国公労新聞 第1007号
「国民生活破壊する行革」の流れを変える春闘に
「99年春闘 国公労連はどうたたかう」(国公労連・福田書記長にインタビュー)
 不況、財政難、行革攻撃など、99年春闘はたいへん厳しい情勢のもとでのたたかいとなります。それだけに、労働組合の真価が問われている春闘でもあります。
 99年春闘を、国公労連はどうたたかおうとしているのか、福田書記長に聞いてみました。
 ――書記長に就任されて3カ月、ご苦労も多いと思いますが。
 福田
 やっと国公産別運動の全体像がつかめたと言ったところでしょうか。全労連や国民春闘共闘、公務大産別の中で、国公労連運動が果たしている役割や各方面からの期待が非常に大きいことを改めて感じているところです。

●情勢をどうみる

 福田
 そうですね、まず第一は、深刻で長期化しているこの不況をどう見るか、どう打開するかということでしょう。
 不況に突入したのが91年春のバブル崩壊からですからもう8年目、戦後最悪・最長といわれています。
 なぜ不況なのかというと、端的にいえば、国民の消費購買力が冷え切っているからです。にもかかわらず、自民党政府が国民の懐を暖めなきゃいけないのに、実際はその逆のことばかり。消費税の5%への増税や医療改悪など9兆円もの負担増、年金改悪で将来不安をあおってみたり。その一方では、銀行へはポーンと60兆円でしょう。自民党の悪政が不況をいっそう深刻化させた「政治不況」なんです。
 打開のポイントははっきりしています。消費税をせめて3%にもどすとか、年金や医療改悪をやめて将来不安を解消するとか、国民の消費購買力を高めることですね。
 主要企業434社の内部留保は94兆円に達しているわけですから、これを国民に還元させる。
 また、政治の流れを変えて、銀行支援やゼネコンむけ公共事業にかたよった経済対策を国民生活むけに転換させることも大事だと考えています。

●大幅賃上げこそ不況打開への道

――不況だからこそ大幅賃上げなどで生活改善を勝ち取るということでしょうか。
福田
 そのとおりです。個人消費の中心はなんと言っても労働者の賃金ですからね。
 「この不況下では賃金どころではない、雇用確保が先決」ということで賃金闘争を躊躇する傾向もあるようですが、全労連のビクトリーマップによれば、主要企業の内部留保をほんの2・1%取り崩すだけで3万5000円の賃上げは可能なわけです。
 日経連は、早々と「ベア・ゼロ」宣言をしましたし、連合も雇用最優先で、要求も平均賃上げ要求方式をやめて、35歳・勤続17年の労働者で「3200円、1%」の賃上げというのですから、要求自粛・事実上の「ベア・ゼロ」容認の方向です。
 その意味では、全労連・国民春闘ががんばる以外にたたかう勢力はありません。ちがいがますます明確になるでしょう。全労働者を視野に入れて、最低賃金制や賃金の底上げのたたかいをうんと重視する必要がありますね。
●行革闘争を最大の柱に
――行政改革をめぐる動きはどうでしょうか。
福田
 「行革基本法」の成立以来、行革推進本部を中心に中央省庁再編・行政スリム化計画が具体化されようとしています。9月29日の「中央省庁改革に係わる法案・計画の立案方針」の決定に続き、この11月20日には「法案と計画の大綱事務局原案」がだされ、1月末の決定にむけ、作業がすすめられています。
 こうした動きのなかで大きな焦点は、首相権限の強化と民営化・独立行政法人化をテコとする行政の徹底した減量化・効率化です。政府・推進本部は、民営化の対象として20機関、独立行政法人化の対象として、97機関・事務をかかげ、その実行を各省庁にせまっています。
 われわれの運動もあって、各省当局は「不適切」として「抵抗」していますが、一気に政治的決着ということも事態も想定され重大な局面です。
 しかし、この間、民営化・独立行政法人化のねらいが行政の切りすてと公務員べらしであることがきわめて鮮明になってきたこともあって、矛盾も広がっています。先般の自民党の行革推進本部総会では、議員から民営化反対論が続出したと報道されています。油断はできませんが、相手の方の内部矛盾も広がっているということでしょう。
 国公労連としては、行革を最大の柱にすえて「行革の流れを変える」春闘として、全力をあげたいと思っています。

