●書記長インタビュー
マイナス勧告許さず「構造改革」の流れ変えよう
−−公務員制度改悪反対!、「マイナス勧告」断固阻止!
国公労連は、6月8日に第114回拡大中央委員会を開催し、夏期闘争方針案と人事院勧告期の要求案を決定します。
今年の夏期闘争では、「有事法制」「医療改悪」などの重要法案と同時に、「公務員制度改悪」を許さないたたかいも重要な時期を迎えます。また、人事院勧告をめぐっては、「マイナス勧告」反対のたたかいが焦点になっています。
今号では、夏期闘争に向け、「情勢をどうとらえるか」を中心に、国公労連小田川書記長に聞きました。
◎有事法制・医療改悪など悪法阻止に全力あげよう
▼今年の夏期闘争はどのような情勢のなかで行われますか?
▽小田川書記長
夏期闘争をめぐる第一の特徴は、政治情勢が大きく動いていることです。
発足後1年を迎えた小泉内閣の支持率は、今年1月の外相更迭で急落した後も下がり続け、最近の世論調査(5月20日付朝日新聞)では、内閣発足以来初めて3割台(38%)に落ち込み、逆に不支持率は47%で過去最高になっています。
これは、利権・口利きの「ムネオ疑惑」と外務官僚の汚職・腐敗など、「政官財ゆ着」の自民党政治に対する国民の強い批判とともに、小泉「構造改革」の悪政・悪法に反対する国民的な共同闘争が急速に発展していることの反映です。
そして、いま国会では、6月19日の会期末を目前に控え、「医療改悪法案」「有事法制関連三法案」「個人情報保護法案」「郵政事業民営化関連法案」の重要四法案をめぐって緊迫した状態が続いています。
国公労連は、国民のいのちと暮らしを守り、憲法遵守の義務を負う国公労働者で組織された労働組合として、日本を「戦争する国」に変える「有事法制」や、社会保障を解体する「医療改悪」などの悪法阻止に全力をあげます。
〇かつてなく厳しい民間の賃上げ
第二の特徴は、こうした国民的・政治的なたたかいと、私たちの賃金・労働条件課題とが深く結びついていることです。
国公労連は、今春闘でも「国民の中へ、国民とともに」を合言葉に、全労連・春闘共闘による「雇用・暮らし・いのち守れ」の「国民総決起春闘」の発展に全国で奮闘してきました。
しかし、民間の賃上げ状況は、春闘共闘傘下の民間単産の奮闘にもかかわらず、主要企業で「ベアゼロ」回答が相次ぎ、この妥結直後に電機6社が「定昇見直し・凍結」を逆提案するなど、かつてない厳しい結果になりました。
2002年での賃上げ状況
|
単純平均
|
加重平均
|
金額
|
率
|
金額
|
率
|
2002年春闘 |
5,809円
|
1.90%
|
7,269円
|
2.01%
|
昨年同期
|
6,652円
|
2.19%
|
7,609円
|
2.26%
|
昨年同期比 |
△843円
|
△0.29% |
△340円
|
△0.25% |
※5月16日現在、国民春闘共闘委員会傘下の労組
|
また、国営企業も、政治主導による賃下げを前提とした異例の「回答引き延ばし」に出てきています。
国公労連は、こうした激動する情勢をふまえ、「マイナス勧告」反対を最重要課題に位置づけ、「『構造改革』の流れを変えるたたかい」と結合させて、夏期闘争に全力をあげます。
◎「国会請願署名」を武器に民主的公務員制度確立を
▼行革推進事務局は、4月25日に「行政職の人事制度に関する原案(2次)」を提示しました。現在の公務員制度改革の局面はどうなっていますか?
