国公労新聞 第1179号

●小泉内閣、ルール破りの暴走
  「ブロック別賃金」導入で公務員給与大改悪ねらう

 国家公務員賃金に地域間格差を直接持ち込もうとする動きに対し、6月16日、国公労連は緊急の総務省交渉を行いました。
 6月4日、政府が決定した「骨太方針2004」は、「人事院においては、地域における給与の官民格差を踏まえて、地域における国家公務員給与の在り方についての検討を行い早急に具体的措置を取りまとめるよう、要請する」と言及しています。

 ○地域別の俸給表を検討

 交渉で総務省は、「『地域における官民格差を踏まえて』の趣旨は、調整手当等の手当の見直しにとどまらず、地域別の俸給表の導入」を視野に入れ、「『早急に具体的措置を取りまとめる』とは、本年夏の人事院勧告において、第一歩となるような具体的措置の勧告を要請した意味」だとする「解説」を、「骨太方針2004」の取りまとめにかかわった内閣官房が行っていることを回答しました。
 このような形で、使用者である政府が公務員の賃金決定に圧力をかけることは、労働基本権無視の暴挙です。総務省は、「閣議決定は、文言以上でも以下でもない」、「人事院の勧告を待つ」とも回答していますが、政府のルール破りは明らかです。

 ○人事院勧告制度さえ否定するルール破り

 5月31日の参議院決算委員会では、「地方で働いていらっしゃる国や地方の公務員の格差にきちっと反映されているか」とする質問(自民党・林芳正議員)に対し、「(公務員の給与についても)地方に合った給与体系というものを考えていいんじゃないか」との答弁を小泉首相が行っています。使用者を代表する内閣総理大臣が、地方に働く公務員の賃金を引き下げる「旗振り」を行っていることを背景に、04年勧告に向けて、「国家公務員―基本給に地域差反映」(『読売新聞』6月13日付)の動きが急浮上しているのです。
 このような政府の動きは、(1)国家公務員労働者の労働基本権を不当に制約し、政府自らが、その「代償措置」としている人事院勧告制度さえ否定するものであること、(2)2002年7月の政府要望もうけて、人事院が設置した「地域に勤務する公務員の給与の在り方研究会」でも、「ブロック別俸給表」なるものは、職務給にもとづく同一労働同一賃金の現状にそぐわないとされているという事実を無視していること、など極めて意図的なものです。ルール破壊を「改革」と言いかえる小泉内閣ならではの暴挙です。
 国公労連は、交渉で、「骨太方針2004」の不当性を追及し、公務員給与への言及部分の撤回を強く主張しましたが、政府・総務省は頑として受け入れませんでした。国公労連は、引き続き政府追及を強めることとしていますが、職場段階から政府への抗議の声を集中するとともに、小泉内閣の「暴走」の事実を職場・地域に広げていくことが大切になっています。最低限のルールさえ守ろうとしない政府への怒りの追及を強めましょう。

●寒冷地手当も大改悪
  人事院が大幅な地域削減を提示
 人事院は6月15日、国公労連に対し、北海道以外の寒冷地手当の支給対象検討地域を具体的に明らかにしました。
 人事院は、平均気温と最深積雪の2つの「気象データ」で、北海道の市町村と同程度の寒冷度を有する本州の市町村を支給対象として考えられないか検討していると説明。
 具体的には、「権衡地域の考え方」で示す平均気温または最深積雪が同程度であれば手当の支給を検討するとして、青森県青森市から岡山県上齋原村までの106地域をあげています。
 現在、本州での寒冷地手当支給地域は、約380地域であり、106地域はわずか28%です。
 この説明を受けて、国公労連側は、「平均気温は北海道よりやや高めでも、北海道より最深積雪が相当ある地域も存在している。民間準拠と気象データの2つのみで決定していいのか。納得できない」と主張。人事院側は、「引き続き議論していきたい」と回答しました。

●人事院に人勧期要求書提出

 国公労連は6月15日、「2004年人事院勧告にむけての要求書」を人事院に提出し、今夏勧告にむけた交渉をスタートしました。

●参院選挙特集3〈ちひろ&健太TALK)
  私たちの願いかなう政治つくろう

 ちひろ 6月24日公示、7月11日投票で参議院選挙が行われるね。
 健太 選挙なんて興味ないな。
 ちひろ どうして?
 健太 職場の定員削減で仕事が忙しくて選挙どころじゃないよ。賃金も減らされて貧乏暇なし≠ネんだよ。
 ちひろ でもよく考えて欲しいの。定員削減も、私たちの賃金カットも、いくつかの政党が実行してるし選挙公約にも掲げてるのよ。そういう政党が選挙で多く当選すれば、ますます私たちの仕事も生活もたいへんになるでしょ。
 健太 う〜む、確かにそうだね。で、そんなひどい政党はどれ?
 ちひろ 下の表をよく見てね。私たちに直接かかわる法案に対する各政党の態度よ。



