国公労新聞 第1063号

●国民のくらしと地域に目をむけ、行政民主化の運動をすすめよう
 どうなる新省庁体制─今後の行政を考える12・2シンポジウムひらく
 

 国公労連は12月2日、「どうなる新省庁体制│今後の行政を考えるシンポジウム」を14単組5県国公、3ブロックなど、150人の参加で開催しました。
 シンポジウムの第1部では、晴山一穂福島大学教授をコーディネーターに5人のパネリストを迎えたパネルディスカッションで各界からの行政への意見を聞きました。
 全国消費者団体連絡会の日和佐信子事務局長は「O157の問題以降、雪印事件や異物混入など、350件以上もの食品の安全を脅かす事件がおきている。消費者の立場にたった食品衛生法の抜本改正が必要だし、食品の安全に関わる行政が各省にまたがっていることでも問題」とのべ、東京学芸大学の丸山健人教授は、「気象庁当局も、機械万能論、サービス限界論は言わなくなったが、科学の危機、受益者負担の危機、官僚支配の危機はなくなっていない」とのべました。
 全国福祉保育労組の村木忠夫書記長は「公的福祉の破壊が進んでいる。営利企業の参入で、競争が激しくなっている。保母の数は欧米にくらべて非常に少ないため、職員の健康破壊も深刻だ」とのべました。
 全国商工団体連合会の佐伯勝雄常任理事は、「不況の影響をもろに受け、中小・零細の商工業者の廃業が増大している状況を、社会の効率化などと言い放つ政府の姿勢は重大。業者を保護するうえで、行政の果たす役割は大きい」とし、全労連の国分武事務局次長からは、「企業のモラルハザードは、その企業内の労働組合の存在が問われている。国公の仲間も労働や交通運輸などさまざまな行政に携わる立場で、外に足を出して力を発揮してほしい」と要望も出されました。
 パネリストの発言を聞いて参加者からは、「定員削減による繁忙、長時間過密労働の職場実態のなかで、ややもすると大企業奉仕の官僚行政のあり方に流されそうになるが、国民の立場にたち庶民感覚を忘れないで、本当にやりがいのある行政が『市民の傘』になる仕事を行いたい」という発言などがありました。

○行政レポート報告で行革のひずみ明らかに
 第2部では、10単組がそれぞれの立場から規制緩和問題や行政研究活動をまとめた「行政レポート」のうち、全医労、全運輸、全港建、全労働から報告が行われ、行革の影響がさまざまなひずみとなってあらわれている実態が明らかになりました。
 国公労連は、今回のシンポジウムを第一歩として、住民の方々との対話と共同、「行政点検・公開」などを通じて、行政民主化の運動にとりくんでいきます。


●「行革大綱」を閣議決定 官僚=公務員「たたき」を強調

 12月1日、政府は、5年ぶりに「行政改革大綱」を決定しました。
 「大綱」では、2001年1月6日の新省庁体制スタート後の行政改革について、2005年までの期限を切って、行政の「スリム化」や、「政治主導」の行政体制確立という「小さな政府」を達成するために、自公保が必要と考える課題が列記されています。
 そこには、規制緩和や、行政「減量化」による雇用不安、将来不安の拡大など、「小さな政府」のもとでの国民生活の苦しみには全く目が向けられていません。過労死におびえるほどの長時間過密労働が、国公職場に蔓延していることへの配慮もありません。ましてや、2001年度末で、国・地方あわせて、642兆円にまで膨らませた「政治の責任」を問いなおす姿勢はみじんもありません。
 「大綱」では、「官僚の天下り先で、税金のむだ使いの温床」となっている特殊法人、公益法人の「改革」や、「構造改革を妨げている」官僚制度を壊すための公務員制度「改革」など、官僚=公務員「たたき」を強調している点が特徴です。行政民主化をめざし、国民との共同を拡大する公務員労働者のたたかいが、いよいよ大切になっています。

「行革大綱」の主な内容

1 特殊法人等の改革
 特殊法人や公益法人を2005年末までに整理する「合理化計画」を2001年中に策定。

2 公務員制度の抜本的改革
 成果主義・能力主義に基づく信賞必罰の人事原則の明確化。省庁関与の再就職は大臣が直接承認、特殊法人への役員出向制度の創設。任期付き職員等の採用による「大臣スタッフ」の登用。定数、機構・定員は各大臣が設計・運用するシステムに。