▽小田川書記長
行革推進事務局は、この「2次原案」提示にあたっても、国公労連がこれまで求めてきた「『大綱』の撤回、見直し」だけでなく、「勤務条件に関わる基準の設定主体(労働条件決定に関わる労働基本権と「代償措置」との関連整理)」や、「評価制度試行の前提条件整備(試行内容などについての協議)」等の申し入れを全く無視しています。
そればかりか、「大綱」時の争点でもあった「能力等級制の人員枠」について、その設定主体は「内閣」であり、人事院が「意見の申出」を行える仕組みがあれば労働基本権上の問題は生じないとする姿勢を示しています。「労働基本権と代償措置はパラレル」、「級別定数の相当部分は勤務条件」という国会答弁すら反故にしています。
〇労働基本権は先送り、ゆ着問題は密室論議
こうした「2次原案」の内容・進め方は、推進事務局が労働組合との誠実な交渉・協議をつくす姿勢にないばかりか、労働基本権を無視し、政府による労働条件の一方的決定を可能とする検討方向を示したものといえます。
しかも、「2003年中の国家公務員法改正」に向けて、「法案要綱」の骨格固めや評価制度の試行強行の動きを強めてくることは必至です。
その際、労働基本権関連の課題を可能な限り先送りしつつ、国民的な批判の強い「政官財ゆ着」問題はできる限り「密室論議」で進めようというのが、推進事務局のねらいです。
▼当面はどのようなとりくみが必要なのでしょうか?
▽小田川書記長
推進事務局による口先だけの「交渉・協議」の不当性を追及するとともに、既成事実の積み上げによる公務員制度「改革」の内容確定を許さないためのとりくみ強化が求められています。
そのため、国公労連として、「2次原案」や「評価制度試行」の内容協議以前に、「大綱」にもとづく労働条件決定システムの明確化を求めて使用者追及を強め、職場段階からも学習と上申闘争を追求します。
また、5月31日の「シンポジウム」や全労連・公務労組連絡会規模の「国会請願署名」を通じて、「政官財ゆ着」の根絶、国民のための民主的公務員制度確立の世論形成と共同拡大に全力をあげます。
さらに、3月15日付の全労連「ILO提訴」をふまえ、私も参加した5月のILO要請団を経て、ILO6月総会や結社の自由委員会の11月理事会に向けた国内外のとりくみを強めます。
◎「賃下げのサイクル」断ち切るため国民世論に訴えよう
▼ベアゼロなどきびしい今春闘でしたが、人事院勧告に向けた賃金の情勢はどうですか?
▽小田川書記長
2002年国民春闘共闘の賃上げ水準は、集計登録481組合の加重平均で7269円、2.01%となり、前年実績比で340円のマイナス(5月16日)でした。いまなお約7割の組合が、粘り強く賃上げを求め、たたかいを継続させています。
2002年での賃上げ状況
|
単純平均
|
加重平均
|
金額
|
率
|
金額
|
率
|
2002年春闘 |
5,809円
|
1.90%
|
7,269円
|
2.01%
|
昨年同期
|
6,652円
|
2.19%
|
7,609円
|
2.26%
|
昨年同期比 |
△843円
|
△0.29% |
△340円
|
△0.25% |
※5月16日現在、国民春闘共闘委員会傘下の労組
|
一方、夏季一時金をめぐる主要企業を対象にした労務行政研究所の調査では、前年対比で4万円以上(6.1%)の減額となっています。春闘での賃下げ攻撃に加えて、一時金の切り下げ攻撃が強められる情勢にあります。
すでに国営企業が賃下げを前提に回答を引き延ばし、春闘段階で東京都や鳥取県など地方自治体の賃金カットも相次いでいます。さらに、竹中大臣がテレビ番組で「公務員給与カット」に言及しました。
〇賃金署名積み上げ、職場・地域で運動を
かつてないきびしい情勢を乗り越えるためには、公務員制度改悪反対闘争とも結合して、「マイナス勧告」を断固として許さない立場での使用者・政府と人事院追及が第一に必要です。
また、消費不況打開のためにも、賃金の引き上げが必要であること、「賃下げのサイクル」を断ち切る必要性を国民世論に積極的に訴えることが重要です。
職場から「賃金改善要求署名」を積み上げ、地方での人事院事務局への交渉・包囲行動、大規模な中央行動など、「マイナス勧告」の危機感をもち、これを許さないたたかいを展開します。
◎人勧期の統一賃金要求案−− 春闘共闘の回答結果引き継ぐ
ベアゼロ・賃下げを公務に持ち込ませない
▼2002年の人事院勧告期要求の基本的な考え方は?
