国公労新聞 第1184号

●マイナス勧告は回避
寒冷地手当改悪、地域賃下げ「宣言」を強行

 人事院は、8月6日、給与等の勧告と報告を行いました。月例給、一時金ともに「改定なし」とする初の「ベアゼロ」勧告となりました。
 同じ6日には、43都道府県で「1〜2円」の地域最低賃金の引き上げ改善が行われました。「賃下げのサイクル」の一定の歯止めとなるたたかいの到達点です。

 ○寒冷地手当の支給地域4割減
 しかし、寒冷地手当については、支給地域を43.9%(本州だけでは、52.2%)削減し、支給額についても概ね4割カットするなどの改悪勧告を強行しました。
 国公労連は、本年1月以降、地域集会や地方議会請願、署名などを背景とした中央、地方での人事院追及を、地域共闘を重視して展開してきました。
 その結果、支給地域については、気象データ(最低気温、積雪)ももとにした「修正提案」を人事院に行わせるなど、たたかいによって一方的な強行は押し返してきました。
 しかし、改悪を見送らせるまでには至らず、かつ、実施時期も今冬の支給期からとの勧告は強行される結果になりました。

 ○地域間格差20%への拡大
 同時に行われた給与「報告」の概要は、(1)民間賃金の低い地域と「均衡」させるところまで俸給表の水準を引き下げた上で、民間賃金に均衡させる「地域手当」を新設。最大20%もの地域間格差を公務員賃金に持ち込む、(2)昇給カーブのフラット化と、「査定昇給」導入などの実績反映の給与制度への転換、(3)「本府省手当」の新設、などです。「(来年の)賃下げ宣言」と一体での「(今年の)ベアゼロ勧告」というのが、本年勧告の特徴と言えます。
 人事院の調査でも、国家公務員給与の現在の地域差は最大15%となっています。「報告」は、このような現状を意図的に軽視して、05年度勧告にむけた、格差拡大の「賃下げ」検討を「宣言」しています。


●スケジュール先行の提案やめよ!
〈推進事務局〉公務員制度改革法案の「骨子」を公表

 政府・行革推進事務局は、8月5日に「関連法案の骨子(案)」を国公労連に提示してきました。行政職以外の能力等級制の「構成案」や、能力評価、実績評価の「仕組み」(案)も13日に明らかにしてきています。臨時国会前には、法案の閣議決定をおこなうことを念頭に、スケジュールありきの提案が続いています。
 多くの「なぜ」を残したまま国家公務員法「改正」法案の条文案作りだけが先行するという「歪んだ状況」です。

 ○人事管理の「民営化」狙う
 最大の「なぜ」は、人事管理の「要」とも言える労使関係の問題に集約されます。
 賃金も含めた処遇・労働条件決定に、評価結果を反映させたい、しかし、「評価」を労働組合との交渉事項にはしたくない、政府が、その矛盾を解決しようとしないことが、「歪み」の最大の原因になっています。
 ILOは、労働基本権も条約に一致させる改革を、と勧告しています。「民間的人事管理を導入するのなら、労使関係も民間的に」とする指摘は、マスコミからも行われています。

 ○政府は説明責任を果たせ
「能力等級制を導入したら転勤を条件にした昇任・昇格はなくなるのか」、国公労連の質問に「直ちに解決するものではない」と回答しました。現状の人事管理の何をどう変えるために能力等級制導入が必要なのかさえ、政府は回答できていません。
 政府・当局は説明責任を果たせ、労使合意のないまま国家公務員法改正法案を決定するな、ILO勧告にそった労働基本権回復を確約しろ!差別・強化に反対し、公務員制度の民主化をめざす職場からのたたかい強化が求められています。


●核兵器廃絶の運動強めよう
04年原水爆禁止世界大会ひらく

 2004年原水爆禁止世界大会は8月4日から6日までの広島大会、8日から9日は長崎大会として開催され、本大会の広島大会の開会総会には、全国から7800人が参加しました。

 ○来年被爆60周年行動を起こそう
 特別発言で、秋葉広島市長が「来年の被爆60周年に向け、今年は核兵器廃絶のために行動を起こす年に」と述べ、漫才師の喜味こいしさんが、自らの戦争体験も交え、戦争反対を訴えました。

 ○戦争の犠牲は一番弱い子ども
 5日には、16の分科会・フォーラムの後、広島県国公の協力で開催した「国公労働者平和の集い」に65名の国公の仲間が参加しました。
 講師のフリーカメラマン・岡崎賢二さんが、内戦の頻発していたアフリカで自らが取材してきた悲惨な現実を、スライドで紹介しながら、「戦争で犠牲になるのは、いつも一番弱い子どもである。だから絶対戦争はいけない」と強く訴え、参加者は、真剣な表情で聞き入っていました。
 6日の広島大会の閉会集会では、「来年は被爆60周年の節目を迎える。『いま、核兵器の廃絶を』署名の推進と、核兵器廃絶に向け行動に一歩踏みだそう」と意思統一し、8日からの長崎大会に引き継ぎました。

