●許すな!雇用・賃金・年金破壊 守ろう!平和と憲法
−−04春闘討論集会討議資料−−
小泉内閣は、雇用・賃金・年金の一層の改悪を、財界・大企業といっしょになっておしすすめようとしています。その上、憲法をふみつけにして、海外での武力行使を現実のものとする自衛隊のイラク派兵を国民の反対も無視して強行しようとしています。こうした悪政をはねかえし、私たちの要求を実現するために、04春闘で仲間の力をあわせて国民共同を大きくする必要があります。04春闘をたたかうにあたってのポイントについて、国公労連の小田川書記長にインタビューしました。
●04春闘はどんな情勢でたたかわれるのでしょう?
【国公労連・小田川書記長】
一言でいえば、国民の暮らしと、この国の平和・民主主義にとって、崖っぷちのたたかいが求められる、そんな情勢だと思います。
○目の前にせまっている「戦争する国」づくり
一つは、平和の問題です。今の政府は、アメリカが引きおこす戦争に、自衛隊を参加させることを最優先しています。有事法制やイラク派遣法、さらにはテロ特措法の延長などが次々に強行され、先の総選挙では、自民党が「憲法改定」を公約に掲げる段階にまできています。
当面の焦点であるイラクへの自衛隊派兵には、世論調査で8割近くの国民が「不支持」を表明していますが、聞き入れようともせず、12月9日、イラクに自衛隊を派兵する「基本計画」を閣議決定しました。これには、米英占領軍への支援が明記され、対戦車弾などで武装した自衛隊が戦場≠フイラクで武力行使する事態を想定したものとなっています。こんな憲法違反を許すわけにはいきません。計画が決まっても派兵はこれからです。憲法を守れの声を広げることが大切です。
自民党憲法調査会は、すでに憲法第9条関連部分の「改憲要綱案」をまとめています。その内容は、徴兵制さえうかがわせるものです。遠い将来の問題ではなく、目の前で「戦争する国」づくりが着々と進んでいるのです。
○国民生活を破壊しつづける小泉改革
二つには、「改革なくして成長なし」とくり返す小泉内閣のもとで、国民の生活はズタズタにされてきました。「いつまで痛みに耐えればいいのだ」という国民の声に小泉首相は耳を傾けようとはしません。そればかりか、財界に押されて、年金をはじめとする社会保障の改悪や、庶民増税、医療、教育、労働法制などの規制改革をもっと進めようとしています。
国民経済の6割を占める個人消費が冷え込んだままでは、国内経済を疲弊させることは誰の目にも明らかです。小さくなるパイを一部の「勝ち組企業」が分けあい、労働者・国民の貧困化が進む、そんな事態が迫っています。
三つには、アメリカの軍事戦略や、弱肉強食の「グローバル化」に対抗する動きが国際的に強まり、それが日本にも影響しはじめていることです。WTO閣僚会議の失敗、イラク戦争に反対する圧倒的な国際世論の高まり、企業の社会的責任を厳しく問う規制強化など、この1年でも顕著な動きがあります。
国内でも、医療改悪反対やイラク戦争反対などで広がった国民的な共同は、総選挙で「自民党政権を変えたい」とする動きにつながっています。アメリカ追従、大企業本位の政治を変えたい、そのうねりは確実に大きくなっています。ここに目を向けて、運動を進めたいと思います。
●年金改悪反対のとりくみを最重視するのはなぜですか?