3 地方分権
 自治体数は1000を目標に、市町村合併を推進。

4 行政組織の減量化・効率化
 国立病院・療養所は、2004年度に単一の独法に移行。国立大学などの独法化は、2001年度に検討結果を整理。

5 行政改革の推進体制
 あらたな行政改革推進本部を設置。


●11・13スト裁判 全医労の控訴を棄却
 報告集会では、仲間からの怒りの声が


 看護婦の増員を要求してたたかった「11・13スト」への不当処分の取り消しを求める裁判で、東京高裁は11月29日、全医労の控訴を棄却する不当判決をだしました。
 判決直後に開かれた「11・29判決報告集会」では、「たった10秒間の判決なんてひどい!」「26年を経過しても人事院判定が実現していなかったにもかかわらず、『実現に向けて可能なかぎりを尽くした』という判決は納得できない」「現在の職場は2交替制導入など、スト当時よりもひどい」と全国から集まった全医労の仲間からいっせいに怒りの声があがりました。
 不当判決に対して、全医労・医労連・国公労連・全労連の4者で構成する「国立医療闘争委員会」がただちに抗議声明を発表。そのなかで、「きわめて不当な判決。強く抗議すると同時に、ひきつづき上告し処分の取り消しを求めていく」「政府・厚生省に対し、スト処分に端を発する団体交渉議題の制限等の一連の不当な全医労攻撃をただちにやめ、正常な労使関係を回復するよう強く要求する」としています。
 99年の東京地裁一審につづく不当な判決のもとで、全医労に対するひきつづく支援が求められています。

〇11・13「いのち守る裁判」とは
 全医労が1991年11月、患者の安全を守りゆきとどいた看護を提供するため、「夜勤は2人以上、月8日以内」とする人事院判定の実現を求めて、全国237支部で最大限29分以内の職場集会を開いたことに対し、当局が173人を戒告と処分するなどきわめて不当な処分をしたもの。
 人事院は、処分撤回を求める審査請求を退け、東京地裁では「処分は裁量権の範囲内」として、全医労の請求を棄却しています。
 全医労はこの判決を不服として東京高裁に控訴していました。


●続発する医療事故の背景を告発 全医労シンポに250名

 全医労は11月28日、シンポジウム「続発する医療事故を問う 守ろう!いのちと人権」を東京都内で開催し、全国各地の看護婦など約250人が参加しました。
 シンポジウムでは4人のパネリストが発言。国立療養所松江病院の看護婦・山田真巳子さんは、今年1月に起きた人工呼吸器による死亡事故の経過と背景について報告し、看護婦不足の実態と、看護業務の複雑化やシステムの問題点を、全医労松江支部の取り組みをまじえて明らかにしました。
 元国立医療センター副薬剤部長の古泉秀夫さんは、複雑・高度化する医療機器を扱う専門家の必要性を指摘。医療事故市民オンブズマン「メディオ」の伊藤隼也さんからは、医者いいなりではなくプロ意識と勇気をもって、医療を変える原動力になってほしいと、現役の看護婦への激励と要望も出されました。また、鈴木利廣弁護士は、医療機器メーカーに対して現場の意見を出す必要性と、医療にひそんでいるリスクを認識したうえで情報を公開し、患者本位の事故対策が求められているとのべました。
 こうした報告や、フロア発言を通して、患者と医療従事者が手を結ぶ大切さと、医療事故防止のために、病院当局に対するチェック機能を果たすなど労働組合の役割がいっそう重要になっていることが確認されました。


