国公労新聞 第1064号

2001年春闘方針(案)ダイジェスト版
●労働組合の原点が求められる2001年春闘でのたたかい
 生活改善をめざす国民春闘の構築を
 

 21世紀初のたたかいの場となる2001年春闘。きびしい攻撃にたちむかうために、要求実現にむけてねばりづよくたたかう「労働組合の原点」が、これまで以上にもとめられる春闘です。国公労連は、「国民の中へ、国民とともに」の立場を鮮明にして、国民春闘に結集してたたかいます。
 今号では、国公労連2001年春闘方針案のポイントをまとめました。春闘方針は、各単組・地域の討議をへて、2月はじめの拡大中央委員会で決定されます。みなさんの積極的討議をよびかけます。

 労働者・国民をとりまく状況は、いっそうきびしさを増しています。
 失業率は5%にせまり、完全失業者が300万人をこえる状況がつづき、雇用情勢は回復のきざしが見られません。今後、NTTなど大企業を中心に大規模なリストラ・人減らしが計画されているなかで、賃上げとともに雇用の確保は2001年春闘の中心的な課題です。

〇大企業の社会的責任の追及へ
 労働者には、リストラや賃下げをせまりながら、大企業はふんだんにもうけをためこんでいます。主要企業427社の内部留保は、昨年より4兆5千億円増え、100兆円をこえています。
 なかでも、「リバイバルプラン」によって、各地の工場閉鎖や下請け切り捨てを強行している日産自動車は、2001年3月期の決算で過去最高の利益が見込まれると発表しています。日産では、すでに9千人が減らされているように、企業の「繁栄」の影には、たくさんの労働者の犠牲があることを見すごすことはできません。
 大量の食中毒事件や会社ぐるみの欠陥車かくしなど、いきすぎたリストラや、もうけ第一の姿勢が、企業のモラルハザードという社会問題にまでなっています。2001年春闘では、雇用確保・大幅賃上げの実現とむすびつけて、企業の社会的な責任を問いただすたたかいがもとめられています。

〇政治を国民の手にとりもどす春闘に
 福祉の充実など国民生活をまもるたたかいも重要です。介護保険制度は、老人ホームなど基盤整備の遅れ、保険料・利用料の負担の重さなど、さまざまな問題が未解決のままです。健康保険改悪による医療費1割負担も、お年寄りにずっしりと重くのしかかっています。
 今後も、社会保障制度のさらなる後退や、「福祉目的」に名をかりた消費税増税がねらわれています。2001年春闘では、介護や医療、年金の充実など国民生活をまもるため、すべての国民と手をつなぎ、政府に制度改善をもとめていく必要があります。
 とりわけ、自公保三党によって、生活破壊の攻撃が強められているもとで、政治の流れを国民本位に変えていく観点が重要です。
 森内閣の支持率10%台と低迷がつづくなか、首相経験者をそろえ、「重量級」とのふれこみで発足した新内閣も、国民の期待にこたえられるものではありません。ほころびをどうとりつくろっても、自民党政治が、すでにその屋台骨からくずれかけていることは誰の目にもあきらかです。
 政治の転換点をむかえたなかでの2001年春闘は、政治を国民の手にとりもどすうえでも重要です。
 
〇一致点での共同ひろげすべての労働者のなかへ
 攻撃の強まりは、労働者の共同をひろげ、運動を大きく前進させる条件を広げています。
 連合は、この春闘で、賃金の底上げ、サービス残業の根絶、解雇規制という全労連と共通した3つの課題をかかげています。そして、全労連は、この3課題をかかげる「働くルールの確立署名」運動を提起し、すべての労働組合、労働者と手を結んだたたかいへと足をふみだします。一致点を追求しながら、共同と連帯をどれだけ太く大きくできるかが、要求前進のカギとなります。
 こうしたなか、文字どおり「全員参加」を合言葉にしながら、一つひとつの行動をやりあげていく体制をつくりあげ、全力でたたかいぬくことが私たちにもとめられています。


●2001年春闘 要求課題の重点ととりくみ
 750万人と連帯し、大幅賃上げをかちとろう

〇あらたな行革闘争をどうたたかうか
 1月6日からの新省庁体制、4月からの独立行政法人設立、「10年10%」の定員削減計画実施など、行革闘争は新たな段階に入ります。「行革大綱」で決定した「もの言わぬ公務員づくり」のための公務員制度の改革も動きはじめます。
 一方、規制緩和の強行で、雇用不安、将来不安が広がるほどに、行政も変質しています。国民生活と職場実態の両方に目を向けて、春闘をたたかいながら「対話と共同」をいかにひろげていくのかが課題です。
 この1年間、増員をはじめ行政体制の拡充をもとめて、各単組がとりくんだ国会請願署名を積み上げると140万筆をこえます。また、各地で行政相談活動や懇談会が活発にとりくまれました。
 こうした運動を前進させ、行政と公務員労働運動にたいする理解を地域からひろげ、2001年春闘では、行政相談活動をはじめ、地域の労働組合や行政に関連する諸団体などとの懇談会を重視していきます。

