国公労連・藤田委員長が全国の組合員へ呼びかけ
4月27日、政府は、行革推進の17法律案などと、90機関・事務の独立行政法人化、公務員数の「10年間・25%削減」目標などの方針を閣議決定しました。 法案は、「地方分権一括法案」と並行して、連休明けから審議されることになります。 政府は、「行革関連法案」と「分権一括法案」を通常国会で成立させることをねらっていますが、会期末まで1カ月しかなく、新ガイドライン法の強行採決で、国会解散を求める世論も強まっています。 行革が、戦争体制づくりの国家改造であることへの理解も広がってきており、たたかいはこれからが正念場です。両輪の署名を軸に、国民世論への働きかけや地元からの国会議員要請をさらに強めるなど、行革法案の成立をくい止めるたたかいに全力をあげましょう。
強権政治へ道ひらく内閣法改正・内閣府新設
●「大統領型」首相めざす
法案では、「内閣の重要施策に関する方針その他の案件」での首相の発議権を規定し、権限を強化しています。そして、首相を直接補佐する内閣官房の事務と体制を大幅に見直し、首相の意のままに政策決定できる仕組みを作り上げています。 また、内閣法第1条に「国民主権の理念」をかかげ、内閣の行政権行使が全国民の総意に基づくものであるかの「改正」をおこなっています。内閣は、国会議員の選挙を通じた国民の相対的多数の支持で成立しています。にもかかわらず、内閣の行為、決定を「絶対視」するかのこのような「理念」は、少数意見無視の強権政治につながる危険性を持っています。新ガイドライン法で、米軍協力の基本計画を内閣が勝手に決定できること、この内閣法「改正」は無関係ではありません。
●首相の権限強化の一環で内閣府を新設 内閣府は、「内閣の重要政策に関する内閣の事務を助ける」ことを基本の任務とし、各省とは違い、内閣の内部機関に位置づけられています。 内閣府では、@内閣審議官2人や局長クラスの「分掌職」7人がおかれること、A重要政策決定のため、大臣も構成メンバーとする合議制機関として経済財政諮問会議、総合科学技術会議などをおくこと、B北方対策、金融危機対応会議などの「特別の機関」をおくこと、C外局として、宮内庁、国家公安委員会、防衛庁、金融庁をおくことなどが特徴です。 このような内閣府の組織編成と位置づけこそ、行政改革がめざす「国の役割の重点化」の内容を具体的に示しています。たとえば、経済全般の基本方針、財政の基本方針、予算編成の基本方針などの「調査審議」が任務とされる経済財政諮問会議では、経済施策(コスト)の面から社会保障、雇用などの課題をあつかうことが想定されており、大企業いいなりの政策を正当化するための会議となりかねません。
各省設置法案がめざす国民犠牲の国づくり
内閣府の下に位置する各省庁の役割は、各省庁設置法案にある任務および所掌事務のなかに端的に示されています。 例示すれば、「厚生労働省」の任務は、「国民生活の保障及び向上を図る」ことと並べて「経済の発展に寄与する」となっています。憲法25条を具体化する厚生省と、労働者保護を担う労働行政が、行政目的の前提から歪められています。 一方、「国土交通省」の任務は、「国土の総合的かつ体系的な利用、開発及び保全、そのための社会資本の整合的な整備を図る」と規定しています。 これでは、大型開発優先の公共事業に重点をおいて、かたよった財政を温存・踏襲するものであり、利権が集中する巨大な公共事業官庁になりかねません。 「経済産業省」の任務は、「民間の経済活力の向上及び対外経済関係の円滑な発展を中心とする経済及び産業の発展を図る」としています。所掌事務では、経済構造改革の推進をうたい、規制緩和政策推進のための省とする意図があからさまです。 そして、「外務省」の任務もみのがせません。「主体的かつ積極的な取り組みを通じて良好な国際環境の整備を図る」とし、所掌事務では、日本国の安全保障、対外経済関係などをあげています。政府がガイドライン=戦争協力法案を強行し、日本を戦争ができる国に変える外交政策に合致するものです。 このように設置法案を見ると、省庁再編が、いわゆる「6大改革」を推進し、新ガイドラインに対応する国づくりであることが鮮明になってきます。 さらに、副大臣、政務官など、各省の政策決定の中枢ポストの新設は、政治家による「行政のっとり」で「政・官・財」のゆ着がいっそう歪められる危険を持っています。 また、「行政事務および事業を一体的に遂行する責任」の文言がどの省の任務規定からも消え、内閣機能強化のもとで各省の行政責任があいまいにされています。
減量化が目的。主務省・総務省の評価しだいで主要業務の改廃も〈独立行政法人〉
独立行政法人は、対象機関90のうち4機関を除き、国家公務員の身分を与える特定独立行政法人とし、スムーズな移行を図ろうとしています。その上で、国家公務員の身分を与えない独立行政法人をも創設し、「芽出し」を図りました。 減量化の最大の武器は、人員削減です。国家公務員の場合、身分保障の例外として、整理免職の規定がありますが、現在の総定員法制定以後は、一度も発動されていません。そのため、独立行政法人制度検討開始以来、整理解雇を可能にするよう、国家公務員の身分を与えないものが基本とされてきました。しかし、行革会議が最終報告をまとめるに当たり、制度導入に最大の力点を置き、国家公務員の身分を与える類型が併記されました。「頭出し」にとどまらず、中央省庁等改革推進本部顧問会議では、「5年ごとの見直しの際には当該法人の身分についても見直していただきたい」との発言がされるように、政府の側は、一貫して、国家公務員の身分を与えない類型拡大をねらっており、警戒が必要です。
