国公労新聞 第1176号

●「給付50%確保」「保険料に上限」はウソ、閣僚の未納・未加入
  年金改悪法案は廃案しかない

 自民党、公明党と民主党が「三党合意」にもとづき5月11日、衆院本会議で年金改悪法案の採決を強行しました。

 ○国民の7割が今国会成立反対

 『朝日新聞』が15、16日に実施した世論調査(17日付で報道)では、「今の国会で年金改革法案を成立させるべきではない」が70%、「成立させるべきだ」はたったの16%でした。
 国民世論から「ノー」を突きつけられる法案を、公聴会も開かず、審議をつくさないまま、衆院を通過させた、自民党、公明党、民主党の責任は重大です。

 ○消費税増税に道開く「三党合意」

 当初、民主党は法案に反対していたにもかかわらず、年金改悪法案の問題点を一切修正することなく、2007年3月をめどに年金の一元化を含む社会保障制度全般の見直しの結論を得るなどを法案の付則に明記するという「三党合意」で衆院通過に手をかしました。「三党合意」は、年金だけでなく、医療、介護を含めた社会保障制度全体の財源に消費税をあてようとする内容も含んでいます。

 ○ウソとごまかしの年金改悪法案

 政府・与党は、「百年安心」の「年金改革」として「給付は現役世代の平均収入の50%を確保する」「保険料は上限を設けて固定する」と宣伝してきました。ところが、給付が50%確保されるのは、年金を受け取り始めたときだけで、その先はどんどん減っていくということが明らかになりました。保険料についても名目賃金が上がれば、保険料も上げるということをかくしていました。いずれもこの間の国会審議のなかで明らかとなったもので、政府は当初からの説明をさけていました。
 ウソとごまかしの年金改悪を強行することは許されません。

●政治的な圧力が急速に強まる給与制度「改革」
  −−経済財政諮問会議、財政制度審議会等が画策

 4月21日の経済財政諮問会議の会議録によれば、小泉首相が「(地方公務員の賃金水準準拠は、国ではなく)ブロックで分けないの」と発言し、これを受けて谷垣財務大臣は「地方にいる国家公務員の(賃金水準)問題もある」と述べています。
 経済財政諮問会議は、6月初旬にむけて「骨太方針2004」の取りまとめをはじめています。民間議員が5月11日に提出した「重点意見」では、「地方行革の推進(地方公務員の給与水準見直し等)」、「地域における国家公務員給与の在り方を早急に見直す」こと、などが明記されています。
 また、5月17日に財政制度審議会が建議した「平成17年度予算編成の基本的考え方について」でも、歳出改革の重点として「公務員給与の在り方について、地域における民間給与の実情等がより一層反映できる仕組み」への「早急な見直し」を求めています。人件費抑制を目的に、地域に働く公務員の賃金切り下げを求める政治的な圧力が急速に強まっており、予断が許せない状況です。
 人事院は、昨年勧告で、「地域に勤務する公務員の給与に関する研究会」報告も受けて、俸給表構造の見直しや地域手当の再編をはじめとする給与制度「改革」にふみだすことを明らかにし、その突破口としての寒冷地手当改悪作業を進めています。
しかし、経済財政諮問会議などが、給与制度「改革」のスピードアップを求める状況は、04年勧告で、寒冷地手当改悪にとどまらない給与制度「改革」が急浮上する危険性を示しています。労働条件の中心である賃金について、政治的な圧力に屈した拙速な「改革」を許さないたたかいの態勢づくりが必要です。

●平和行進スタート
  −−青年だけの隊列初登場
    国公・田山青年協議長がギターでピースウォーク


 5月6日、原水爆禁止国民平和大行進(東京→広島コース)が東京・江東区の第五福竜丸展示館前から被爆地・広島に向けてスタートしました。今回初めて青年だけの隊列が登場し、先頭のトラックにドラムとキーボードとアンプをのせ、国公労連の田山青年協議長などがギターを演奏しながら派手にアピールしました。
 出発集会では、今国会での成立が狙われている有事関連法案に対する怒りの声が多くの方から出されました。関連法案は、海外で武力行使する米軍への自衛隊による弾薬提供が可能となることや、日本が武力攻撃を受けていない段階から自治体や民間事業者が迫られる米軍支援の内容に限定がないなど広範な国民の強制動員が盛り込まれています。核兵器の廃絶、平和を守れ、軍事大国化反対を、平和行進で訴えましょう。


●男女平等はよりよい社会づくりへの最先端の課題
  −−公務における男女共同参画の実現をめざす交流会ひらく

 4月24日、国公労連は「公務における男女共同参画の実現をめざす交流会」を84名の参加で開催しました。
 交流会は、神戸女学院大学・石川康宏教授の「男女平等は労働運動の戦略課題――財界は家庭をどう管理しているか」と題する記念講演から始まりました。

