国公労新聞 第1189号

●「迷走」する政府
  〈公務員制度改革法案〉臨時国会の冒頭提出は不可能

 10月12日の臨時国会開会を目前に、公務員制度改革関連法案の取り扱いが「迷走」しています。9月29日から30日にかけて、マスコミの「公務員制度改革法案の臨時国会提出が困難になった」とする報道が相次ぎました。
 公務員制度改革にかかわる国公労連と政府との交渉は、政府が、@労働基本権回復要求に「ゼロ回答」をくり返していること、A能力等級制、評価制度の勤務条件性を否定し続けていること、B能力等級制と給与制度の関係など、公務員制度「改革」の全体像を示さないことから、こう着状態になっています。国会開会直前になっても、推進事務局は、あらたな提案を国公労連に行ってきておらず、国会冒頭での公務員制度改革関連法案の提出は、事実上、不可能になりました。

○「改革」の一から出直しを
 先述した「三つの争点」は、根本的な対立点です。公務員制度改革は、公務員労働者の労働条件変更にほかなりません。ですから、「なにを交渉事項とするのか」、「どういう仕組みで労働条件を決定するのか」という労使関係の基本の問題を曖昧にしたままで、制度全体の設計をすることができるはずもありません。2001年1月に開始された「改革」作業では、これまでも、労使関係が争点の一つでした。
 昨年7月、政府は閣議決定直前まで法案化作業を進めました。しかし、労働組合との交渉・協議が不十分であったと同時に、先述の「三つの争点」が鮮明になっていたことから、国民的な批判が集中し、作業は「とん座」せざるをえませんでした。現段階でも政府は、その教訓を活かそうとせず、再び「迷走」をくり返しているのです。
 現在の政府・行革推進事務局の態勢では、民主的な公務員制度改革の論議は困難なことが明白になってきています。



●公務リストラに反撃を
  公務労組連絡会 第27回総会を開催


 公務労組連絡会の第27回定期総会が10月1日、都内で開かれ、(1)賃金・労働条件の改善、民主的公務員制度確立など公務共通の要求の前進(2)公務リストラ許さず、国民本位の行政等の充実(3)憲法擁護の共同の発展を基調とした年次方針を決定。
 討論では、寒冷地手当改悪攻撃に対し、当初案を押し返した教訓として「自治体決議の徹底的な重視」(長野)、「分断攻撃に陥らないたたかい」(宮城)、「学習・宣伝の重視」(秋田)、「従来にない戦線の拡大」(北海道)などが述べられました。新たな攻撃に対しては、「地域給切り下げ反対のため、福岡で連絡会をつくり、県労連、民間ぐるみのたたかいをする」(九州ブロック)、「改めて社会的な賃金闘争を前進させる」(自治労連)、「自治体の三位一体改革を口実にした、社会福祉の解体を許さないため、自治労連、全教との共同のシンポジウムを行う」(福祉保育労)などの発言がありました。
 国公労連の山本英樹代議員は、憲法改悪を許さないとりくみを紹介した後、「郵政民営化や自治体リストラ反対のたたかいとも結合し、国民のための行政サービスを守るために第1・3水曜の宣伝行動、シンポジウム、酷書づくりなどをとりくむ」と発言しました。
 四役は、議長に石元巌氏(全教)、副議長に駒場忠親氏(自治労連)、堀口士郎氏(国公労連)、事務局長に若井雅明氏(自治労連)、事務局次長に黒田健司氏(国公労連)が再任されました。



●地域給の切り下げ許すな
  制度改革とからめ愛知で学習会


【愛知県国公発】
 愛知の公務員制度改悪阻止共闘会議(東海ブロック国公、愛知公務共闘、愛労連)は10月2日、地域給学習会を開催し50人が参加。04人勧の給与構造の基本的見直し報告の狙いと問題点、いま進められている公務員制度改革との関連について学習を深めました。地域給は国公・自治体労働者や地域経済に大きな影響があることから、愛知でのとりくみを強めようと確認しあいました。



●法的弱者を切捨てる
  敗訴者負担法案廃案求め集会


 日弁連と東京・東京第一・東京第二の3弁護士会は、9月28日、「弁護士報酬の敗訴者負担法案−−このままでは廃案を求める市民集会」を開催しました。
 この集会には、弁護士・労働者・市民など600人が参加し、通常国会から継続審議となっている弁護士費用敗訴者負担法案(民事訴訟費用等に関する法律の一部改正案)について、臨時国会では、廃案ないし抜本修正を勝ち取るために、運動を強めていくことを確認し合いました。