▽「行政チェック運動」で職場の現状の点検を
 職場と行政の実態に目をむけた運動をすすめます。
 そのために、行政の現状をみずからの手で「点検」し、問題点を「公開」していく「行政チェック運動」を提起しています。
 この運動を通して、国民から求められている行政サービスとは何か、行政と職場民主化のため労働組合は何をすべきかをみつめ、レポートなどにとりまとめ利用者国民にも明らかにしていきます。
 また、「減量化」の目玉としてねらわれている国立病院・国立大学の独立行政法人化が重要な局面をむかえます。
 とりわけ、政府・厚生省は、2004年からの独立行政法人化を前に、全国の国立病院・療養所の「再編・合理化」計画の強化をねらっており、これに反対するたたかいは急務です。

▽税金バラマキやめさせ国民本位の財政に転換
 そのことから、2001年春闘を出発点に、国立病院・療養所の移譲・統廃合、独立行政法人化に反対する署名運動や、宣伝行動、自治体要請などを全国的にすすめていきます。
 国と地方あわせて600兆円を大きくこえる借金財政が国民生活を苦しめています。とくに、「公共事業に50兆円、社会保障に20兆円」という逆立ちした税金の使い方が、借金を雪だるま式にふやし社会保障の改悪につながっています。
 2001年春闘では、国公労連・自治労連・全教の公務三単産が発表した「共同アピール」への賛同を追求し、大量ビラ宣伝行動などを通して財政の民主的転換を幅広い国民に訴えかけます。

▽新たな「行革大綱」に反対してたたかう
 森内閣が12月に閣議決定した「行革大綱」は、特殊法人の解体をはじめ、独立行政法人化など行政組織の「減量化」を着実に実施するなどとして、今後5年間の行政「改革」の方向をしめしています。
 また、「信賞必罰(賞罰を正確・厳重にするという意味)の人事制度」として、国・地方の公務員制度の抜本改革を打ち出し、「もの言わぬ公務員」づくりを今後の行革の重点に位置づけています。
 こうした新たな行革攻撃が、職場での労働強化と行政サービス切りすてにつながることは明らかです。
 国民との「対話と共同」や宣伝行動を強めつつ、「行革大綱」の中止を求める政府追及を強めます。

〇賃金闘争をめぐる課題とたたかい
▼なぜ底上げ要求を重視するか
 リストラや定員削減で正規労働者・職員をスリム化して、低賃金のパート・アルバイトなど不安定労働者に置き換える動きが官民ともにすすんでいます。
 雇用を不安定にして、労働者に賃下げを迫り、パートやアルバイトには極端な低賃金の押しつけで、人件費を切り下げています。
 それだけに、パート・アルバイトなどの労働者も含め、最低賃金を引き上げ、「だれでも、どこでも」の賃金底上げのたたかいを社会的にひろげることが重要になっています。
 また、青年の生活改善にむけて、初任給の抜本改善も重要ですが、ここ何年か初任給の改善はまったくすすんでいません。こうした状況をうち破るため、社会の底辺で働く人たちの賃金を真に規制できる、最低賃金制確立などをめざした運動に地域から結集します。
 また、公務での非常勤職員の賃金単価改善のとりくみを強めます。

▼公務員賃金をめぐる課題は
▽賃上げ実現のためどう運動を強めるのか
 たたかいの出発点として、圧倒的多数の要求を結集した賃金要求額に確信をもち、生活と労働の実態にもとづく要求の切実・正当性を使用者に認めさせる行動が重要です。
 そのため、すべての職場での要求提出や交渉配置、中央・地方での諸行動の成功にむけた結集を強めます。 また、賃下げが消費を冷えこませ、いっそうの不況をまねき、さらなる賃下げをもたらす悪循環や「民間準拠」の限界を乗り越える立場から、賃上げの社会的意義を訴える活動や人勧関連750万人との共同を追求し、公務員賃金への理解をひろげます。
 同時に、実力行使体勢確立も含め、賃金改善のため、どう運動を強めるのかについて職場討議を進めます。

