●政府・行革推進事務局、差別・分断の「原案」を発表
一方的な「大綱」決定を許すな! 11月6日、政府・行革推進事務局は、「行政職に関する新人事制度の原案」(以下「原案」)を明らかにしました。
「原案」では、制度全般にわたって現行制度の「大改革」を行おうとしていることが明らかになりました。労働条件の大幅変更を使用者・政府が一方的に行い、その具体化のための法案作成に突き進むことは、公務員労働者の労働基本権の侵害であり、許すことはできません。
12月中旬の「大綱」決定にむけ、公務員制度「改革」は緊迫した状況を迎えています。国公労連は、11月19日からの第3波全国統一行動週間を「公務員制度集中学習週間」と位置づけました。全組合員学習運動にとりくみ、職場・地域から運動を強めましょう。本号外は、「原案」の問題点・追及点などについて特集しました。
○労働基本権ふみにじり、人事管理強化ねらう
▼これまでの経過 −「三つの要求」基本に、闘争本部で交渉・協議−
公務員制度「改革」をめぐって、政府・行革推進事務局は、本年12月を目途とする「大綱(仮称)」の策定にむけ、6月29日の「基本設計」をふまえて、9月20日に「新人事制度の基本構造(議論のたたき台)」等を提示してきました。
これに対し、国公労連は、9月12日の推進事務局との交渉で、(1)「基本設計」全体が組合への正式提案である、(2)スケジュールありきの検討ではない、(3)労働基本権問題を先送りしない、ことなどを確認しました。
その上で、10月から公務員制度改悪反対闘争本部・課題別プロジェクトによる延べ12回の「交渉・協議」などを通じて、「労働基本権の回復」「信賞必罰などの制度改悪反対」「天下り禁止など民主的改革の実現」という『三つの要求』の実現に全力をあげてきました。
▼「原案」の問題点 −能力・実績反映の人事管理を強化−
こうした中で、政府・行革推進事務局は、11月6日に「行政職に関する新人事制度の原案」を提示してきました。
その内容は、(1)能力・実績反映の「能力等級制度」にもとづく人事管理(任用、給与、評価、人材育成)をあくまで貫き、(2)そのために各府省の人事管理権限を強化して人事院の権限(級別定数査定などの代償措置を含む)を縮小する一方で、(3)労働基本権問題の検討を先送り(現状のままの危険性大)し、労働条件決定システムや評価制度への労働組合の関与を否定しようとするものであり、まさに「ゼロ回答」そのものといえます。
しかも、「原案」の随所に本省・特権キャリアの優遇策が盛り込まれ、これに「天下りの自由化」を加えると、「誰による誰のための改革か」はいっそう明白であり、国民の批判にもまったく応えていません。
▼闘争態勢の強化 −12月のヤマ場にむけ職場・地域で奮闘を−
こうした状況をふまえ、国公労連は、「要求無視の一方的な『大綱』決定反対」をかかげ、12月のヤマ場にむけて闘争態勢の強化を図ることとしています。
具体的な要求内容は、「労働組合の参加による労働条件決定システムの確立」「労使合意にもとづく公務員制度改革の確約」の2点とし、政府追及、対外宣伝などのたたかい(別表)を職場・地域から徹底的に強化します。
〇別表
12月にむけての運動の流れ
▼第3波全国統一行動週間(11月19日〜)
◇本号による全組合員学習運動
◇「一斉当局交渉」による上申の完遂
▼11・30第3次中央行動
◇全労連・公務大産別規模による最大結集の中央行動(国公労連は5千名目標)
◇総務省・行革推進事務局前行動などの展開と、政府・行革推進事務局との交渉追及
▼国民向け対外宣伝行動
◇ブロック・県国公規模による「行政相談活動」の実施
◇マスコミ・政党対策の強化。単組タテを中心とした大量宣伝行動
▼第4波全国統一行動週間(12/5〜7)
◇職場集会の配置、行革推進事務局あて職場決議の集中
▼12月「大綱」決定前の最重要段階
◇全員参加の職場集会と一斉定時退庁行動の配置(地域合同集会の追求も)
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「基本設計」では、能力等級制度・能力評価を活用して、採用試験区分、事務官・技官の別、採用年次にとらわれない能力本位で適材適所の任用を推進するとしていました。 「原案」では、これに身分保障に関する部分が詳細に書き加えられています。現在の分限処分の運用を、「処分の基準が明確でないことから、勤務実績不良者の判断が難しく、……不適格者の厳正な排除が十分に行えない状況にある」とし、降任・降格を評価によって行う任用制度を整備し「真に能力本位で適材適所の人事管理を実現」すると述べています。