●美ら海・美ら島に米軍基地はいらない
  沖縄で日本平和大会ひらかれる


 日米軍事同盟打破、基地撤去「2000年日本平和大会」は、12月1日から3日まで沖縄県で開催されました。大会は、アメリカ、イタリア、韓国、プエルトリコの4か国の海外代表をはじめ、全国から1500人が参加しました。
 1日目の開会集会は、全労連小林洋二議長のあいさつで始まり、日本平和委員会須田博事務局長の基調報告では、「沖縄・名護への新基地建設を阻止するたたかいは、日本とアジアの平和と安全にかかわるきわめて重要な問題であり、新基地建設をやめさせる国際的な世論と運動を起こしていこう」と行動提起しました。
 2日目の午前中は、北・中部基地調査が行われ、午後の名護市での「平和大会名護交流集会」では、やんばる地域(沖縄本島北部)の各団体から、新基地建設を許さないたたかいの生々しい報告があり、全国的な支援強化を確認しました。
 最終日は、午前中に8つの分科会、午後からは閉会集会が行われ、全ての日程が終了しました。閉会集会では、フロアからの発言で全気象の丹藤さんが「天気予報は戦争となれば軍事機密となってしまう。全気象は、『天気予報は平和のシンボル』を合い言葉に平和のたたかいを進めていく」との決意表明するなど、青年層から元気な発言がつづきました。
 大会の成功を通して、沖縄の不屈さと勇気、明るさをバネに全国各地で連帯のたたかいを広げていくとともに、沖縄新基地の建設に反対するたたかいを全国的な運動とする決意を固めあいました。


●昇格改善要求 級別定数と標準職務表の抜本的改善を先送り

 国公労連は、昇格改善要求の実現を、秋季年末闘争の重要課題に位置づけ、10月19日の第2次中央行動での人事院前要求行動を背景に、人事院との交渉を積み上げ、追及を強めてきました。
 11月16日の人事院給与局長との交渉では、国公労連から、「職務評価は職員の生きがい、働きがいに直結するものである。財政当局の人件費抑制、しめつけは問題であり、現場の労働実態を直視した正当な評価を求める」と、あらためて昇格改善を強く迫るとともに、定数作業が大詰めにきている段階での回答を求めました。
 しかしながら、大村給与局長は、「標準職務表は軽々に変えられない。例年通りこれを基本に査定していく」とし、また、上位級の頭打ちについては、「昇格ペースが早くなっている結果」とし、7・8級の定数拡大の要求には正面から応える姿勢を示していません。また、行(二)の昇格問題については、「まず実態調査をすすめる」など問題の解決を先送りするものとなっています。
 こうしたなかで今後も、級別定数と標準職務表の抜本改善を基本要求として、人事院に強く迫っていくことが必要です。


●国民との対話と共同すすむ

〇全法務 各地で法務行政相談所を開設
【全法務発】全法務では、「国民とともに、国民の中へ」の実践として、全国各地で「法務行政相談所」行動を取り組んでいます。毎年秋の増員闘争の一環として提起されたこの行動は今年で3年目。昨年はすべての法務局支部で開設され、国民に直接、法務行政の重要性を訴える、またとない機会となっています。
 今年もすでに13の支部で開設され、中には、生協労組の協力を得て、生協の店舗で開催したという支部もあります。
 福島支部では、11月19日、「くらしの法務なんでも相談」と銘打った相談所を、県内の全分会(6分会)で開設し、組合員のほぼ5割にあたる110名が参加。当日は、本格的な冬の到来を感じさせる寒さにもかかわらず、相談件数は、全体で昨年を大きく上回る125件にものぼり、相談に訪れた人たちは、満足して帰っていきました。
 ときおり見せる笑顔や感謝の言葉をもらうと、参加した組合員からは自然と「これからもがんばろうね」と声が出ます。明日からの仕事にも、組合活動にも励みとなる行動でした。
 今後、春闘時期にかけても行政相談所が取り組まれます。国民の中に入っていって対話を広げることは、私たちにとっても大きな自信となります。全法務は、今後も積極的に「行政相談所」行動を取り組んでいきます。

〇宮崎県国公 4年ぶりに行政相談を実施
【宮崎県国公発】宮崎県国公では、11月25日に、生協店舗の一角をかりて、無料行政相談所を開設しました。
 今回の行政相談は、毎年法務行政相談を行っている全法務宮崎支部から「今年はぜひ県国公といっしょにやりたい」との呼びかけから実現したもので、県国公としては4年ぶりの開設となりました。開設にあたっては、毎月1回程度の割合で実施している街頭宣伝で、ビラの配布などを行ってきました。
 当日の相談件数は、10件と少なかったものの、年金、登記、医療、法律問題などバラエティーに富んだものでした。
 参加した仲間からは、「今はどこの職場でも、勤務時間中は国民からの相談に追われ、繁忙状況が続いているわけだから、国民の行政需要はもっとあるはず」「もっと地域に入って行くことが大切だ」などの感想も出され、次はもっとたくさんの人にきてもらおうと、決意をかためあいました。
●長時間労働 霞が関「不夜城」の実態を国連の場へ