▽小田川書記長
民間での賃金水準引き上げの相場が一定形成され、人事院勧告制度の下でのたたかいとなる人事院勧告期は、生活改善につながる賃金改善を求める基本姿勢は維持しつつ、「民間賃金との均衡」や「国民の納得性」にも留意した勧告に向けた重点要求での追及が重要です。
2002年春闘の状況を踏まえれば、総人件費抑制の観点から進められる「ベアゼロ・賃金引き下げ」を公務に直接持ち込ませない立場での要求をかかげて、人事院勧告闘争を展開します。
〇1000円の賃金要求を提案
▼具体的にはどのような要求を掲げて、人事院勧告期をたたかうのですか?
▽小田川書記長
拡大中央委員会で提起する「要求額・1000円」の案は、春闘期の「当初要求」の切実性を踏まえつつ、先進的な回答を勝ち取った国民春闘共闘に結集する労働組合の回答・妥結結果を引き継ぐ立場で提案したものです。
国家公務員の賃金は、750万労働者に直接影響しますし、社会的な影響力を持っています。
要求さえ提出しない組合や、賃下げ提案をたたかわずに受け入れた組合の妥結状況を、そのまま多くの労働者に押しつけることになりかねない勧告に反対する立場を明確にするものです。
そのことは、3年連続の一時金切り下げで、賃下げとなっている国公労働者のギリギリの生活改善要求となりうるものと考えています。
◎2002年人勧期の賃金改善要求(案)
1 公務員労働者の生活と労働の実態に照らし、賃金水準を平均1000円引き上げること。また、すべての年代について賃金の抑制、切り下げを行わないこと。
2 国公正規労働者の最低賃金である初任給を引き上げ、職員の各年齢に応じた生計費増、公務員としての経験の蓄積や専門能力の高まりを十分考慮すること。また、公務に働くすべての労働者の賃金を底上げすること。
3 定期昇給の凍結や運用・制度改悪を行わないこと。
4 一時金については、4年連続となる支給月数の引き下げ改悪を行わず、「役職別傾斜支給」および「管理職加算」をやめ、期末手当に一本化すること。
5 一時金や寒冷地手当の支給方法について、一方的な改定を行わないこと。
6 扶養手当について、配偶者を中心とする廃止・削減の見直し検討を行わないこと。
7 「同一労働・同一賃金」の原則にもとづき、全国統一の賃金制度を堅持し、地域間格差を拡大しないこと。
8 標準生計費の水準や位置づけを抜本的に改善すること。
◎「チャレンジ30」スタート750万労働者と総対話を
▼この夏から、組織拡大4カ年計画「チャレンジ30」も、いよいよ本格的にスタートしますね。
▽小田川書記長
いま労働組合の組織率は20.7%で、中小企業では1.3%にすぎません。組織された労働者の役割はいっそう大きくなっています。
国公労連は、6月8日の第114回拡大中央委員会に向けて、組織拡大4カ年計画「チャレンジ30」を提起し、頼りになる産別センターとして「30万国公労連」の組織建設に挑戦することを呼びかけています。
人勧期のたたかいや、民主的公務員制度を確立するとりくみを通じて、職場組織の再構築・活性化をめざしつつ、人事院勧告の影響を受ける750万労働者との総対話と共同を職場・地域で、目的・意識的に強めましょう。
▼ありがとうございました。
|