その基本にあるのが能力等級制度です。本省であれば課長、係長などの基本職位を4段階に整理し、それを1級〜9級までの能力等級に分類整理するというものです。(表1参照)
これらの職位や能力等級の上がり下がりを昇任(降任)、昇格(降格)と定義しています。
〇能力がなければ排除
任用制度の中で注意する必要があるのは、免職や降格の分限です。
免職については、組織になじめなかったり、仕事でうまく能力が発揮できなければ職場から排除するという強い意思表示の現れが感じられます。
基準をみると、現行よりかなり具体的になっています。たとえば、免職のひとつに「能力評価の結果当該職務の職務遂行能力を欠くと認められ、降任、配置換え等を考慮しても、能力にふさわしい適切な職務が認められない場合」とあります。
現在、長時間過密労働など様々な理由で心身の故障をきたしている公務員も多くなっていますが、そうした職員を保護するのではなく排除する意図が見え隠れしています。
〇当局と合意すれば歯止めなく「降格」
目新しいものとして、「職員の意による降任・降格」の制度化があります。実態としてはともかく、新たに制度化するということは、これまでに比べ大きな変化です。
心身の故障や仕事の適性が合わなかったとしても、これまでであれば、同じ級のまま配置換えなどによってある程度処遇されてきました。「原案」では、本人が仕事に行き詰まったり、追いつめられて、当局の「降格のすすめ」に同意したりすると、歯止めなく降格されることが予想されます。そして、いったん降格すれば、再び昇格する道は厳しいものになるでしょう。
上にあがるときには、競争原理のもとで厳しく評価され、仕事に行き詰まれば待ったなしに降格される、安んじて仕事を続けていく上では問題です。
なお、このような職員の不利益処分強化に見合う救済制度の検討が、まったく行われていないことも重大です。
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〇一般職員軽視の制度、本省勤務手当も新設
給与制度は、「職務(仕事)」を基本としたものから、「職員一人一人の貢献度」を反映するものに変えるとしています。
その貢献度は、(1)係長、課長など「役職段階(基本職位)」に応じて求められる「職務遂行能力の価値」(能力給)、(2)「管理・監督の地位」(職責手当)、(3)「勤務実績(能力等級に応じた目標の到達度)」(業績手当)の三つの要素に着目するとしています。
なお、現在の指定職に相当する「上級幹部職員」は別扱いで、「職責に対する給与」と「職務の複雑・困難度の変化に応じた加算」(基本設計の「業績給」から変わりました)の二つの要素からなる年俸制に変えるとしています。
また、諸手当について、本府省の課長補佐、係長に「本省勤務手当」を新設すること、配偶者の扶養手当の「あり方検討」などにも言及しています。
総じて、本府省重視、幹部職員重視の給与制度です。
〇評価で給与を決定、運用は各省まかせ
新給与制度での基本給とされる「能力給」は、「能力等級」(表@)をもとに、各等級毎の定額部分と、「職務遂行能力の向上」に対応した加算額部分の合算で決定されます。加算額(現行の昇給に対応)は、業績評価を「重要な参考資料」に、「ゼロから標準の2倍」の間の「4段階」で選別支給し、人件費抑制の観点から級ごとに、累積額の「上限額」を設けるとしています(表2参照)。
業績評価が悪ければ、1年間まじめに働いても「昇給」しない、能力評価が低ければ若い時期から給与は頭打ち、こんな仕組みです。 しかも、総人件費枠を「決めた」上で、加算額の「配分」をどう運用するかは各省任せです。本府省の企画・立案部門の「幹部職員」には「標準の2倍」をだし、地方出先の一般職員は、少ない原資で競争させる、こんな人事管理(給与決定)も各省が「自主的」に行うことができます。
なお、初任給について、「本府省幹部候補職員」であるT種は2級から、U・V種は1級から、なども検討されています。
〇労働基本権問題が最重要課題に
「大綱」決定まで1カ月余りとなっても、能力等級の「人員枠」(現行の級別定数)、各等級の定額や標準的な加算額、業績手当の支給月数などを「誰」が「どのように」決定するのか明らかにされていません。毎年のベアも同様です。人事院勧告制度を公務員制度改革でどう「扱うのか」決めようとしないからです。
11月6日の衆議院総務委員会では、公務員制度改革にかかわって、「勧告か労使交渉か」の「二つの道」しかないとする追及を、日本共産党の春名議員がおこないました。
政府は、「12月までに結論を出す」(西村推進本部事務局長)、「代償機能をだんだん弱めていくということなら労働基本権の方にという議論は納得できる」(片山総務大臣)と答弁せざるを得ませんでした。