 本省庁職場の仲間が集まって、「長時間労働の改善をめざす交流決起集会」が、11月29日夜、53名の参加で開かれました。
 集会では、国際人権活動会議で活躍している橋本佳子弁護士をまねき、「ILOなど国際労働基準と長時間労働の問題点」と題した講演をうけました。
 講演のなかでは、長時間労働の解消は、本人の健康問題にとどまらず、育児・介護など家族的責任を果たすうえでも重要であることが強調され、国内の運動と結びつけて、国連人権規約委員会やILO各委員会の要請などを通して、「不夜城」霞が関の実態を世界に訴えてはどうかとの問題提起もありました。
 また、特別報告として、働くもののいのちと健康を守る全国センター常任委員の佐々木昭三さんをまねいて、これまでの全国センターの活動をふくめ、人間らしい働き方の実現にむけた課題と、たたかいの方向について理解を深めました。
 今回で3回目の集会となりますが、一斉定時退庁や宣伝行動などの運動も前進してきているなかで、きたるべき2001年春闘にむけて、職場を中心にたたかいを前進させる決意を固め合う場ともなりました。
●改革のねらいはどこにあるのか −司法制度改革審議会が「中間報告」を発表−

 司法制度改革審議会(以下「司法審」という)は、11月20日、「中間報告」を発表しました。
 中間報告の構成は、司法制度改革の基本的理念と方向を総論的にのべ、@人的基盤の拡充、A制度的基盤の整備、B国民的基盤の確立を改革の3つの柱としています。
 中間報告では、司法制度改革の位置づけを、「政治改革・行政改革・地方分権推進・規制緩和等の経済構造改革等の一連の諸改革を『法の支配』の下に有機的に結び合わせるための『最後のかなめ』である」として、政府がすすめる構造改革路線との関連を明確にのべています。
 各論部分では、法科大学院を中心とした法曹養成制度や弁護士制度の改革など、制度改革の方向性や問題意識が示されています。
 しかし、行政に対するチェック機能の強化や、陪審・参審など裁判手続や裁判官選任過程などへの国民の司法参加など、民主的司法制度への改革に関わる部分については、「玉虫色」や「先送り」にされている部分も少なくありません。
 司法審では、最終報告の提出時期を来年の6月12日としています。
 今後、中間報告をどのように評価するか、そのねらいは何かなど検討を行い、最終報告にむけて、その審議動向を注視するとともに意見反映をはかるなど、真に国民の利用しやすい信頼のおける司法制度への改革を求めるとりくみが必要です。

●藤田忠弘さんへの感謝と激励の夕べ

 国公労連委員長を退任した藤田忠弘さんへの「感謝と激励の夕べ」が、11月30日に東京都内で開かれました。
 会場には、国公労連各単組、全労連をはじめとする関係労働組合・団体、出身単組である全労働の各地の仲間など350名が集まり、藤田さんの長年の奮闘をねぎらいました。

●三宅島避難3か月 島民とともに歩む組合員たち島民とともに歩む組合員たち
  島の復興と求められる生活支援


 噴火活動が続く伊豆諸島の三宅島から、住民約3千9百人が「全島避難」してから3か月たちました。いまも火山ガスの放出は止まらず、帰島の見通しはたっていません。年の瀬をむかえて、不自由な生活を強いられている住民のみなさんの不安はつのります。三宅島で勤務していた国公の仲間も、その例外ではありません。組合員は、全法務1名、全運輸3名、全気象11名の計15名。噴火当時の苦労やいまの様子について話をうかがいました。