○契約によって敗訴者負担も
 弁護士費用敗訴者負担法案は、当事者双方が訴訟代理人(弁護士など)を選任している訴訟において、当事者の双方が共同の申立てを口頭弁論の終結までに文書で行った場合、訴訟代理人の報酬に係る費用は、訴訟費用として敗訴者の負担とする、という制度を導入するもの。
 一見、法廷での合意なしには、敗訴者負担は持ち込まれないように思われます。しかし、例えば、消費者契約、労働契約(就業規則)で、敗訴者負担の規定を盛り込んだ場合、改正案にはその契約を無効とする規定がないことから、その契約が有効となる可能性があるという重大な問題点が隠されています。
 この点は、当日の集会でミニシンポジウムを行った「行列のできる法律相談所」に出演している丸山和也、住田裕子、北村晴男の三弁護士も一致して指摘、参加者の共感を呼んでいました。



●いまこそ憲法が輝く社会へ
  すべての職場で憲法学習を


 アメリカの戦争に全面的な協力ができるよう日本を“戦争する国”に変えること−−ここに憲法改悪のねらいがあります。しかし、「憲法は古い」、「プライバシー権が必要」などの喧伝で、本当のねらいが広く国民に知らされているとは言えません。憲法を守る義務を負う私たち国公労働者が、憲法改悪の本質を学習し、職場と地域に憲法を活かすたたかいに全力をあげましょう。

○アメリカ発の憲法改悪
 アメリカ発の憲法改悪(PDFファイル 403KB)


○憲法は国民のもの
 *憲法ってなに?
 「憲法といわれると頭が痛くなる」とAさん。「国の最高法規=法律の親玉で、自分たちをしばるもの」とBさん。憲法とは、と尋ねられて、こう答える人も少なくないかもしれません。でも、憲法はあなたの生活に、密接に関係しています。

 (1)憲法は、国民から政府に対する命令
 日本は、「国(政府)は、人びと(国民)との契約で成立し、その契約内容が憲法」という「立憲主義」をとる国です。公務員に憲法遵守義務(第99条)が課せられているのもそのためです。
 国は、国民のために何をしなければならないか、何をしてはならないかを記したのが憲法なのです。
【憲法前文】
「…そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」

 (2)憲法の3つの基本的な考え方
 憲法がどういう考え方(基本原理)でできているのかは、前文で明らかにされています。第1が基本的人権の尊重、第2が前述した国民主権、第3が戦争の放棄(平和主義)です。 
 基本的人権は、第3章「国民の権利及び義務」に書かれています。自由と平等を保障する自由権、教育を受ける権利など国に対する請求権と参政権がその内容です。
 憲法は第2章(第9条)で戦争の放棄を国民に約束しています。それは、第2次世界大戦のような悲惨な体験は二度としたくない、という国民の願いがあったからです。
【文部省著作教科書『あたらしい憲法のはなし』から】
 「…国際平和主義をわすれて、自分の国のことばかり考えていたので、とうとう戦争をはじめてしまったのです。そこであたらしい憲法では、前文の中に、これからは、この国際平和主義でやってゆくということを、力強いことばで書いてあります」

 (3)国民のたたかいが基本的人権の内容を豊かに

 これまでも、憲法をよりどころにしたたたかいが、人権保障の内容を前進させてきました。
1) プライバシーの権利(『宴のあと』事件)→憲法第13条
 三島由紀夫の小説『宴のあと』事件で、裁判所は、「私事をみだりに公開されないという保障が…個人の尊厳を保ち幸福の追求を保障するうえにおいて必要不可欠なものであると認められるに至っている」として、プライバシー権を認めました。
2) 生存権の保障(「朝日訴訟」)→憲法第25条
 「朝日訴訟」は、「健康で文化的な最低限度の生活」の基準を争った裁判です。1960年、裁判所は「憲法第25条のいう『健康で文化的な生活』は、国民の権利であり、国は国民に具体的に保障する義務がある」と判示しました。この裁判をきっかけに、老人医療の無料化、児童手当創設などの成果につながる運動が前進しました。
3) 男女差別の是正(「芝信用金庫」事件)→憲法第14条
 13名の女性が、課長職への昇格と男女賃金差別の是正を求めた裁判は、15年余りのたたかいの末に、「課長職の資格」を認め、差額賃金の支払いなどを内容とする和解が最高裁で成立しました。この裁判は、男女機会均等法の制定にも影響しました。

