国公労新聞 第1182号

●許すな!マイナス勧告・寒冷地手当改悪

 2004年の勧告に向けて人事院は、「民間賃金に改善のきざしなし」として、本俸と一時金がマイナスになる可能性を示唆した上に、「地域格差を取り込む方策を打ち出す」と国公労連との交渉で述べています。マイナス勧告・寒冷地手当改悪・地域間格差拡大を許さないたたかいに全力をあげましょう。

 ○ブロック国公代表が手当改悪の不当性追及

 国公労連は、7月16日、寒冷地手当に関する人事院交渉を実施しました。午前の交渉には、関東、東海、近畿、中国の各ブロック国公代表が参加。午後からの交渉には東北、北陸の代表が参加しました。
 人事院は、寒冷地手当の寒冷生計増嵩費補填という従来の性格に変わりはないとしつつも、事実上、上、「民間準拠」と「気象データ」の二つの要素をもとに支給地域の切り下げと支給額の大幅な削減をねらっています。
 そのことに対して、交渉参加者から「平均気温が0度以上でも雪が多いところに対して、配慮せよ」「山間部の積雪の多さ、氷混じりの暴風雨、風の強さ、そのことによる生活に必要な諸費用負担や通勤困難性など、実情をみてほしい」など、職場実態と生活実感をふまえた厳しい追及が行われました。
 とりわけ、平均気温と最深積雪という二つの気象データ基準(北海道並)に対しては、「気温と積雪という関連性のないデータを直結している問題」「誤差の多い積雪データの絶対化」などの問題点・矛盾点を鋭く追及しました。
 しかし、人事院は、「合理的な理由があれば、という観点から判断した」と従来の姿勢に終始しました。
 当日の昼休みには、真夏の強い日差しが照りつける中、180人の仲間が人事院前において交渉支援行動を展開しました。
 行動参加者は、「マイナス勧告反対」「寒冷地手当の支給地域切り捨て反対」「地域別俸給表の導入反対」などの声を上げました。
 決意表明に立った新潟県国公・室事務局長は、7月14日に新潟で寒冷地手当反対の決起集会を成功させたことを報告し、人事院に怒りをぶつけました。
 すでに256の地方議会で寒冷地手当の改悪に反対する決議が上げられており、地域経済を守るためにも、寒冷地手当の改悪は許さないという世論が広がっています。
 勧告まで、寒冷地手当の改悪に反対して、粘り強くたたかいを展開することが求められています。

 ○夏期要求めぐる交渉
  実効ある超勤縮減へ職員の意見反映


 国公労連は、定員要求や働くルールの確立などを中心に夏期要求実現に向けた総務省・財務省交渉を展開しています。
 7月14日には、総務省行政管理局と定員課題をめぐって交渉。国民生活に密接な「雇用、いのち、くらし、安全」に関わる分野や国会で増員請願が採択された分野を重点に増員すべきことを求め、「骨太方針2004」で示された地方支分部局の事務事業見直しがいかに無謀なことかを、職場実態をふまえて追及しました。
 また、管制官のような資格職種や看護師のような免許職種への代替え要員確保、年金と雇用の連携という制度の主旨を生かす希望者全員の再任用実現が可能となる定員の枠外化を求めました。
 しかし、総務省行政管理局は、「定員については、各省の話を踏まえた対応を行う。女性(女性職員の採用増大に伴う産休・育休代替え要員の問題)については、個別の事情で話を伺うことはある」などの回答にとどまっています。
 同日には、総務省人事・恩給局と働くルール課題で交渉。国公労連は、(1)勤務時間管理の徹底と要員確保による超勤縮減と不払い残業根絶、超勤縮減に向けた労使の話し合いの仕組み(対策会議)実現、(2)非常勤職員の均等待遇に向けた諸規定整備、とりわけ最低限のルール確立に向けた政府としての対応の必要性などを要求しました。
 これに対して、総務省は、「時間管理のあり方については、どういうことが共通的にとりくめるかという観点から考えたい。超勤は必要な命令によるものはきちんと支払われることは当然。実効ある超勤縮減に向けて職員の意見反映の対策がとれるよう議論してみたい」「非常勤職員は、総務省としてどの部分にとりくむべきか。最低ラインという考え方はなじみやすいかもしれないが、研究したい」との回答を引き出しています。
 さらに財務省とは、超過勤務予算の確保をはじめとする労働条件関連予算の確保と実態に見合わない旅費の改定を求める交渉を実施しています。

●〈人事院〉地域差・実績反映ねらう給与構造の見直し

 人事院は、7月1日に国公労連に対して「地域の実態を反映した給与」と「職務・職責の重視、実績反映」をめざす給与制度の見直しの柱(見直しの視点と検討項目)を提示しました。
 懸念される「地域給」の扱いでは、民間賃金の地域差の反映が明らかにされ、転勤手当の新設と寒冷地手当の抜本見直しを掲げています。一方、能力・実績主義の強化に関しては、職務給を基本という限定はあるものの、俸給表の見直しと手当の見直しに加え、(1)査定昇給への転換、(2)勤勉手当への実績反映の拡大などをあげました。
また、実績反映のための新たな評価制度の整備にもふれています。
 この給与構造の基本的見直しについては、今年の勧告の際の「報告」において具体的な検討課題を示す予定としています。
 政府は、「骨太方針2004」(6月4日閣議決定)で、人事院に対し、地域における国家公務員給与のあり方についての検討と早急な具体的措置のとりまとめを求めています。小泉首相は具体的にブロック別俸給表を指示したとの報道もあります。
 さらに、細田官房長官が7月9日の記者会見で、「公務員も実績を評価し、昇給に差を設けていくことは方向として望ましい。自動的な定期昇給という考え方から、一歩進んで民間をよく参照しながら、新しい制度に移行していくことは望ましい」と述べています。
 これらは、労働基本権制約下の現行給与決定ルールを無視する露骨な介入・干渉であり、極めて危険な動きです。
 この動きに対して国公労連は、素早く経済財政諮問会議、総務省、財務省に抗議しました。人事院の今回の提言は基本的にこの政府の「指示」を受け入れようとする危険な内容を含んでいます。
 一方的な給与構造の見直しを許さない立場での人事院、使用者、当局追及を強める必要があります。