〇30年住んだ島を重い2週間連続で気象業務
 「朝6時30分から夜まで火山監視・情報提供業務をしています。気象データを作成し、現地の災害対策のために情報を報告しています。1日中緊張のため、息ぬく余裕がないですね」と語る荒木卓次さん(54歳)は、神津島にある三宅島測候所東京都現地対策本部で2週間連続で勤務して帰ってきました。
 荒木さんは、気象庁三宅島空港分室長として働いていましたが、9月の全島避難以降は、家族とともに足立区の都営住宅の仮住まいを余儀なくされています。
 三宅島に勤務して30年という荒木さんは、PTA役員を16年務めるなど三宅島に根付いた生活をしていただけに、現在の島民の生活実態に胸を痛めています。「50歳をこえると就職先もなく、しかも慣れない東京で生きがいを失っています。同じ都営住宅に住む島民たちと話していると、つらくても口に出さずに耐えていると痛感します」と話します。
 三宅島は現在でも1日2万トンもの二酸化硫黄がでており、世界の火山でも例のない現象が起こっています。いつになれば安全宣言が出せるか予測できない状況です。「20年ごとに噴火を繰り返す三宅島なので、測候所としても日頃から火山の啓蒙活動を心がけてきました。現地でも必死になって島への観測施設の設置に努力していますが、ガスが噴出しているため、風向によっては、なかなか上陸できず、歯がゆい思いをしています。いまは早く島民が島に帰れることだけを祈っています」と語りました。

〇沖縄にいる家族が心配、経済的な負担も重く
 「3人の子どもが今どう過ごしているか心配です」と話す宮城隆さん(35歳)は運輸省三宅島出張所から、東京空港事務所・管制通信官室に配属になりました。家族は8月下旬の三宅島噴火の際、宮城さんの実家である沖縄に自主的に避難したので、現在単身赴任を強いられています。一番下はまだ1歳でかわいい盛り。電話が家族の気持ちをつなぐ絆になっています。
 「突然、ひとりっきりの生活になり、とても寂しいですね。2か月に1回しか帰省できません。いま気がかりなのは、来春長女をどこの小学校に入学させるかということです。先が見えない生活が、私も家族も一番つらい」と語る宮城さんです。
 経済的負担もたいへんです。島から持ち出せたのは貴重品や下着など、わずかなものだけ。宮城さんはTシャツとGパンで避難したので、背広や靴などはすべて東京で購入しました。宮城さんは「二重生活のため、生活費を切りつめています。1日1食という日もあって、国公共済会から特別の見舞金をいただき大変助かりました。でも、ほかの島の人たちはもっと大変だと思います。早く島民全員が元の生活に戻れるように、政府も対策を講じてほしい」と訴えました。

〇お年寄りの精神ケアなど人権相談もしていきたい
 「三宅島はお年寄りの比率が高いので、精神的なアフターケアが大事だと思います。住み慣れた島を離れて都会で生活することによる苦労と不安は切実です」と東京法務局三宅島出張所所長の鈴木悟さん(48歳)は話します。
 全島避難勧告によって、急きょ三宅島出張所から登記簿の搬出作業をおこない、9月12日から東京法務局不動産登記部門と法人登記部門で事務委任を開始しました。登記簿は段ボール60箱にもなりました。
 鈴木さんは今年4月に単身で赴任したばかりですが、島民の方にはずいぶん助けられたといいます。「避難勧告後体育館で3度寝泊まりしましたが、島のみなさんと朝から晩まで語り合えて楽しかったです。島民のために、精神的に悩んでいるお年寄りを相手に人権相談をしたり、ボランティア活動にも参加し、島の復興のために力を尽くしたい」と鈴木さんは抱負を語りました。
 今年になってから有珠山や三宅島噴火などの災害が続いており、「被災者に公的支援を」という声が全国に広がっています。こうした声にもおされて、政府は三宅島民に被災者生活再建支援法の適用を決定し、最高で一世帯百万円の支援金が出されることになりました。
 自然災害から国民を守り、健康で安心して生活できる社会をつくることは国の使命です。三宅島の人々の1日も早い帰島を願いつつ、私たち国公労働者の役割を考えさせられました。

●三宅島島民にカンパ300万
 12月6日、国公労連と東京国公は、三宅島島民のみなさんへ全国から寄せられた義援金300万円を、三宅島村長に届けました。同時に、三宅島出身の総務庁統計センターの小林さん(写真右手前)もかけつけ、職場で集めたカンパを手渡しました。三宅島村長は、現在の島民の苦しい生活状態を切々と語ってくれました。

