●政府による一方的な見直し検討 −−進め方などに多くの問題点が−−
〇問題点・その1
公務員の退職金は9千万円−−マスコミから退職金は高いと言われるが
マスコミなどによる公務員の高額退職金批判は、史上初のマイナス人勧以後も、一段と高まるばかりです。
こうしたマスコミ攻勢は、もともと9000万円にものぼる指定職の高額退職金や、キャリア公務員の特殊法人等への天下りによる退職金の二重どり、三重どりにも原因があったはずです。
◆表1 国家公務員の退職手当(試算)
退職手当の額は、年齢、勤続年数などにより異なるため一概にはいえませんが、
次の4つのケースに基づいて試算すれば以下のとおり。
1 次官で、58歳で退職したケース
2 審議官クラスで、52歳で退職したケース
3 課長補佐で、60歳で退職したケース
4 係長で、60歳で退職したケース
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俸給の月額 |
勤続年数 |
退職手当額 |
1のケース |
指定職11号俸
(1,346,000円) |
36年
(22歳採用、大卒) |
9,115万円 |
2のケース |
指定職5号俸
(873,000円) |
30年
(22歳採用、大卒) |
5,514万円 |
3のケース |
行(一)8級20号俸
(462,000円) |
42年
(18歳採用、高卒) |
2,897万円 |
4のケース |
行(一)6級19号俸
(412,300円) |
42年
(18歳採用、高卒) |
2,585万円 |
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◆図3 退職手当の基礎額
総務省が発表した退職金の官民比較結果などの資料をみても、国家公務員の退職理由ごとの退職手当水準の差はキャリア層が多い「勧奨」と一般職員層が多い「定年」では水準の差は歴然です。
しかも、批判の多い指定職と民間役員層の退職金の比較は、今回は実施されていません。
◆図4 退職理由ごとの平均退職手当額
〇問題点・その2
不十分な退職手当の官民比較−−長期勤続が前提の企業との比較ではない
退職金の官民比較のやり方は確定していません。今回のやり方は、退職理由と勤続年数(20年以上)別平均退職金額を公務の人員構成を元にラスパイレス比較したものです。
これには、(1)長期勤続が前提の人事制度をとる企業との比較でないこと、(2)調査時点(1999年)の公務の退職者の退職理由別分布状況等にはまったく継続性がないこと、(3)学歴・退職理由のモデル比較なども加味した総合的検討の努力を放棄したこと、などの問題があります。
〇問題点・その3
退職手当は重要な労働条件−−不利益見直しにも関わらず労働組合に相談なし
国家公務員の退職手当の性格について、政府は「長期勤続報償、退職時の生活保障、賃金の後払いという性格を合わせもつが、とくに勤続報償の性格が強い」と主張しています。
民間の退職金は、賃金の後払いであり「労働の対償」としての賃金に相当することは明らかです。公務の場合、この賃金的性格を強めることが大きな課題です。しかし、仮に政府の主張を認めたとしても、退職手当が私たちの重要な労働条件の一つであることは事実ですから、その一方的な引き下げなどの不利益見直しは絶対に許せないことです。
ところが、政府は、今年度の人勧取扱の一環として退職手当について、その支給水準の見直しと関係法律の改正案を次期通常国会に提出するとの閣議決定をしました。これは、労働組合とはいっさい相談もないまま、一方的に決定したのです。制度上、退職手当は、人事院の所管とはなっていません。
これでは、退職手当については当事者である労働組合の交渉権が保障されず、その制約の代償措置もないということになってしまいます。
▼室井力・名古屋大学教授(当時)参考人発言より
(1981年10月参議院総務委員会)
国家公務員法には退職手当についての規定はございません。……つまり、公務員法にいう給与として退職手当を理解するかどうかについて法律が必ずしも明確な規定を持っていないと言えるように思うわけです。ただし、そうは申しましても、……国家公務員等退職手当法による退職手当は労働基準法11条に言う労働の対償としての賃金であるという点についてはほぼ異論がないかと思います。
……労働基準法11条−これは……当然に特別の異論あるいは合理的根拠を持った排斥理由がない限りは公共部門の職員にも当てはまりますのでして、この労基法11条に言う「賃金」であって公務員法上の「給与その他の勤務条件」の一種であるということが法律の上では言えるように思います。
〇問題点・その4
一部高級官僚の早期退職慣行に大きな問題が−−定年までの雇用保障は不可欠
公務員の退職手当は、公務の中立・公平性確保のための身分保障や、安定的な処遇確保とも不可分な制度でもあります。しかし、高級官僚を中心とする組織ぐるみの早期退職慣行が後を絶たないため、制度が歪められ、国民的批判の元にもなっています。
全体の奉仕者にふさわしい専門能力と使命感を備える公務員像と省ぐるみの早期退職慣行は絶対に両立しません。
希望者全員の定年までの雇用保障と安定的な生活保障制度の確立が不可欠です。
〇当面のたたかいは
政府宛の要求署名、早急なとりくみを
今回は支給水準(10%の水準調整)の見直しと、早期勧奨特別措置が中心となります。
しかし、これは現在進行中の能力・業績主義による公務員制度改革でさらに抜本見直しが必至です。その意味で今回のたたかいは今後の闘争の成否を左右するほどの重要性があります。
当面、
(1)政府宛の要求署名の達成(30万筆目標、11月末まで)、
(2)中高年層を中心とする「自筆ハガキ」(寄せ書き方式などの工夫も)行動(10月末まで)、
(3)職場段階からの「該当者」交渉や上申などの行動をやり抜き、使用者責任を徹底的に追及します。
また、秋のキャラバン行動や新聞投書などを活用しながら、世論への働きかけも重視します。
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