○9条は世界平和の手本 国民の願いは憲法を活かすこと
 「一国平和主義の憲法はもう古い」と自民党は憲法9条を目の敵にしています。
 しかし、アメリカが、国際法と国連決議を無視して、世界の平和秩序を破壊している現在の状況では、9条の輝きをいまこそ取りもどすときです。
 日本国憲法9条は、第2次世界大戦が終わった後、「戦争のない世界」をめざす世界の大きな流れのなかで生み出されたものです。ですから、イタリア憲法にも、戦争放棄の条項が織り込まれています。
【イタリア共和国憲法第11条】
「他の人民の自由を侵害する手段、及び国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄」

 *国際的な平和基準
 日本国憲法はさらに、戦力保持の全面的禁止、交戦権の否認まで踏み込んでおり、国連憲章の定める国際的な平和基準をリードするものです。
(1) アメリカのチャールズ・M・オーバービー博士は、湾岸戦争の翌年の1991年に「9条の会」をつくり、その普及に努力し、「9条にノーベル平和賞を」と訴えました。
(2) 1999年5月、オランダのハーグで世界市民会議が開かれ、採択された「公正な世界秩序のための10の基本原則」は冒頭で、「日本国憲法のような、政府が戦争をすることを禁止する決議を採択すべきである」とのべています。
(3) 2000年の国連のミレニアム・サミットの時に開かれた、ミレニアム・フォーラムの「平和・安全保障及び軍縮テーマ・グループ」の最終報告で、「すべての国が日本国憲法第9条に述べられる戦争放棄の原則を自国の憲法において採択する」という一節が盛り込まれました。

 *国民の6割は改悪反対
 日本でも今年の6月10日に作家の大江健三郎さんや井上ひさしさん、評論家の加藤周一さんら9人の文化人・有識者が「九条の会」を結成しました。発足記念講演会で、加藤周一さんは、次のように語っています。
 「議会の中では改憲で『2大政党』が対立しているわけではなく、圧倒的に憲法改正、9条を変えようという雰囲気です。しかし、議会の外では、世論調査をすると半分以上の人が『9条を変えないほうがいい』と言っています」(下図参照)。
 ここに憲法改悪を阻止することができる展望の国民的な基盤があります。この広範なエネルギーを結集して、憲法改悪をストップさせましょう。


○国民過半数署名で改憲阻止
 国公労連は、この秋から憲法改悪反対のたたかいに全力を注ぎます。スタートのとりくみとして、すべての職場で憲法学習をすすめます。この憲法特集紙面も活用して、職場学習を推進してください。当面、憲法改悪反対のとりくみを以下のようにすすめます。
(1) すべての職場で憲法学習を実施。
(2) 職場・地域で憲法学習と運動をリードする「憲法の語り部」の登録運動を推進。非組合員や管理職層、OBにも呼びかけ、すべての機関で登録をすすめる。
(3) 11月5日に国公労連の「憲法改悪阻止闘争本部」を立ち上げ、「憲法改悪反対国民過半数署名」の一翼を担うとりくみを開始する。
(4) 憲法遵守ステッカーをすべての職場で貼り出す。
(5) すべての県国公で「定時・定点宣伝」、「ターミナル宣伝」の実施を追求。
(6) ホームページを立ち上げ、対外的なアピールや「憲法の語り部」への情報提供、全国の運動の交流をすすめる。
(7) 憲法改悪に反対する国民的な運動に地域から結集。



●見学会でわかった憲法の形骸化
  「憲法を行政に生かす大阪の会」の実態調査


【「憲法を行政に生かす大阪の会」発】
 いま大阪では、「憲法を行政に生かす大阪の会」が管理職や退職者をまきこんだ活動を展開し、注目をあびています。
 この会は、国公職場で働く管理職を含む個人・団体とその退職者を対象として2001年12月に発足。「憲法が示す平和・民主主義、生活向上と国民本位の行財政の確立や地球環境を守る」との申し合わせをもとに活動しています。