●特集・独立行政法人移行時の労働条件要求の考え方
 独法化による労働条件改悪は許さない


 2001年4月1日の独立行政法人設立にむけ、移行時の労働条件確定が急がれています。一部の法人対象機関では、能力・業績反映の賃金制度への改変など、労働条件切り下げが提案されています。組織改編の混乱に乗じた労働条件改悪は、独法での労使自治の原則を無視するものです。統一的要求案に基づき、あらたな労働条件決定の仕組みも活用して、労働条件の維持・改善をめざし、たたかいを強めましょう。

1 賃金−業績給大幅拡大の余地はない
 独立行政法人での賃金は、職員の「職務の内容と責任」と「発揮した能率」が考慮されることを求めています(独法通則法第57条)。それは、非現業の公務員と同様、「職務給の原則」を確認したもので、業績給の大幅拡大が入り込む余地はありません。
 また、中期計画での人件費見積もりを考慮することが求められていますが、これまでの動きでは、賃金制度変更のための人件費増は認められていません。結局、移行時の賃金制度変更は、だれかの賃金を削るという職員の「痛み」をともなうことにしかなりません。
 この2点は、あらたな賃金を検討する上で、はずしてはならないものです。

2 労働時間−現行拘束時間を維持、残業は協定が必要
 労働時間は、大きく変わる点です。ポイントは以下の通りです。
<労働時間>
 労働時間6時間超で45分以上、8時間超で1時間以上の休憩時間を途中に入れると労基法で定めています。休息時間の規定がなく、昼休み1時間で現行の拘束時間と同じにするため、実働7時間30分時間にします。
<時間外および休日労働>
 時間外および休日労働は、過半数組合または過半数を代表する者と使用者との協定(36協定)が必要です。労働省告示は、1週15時間、2週27時間、4週43時間、1月45時間、2月81時間、3月120時間、年360時間の目安を示しています。子の養育や家族の介護を行う満18歳以上の女性で、申し出た人は1年150時間を超えられず、労働省告示で、4週でも36時間を超えないものとしています。労働省通達で、労使協定の有効期限は1年となっていますす。
<過半数代表とは>
 「労働者の過半数」は、派遣労働者をのぞく、法人の業務執行権または代表権を持たない者すべてが対象です。過半数労働組合がない場合、投票、挙手、労働者の話し合い、持ち回り決議等の民主的選出手続きが必要です。
<フレックスタイム制>
 フレックスタイム制は、過半数組合または過半数を代表する者と使用者との協定が必要です。適用範囲、清算期間(1月以内)、総労働時間などを定めます。フレックスタイム制でも、清算期間内の法定労働時間を越えれば、時間外・休日労働手当が支給されます。
<休日>
 労基法は、休日を毎週1日以上与えなければならないと規定しているのみです。土日、国民の祝日、年末年始休暇を休日と特定するため、「非現業国家公務員と同様とすること」と要求することが必要です。
<新再任用の短時間勤務>
 短時間勤務の新再任用は、勤務時間法の適用がないため、労働協約ないし就業規則に盛り込む必要があります。

3 休暇−労基法は最低基準、水準維持に万全を期す
 休暇制度も大きく変わります。
<年次有給休暇>
 現在は4月採用の時点で15日、翌年から20日が付与されます。一方、労基法は、20日になるのは6年6月以上勤務が必要です。現行の条件をきちんと継承する必要があります。取得単位は、労基法は半日単位です。現行の時間単位で取得できる現行制度の趣旨をできるだけ引き継ぐことが重要です。繰り越しは、現行1年が2年になります。
<病気休暇、特別休暇、育児介護休業>
 労基法は、公民権行使以外の特別休暇や病気休暇は労使自治に委ねられており、現行水準確保が必要です。
 育児・介護休業法による育児休業は、部分休業がなく、介護休業も時間単位取得がなく、非現業国家公務員と同水準とさせる必要があります。