【小田川書記長】
5年ごとに支給開始年齢が引き上げられたり、給付額が引き下げられたこともあって、年金制度への不信が強まっています。
今年の通常国会で、生命保険の予定利率の引き下げが認められ、私的年金でも契約時の支給額が引き下げられました。また、雇用、賃金の破壊が進むもとで、貯蓄も減少しています。自助自立といっても簡単ではありません。
一方で、誰もが老いは避けられません。勤労所得がゼロになる老後の生活保障をどのように行うのか、憲法第25条の生存権ともかかわる重要な問題ですし、税金の使い方や国の役割、「国のかたち」を問う課題です。行政サービスを担う公務員労働者として、避けてはならない課題です。
○政府の年金改悪で矛盾は一層深刻に
政府が検討している年金改悪の最終案は、12月中に決まる状況ですが、(1)保険料を段階的に引き上げる、(2)年金給付額を自動的に2割弱引き下げるしくみを作る、(3)パート労働者も強制加入させる、などが内容となっています。なお、財務省は財政事情から、財界は企業負担面から、それぞれ保険料負担増に反対し、一層の給付引き下げを主張しています。若い世代ほど、負担が大きく給付が少ないという「矛盾」は、まったく解消されません。
現行の年金制度の問題ははっきりしています。それは、年金空洞化といわれる点です。掛け金が高くて払えない人たちが国民年金だけで4割に達しています。20代の青年層だけで400万人のフリーター、年々増加する非正規労働者、貧困ラインといわれる年収230万円以下の労働者が1000万人、などの実態を考えれば、最低でも25年掛け金を払い続けなければならない今の年金制度では、早晩破綻しかねません。
財界などは、年金財源のために消費税率を上げろ、といっていますが、本音は企業の税金負担を引き下げたいという点にあることははっきりしています。
○大量宣伝・署名行動の先頭に立とう
「100年持つ年金改革」ではなく、年金制度の破綻の道につながる年金改悪、企業の「儲け確保」、国民生活をさらに苦しめる年金改悪は、断じて許してはならないと思います。
そのことから、署名やビラを武器に、政府がねらう年金改悪の問題点を広く訴え、反対運動を広げる先頭に立ちたいと思います。2月に集中した宣伝・署名行動期間を設けるとともに、4月には拠点を設定した「休暇行動」を提起しています。
●規制緩和、定員削減、独法化等、公務リストラが強まっていますが
【小田川書記長】
小泉内閣になって、公務リストラの攻撃が一層強まると同時に、労働条件切り下げをともなうなど、乱暴になっていると思います。私は、その背景に、「官から民」、「民間にできない分野はない」と豪語して進められている規制緩和(改革)の動きが、強く影響していると思います。
○国立病院職員の雇い止めは国家的な不当労働行為
とりわけ、現段階で象徴的なのが、国立病院職員の雇い止め(解雇)問題です。10年、20年と働いてきた「賃金職員(非常勤職員)」を、独立行政法人への移行という組織改変を契機に「解雇」することは、国家的な不当労働行為です。民間企業でも会社分割の際には、雇用・労働条件を承継するのが原則になっています(雇用承継法)。会社(法人)分割と同じ効果を持つ独立行政法人化にあたって、国が率先して首切りリストラや労働条件切り下げをおこなうのでは、労働者の権利は守られません。
○「1の日行動」、厚労省包囲行動などをやりきろう
また、雇用が承継される常勤職員でも、大幅な賃下げ提案もおこなわれています。さらに許せないことは、賃金職員問題では「管理運営事項」を口実に、賃下げなどについては公務員労働者に労働協約権が認められていないことを口実に、一方的な不利益変更をおこなおうとしていることです。「法の網をかいくぐる」脱法行為のオンパレードです。
春闘期、「1の日行動」や厚生労働省包囲の中央行動、施設長への申し入れ行動など、できる運動をすべてやりきる構えで、たたかいを展開することとしています。
○国立大学の仲間への支援行動の強化を
なお、4月から法人化される国立大学でも、同様の事態がおきることが懸念されています。県国公段階での支援行動などの強化を図りたいと考えています。
さらに、公務員型独立行政法人の非公務員型への「改組」、労災保険制度の民営化、道州制論議ともかかわる地方出先機関のあり方問題、定員削減の強化など、課題が山積しています。
○「点検、告発」で行政民主化進めよう
個々の課題で、リストラの問題点を点検・告発する行政民主化の取り組みを強めるとともに、公共サービスまで「商品」扱いする規制改革の弊害を明らかにした「白書」を作成し、国会対策を強めることとしています。
●公務員制度改革の動きはどうなるのでしょうか?
【小田川書記長】
政府・行革推進事務局は、7月に公務員制度改革法案の閣議決定をめざしましたが、ILOからの二度の「中間報告・勧告」も背景に、労働組合が一致してたたかったこともあって、それを断念させました。
推進事務局の態勢は変わりましたが、「公務員制度改革大綱」(2001年12月閣議決定)にもとづく法案作業をやめたわけではありません。政府がねらう公務員制度改革は、(1)労働基本権制約を維持したままで、各省の人事管理権限を強化、(2)当局が恣意的に運用できる能力・実績反映の人事管理を強化、(3)「天下り」や「キャリア特権制度」は温存、などの内容です。
○基本権制約、人事管理強化にあくまで固執
とりわけ、労働基本権制約の現状維持とあらたな評価制度のもとで賃金、昇格などに差をつける人事管理制度の導入の2点には固執し続けています。
先の総選挙で、自民党は「2004年中の法案提出」を公約に掲げており、通常国会にも法案提出の動きを強めてくることも考えられます。
キャリア特権制度にもみられるよう、今でも公務の人事管理は「能力主義」であり、「差をつける人事」が行われています。また、2年連続の不利益遡及強行にもみられるよう、労働条件決定への関与が限られ、無権利状態におかれています。「軍隊的な上からの人事管理」、「もの言えぬ職場」の弊害は、例えば名古屋刑務所事件にもみられるように、国民の人権侵す事態まで引きおこしかねません。
「労働基本権先送り」の公務員制度改革を許さず、能力・実績主義強化にむけた評価制度の一方的導入に反対する運動を春闘期にも強めることとしています。
職場段階からの使用者追求・交渉強化、民主的公務員制度確立を求める地方議会請願などを引き続きとり組むとともに、国際労働基準(=ILO条約・勧告)の遵守を求める署名運動を3月段階から開始することとしています。
●賃金・労働条件改善のとりくみはどうですか?
