終了いたします。ご協力大変ありがとうございました。 |
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