4 非常勤職員−制度上は常勤化の障害がなくなる。
<定員管理がはずれる>
 国の定員管理からはずれ、常勤との区別は、勤務時間が短いか、短期雇用かだけです。常勤的非常勤職員を常勤化する障害がずっと小さくなります。
<要求の組織化を>
 36協定締結の代表選出にもかかわり、非常勤職員の要求組織化、組合加入促進が必要です。

5 安全衛生−労使の委員会で推進、専門家育成も必要
<(安全)衛生委員会の設置>
 50人以上の事業所ごとに衛生委員会を設置すると労働安全衛生法で定めています。委員会は、議長(総括安全衛生管理者)、衛生管理者、産業医、労働者で構成します。議長以外の委員の半数は、過半数組合または過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならないと規定されています。
 委員会を活用し、安全衛生教育や、労働者委員の研修を法人の負担で行わせるよう要求することを含め、労働組合の専門家を養成することなどの必要があります。

6 組合活動−交渉委員、あっせん、調停、仲裁、在籍専従など
<労使交渉事項>
 新国労法8条は、交渉・協約の対象を、1.賃金その他の給与、労働時間、休憩、休日及び休暇に関する事項、2.昇職、降職、転職、免職、休職、先任権及び懲戒の基準に関する事項、3.労働に関する安全、衛生及び災害補償に関する事項、4.前3号に掲げるもののほか、労働条件に関する事項、としています。管理運営事項であっても、労働条件の問題は交渉対象です。その確認を法人と行う必要があります。
<交渉委員、下部交渉>
 新国労法は、交渉委員制度をとっています。労働省通達では、交渉委員は、独法職員でないものも認められるとしています。そうした点を協約化する必要があります。
 支部・分会と当局とが交渉を行うことは当然のことですので、労働協約に規定する必要があります。
<あっせん、調停、仲裁手続き>
 あっせん、調停、仲裁申請の手続きを規定しておく必要があります。
<在籍専従>
 在籍専従は、7年の範囲で労働協約によって決定するとされます。
 人事院規則の短期専従規定は適用されず、国営企業と同様、組合休暇制度を労働協約で設ける必要があります。
<便宜供与>
 労組法では、最小限の広さの事務室と、社会通念上含まれる備品、掲示板の供与が認められます。
<使用者の利益代表者の告示>
 いわゆる管理職である使用者の利益を代表する者は、中労委が告示し、細部は法人ごとに特定されます。範囲を広げさせない必要があります。
<苦情処理共同調整会議>
 新国労法で、苦情処理共同調整会議が必置です。交渉形骸化につながらないないよう、個人の苦情を処理する機関として位置づける必要があります。
<チェックオフ>
 労基法は、労使協定に基づく控除を認めています。控除されるのは、福利、厚生施設の費用、組合費等で、税、社会・労働保険料は、協定の有無に関わりなく当然控除できます。

7 中期計画など−人件費見積もりが重要、評価委員会への推薦も
<中期計画>
 労働条件を守るため、中期計画の人件費見積もりの不当な抑制を許さないことが必要です。
<評価委員会>
 独立行政法人評価委員会は、業務組織全般に大きな影響力を持ち、組合推薦委員の選任は、労働条件を守る大きな力になりえます。

用語注:労基法=労働基準法
    労組法=労働組合法
    新国労法=国営企業及び特定独立行政法人の労働関係に関する法律

統一的要求(案)

1.賃金
(1)当分の間、賃金および昇給、昇格基準、各種手当等は、従来水準の通りとすることを、労働協約(または就業規則)で確認すること。また、初任給格付についても現行を基本に経験年数を100%換算すること。
(2)その上で、移行後可及的速やかに以下について改善すること。
1)各級の枠外昇給延伸措置の改善
2)行(二)職の部下数制限を撤廃すること。医療(三)の昇格については、勤続、経験を基本とすること。従来の本省や筑波など大規模所と地方の格差を解消すること。そのため、専門職制度などの活用をはかること。
3)研究員調整手当、調整手当の格差解消をはかること。
4)勤務評定に基づく措置は、労働組合との合意に基づき、制度設計すること。