特定独立行政法人であっても、運営は、大臣が一方的に中期目標を提示し、中期目標の期間が終了すると一方的に評価委員会で評価され、独立行政法人の長の抗弁は出来ません。さらに、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会は、主要業務の改廃を勧告できます。この点は、特殊法人制度より厳しいものです。 総定員法、予算制度等にしばられず自主的、自律的運営が出来るという独立行政法人制度の「売り」も裏返すと、「自主的」に、これまで以上に組織や人員、予算を減らせるということになります。特に、特殊法人と同様に、予算措置を通じた財務省の関与により、人員、給与等が抑制される危険性があります。 このように、独立行政法人制度は、国民への行政サービス提供への国の責任を放棄し、サービス提供分野を子会社化して、減量化・効率化を押しつけるものだということは明らかです。 加えて、通則法段階に至るまで、雇用の承継が法律に明記されておらず、法人の設立委員に委ねられていることは、大きな問題です。雇用の継承を国会審議の中で、明確にさせることが必要です。 また、国立病院・療養所は、2004(平成16)年度までに移行するとされていますが、それまでの間、移譲・統廃合強要が予想されることから、それを許さない取り組みが必要です。 大学は、定員の25%削減とも絡み、2003(平成15)年までに結論を得るとされており、対象とさない取り組みが必要です。
国家公務員定員の25%削減 一方で、官僚のポストは確保
--減量化計画(独立行政法人以外)--
独立行政法人以外の減量化計画は、定員削減について、一般職国家公務員約85万人の内、郵政公社に移行する30万人を除いた55万人の25%、約14万人を削減するとしています。うち、7万5千人は独立行政法人化で行われ、その他は、当面新規採用抑制で行うとしています。しかし、新規採用をゼロにしてもまかなえる数字ではないことから、新たな独立行政法人化など、大がかりな減量化計画が浮上する危険は大きいものがあります。 その他では、まず、通産省のアルコール専売の廃止など5事務・事業が廃止・民営化・民間移譲され、それにともなう対応組織の縮小等が要求されています。 民間委託では、公共事業で、設計・施工の一括発注、いわゆる丸投げを、分離発注原則の例外として、可能な限り導入するよう要求しています。また、点検保守に高度の専門能力を有しない、航空管制のメンテナンスは、今年度から民間委託に着手するとしています。 現業については、郵政事業の公社化、印刷、造幣の独立行政法人化などを行うとしています。 官房および局は、96局に削減するとしていますが、その一方で、局長級分掌職をほぼ減らした数だけ新設します。本省の課も1000程度に削減するとしていますが、同様に課長級分掌職の活用が言われています。 地方支分部局では、地方建設局と港湾建設局の統合、などを行うとしています。 以上のように、官僚の領分である、本省の局課については、尻抜けにしつつ、その他は従来以上に踏み込んだ「合理化」措置を要求しているのが特徴です。
行革法案成立阻止めざし国会闘争に全力あげよう
--大規模署名の目標達成を--
これからの運動は、行革関連法案の成立をくい止めるため、5月20・21日や6月8日の中央行動をはじめ国会闘争に全力をあげます。 法案の国会提出をうけ、衆議院での審議が開始されます。行革大規模署名を背景に、国会内の世論を変える取り組みと同時に、法案審議段階での国民世論の高まりで、法案審議に影響をあたえるため、署名、宣伝行動、地元選出国会議員要請など地域職場での取り組みを強化します。そのためにも現在展開している「全国キャラバン」の成功をバネに、行革大規模署名の300万目標達成に向け地域に打って出る運動を更に進めることが重要です。 具体的には、別表の主な取り組みを軸に、単組、ブロック・県国公での独自の取り組みを旺盛に展開しましょう。 行政サービス切り捨て、労働条件改悪の行政改革に対する怒りをたかめ、国民生活重視の行財政確立をめざし、国会最終盤までねばり強く闘い抜きましょう。
独法化反対で研究機関行動
国公労連は、4月28日、学研労協と共催で、「独立行政法人化は白紙に戻せ!4・28試験研究機関総行動」を、約280人の参加で成功させました。 行動では、まず星陵会館で総決起集会を開催。藤田委員長の主催者あいさつ、共産党平賀高成衆院議員の激励あいさつ、基調報告に続き、全通産筑波支部、全農林筑波地本、全運輸船研支部代表が決意を表明。続いて、衆参全議員への要請を行った後、星陵会館前から、日比谷公園までデモ行進し、都民に、国立研の独立行政法人化反対をアピールしました。
独立行政法人化の対象機関
(試験研究)航空宇宙技術研究所、国立科学博物館、国立健康・栄養研究所、農業研究センター、物質工学工業技術研究所、通商産業研究所*、船舶技術研究所、通信総合研究所、土木研究所など57事務・事業
(文教研修・医療厚生)国立病院・療養所、国立青年の家*、国立少年自然の家*、国立婦人教育会館、国立博物館、農業者大学校、工業所有権総合情報館、海技大学校など18事務・事業
(検査検定)肥飼料検査所、製品評価技術センター、自動車検査(検査場における検査)など6事務・事業 (作業施設)統計センター(統計研修所を除く)、種苗管理センター、など5事務・事業 (その他)貿易保険*、印刷、造幣など4事務・事業 *は国家公務員の身分を与えない法人
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