・・・人事院勧告の影響を受ける「750万人」の内訳・・・

一般職国家公務員  50.8(万人)
特別職国家公務員(外交官、自衛隊員など) 32.0
検察官 0.2
非常勤職員                      7.0
国会関係(議員、秘書) 0.3
駐留軍関係 2.4
特殊法人 8.0
認可法人 8.5
公益法人 30.6
一般職地方公務員 326.5
特別職地方公務員(議員を除く) 1.4
臨時職員 0.5
地方第三セクター 3.0
地方公社(土地、住宅等) 0.9
私立学校 25.8
民営病院 42.1
社会福祉施設 39.5
商工会議所 0.9
農業協同組合 5.7
漁業協同組合 0.9
森林組合                  1.0
外国人留学生 0.9
恩給受給者等 162.3
合 計 751.2

  注 4現業については、一時金が影響するが含んでいない。

▽能力・実績主義強化とどうたたかうか
 現在の勤務評定制度は主観的な評価要素を含み、一方的に評価する仕組みで、しかも結果が公表されません。こうした納得性の薄い仕組みは、公平・平等な人事・処遇にはつながりません。T種採用者の特権人事や、男女差別などをなくしていくためにも、合理的な評価システムが検討は必要です。
 すでに能力給が導入されている民間の職場では、連合の調査をみても、多くの不満の声が出ているのが実態です。
 こうしたことから、人事院の「研究会」や政府の「検討会議」への国公労連の意見反映を求め、検討状況を逐一明らかにさせます。
 同時に、政府・人事院の検討が短期的な成果を賃金に反映させる目的ももっていることも見逃せません。
 いたずらに競争をあおる人事管理とは切りはなした制度検討を求めます。

▽俸給表構造の見直しに対するたたかいは
 俸給表構造の「見直し」について人事院は、春闘期にもその検討方向を示そうとしています。
 その方向は、総額人件費などのコスト削減、従業員の士気の向上をめざした能力や成果・業績を重視した賃金など民間企業の動向をふまえ、公務においても職務や能力・実績を反映した給与や処遇を積極的に推進することにあり、これらが、評価システム検討と一体ですすむ危険があります。
 内容は、現段階では明らかにされていませんが、(1)基本給を構成する三要素(職務、経験、実績)をふまえ構造的に見直し、(2)各級の号俸構成、昇給制度、期間のあり方を見直すことなどが予想されます。
 春闘アンケートでは、6割近くの人が、賃金決定で年齢・勤続年数の重視をあげていることも重視しつつ、生計費原則さえ変更する改悪反対の立場を明確にし、十分な情報の公開と協議を求めます。

▽他の労働条件の改善での重点課題は
 本省庁や公共事業官庁を中心に長時間・サービス残業が蔓延しています。人間らしく働くルールの確立と違法ともいえる不払い・サービス残業の解消をめざし、一斉定時退庁行動や残業実態調査に積極的にとりくみます。
 また、人事院は、本年の勧告で、(1)介護休暇期間の延長、(2)子の看護休暇の新設の検討を表明しました。
 これら休暇の早期実現を迫るための「要求ハガキ」や団体署名行動をすすめます。

〇独法化による課題とたたかい
 2001年春闘での、独立行政法人労働組合の最大課題は、移行時に労働条件の改悪(不利益変更)を許さないことです。
 独立行政法人は、国民生活に不可欠な行政サービスを実施する組織であり、営利企業ではありません。それだけに、現行の労働条件の維持が重要です。ところが一部の機関で、業績主義の強化や実質賃下げがねらわれています。独法個別法の雇用・労働条件承継規定にも反し、大問題です。

▽休息時間の規定なく、時間短縮のとりくみが必要
 拘束時間を延長しようという動きも問題です。労基法には休息時間の規定がなく、現行拘束時間を維持すると実働時間が短くなり、賃金の時間単価が上がることが理由です。省庁との横並びからいっても、また、特殊法人の多くが実働時間を短くしていることからいってもこれはまったく不当です。

▽労使自治による勤務条件決定のたたかいを強化
 業務遂行上の必要で雇用を継続してきた非常勤職員について、雇用打ち切りや労働条件の引き下げのおそれがあることも問題です。
 こうした労働条件の改悪を許さないために、2001年春闘では、残業に関する労使協定を結ばず、残業拒否闘争を展開することをも視野に入れるなど、労使対等で労働条件を決定する立場でのたたかいを強めます。
 また、中労委による仲裁等の制度がストライキ権剥奪の「代償措置」であることから、国公労連を代表する中労委労働者委員の公正任命の実現を重視し、全労連熊谷副議長の任命を勝ちとるため全力をあげます。