「労使合意もなしに労働条件を変えるな」のたたかいは、いまが正念場です。
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〇能力評価と業績評価、5段階で総合評定
新人事制度で、評価制度は人事制度全体の中の要の位置を占め、この部分に限った性急な「試行」も考えられています。
新評価制度は(1)能力評価と(2)業績評価からなるとして、それぞれ年1回実施。(1)は任用や分限処分の判断の際の参考資料に、(2)は能力給の加算部分や業績手当決定の参考資料にするといいます。
いずれも能力発揮度や目標達成度にかかわる「自己評価」も参考に1次、2次の評価を経て、最終的に5段階で総合評定(相対評価)を行うというものです。
評価結果は本人に「フィードバック」され、「職員の苦情に適切に対処する仕組み」も整備するとしています。
〇今の勤務評定とどこが違うのか
しかし、「原案」は、現行勤務評定がなぜ機能していないのかという、基本認識が欠落しています。
現行勤務評定制度の重大な問題点である、(1)本人にも知らされない密室での一方的評価、(2)相対評価で初めから職員に差をつけようという意図、(3)評価者の主観に左右される抽象的評価項目や、「性格」、「勤務態度」などの情意評価項目の存在、(4)明確な本人への直接開示手続きの欠如、(5)真の救済につながる苦情処理制度の不備、などが払拭されそうにもありません。
〇使えない能力評価
二つの評価制度の問題点は、「原案」でより具体的になりました。
「能力評価」のため各省は「思考力」「行動力」「姿勢・態度」などの能力要素ごとに「職務遂行能力基準」(表3参照)を定めなければなりません。この「職務遂行能力」のイメージによれば、「解決すべき問題点を的確に把握する」「解決の方向性を的確に洞察する」(思考力の項目)など抽象的・一般的な基準ばかりで、上位等級への昇任基準や分限処分の基準として使えるとは到底いえません。しかも、「責任感」「向上心」(姿勢・態度の項目)など、評価者の主観で判断される基準が当然のように残されています。
〇目標管理は公務にふさわしいか
業績評価は、職員一人ひとりが上司との話し合いで「自主的」な業務目標を設定し、その達成度を評価する「目標管理」手法です。しかし、公務職場への目標管理の導入には、(1)本来の仕事と無関係な過大な目標設定、(2)公務サービスを歪めかねない「数値目標」の押しつけ、(3)定型的業務への機械的適用などの問題が考えられます。
〇本人開示や苦情処理も曖昧
評価結果は、能力等級制度を介して、給与や任用と意図的に結びつけられています。それだけに、曖昧な評価基準や、分布率を先に決めた職員の序列づけは、職員の大きな不満を引き起こしかねません。
開示の内容や方法については検討中とされていますが、制度全体に、先にみた欠陥がある以上、評価結果やその適用をめぐる紛争が起きることはさけられません。差別の横行を防ぐためにも、単なる苦情相談だけでなく、評価制度全般での労働組合の関与や、不利益救済制度の確立が不可欠です。しかし、その点の明確な方向性は示されていません。
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公務では、OJT(日常の仕事を通じての訓練)をはじめ、人材育成(研修など)が、処遇に直接影響する重要な意味をもっています。
「原案」では、「行政課題に的確に対応する職員を計画的に育成することを目的」として人材育成制度を新たに導入するとしています。
具体的には、本府省であれば課長補佐段階までの職員を対象に、職務分野、職域や異動範囲に着目して人材育成コースを設定し、管理者は個々の職員と面談し、意欲や適
性を踏まえて、育成計画を提示するとされています。
現行の研修制度においても、各省様々な階層別の研修が行われていますが、これらとどう整理されるのかは不明です。
見逃せないのは、本府省幹部職員の早期育成制度です。(図1参照)
現行「キャリアシステム」の弊害を是正し、「本省幹部職員としてふさわしい意欲と能力を有する者について、本府省幹部職員として育成する」としていますが、その対象はT種採用職員とT種以外で採用された職員のうち人事管理権者が選考した職員となっています。T種はもれなく対象となり、他は選抜された者ということであれば、キャリア特権制度の「合法化」です。
羊頭狗肉とはこのことであり、「若手キャリアのためのキャリアによる改革」であることを隠そうともしていません。
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