【小田川書記長】
「春闘は大勢において終焉した」と財界が宣言するもとで、厳しいたたかいになると考えています。
2年連続のマイナス勧告で、3%をこえるベースダウンが行われていますから、どんなに厳しくても、生活改善を求める組合員のベア要求を正面に掲げ、使用者・政府に回答を迫る原則的なとりくみは大切にしたいと思っています。
○賃金底上げで賃下げ競争に歯止めかけよう
同時に、民間における賃金低下は、賃下げだけではなく、成果主義賃金導入など賃金体系・制度の改悪や正規労働者の非正規労働者への「置き換え」などによっても起きています。
また、財界が産別最低賃金の廃止や地域最低賃金の引き下げを主張しはじめるなどの状況もあります。これらの点をふまえれば、非正規労働者の賃金実態にも目を向けた「賃金底上げ」のとりくみを強める必要があります。底抜け≠フ状態では、「賃下げ競争」に歯止めがかからないと考えるからです。
全労連が提起する最低賃金署名などを積極的に展開するとともに、公務の初任給の引き上げ、非常勤職員も含めた最低賃金水準の引き上げを使用者・政府にも迫りたいと思います。
また、03年勧告で、人事院が、「地場賃金への準拠」を前提とした俸給表構造の見直しや諸手当の「見直し」、さらには能力・実績反映の給与制度検討などを打ち出していることもふまえ、賃下げとなる給与制度、諸手当「見直し」の一方的強行に反対するとりくみを強めたいと考えています。
当面、寒冷地手当の支給地域・支給水準「見直し」など、地域関連手当が先行する状況もふまえ、地域での共闘会議結成など、たたかう態勢を早期に固めることを提起しています。
賃金課題以外にも、サービス残業撤廃の課題や、育児休業制度改善の課題、再任用制度の運用改善課題あるいは旅費や宿舎関連の課題、裁量勤務時間制や非常勤職員制度改善要求など、多岐にわたる取り組みが04春闘から夏にかけて浮上する状況です。全国の仲間の知恵と奮闘で、要求実現をねばり強く追求したいと考えています。
2004年国民春闘の主な行動展開(案)PDF(120 KB)
●04春闘での行動展開のポイントを教えてください
【小田川書記長】
行動展開図(※PDFファイル121KB)にあるように、04春闘では、さまざまなとりくみを実施します。
これらのとりくみを成功させるためには、すべての組合員が職場・地域で力をあわせることが必要です。1月中を基本に全国300カ所、1万人の参加目標で04春闘討論集会を開催し、まず要求実現に向けた討議、学習、意思統一をはかります。
以下、国公労連の全国統一行動を月別に紹介します。
○1月のとりくみ
ビクトリーマップ大企業包囲行動を
◇春闘スタートのとりくみとして、1月上旬から、トヨタに焦点をしぼったビクトリーマップにもとづく新春宣伝行動を行います。
◇1月21日には、第1波全国統一行動として、大企業に対する全国的な包囲行動、国立病院要請行動などをとりくみます。
○2月のとりくみ
要求書提出、上申闘争
2・25「1日総行動」
◇2月9日から13日までを第2波全国統一行動として、すべての職場で所属長に要求書を提出し、上申闘争を展開します。
◇年金改悪反対の課題を中心に、2月25日を第3波全国統一行動「1日総行動」とし、全組合員参加をめざしたビラ配布、署名、宣伝行動にとりくみます。この日の行動も含め、自治体・地方議会、地元選出国会議員要請行動を「キャラバン方式」も含めて、集中的に全県で展開します。
○3月のとりくみ
「目に見える行動」早朝職場集会
◇政府回答指定日を3月18日とし、この日を第4波全国統一行動日に設定し、統一要求前進と春闘解体に反対する国公労働者の決意を内外に示す「目に見える行動」として、屋外を基本にした早朝職場集会を開催します。
○4月のとりくみ
4・15年金ストに呼応し「休暇行動」
◇4月15日、全労連は04春闘における最大の全国統一行動として、「4・15年金ストライキ」を配置しています。国公労連は、これに呼応して、第5波全国統一行動として「休暇行動」(主要100都市を「拠点」に、組合員の1割以上を休暇動員した終日の宣伝行動等)にとりくみます。
○春闘をたたかいながら組織の拡大・強化を
◇春闘をたたかいながら、組織の拡大・強化をはかり、非常勤職員の組織化など「チャレンジ30」の着実な前進をめざします。
◇全労連の「組織拡大推進基金」の職場段階での討議を強め成功をめざします。
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