(2面につづく)


(1面からのつづき)
「両輪の署名」(行革大規模署名・年金署名)ですべての組合員が対話と共同をひろげよう
●たたかいの展望は
――たたかいの展望ということではどうでしょうか。参議院選挙の結果からすると政治は変わると期待したんですが、ちょっとガッカリしてるんです。
福田
 たしかにそうですね。参議院選挙の結果、橋本内閣から小渕内閣にかわりましたが、国民犠牲の悪政推進ぶりは変わっていませんね。
 選挙の結果からいえば、ほんとは橋本内閣だけでなく自民党政治そのものにレッドカードが突きつけられたはずなんですが、いつの間にか60兆円もの銀行支援策だとか、「連合」も反対していた労働基準法改悪が強行されたり、自民党の巧妙な野党取り込み戦略で少数与党が取り繕われています。しかし、最近の世論調査では、こういう野党の対応はあまり評価されていませんから、また昔に戻ったとはいえないでしょう。それにしても、一日も早く解散・総選挙に追い込んで政治の流れを変えなければなりません。
●行革をストップさせる確かな力
――そのとおりだとは思いますが…。
福田
 小渕内閣の支持率は20%台の低空飛行ですから、盤石とはいえません。野党のとりこみに成功したようにみえますが、消費税にしろ、年金にしろ、コメ自由化にしろ、国民いじめの悪政が止まったわけではありません。労働者や国民との矛盾はますます深まっています。
 たとえば、今、国民的な争点は、消費税です。せめて3%にというのが圧倒的な国民の声です。つまり、労働者も農民も、商工業者も年金生活者も、この悪政に苦しめられている人々が、たたかいに立ち上がる条件があるということです。統一地方選挙もあります。参議院選挙で生まれた画期的な変化に確信をもって、「対話と共同」をひろげて、展望を切り開きましょう。それは、行革をストップさせる確かな力になると思います。
●全組合員の総対話運動で行革の流れを変えよう
――運動としてはどのようなことを考えていますか。
福田
 情勢からしても、国民的な立場でたたかうこと、そのためにも職場から地域に打って出て共同を大きく広げることが、賃金などの労働条件改善でも、不当な「行革」攻撃をうち破るためにも中心の取り組みだと考えています。
 そのことから、11月より開始している「両輪の署名」をもって、全組合員が「総対話」の運動を進めること、2月7日の国民大集会や、「2・25地域総行動」の成功をめざして積極的に取り組むこと、そしてそのような国民的な運動の広がりを背景に、使用者である政府に対する追及を強めていくことを運動の柱において、宣伝や国会議員、地方自治体、各種団体への要請行動など多様な取り組みを提起したいと考えています。
――今までより一回りも二回りも大きく、多様な取り組みで「流れを変えよう」ということでしょうか。
福田
 そのとおりです。そのような運動に全単組、全県国公の力が結集できるよう、国公労連としても最大限の努力をしたいと考えています。
 国公労連の春闘方針は、2月3日・4日の第44回臨時大会で決定することになりますが、すでに春闘のたたかいは始まっており、たたかいながら運動を補強する立場で、臨時大会に向けて全組合員の英知を寄せていただくことをお願いしたいと思います。
――きょうはどうもありがとうございました。

99年春闘方針案のポイント
●99年春闘の重点課題●
1 深刻な生活・雇用不安、将来不安の打開をめざして国民春闘に全力投球
 消費税が増税された97年4月を節目に、日本国内の消費が大きく落ち込み、それが不況を深刻にしました。大企業の海外進出で増加傾向にあった完全失業率も、その消費不況で一気に加速し、史上最悪の4.3%(98年8月)を記録しています。そして、日本経済をさらに混乱させているのが、「金融ビッグバン」などの規制緩和です。
 このように、今の深刻な不況は政策の誤りが招いたものですが、今の政府にはそのことへの反省すらありません。
 99年春闘は、(1)生活まもれの立場から「緊急雇用対策」や消費税減税の実現を迫る、(2)国民を苦しめている大企業のための「6大改革」を止める国民的なたたかいを前進させる、ことが大切です。国公労連は、行革闘争を柱に、国民的な運動の先頭にたって奮闘します。