 ○「夕方のパパはボクのもの」−−財界による家庭管理に抗して

 石川教授は、「男女平等」はいわゆる「オンナ問題」「遅れを取り戻す運動」ではなく社会全体を発展させる最先端の課題であり、財界が家族まで含めて管理をしているなか、労資の力関係をつくりかえていく上で重要な課題であると冒頭で述べ、要旨次のように講演しました。
 現代の女性は、働かねばならない男性と違って、働くのか、結婚するのか、親と同居するのか、子どもは?など多様な選択肢がある。働くことを選んでも仕事と家庭の両立の大変さ、自立への願いとそれを妨げる力との衝突が起こっている。企業戦士、労働戦士の男性が家庭を顧みない(みれない)なかで女性が多くの責任を負わされている。職場の問題が解決されても女性の問題は半分しか解決されない。
 労働組合には、女性の多様な運動の断片性を否定するのではなく、尊重しあい束ねあう力量が求められている。
 平等をめざす国際世論は「男女共同参画社会」を求めているが、国内では男なみ平等へのすりかえ(丈夫なオンナは男なみ)がすすめられている。
 これからの労働運動は、職場と家庭を視野に入れることが必要。ヨーロッパでは「夕方のパパはボクのもの」というスローガンで、家庭を大切にして働ける社会をめざしている。
 よりよい社会をつくるために、男女ともに学び、たたかい、労働組合の力量を高めよう。

 ○各職場、各階層から職場の実態が語られる

 つづいて小田川書記長の基調報告のあと「国公職場における男女共同参画の状況の交流」として、各職場、各階層から▽本省係長層では昇任・昇格は改善されてきているが、経験不足、働き方の問題などまだまだ課題は多い。▽青年層からは、今は問題は少ないがこれから先同じような働き方を続けるとしたら不安が残る。▽長時間・長距離通勤が女性の昇任を遅らせている現状がある。▽育児中の働き方の現状、男性の育児休業取得者の「奮闘談」では、子どもを真ん中に男性も女性もお互いを理解し協力し合うことが大切、という報告がありました。
 共同参画の課題での集会は第1回目ということもあり、それぞれの職場での実態の交流にとどまりましたが、引き続きこの課題を追求していくことを確認して集会を終わりました。


●国公法弾圧を許さず言論・表現の自由を
  守る会を結成、宣伝等とりくみ進める

 休日に一市民として「しんぶん赤旗」号外などを配布した国公労働者が、「国家公務員法違反」だとして不当逮捕・起訴された事件で、「国公法弾圧を許さず、言論・表現の自由を守る会」が4月22日に発足しました。
 結成総会には国公労連各単組をはじめ75団体170名が参加。同会では、東京地裁に「門前払いを求める」署名や東京地検前での公訴取り下げを求める宣伝行動にとりくんでいます。

 ○憲法と世界人権規約に違反する弾圧行為

 今回の不当逮捕・起訴は、思想・信条の自由、表現の自由を保障した憲法と世界人権規約に違反する政治的な弾圧行為です。
 現行の国公法と人事院規則は、1948年7月のマッカーサー書簡に基づく政令201号と当時の国公法改悪に由来するものです。
 日本国憲法(1947年5月3日)が施行された直後は、公務員労働者にもストライキ権と政治活動の自由が認められていたのです。

 ○欧米では公務員の政治活動は自由

 1948年7月1日の国公法施行からわずか21日後の7月22日、生活苦のなかで、賃上げストに公務員労働者が立ち上がろうとした時、アメリカは連合軍最高司令官マッカーサーの書簡を芦田首相に送りました。公務員のストライキ権を否認し、国公法の「改正」を求めたのです。これを受けて政府は、7月31日に公務員のストライキ禁止の政令201号を公布し、即日施行しました。
 そして政府は、11月の国会に国公法「改正」案を提出し、国会でのまともな審議もなく11月30日に成立させ、12月3日にただちに公布・施行しました。
 この国公法「改正」でストライキの禁止と同時に、102条で「人事院規則で定める政治的行為をしてはならない」と規定して、広範な政治活動を禁止し、それに違反した者に刑事罰まで設けたのです。
 現行の国公法は、憲法違反の占領時代の負の遺産なのです。欧米などの先進国では、公務員の政治活動を禁止し、その違反行為に対して刑事罰を科すなどしていません。フランスやドイツでは、公務員の政治活動は勤務時間外は自由で、在職のまま政党から選挙に立候補することも可能です。

 ○30年以上なかった国公法違反での起訴

 いままで、国家公務員が政治的行為を理由に国公法違反で起訴されることは、30年以上にわたってありませんでした。それは、勤務時間外の居住地での一市民としての政治活動については、猿払事件最高裁大法廷判決(1974年11月)で政治的行為を制限した国公法と人事院規則が合憲とされたものの、下級審でのたび重なる違憲・無罪判決や人権侵害を許さない労働者・国民のたたかいもあって、その適用が不可能とされていたからです。
 今回の弾圧事件は、警察と検察がこうしたルールを破り、休眠状態であった国公法と人事院規則で逮捕・起訴し、有罪判決で国家公務員の政治活動を全面的に禁止するために仕組んだ計画的な行動だといえます。

 ○“もの言わぬ公務員づくり”は許さない

 こうした背景には、自衛隊の海外派兵、憲法改悪をすすめるために、公務員労働者・労働組合のたたかいを押さえ込み、公務員制度「改革」と連動した、“もの言わぬ公務員づくり”のねらいがみえかくれします。
 7月20日から東京地裁で公判がはじまります。
 この裁判には、無罪を勝ちとり、公務員の市民的、政治的自由を獲得するのか、有罪によって有事法体制、憲法改悪をすすめさせるのか、という日本の未来がかかっています。
 民主的な公務員制度を確立するためにも、ILO勧告にそった労働基本権回復と公務員労働者の市民的・政治的自由の確立をめざして一体でたたかうことが重要です。


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