 ○小泉首相あいさつに拍手起こらず
 長崎大会では、メキシコの政府代表者が「核兵器廃絶のために、みんなが一つになって共同していく必要がある」と参加者に呼びかけました。
 今年の大会は、メキシコなど3カ国の政府代表が、多忙のなか広島から長崎まで通し参加したこと、そして若者の参加が格段に増え、真剣に平和を願う姿勢が強く印象に残りました。
 それに引き替え、6日の広島市主催平和祈念式であいさつに立った小泉首相は、小声でボソボソと発言原稿を棒読みするだけのあいさつ。式典の一般参列者からも拍手すら起こらず、平和と核兵器廃絶を願う国民の気持ちとの乖離を際だたせるものとなりました。


●黙ってばかりはいられない!
裁判に立ち上がる国公労働者

 公務リストラの攻撃が強まるもとで、労働条件改悪を当局が一方的に強行する事例が増えています。7月末、そのような理不尽な攻撃に反撃する裁判が相次ぎました。

 ○いのち奪う深夜勤を告発
 郵政産業労働組合は7月27日、日本郵政公社が新しく導入した深夜勤務の撤回を求め、東京地裁に集団提訴しました。
 訴えたのは、全国の郵便局で働く42人の組合員。仮眠時間もなく10時間の深夜勤を最大4日間連続、昼夜逆転で繰り返すという非人間的なもの。このような勤務形態は、安全配慮義務に違反すると訴えました。

 ○全医労も不利益変更を告発
 翌28日には、全医労の組合員28人が、4月1日の独立行政法人移行時の「(非常勤)雇い止め」や賃下げを「一方的な労働条件不利益変更」として、国立病院機構を相手取り提訴しました。
 独法化にともなって管理職を除く職員の賃下げは、最高で年額70〜80万円。非常勤職員は年に百数十万円の賃金ダウンが強制されました。
 約6000人の賃金職員の雇い止め不当性も含め、国の違法行為を問う裁判では、「労働条件は労使対等決定が原則。一方的な不利益変更は許されない」という点が、争点です。

 ○市民的・政治的自由を!
 国家公務員が休日のビラ配布で逮捕された「国公法弾圧事件」の初公判が7月20日、東京地裁で開かれました。
 被告・弁護団は逮捕・起訴の不当性を訴え、公訴棄却を要求。ビラ配布を隠し撮りしたビデオテープなどの証拠の全面開示を裁判所に申し立て、裁判所はその一部の開示命令を出しました。
 次回公判は9月14日で、国公法102条が日本国憲法と国連人権規約に反するとの主張が予定されています。


●憲法改悪を阻止しよう
全労連第21回定期大会を開催

 今秋結成15周年を迎える全労連は、7月28日〜30日、「まもろう!雇用・くらし・いのち、ひろげよう!憲法改悪阻止の共同、かちとろう運動と組織の飛躍」のスローガンを掲げ、第21回定期大会を都内で開催しました。
 この大会には、アジア・太平洋地域から8カ国・2国際組織の代表15名も参加するなかで、熊谷議長の主催挨拶と来賓挨拶の後、坂内事務局長以下が、運動方針と経過・情勢報告、決算報告と財政方針などを提案しました。
 とりわけ、向こう2年間のたたかいの基本的視点に、「憲法改悪阻止」と「組織拡大・強化」をすえ、5つの重点課題(平和・民主主義、組織、賃金、雇用・権利、社会保障)の実現に全力をあげるとしています。
 大会では、3日間に69人が発言(他に8人が文書発言)し、上記の「組織拡大・強化」(33人)と「憲法・教育基本法」(10人強)に議論が集中するとともに、プロ野球選手会労組への支援行動も確認されました。
 国公労連からは、(1)“チャレンジ30”と全労連オルグ配置(岡部中執)、(2)公務リストラ反対と働くルール確立(近畿・秋山事務局長)について発言し、(3)憲法改悪阻止を全面に掲げた運動展開(小田川書記長)は文書発言になりました。
 以上の討論を経て、坂内事務局長が総括答弁を行い、議案採決の結果、報告関係が拍手で承認され、方針関係が満場一致の賛成で決定されました。

 ○宮垣氏が事務局次長に就任
 続く役員選挙では、国公労連派遣の熊谷議長(再)、宮垣事務局次長(新)、山瀬幹事(再・非専従)を含む全員が信任され(木下前幹事は6年の任期を終えて国公労連復帰)、節目の大会は成功裡に閉会しました。


●プロ野球選手会労組への支援を

 全労連大会は、プロ野球選手会労組のたたかいへの支援を確認しました。
 全労連として、(1)選手の人権無視、ファンや選手不在の統合論議反対、(2)選手やファンにわかりやすいオープンな場での議論を行う、の2点を中心に「緊急署名」を8月下旬までにとりくみます。★プロ野球選手会のホームページ→ http://jpbpa.net



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