●「構造改革」に地域・職場から反撃を
〇政府、財界・大企業の横暴と正面から対決
小泉「構造改革」と財界・大企業によるリストラ・賃下げ攻撃は、国民の所得と消費をさらに落ち込ませ、企業の生産も低下させ、日本経済を深刻な「泥沼」に陥れています。
労働組合と国民諸階層の要求実現には、小泉「構造改革」や財界・大企業の横暴と正面から対決することが必要です。
▼経済状況―深刻化の一途
690兆円を超える国と地方の借金が増え続ける状況に加え、「構造改革」路線による景気悪化で税収減が進み、財政危機は深刻化の一途をたどっています(図3)。
2003年度の予算編成は、11月29日に閣議決定した「基本方針」に基づき、「国債発行を30兆円以内に抑える」という目標をもかなぐり捨て、大企業・大銀行へのバラまき路線が明確になっています。
ダム・空港建設など国民の批判を浴びている大型公共事業が、のきなみ温存され、軍事費も増額されています。
さらに、「株価」「不良債権」対策として、日銀による銀行保有株の買い取りなど、巨額な税金を使った銀行支援策も打ち出されています。
真の財政再建のためにも「構造改革」路線をストップさせることが必要です。
▼雇用状況―失業増加は必至
小泉内閣は「不良債権最終処理策」をいっそう加速させようとしており、90兆円にのぼる銀行の貸しはがし(着ているものをはがすように融資をうち切ったり減額する行為)は、数万にも及ぶ中小企業の倒産や300万人を超える新たな失業者を発生させるものです。
一方で大企業は「儲けのためなら」と、地域経済を無視した工場の海外移転、労働者の首を切り雇用不安に陥れるリストラ「合理化」の強行、国民の生活基盤を支える社会保障制度なども「コスト削減」の対象とする状況が強まっています。
いまこそ大企業に、(1)労働条件や雇用に対する責任、(2)中小企業の経営安定に対する責任、(3)地域の経済を守り活性化させるための責任、などの社会的責任を果たさせるべきです。
▽増え続けるパート労働者
「官から民へ、国から地方へ」という「構造改革」の流れのなかで、国立病院・療養所の統廃合・移譲、独立行政法人化や国立大学の法人化など、公務や公共サービス部門の減量化が進んでいます。そのことが、社会的サービス分野での雇用の縮小や不安定雇用者の増大に結びついています。
また大企業は、「人件費が割安だから」という理由で、パート労働者など、不安定労働者を増大させており、(図4−1、4−2)さらに、安上がりな労働者を確保するため、労働法制の改悪も狙っています。
▽働くルール確立させよう
増え続ける業務、減り続ける人員、霞が関「不夜城」では、深夜におよぶサービス残業が恒常的となっており、「7人に1人が100時間以上の残業」というアンケート結果も出ています(霞が関国公調べ)。
公務と民間、正規雇用とパートを問わずすべての労働者にとって、雇用を守り、人間らしく「働くルールの確立」が2003年春闘でも重要となっています。
〇社会保障の充実は国の責任で
政府・厚生労働省は、2003年4月からサラリーマンの窓口3割負担を実施しようとするなど、社会保障費の一層の削減を強めています。
不況の時こそ国の責任で、社会保障制度を充実すべきです。
政府・与党3党は、3000万筆にも及ぶ署名や多くの国民の声に背を向け、健康保険改悪法を成立させ、さらに、2003年度予算では社会保障費を2200億円もカットしようとしています。2003年4月以降、健康保険料(政府管掌健康保険)、介護保険料、年金保険料(厚生年金)、雇用保険料の引き上げ阻止は何としてもの要求です。
10月からの医療制度改悪で、高齢者の窓口1割負担が実施されたことにより、「いくらかかるか心配で病院に行けない」という声も聞こえてきます。
▼庶民には大増税配偶者特別控除の廃止許すな
小泉首相の諮問機関である「政府税制調査会」は、11月19日に「2003年度税制改正答申」を発表しました。「答申」は、経済情勢を踏まえて減税を先行させるとしていますが、減税項目は、財界が要求してきた法人税の研究開発費減税など大企業向けのものばかりです。
個人に対する税制では、配偶者特別控除や特定扶養控除の廃止・縮減で所得税の増税をはかり(図5)、発泡酒などの税率引き上げまで狙っています。
2003年4月以降の社会保障制度の改悪に加え、さらに配偶者特別控除が廃止されれば、年間10万円を超える負担が国民に押し付けられることとなります(図6)。
〇公務員制度「改革」阻止 −−ILO勧告を糧に「大綱」の撤回を−−
政府は、来春の通常国会に国家公務員法「改正」案などを提出しようとしています。
2002年11月に出されたILO「勧告」は、公務員制度「改革」の進め方を厳しく批判し、国際労働基準に沿った国内法の整備を求めています。
この「勧告」も糧に、「構造改革」による悪政反対の国民的運動とも結合させながら、「大綱」の撤回を政府にせまっていきます。
11月21日にILO理事会で採択された結社の自由委員会の勧告では、日本の現行の公務員制度そのものがILO87号条約、98号条約に違反していると明確に判断しました。
また「勧告」では、公務員制度「改革」に関わって、労働基本権の制約を維持するという日本政府の考え方に対し、「再考」を求めるとともに、ILO条約の原則に合致させる法改正を要請しており、関連法案の写しの提出なども求めているなど、日本政府に対しては厳しい内容です。
▼国公法「改正」法案、能力等級法案、新給与法案の3法案の検討を進める