○輸入ショウガの野積みに唖然!
 「憲法を行政に生かす大阪の会」は9月2日、行政職場実態調査の第1弾「食糧問題見学会」を大阪・泉大津港で実施しました。生鮮倉庫に長期間置かれている中国野菜、外に野積みされっ放しの輸入ショウガなどを見た参加者からは「知らずにそんな食品を食べていたなんてショック」という声が次々だされました。
 国民の「食の安全」が脅かされ、行政における憲法形骸化の実態が明らかになり、国民の命や暮らしを守る民主的な行政の確立をめざすとりくみの必要性を痛感しました。
 現在、9条をはじめとする憲法問題が、国の進路を決める最重要課題となっています。
 私たちは憲法改悪反対のたたかいを強め、、自らの行政を通じて憲法遵守することが重要だと考えています。そのため、現役公務員の「憲法意識アンケート調査」や、憲法学習会開催、憲法署名推進などについて大阪国公と協議し、共同行動を展開していきます。



●独法の組織・業務見直しに反撃を
  研究機関労組交流会議ひらく


 10月1日、国公労連と学研労協などが共同して「研究機関労組代表者交流会議」を都内で開催しました。
 この会議は、独立行政法人の組織・業務見直しが前倒しで行われていることについての情報交換・交流と共同の取り組みを協議することなどを目的としたものです。在京・在筑波研究機関などから36人が参加しました。

○非公務員化の圧力跳ね返そう
 会議では、国公労連から、この間の経過を総括的に報告。各組合からは現状と、とりくみが報告されました。
 省当局がすべての公務員型法人を非公務員型とする方針である文科省関係法人労組からは、「当局に、(1)はじめに非特定化ありきではない対応をすべき、(2)一方的不利益変更は認められない、(3)十分な協議なしに行うのは拙速、などの申し入れを行った」、学研労協傘下労組からは、「当局の挙げるメリットは、メリットといえないもの。あらゆるかたちで交渉・協議を続けていく」、「まだ決まったわけではない。組合が奮闘し、職員を励ますことが大事」など、非公務員化の圧力が強まる中でも力強く運動を進めていく決意が語られました。会議では、学研労協や三多摩地区での可能な共同のとりくみを進めることも話し合われました。
 また、任期制職員の組織化、業績評価の賃金反映の動きへの対応、運営費交付金の確保などについても意見交換を行い、任期制職員の組織化については、この秋からとりくみを強めることも話し合いました。



●国公権利裁判10月21日に判決
  最終準備書面を提出


 国公権利裁判にかかわって、被告・国が7月15日に行なった主張(被告第6準備書面)に対する反論(原告第9準備書面)を、原告が9月22日に東京地裁へ提出しました。
 裁判勝利をめざし、原告としての主張を補充するものです。

○憲法28条違反
 主要な内容は、(1)「月例給の引き下げを4月に遡って実施するのが情勢適応原則に適う」とする国の主張は、90年代の諸手当引き下げを情勢適応の原則から翌年度以降の実施としたことと矛盾すること、(2)国家公務員労働組合との間で国は誠実交渉義務を負わない、とするに等しい国の主張は憲法第28条に反すること、(3)「法施行前の月例給を直接減額すると違法となるから、法施行後に(給与の)請求権が確定する期末手当から減額する形式をとった」とする国の主張そのものが、法を悪用した脱法行為であること、などの点です。
 被告・国が、結審が予定されていた7月15日にはじめて具体的な主張をおこなったことから、改めての反論が必要となったものです。
 権利裁判は、10月21日13時30分の判決言い渡しが予定されています。



●国公労連・新役員の横顔
  盛永雅則副委員長(人事院職員組合)公務員制度・独法担当


 北海道旭川市生まれ。自称「硬派」として、下駄を履きバンカラな高校時代を謳歌。「柔道一直線」で心身ともに鍛えぬいた。
 72年に人事院へ。組合員になって以来、ひたすら「役員一直線」。
 人事院職員組合執行委員をスタートに、「臨戦体制」中の83年から3年間は勇躍、国公労連中央執行委員に。激しい臨調行革路線のもと、公務員攻撃が熾烈になった転機の時代。オルグで現場第一線の組合員と話をするなかで、全国津々浦々のたたかいの息吹きに感動したという。
 92年からは人事院職員組合の書記長として、男女差別の解消と超勤縮減などにとりくみ、要求前進のため12年間走り続けた。
 そしていま、18年ぶりに国公労連の「道場」に復活。ライフワークである民主的公務員制度の確立をめざし、「組合員の勤務条件と雇用を守りたい」と意欲満々だ。
 労働組合運動と酒が趣味。ロシアの炭鉱労働者になった気分で、毎晩必ず一日の疲れを癒す。「全国の仲間と熱く酒を酌み交わしたい!」と。




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