2.労働時間
(1)労働時間
1)昼休み1時間を含め拘束時間を現行通りとするため、実働時間は、7時間30分とすること。
2)時間外および休日労働については、いかなる場合においても、1週15時間、4週43時間、年360時間を越えないこと、かつ、満18歳以上の女性で、子の養育または家族の介護を行うものは、4週36時間、1年150時間を超えないこと。以上について、期限を1年とする時間外・休日労働協定を締結すること。協定において、時間外および休日労働を命じる条件を限定すること。
3)労使協定締結が前提となる研究職のフレックスタイム制については、従来どおりの制度とすること。時間外・休日労働は、2)と同様とすること。労働基準法の定めにより、時間外・休日労働手当を支給すること。
4)休日については、非現業国家公務員と同様とすること。
5)国家公務員法の改正により、2001年4月から導入される新たな再任用制度のうち、短時間勤務にかかわる制度を設けること。年次有給休暇は、非現業国家公務員と同様とすること。

3.休暇
1)年次有給休暇は、非現業国家公務員の水準を下回らないこと。取得方法についても同様とすること。
2)病気休暇、特別休暇、介護休業、育児休業は、非現業国家公務員の水準を下回らないこと。

4.非常勤職員の労働条件改善
(1)非常勤職員の定員化を進めること。
(2)非常勤職員の賃金を改善すること。
(3)労働基準法に基づき、休暇を付与すること。残業をさせないこと。
(4)不合理な任用中断等を行わず、正規化を図ること。社会・労働保険に加入すること。

5.労働安全衛生
(1)(安全)衛生委員会の設置と活用
1)労働安全衛生法の規定により設置される(安全)衛生委員会は、勤務時間内に開催するものとし、労働組合推薦委員の打ち合わせを含め業務とすること。
2)(安全)衛生委員の専門的な理解を深めるため、委員に対する時間内の研修を行うこと。
3)(安全)衛生委員会の勧告に基づき、各事業所において、労働者への系統的な安全衛生教育を行うこと。労働者の健康の保持増進、安全保持のため、法令に定めるもののほか、労働組合の要求および(安全)衛生委員会の勧告に基づき、必要な措置を講ずること。その際、内容、予算額において、非現業国家公務員の水準を下回らないこと。
(2)福利厚生、レクレーション
1)労働省「快適な職場環境形成の指針」による他、労働組合の要求および衛生委員会の調査審議に基づき、必要な措置を講じるものとする。
2)労働組合の要求および衛生委員会の調査審議に基づき、職員の健康保持増進のため、所要のレクレーション計画を立案、実施すること。非現業国家公務員同様、レクレーション休暇1.5日を保障すること。

6.労使交渉・組合活動
(1)労使交渉
1)交渉委員は、組合役員数に基づき〇人とすること。労働組合側委員には、上部団体(単組本部)を加えることを認めること。交渉委員の任期は1年とすること。交渉の円滑化のため、双方が窓口委員を指名すること。
2)交渉事項については、新国労法8条にのっとるものとし、労働条件にかかわる問題は幅広く、双方誠意を持って話し合うこと。
3)本部と法人理事会との間の交渉のほか、分会(支部)段階においてもそれぞれの権限にしたがい、双方誠意を持って話し合うこと。
4)あっせん、調停、仲裁については、いずれか一方が自主交渉を打ちきる旨を相手方に伝えた後、双方またはいずれか一方から申請できるものとすること。
(2)組合活動
1)在籍専従を従来同様認めること。
2)組合室、掲示板等の便宜供与を従来同様認めること。
3)短期専従制度に変わる組合休暇をもうけること。
(3)新国労法4条第2項の告示に基づく、使用者の利益を代表するものの特定にあたっては、いたずらに範囲を拡大することなく、実態に基づき、労働組合との労働協約によって行うこと。
(4)チェックオフ労使協定を締結し、組合費などの徴収を代行すること。
(5)苦情処理共同調整会議は、労働協約および就業規則、法令その他、主として労働者個人の苦情を処理する機関として位置づけること。委員、会議の持ち方は、双方十分協議の上、労働協約で定めること。

7.業務、中期目標、中期計画等
(1)中期計画の人件費見積もりは、賃金改善が十分行えるように措置し、減量化係数をかけさせないこと。
(2)組合推薦の有識者を省庁の独立行政法人評価委員会の委員として任命すること。


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