日本政府は、今回のILO「勧告」に対して、「我が国の実情を十分理解し判断したものと言えず、承服しがたいものと考えている」(総務省見解)としており、行革推進事務局は、当初のスケジュールに固執して作業を押し進めています。
11月26日の交渉では、行革推進事務局が突然、国家公務員法「改正」案、能力等級法案、新給与法案の3法を同時に通常国会へ提出するという考え方を明らかにしました。
行革推進事務局は今後、「法案提出の進め方やその内容についても誠実に対応する」としていますが、3つの法案の通常国会提出に向け、評価制度の試行を急いでいるなど、加速度的に検討を進めていることは明らかであり、たたかいは正念場を迎えています。
ILO(国際労働機関)関係の用語解説
●結社の自由委員会
ILOの専門家委員会のひとつ
●ILO87号条約
(結社の自由及び団結権保護条約) 1948年採択
すべての労働者及び使用者に対し、事前の許可を受けることなしに、自ら選択する団体を設立し、加入する権利をさだめるとともに、団体が公の機関の干渉を受けずに自由に機能するための一連の保障を規定する条約。
日本は1965年6月14日批准
●ILO98号条約
(団結権及び団体交渉権条約) 1949年採択
反組合的な差別待遇からの保護、労使団体の相互干渉行為からの保護、団体交渉奨励措置を規定する条約。
日本は1953年10月20日批准
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▼地域の公務員給与の見直しは……
人事院は、9月30日に学識経験者などを中心に「地域に勤務する公務員の給与に関する研究会」を設置し、12月に「論点整理」、2003年3月に「中間報告」、5月には基本報告を出す日程で検討を進めており、2003年の人事院勧告に向けた重要課題となることが予想されます。
地域に勤務する公務員の賃金の見直しは、同一労働同一賃金という公務員賃金の一つの基準をないがしろにし、本府省優遇、地方出先切り捨ての危険性を持っています。
同時に、公務員賃金の社会的影響を踏まえれば、地域経済にも大きな打撃を与えることとなります。
地域間給与の格差拡大に反対の立場を明確にし、公務員制度「改革」反対とも一体で、改悪強行をゆるさないとりくみが必要となっています。
▼退職手当問題は……
総務省は、12月9日の交渉で、民間退職金支給実態調査の結果にしたがって、退職手当法附則に定める「調整率」を100分の10から100分の4に引き下げるなどの見直しの骨子を明らかにしており、通常国会の冒頭にも法案が提出される状況が強まっています。
賃金の引き下げが続くなかで、2004年の年金再計算による支給額の削減も予定されています。
賃金も、退職手当も、年金もマイナスという流れをくい止めるたたかいが必要となっています。
〇「賃下げの悪循環」をストップさせよう
「マイナス勧告」「賃金引き下げの4月遡及」などを内容とする2002年人事院勧告の影響が、深刻な状況で表れています。
地方自治体の人事委員会勧告では、「国準拠」が相次いでおり、特殊法人の多くでも「人事院勧告準拠」の賃金改定の提案がされています。
さらに、坂口厚生労働大臣は、「公務員も給与が下がるといったような事態となれば、それは年金生活者のみなさんにもお願いしなければならない」と、年金の物価スライド凍結解除(=給付額の引き下げ)を行うとしています。
2003年春闘では、財界と政府が一体となっての「賃下げの悪循環」(図7)に歯止めをかけるため、官民共同のとりくみを強めることが必要です。
〇国民の中へ、国民とともに、すべての人々と共同しよう
2003年春闘勝利をめざし国公労連は、全労連、国民春闘共闘委員会に結集し、「国民総決起春闘」の一翼を担って奮闘することを呼びかけています。
全労連・国民春闘共闘委員会は、小泉「構造改革」があらゆる国民に耐え難い激痛をもたらしているもとで、「雇用、くらし、いのち、平和の安心へ」〜あらゆる職場・地域から国民総決起春闘を〜との方針を提起しています。
国公労連は、2003年春闘では、(1)雇用、いのち、くらし破壊の行財政改革反対、(2)賃下げ、不況の悪循環に歯止めを、(3)すべての職場での要求書提出など職場のたたかい強化で働くルール確立・前進を、(4)「自らの労働条件は自ら参加して決定」の国際労働基準の実現を、(5)「チャレンジ30」の実践で職場・地域で頼りになる労働組合へ、の5つを柱として、「国民の中へ、国民とともに」を基本に、国民本位の行財政・司法の確立を目指してたたかいを進めていきます。
職場を基礎に地域から国民的要求を掲げてたたかううえでは、地方・地域における産別センターであるブロック国公、県・地区国公に結集したとりくみが重要となっています。
▼地域のとりくみに結集し要求を実現させよう
2002秋闘でとりくんだ「ブロック連鎖キャラバン行動」や「行政相談活動」などのとりくみを通じて「国民との対話と共同」が進んでいます。
国民生活と地域経済を悪化させる公務員賃金の切り下げ反対のとりくみでは、大阪での3000人集会や愛知県の官民共同アピールなど、世論と運動は大きく前進しました。
4月には統一地方選挙が実施されます。労働者・国民の要求を実現するうえでは、政治の民主的転換が求められています。立候補者の政策や実績、政治姿勢などをしっかりと見極め、国民の権利である選挙権を行使することが大切です。
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