2 大幅賃上げ、雇用確保を柱に大企業の横暴を追及
 全労連が作成しているビクトリーマップによれば、大企業434社の内部留保は約94兆円にも達し、わずか2.1%の取り崩しで3万5千円の賃上げが可能になるほどため込んでいます。
 しかし、大企業はそれでもあきたらず、大規模なリストラで雇用不安を拡大し、裁量労働時間制や派遣労働の拡大、社会保障の使用者負担の削減、法人税率引き下げなど、あらゆる手段で搾取を強めています。国公労連は、ビクトリーマップ運動を積極的に展開し、大企業の民主的規制と大幅賃上げをめざす全労連・国民春闘のたスかいに結集します。

3 待ったなしの課題、自民党の悪政阻止に奮闘
 3月から4月にかけて、全国各地で首長選挙や地方議会議員選挙がたたかわれます。国の財政運営の失敗を押し付けられる地方自治体の財政はきわめて深刻で、そのことが地方行革や福祉切りすての原因となっています。医療や介護、保育、教育などの充実と国政革新の展望を切り開くためにも、統一地方選挙を重視します。

4 たたかいながら組織を拡大しよう
 以上のようなたたかいを進めるためには、一人ひとりの組合員の奮闘と、たたかいの基盤となる職場・地域の組織強化が必要です。あらゆる取り組みで、組合員はもとより、職場周辺や地域の身近な労働者との「総対話」を重視し、共同の取り組みを大きく広げていきます。
 そのための武器として、国公労連は、「両輪の署名」と大量宣伝行動、地域総行動への結集を99年春闘の取り組みの柱にすえています。

●正念場のたたかい行革闘争の展開●
1 「改革」路線の矛盾を見すえて
 政府は、99年の通常国会に、中央省庁等改革関連法案、地方分権推進のための地方自治法「改正」や年金改悪法、措置制度廃止の「福祉構造改革法」、米の完全自由化に道を開く農業基本法「改正」法、新ガイドライン法などなど、「6大改革」関連の法案をいっせいに提出する準備を進めています。
 景気対策そっちのけで、大企業を守るための「改革」に政府が没頭することを多くの国民は望んでいません。税金のムダづかいと、国民への犠牲転嫁でしかない「改革」に反対する世論を大きく広げるために、地域に打って出る取り組みに全組合員の結集をはかることが、行革闘争の第一の課題です

 2 「行政改革」は内閣の命運を左右する課題
 政府は、矛盾がいかに拡大しても「6大改革」をやめることができないばかりか、スケジュールどおり進めなければならない状況に追い込まれています。
 98年11月18日に、経団連が「行政改革断行」を望む「共同宣言」を政府に突きつけたことにも、また、「自自連立」協議の「条件」の一つに「公務員削減」があげられことにも見られるように、「行革」推進は政権の命運を左右する課題となっています。
 その「行政改革」の中心は、民営化や独立行政法人化などの行政スリム化に置かれています。国の行政と公務員労働者にたいする国の責任放棄である行政スリム化を阻止することは、「行政改革」はもとより「6大改革」をくい止める重点の課題です。その点を見すえ、「一つの民営化・独立行政法人化も許さない」たたかいを国公労連一丸となって展開することが、二つ目の課題です。

 3 「行革」の具体的な問題点の主張を
 政府は、4月には法案を国会に提出して、6月17日までの予定で開かれる通常国会での成立をめざしています。「改革」の中味が具体的に明らかになるにしたがって、この「行政改革」はおかしい、との声が高まっています。
 医療や教育、雇用など、国民の基本的人権実現に欠かせない行政サービスを切り捨てる一方で、公共事業や自治体への関与などの利権を温存・拡大する組織「改革」は、国民が願う行政改革と真反対のものです。そのことを、個別の行政分野毎に明らかにし、国民の身近な問題として訴えることが第3の課題です。