 健太 僕たちの賃金をカットした政党に厳しい審判を下さないといけないね。公約についても教えてくれる?
 ちひろ 自民党は、「参議院選挙公約」で、(1)国立大学と国立病院の法人化を実績とし、さらに公的部門をリストラ、アウトソーシング。定員は治安などの分野だけ増やし純減。(2)国・地方の事務事業の廃止・縮小を進める。(3)能力・実績の評価制度を導入する「公務員制度改革法案」を2004年の国会に提出、などを明記してるわ。
 健太 自民党の選挙結果が、小泉政権の動向を左右するわけだから、小泉構造改革の方針も見ておく必要があるよね。
 ちひろ 6月4日に、政府が決定した「骨太方針2004」(経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004)には、自民党の公約と同じもの以外に、「独立行政法人の整理縮小・民営化」や、「地域における給与の官民格差を踏まえて、地域における国家公務員給与の在り方を早急に見直す」(※本紙トップ記事参照)などが明記されてるのよ。
 健太 僕たちの労働条件大改悪のオンパレードだね。自民党のパートナーの公明党はどうなの?
 ちひろ 公明党は「国・地方を通じた公務員の1割削減」を掲げ、自民党と同様に独立行政法人化を実績と自慢して、一層の業務の統廃合・合理化・アウトソーシング等の推進を強調してるわ。
 健太 民主党はどうなの?
 ちひろ 民主党のホームページに参院選挙の公約がまだ掲載されていないけど(6月17日現在)、昨年の総選挙のときのマニフェストには、「4年以内に国家公務員人件費総額を1割以上削減」をかかげているのよ。
 健太 今度の参院選挙で公務リストラの流れを変えたいね。


●公務員制度改革
  推進事務局が与党の「取組方針」を説明−今秋臨時国会にむけ法案化
  職場からたたかい強化を

 ○与党の申し入れ受け止め臨時国会にむけ法案作成

 6月11日、国公労連は政府・行革推進事務局との交渉を行いました。交渉では、推進事務局側が、前々日の6月9日に与党行財政改革推進協議会から政府に「申し入れ」のあった「今後の公務員制度改革の取組について」と題する与党「取組方針」の内容を示し、今秋予定の臨時国会にむけて法案作成作業を進めることを説明しました。
 また、推進事務局は、「与党の申し入れは重く受け止め」、「組合とは立場が違ってもできるだけ一致点が多くなるよう」に国公労連との交渉・協議を進めたい、とする基本姿勢を表明しました。

 ○能力等級制の導入と退職管理が二本柱

 与党の「申し入れ」は、「能力等級制を導入し、能力・実績主義の人事管理を実現すること」と「退職管理の在り方を見直すとともに再就職の適正化を図ること」を改革の二本柱とし、「職員団体との十分な意見交換」、「労働基本権のあり方等についても意見交換」を行うことも求めています。
 このような推進事務局の「説明」に対して国公労連は、(1)与党の「取組方針」と公務員制度改革「大綱」との関係、(2)「労働基本権制約は現状維持」とする「大綱」決定にこだわらない交渉協議、(3)スケジュールありきではなく、納得と合意を得る最大限の努力の表明、など6点の確認を求めました。
 そして、推進事務局の堀江事務局長が「誠実に交渉・協議を行う」旨を表明したことを受けて国公労連は、「今回示されたペーパーにもいろいろ疑問や問題点があり、その点を明確にするよう求めることから交渉・協議を再開したい」と表明して交渉を終えました。

 ○国公労働者の無権利状態を深刻にする制度改悪の危険

 政府・行革推進事務局が、法案化作業の具体化を表明したことをうけて、民主的公務員制度改革を求めるとりくみは、あらたな段階に入ることになります。
 現状では、能力・実績反映の人事管理制度のみが強調され、労働基本権回復の棚上げだけではなく、能力評価基準の設定や評価制度の設計など労働条件に直接的に影響する課題について、管理運営事項などとして労働組合の関与を排除し、国家公務員労働者の無権利状態をさらに深刻化させる制度改悪の危険性も少なくありません。
 「自らの労働条件は自ら参加して決定」するという当然のことを制度化させるためにも、職場からのたたかいが大切になっています。

 ○「自らの労働条件は自ら参加して決定」するために
   職場からたたかいを


 国公労連は、6月16日に公務員制度改悪反対闘争本部を開催し、(1)近々発行する「国公労新聞」号外を活用した職場からの学習強化と闘争態勢の整備、(2)民主的制度確立を求める政府宛署名、(3)有識者や民間労働組合、マスコミなどへの働きかけ強化、などを確認し、とりくみを強めることとしています。


●有事関連法案を自公・民主が公聴会も開かず強行採決

 6月14日、自民・公明・民主の3党が、米軍の海外での戦争に自衛隊が参戦し、自治体や民間企業、国民を罰則付きで総動員する有事関連7法案・3条約を、参院本会議で強行採決。憲法にかかわる重大法案であるにもかかわらず、中央・地方公聴会も開かず強行しました。


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