●2001年春闘の主な行動展開 すべての組合員が春闘に結集しよう

 春闘でのさまざまなとりくみに、すべての組合員の参加をめざすため、総対話と学習を重視します。とくに各県・地域での春闘討論集会は、1月末までの開催を基本に、全国で300カ所・1万人以上の参加を追求します。
 2月13日から16日までの第1波全国統一行動週間では、全員結集の職場集会を開催して、春闘要求の確認と行動の意思統一をはかり、すべての職場から所属長に対して要求書を提出し、上申闘争を展開します。
 3月2日には、春闘要求実現、大企業の横暴やモラルハザードの追及などを掲げ、官民労働者の総決起の場として、2001年春闘最大規模の「春闘中央行動」を展開します。
 また、3月下旬に想定される政府・人事院の最終回答日には、「責任ある回答」を求めて全員結集の「早朝時間外職場集会」でたたかいます。


●22,000円(5.8%)引上げ提案
  国公労連2001年春闘統一賃金要求(案)


〇賃金闘争は労働運動の原点
 賃金改善のたたかいは、多数の労働者が、個々人のさまざまな要求や考え方の違いを乗りこえて、力を結集した時に、前進が勝ちとられてきたのが歴史の教訓です。
 国公労連は、このような立場から、アンケートに示された要求を大切にして、政府に対する回答をせまるとりくみをすすめます。

〇生活改善要求こそたたかいの力
 アンケートをもとにした要求を掲げることに対して、「欲望賃金闘争だ」という攻撃があります。失業者がちまたにあふれ、国が定める最低賃金さえ下回る不安定労働者が増えているなか、「大幅賃上げなんて言えない」こんな声もあります。
 しかし、物価上昇分や、経済成長率など、一見「合理的」にみえる数字を積み上げて、それを賃金要求だといって春闘を展開することでは、政府や企業を追いつめて、賃上げを勝ちとることはできません。「状況が厳しいから要求もしない」こんな結果にもなりかねません。
 政府・大企業の賃金抑制攻撃が激しくなっているからこそ、大幅賃上げ要求をかかげてたたかう意義は強まっています。

〇統一要求案の概要
 「22,000円(5.8%)」の平均賃上げと「V種初任給15,000円引き上げ」要求を中心に統一要求案を提起しています。
 2001年春闘にむけた「わたしの要求アンケート」の集約状況は、12月14日現在で65,139名ですが、5万円、3万円の要求が昨年より高まっているのが特徴です。
 そのようなアンケート結果をもとに、一人ひとり異なる賃金要求を「最大公約」し、組合員の理解が得られる「額」として、6割以上の仲間が「これ以下では不満」としていると考えられる「3分の2ライン」に着目して提起しました(表1)。また、全労連が提起する「だれでもどこでも」の賃金改善のたたかいに結集する立場から、初任給の改善要求を重視します。

〇賃金体系の要求も重視
 能力・実績反映の俸給表への見直しを人事院がねらっていることから、賃金体系の要求も重視しています。業績給の拡大ではなく、「生計費」と「経験・勤続によって蓄積される専門性」を賃金体系検討の基本においた検討を迫る要求を「モデル賃金要求」で具体化しています。

●2001年春闘統一要求(案)の具体的な内容(抜粋)
1 賃金水準の大幅改善
 国公労働者の賃金を平均22,000円(5.8%)引き上げること。
 また、パート・アルバイト等の非常勤職員を含め、国公職場に働く労働者の最低賃金を月額相当150,000円 (時間給1,000円、日額7,500円)以上とすること。
2 賃金体系の改善要求
(1)賃金改善にあたっては、初任給を政策的に改善するとともに、職員の各年齢段階に応じた生計費の増嵩、公務員としての経験の蓄積や専門能力の高まりを十分考慮し、引き続き中堅・高齢者の賃金体系の維持改善に努めること。
(2)初任給については、以下のとおり改善すること。
 ・高卒V種初任給(1−3)は156,900円(15,000円・10.6%の引き上げ)とすること。
 ・大卒U種初任給(2−2)は190,400円(16,000円・9.2%の引き上げ)とすること。
(3)以上の体系要求の目安として、行政職(一)表の俸給表について、以下のとおり級号俸の改善を行うこと。他の俸給表に関してはこれに準じた改善を行うこと。

  <モデル賃金要求額>

モデル年齢 本俸引上げ要求額 引上げ要求率 本俸改善要求額 備考
18歳 15,000円 10.6% 156,900円 1− 3
35歳 18,000円 6.3% 304,300円 4− 8
45歳 22,000円 5.7% 408,600円 6−14

3 給与制度「見直し」について
 民間の「能力・成果」給に準じた制度改悪は行わず、公務員の職務と専門性を基準にした公平な処遇が可能となる給与制度を検討すること。また、定期昇給制度の改悪は行わず、高齢者の昇給停止制度は廃止すること。


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