 4 「行革大規模署名」と「年金署名」を柱に
 「行政改革」関連法の成立阻止を闘争目標におき、国民的支持を広げる「武器」として「両輪の署名」を大規模に展開します。社会保障20兆円、公共投資50兆円というゆがんだ税金の使い方を続けることが国民生活をいっそう困難にし、将来不安を高めています。同時に、「政・官・財」のゆ着の構造も、そのようなゆがんだ税金の使い方にも起因しています。国民生活重視の行財政への転換を迫る私たちのたたかいへの支持を大きく広げ、それを背景に国会を包囲する多様な取り組みを、国会最終盤まで連続して展開します。署名をはじめ、一つひとつの取り組みを成功させることが第4の課題です。

●賃上げなど生活改善のたたかい●
1 人件費抑制の高コスト論を打ち破ろう
 日経連・労働問題研究委員会報告では、企業の「雇用コスト」削減の立場から「賃上げよりも雇用を」と主張し、「賃上げゼロ」を打ち出しています。日経連がいう雇用は、労働者派遣法「改悪」も念頭においた不安定雇用拡大であり、その主張のごまかしは明らかです。
 さらに、同報告では、社会保障負担、税負担などの公租公課、福利厚生経費なども企業のコストととらえ、法人税率引き下げ、社会保障での雇用主負担の軽減、社宅などの削減も打ち出しています。人件費抑制の前提にある「高コスト」論は、労働条件の全面的な切り下げをねらうものです。
 それだけに、生活実態の改善を求める大幅賃上げ要求をかかげ、その実現のためにたたかう全労連・国民春闘に結集して奮闘することがこれまで以上に大切になっています。

2 民間も苦しいからでなく
 連合は、35歳勤続17年の「標準労働者」をモデルに、「賃上げ要求1%(3200円)」を打ち出しています。すべての労働者の賃上げ要求を意味しない方式や、1%の超自粛は、連合内部でも不満を高めています。大企業・財界と一体になって春闘そのものをなくし、労働者のたたかいを敵視する連合路線をうち破ることが、99年春闘の大きな課題です。厳しい状況の中でも奮闘する民間労働者を激励するたたかいが、国公労働者には求められています。その点でも、「2・7国民決起集会」や「2・25地域総行動」の成功に、積極的な役割を果たします。

3 公務員賃金闘争の課題
 大都市自治体での勧告の値切り凍結、民間企業での一時金の抑制が相次ぎ、国公労働者の賃金闘争も厳しい状況が生まれています。加えて、人事院が98年勧告で打ち出している調整手当「見直し」や、年功賃金体系「見直し」も加速する情況にあります。
 勧告期も見すえ、一時金切り下げや調整手当改悪、高齢者賃金抑制など賃金切り下げを許さない課題も、99年春闘の重点です。生活改善をもとめる組合員の声を背景に、使用者・政府に賃金改善要求の回答を迫り、人事院には機械的民間準拠論への埋没を許さない点での追及を強めます。そのため、2月段階での一斉要求提出、上申行動、プレート行動、早朝時間外職場集会などを配置し、3月下旬の政府・人事院回答に向けて、一丸となって取り組みます


国公労連99年春闘統一賃金要求案 30,000円(8.1%)引上げ提案--第44回臨時大会【2/3・4】に向け職場討議を
 第104回拡大中央委員会(98年12月17日)での論議もふまえ、生活と労働の実態に根ざした組合員の切実な要求を基礎に、全労連・国民春闘共闘委員会が展開する99年国民春闘に結集し、公務労組連絡会の統一賃金闘争の前進をめざす立場から、国公労連99年春闘統一賃金要求案を別記のように提起し、職場からの討議を呼びかけます。なお、統一賃金要求は、国公労連第44回臨時大会で決定します。