●公務員制度改革の質問書を提出
  政府・推進事務局との交渉を再開

 国公労連は6月24日、政府・行革推進事務局に「(6月9日の政府への)与党『申し入れ』もふまえた公務員制度改革にかかわる質問書」(下記参照)を提出し、早期の回答を求めました。

 ▼公務員制度改革にかかわる質問書(概要)
 □二度のILO結社の自由委員会からの「勧告」を確認した検討を進めるのか。
 □能力等級制を導入することで、現状の人事管理の、なにがどのように改善されるのか。
 □あらたな評価制度検討では、(現行の勤務評定制度の)問題点解消を考えるのか。
 □(「天下り」とかかわって)現状の定員管理が早期退職を余儀なくしている、とする問題意識はあるのか。
 □女性の採用・登用拡大や、超過勤務の縮減など、「大綱」段階で強調された改革課題は、どのようにあつかうのか。

 ○国公法「改正」を進める政府

 既報(国公労新聞6月21日付第1179号)のとおり、政府は、与党の「申し入れ」をうけて、能力等級制度や新たな評価制度の導入、公益法人等を含む「天下り規制」などを中心にした国家公務員法「改正」作業を秋の臨時国会にむけて進めています。
 提出した質問書は、「申し入れ」に対する政府の見解をただす23項目の内容としています。

 ○「人事院に詰めている」

 対応した推進事務局・笹島参事官は、「『申し入れ』はあくまで与党のもの。政府として逐一説明できないかもしれない。政府案はこれからで、事務局案をつくりつつあり、人事院とも、内容を詰めている最中」とし、「(質問書をもとに)国公労連とも精力的に話し合いを行い、その議論を制度設計に活かしていきたい」などと回答しました。
 その後、すすめ方を巡る意見の食い違いもあって遅れていた交渉・協議は、7月15日から、開始されています。

●学んで組織を大きくしよう
  第18回労働学校を開催

 国公労連は、第18回労働学校を5月中旬〜7月初旬にかけて開催。8ブロックあわせて574名が参加しました。また、中央労働学校(6月5日)は東京都内で開催。92名が参加しました。

 ○憲法と組織問題など活発な討論

 各ブロック労働学校では、(1)「転換期の公務員賃金とたたかいを考える」を共通テーマにした政策課題、(2)「憲法問題」(関東・東北・北海道・東海)「雇用・最賃改善・働くルール確立」(四国)、「世界と日本はいま」(九州・中国)など情勢課題、(3)「労働基本権」「国公権利裁判」(近畿・東海)「自治体リストラと組織拡大」(中国)「労働組合の組織建設と青年問題」(北海道・東北・関東)「機関紙をつくろう」(近畿)「組織活動の手引き」(四国)などについて講義を深めました。
 分散会では、「チャレンジ30」の全面実践で頼りになる労働組合づくりをめざした活発な議論が行われました。
 参加者の感想として、「学び、多くの仲間と討論できたので、労働組合活動に大いに役立った」「憲法改悪の危険な動きがよくわかった。職場と地域に憲法をいかすために、がんばりたい」などの感想が寄せられています。

●山口県知事選挙
  革新候補を推せん

 国公労連中央執行委員会は、山口県国公の要請をうけ、山口県知事選挙(8月8日投票)に「みんなの県政をつくる会」が擁立している福江俊喜さんの推薦を決定しました。
 現在の県知事は、米軍基地の拡大・強化や戦争国家づくりなど平和を脅かす危険な動きにも「地方が口出しできる問題ではない」と国の政策に追随。医療・年金問題など社会保障の切り捨てにも「国会で議論されるもの」と無責任に言い放っています。市町村合併の押し付けや無駄な大型公共事業の推進、原発建設などの「国策」には忠実に従ってきました。
 その結果、山口県民世論調査では、「暮らしの不満度」が激増しています。
 福江俊喜さんは、こうした国いいなり・県民不在の現在の県政と決別し、暮らしと福祉、教育を充実させ、平和と環境を大切にする県政をめざして奮闘しています。
 また、福江さんは94〜03年まで山口県労連議長、96〜01年まで全労連幹事として活躍されました。現在も山口県勤労者学習協会会長、子どもと教育を守る山口県民会議代表など民主運動で幅広く活動しています。
 職場・地域からの支援をお願いします。


●さようなら境邦子さん

7月2日、元国公労連書記の境邦子さんが多臓器不全のため逝去されました。享年73歳でした。
 境さんは、歴史的な60年安保闘争の翌年、1961年に国公共闘(国公労連の前身)に入局され、国公労連総務財政部員として地道に実務を担い、全労連が結成された89年までの29年間、裏方として国公労働運動を支えました。心からご冥福をお祈り申し上げます。



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