●要求案提起の基本的な考え方
 (1)賃金闘争は、労働者と使用者との最大の対決点であり、すべての労働者がたたかいに結集しうる労働運動の原点でもあります。それだけに、多数の労働者が共有できる要求を民主的な手続きを経て決定していくことが必要であり、それが運動の出発点だと考えます。
 国公労連は、このような立場から、一人ひとりの組合員がその生活の実態に根ざした要求額を直接回答するアンケートを土台に、その結果をもとに少なくとも過半数の仲間が最低限の改善要求額として回答する金額を重視して、これまでも要求討議をおこなってきました。
 国公労連が、このような要求組織の方法をとるのは、直接の使用者である政府に対して賃金回答を迫るためには、国公労働者の要求の多数を結集し、それを背景にした賃金闘争を追求しているからです。
 (2)公務員労働者の賃金水準は、その性格からして、「生計費原則」にくわえ「民間賃金との均衡」や、そのことによって担保される「国民の納得性」が加味して決定されることになります。そのことからしても、民間労働者と共同して春闘をたたかう立場にたつことが必要です。ナショナルセンター・全労連が結成された以降は、前述した要求組織の考え方を基本に、官民一体でたたかう国民春闘に結集する立場での要求討議をおこなってきました。
 (3)さらに、人事院勧告制度が現に存在し、その枠組みのもとでの闘争を否応なしに迫られている現在の公務員賃金闘争では、類似の賃金決定システムのもとにおかれる公務労働者との共闘が、使用者・政府との力関係を変えていく上でも重要です。その立場から公務労組連絡会に結集し、統一交渉、統一行動を追求しうる要求の統一を重視してきました。
 (4)国公労連は、以上のような三つの点(「国公労働者の要求重視」、「国民春闘への結集」、「公務大産別の要求統一」)のいずれも大切にしながら、ときどきの情勢もふまえて総合的に調整し、機関会議での確認を受けた要求案をもとに、あらためて職場討議をおこない国公労連の産別統一要求として確立するという組合民主主義を徹底してきました。 国公労連は、こうした統一賃金要求構築の考え方や手順を今年も継承し、組合員の切実な要求である大幅賃上げの実現を追求します。

●全労連、公務労組連絡会の提起状況
 (1)全労連は、12月16日の幹事会で、99年国民春闘における賃金引き上げの「要求目標額(案)」を「3万5000円」とすることを提起した。全労連は、「賃金要求目標(案)」の性格について、@5400万人労働者と家族の生活を守り、日本の春闘とすべての賃金闘争を激励、A大幅賃上げで不況を打開する立場から、「要求目標」を提起、B全労連傘下各単産・地方組織の賃金要求づくりとたたかいの旗印、との3点に整理しています。
 (2)産業別・企業別の賃金闘争は、そうしたナショナルセンターの呼びかけに応えた各労働組合が、労働者の要求結集を背景に、対応する企業等との間でおこなわれることになりますが、このことは、国公労働者の賃金決定においても基本的には変わることはありません。
 そのことから、国公労連は、産業別組合などの賃金要求の決定は、ナショナルセンターの「要求目標」に応える点はふまえつつも、賃上げの基準となる賃金水準、労資(使)の力関係、個々の労働者の生活実態など、さまざまな要素を考慮して組合員が表明する要求の多数に配慮し、自主的に決定すべきものだと考えます。そのことからして、全労連の「要求目標額」と国公労連の統一賃金要求額が完全に一致することまで求められるものではないと考えます。
 (3)公務大産別・公務労組連絡会は、結集する単組間での「賃金闘争の歴史」の違いを認め合い、公務労働者の要求を最大限結集しうる要求額として確認していくために、これまでも公務労組連絡会規模でのアンケートの結果を一義的に重視した論議をおこなってきました。99年春闘に向けた公務労組連絡会規模でのアンケート結果にもとづく要求傾向は、別表のとおりです。国公労連は、公務労組連絡会の場でも、こうしたアンケート結果をふまえた公務大産別の要求額設定となるよう追求してきました。
 このようななかで公務労組連絡会は12月16日の幹事会で、@全労連の「要求目標」の動向、A昨年までの統一要求案論議の経緯もふまえて、B額明示をおこなうことを重視し、政府・人事院に提出する統一要求の表記を「3万円以上」とすることを確認しました。

●国公労連の賃金要求案について
 (1)7万6千名を超える国公労働者が、生活と労働の実態に根ざした要求額等を回答したアンケート結果をふまえれば、99年統一賃金要求案は中位数(2万8333円)〜3分の2ライン(2万1735円)の間とすることが、国公労連が確認してきた要求案提起の基本的考えにそうものです。
 それは、アンケートに示された要求の多数を結集するばかりではなく、「総人件費抑制」や「早期立ち上がり」、「能力・業績」重視の賃金体系への修正の攻撃など、さまざまな、かつ大がかりな攻撃が公務員賃金にかけられ、一方で長引く不況のもとで深刻化する雇用不安など労働者全体に困難な状況が顕在化しているもとでも、なお多くの組合員が大幅な賃金改善を求めており、全労連、国民春闘共闘委員会に積極的に結集してたたかう姿勢を示したものだと考えられるからです。
 (2)また、アンケート結果の「暮らし向き」に関する回答では、「苦しい(かなり、ややの合計)」とする者の割合にほとんど変化が見られず、要求の切実性は何ら変わっていません。そして、消費税や医療費などの負担増がすべての年齢層に重い負担となってのしかかっている一方で、民間においてリストラ「合理化」の嵐が吹き荒れ、財政難を口実に地方自治体での賃下げ攻撃まで生じ、「行革」=公務員攻撃が一段と強まっている現状をふまえれば、最低限の要求額として多くの組合員が回答しているものと考えられます。それだけに生活改善要求の切実性は高まっているといえます。
 (3)これまで以上に公務員賃金の抑制攻撃が強まっており、それだけに公務大産別の統一したたたかいは、ますます重要になっています。それだけに、公務労組連絡会を軸とする公務大産別の賃金闘争の前進を何よりも重視すべきだと考えます。 そのことから、国公労連は、組合員の「最低限これだけは」とする組合員の要求傾向はふまえつつ、公務労組連絡会が提起した「3万円以上」を統一要求案として積極的に受けとめて、国公労連99年春闘統一要求案を提起することとしました。
 (4)春闘段階から賃金体系改悪や調整手当改悪を許さないためのたたかいの強化が求められています。
 また、民間の一時金の実態として、夏季の支給実績は東証第1部上場企業512社平均で対前年比マイナス1・2%と4年ぶりのマイナス(労務行政研究所調査)、年末の一時金交渉の状況は、マイナスの業種が大幅に拡大(日経新聞調査で前年同期比2・12%の減)しています。地方自治体の賃金確定闘争では、財政危機を口実に神奈川、岡山で一時金のカットがおこなわれており、一時金の改悪を許さないたたかいも重要となっています。これらのことから、これを許さない立場での重点賃金要求項目もあわせて討議を呼びかけます。

【国公労連99年春闘統一賃金要求案】
(1)賃金水準の引き上げ
 公務労働者の賃金を3万円(国公比較賃金ベースで8.1%)引き上げること。
 なお、国公労働者99年4月時点の賃金水準については、次のように推計している。366,898円(98.4時点の国公行政職の賃金ベース)×1.01(制度増の推計値)≒370,500円
(2)俸給表体系、手当などの配分
 賃金改善にあたっては、生計費と経験・勤続年数に応じた賃金水準維持を前提に、子供の養育や住宅費など世帯形成にともなう生計費の負担増に着目した配分とし、上位号俸の給与改善額が下位号俸の改善額を下回るような高齢者等の給与改善の抑制はおこなわないこと。
(3)能力・実績重視の給与制度について
 労働組合・職員の納得と合意のないままに能力・業績重視の給与制度への変更はおこなわないこと。また、省庁間、機関間、性別等による不合理な格差を是正すること。
(4)官民比較方法の改善
 官民比較方法について、比較企業規模1,000人以上(当面、緊急の措置として500人以上)への引き上げ、勤続・経験年数の加味、比較企業の見直しを含む民間一時金水準の厳正把握など、抜本的な改善をはかること。
(5)一時金の切り下げはおこなわないこと。
 ※以上の要求項目以外の諸手当改善要求については別途臨時大会に提起するが、その際、これまでの要求もふまえ、本俸重視を堅持し「本俸9:手当1」の割合で、ベア配分することを基本に検討を進める。また、人勧基礎作業の統一要求についても、別途臨時大会に提起する。


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