国公労新聞 第1192号

●給与構造の見直し 人事院「素案」を提起
  賃下げの制度改悪許さない
  地域共闘つくり全国闘争へ


 11月2日、人事院は国公労連に対し、04人事院勧告の報告で言及された「給与構造の基本的見直し」にかかわって、労働組合や各省との間で本格的な議論を進めるためとして、「素案」を正式に提案しました。

 人事院は、給与制度見直しにかかわって、今後、労働組合や各府省当局との間で議論するための「素案」を提案し、来年勧告での「成案」づくりに向けた話し合いを開始したいとしました。
 また、「素案」は、8月の報告内容を整理し、人事院として何を検討しているかを明らかにしたものであるとも説明しました。

◇格差拡大を狙う人事院
 この提案に対し国公労連は、直接の当事者である労働組合に対する正式提案と受けとめ、(1)内容的には受け入れがたい課題が多いが、正式な提案である以上、議論の席にはつかざるを得ない、(2)多岐に渡る課題が含まれており、議論すべき論点の整理などは、人事院としても努力が必要、(3)政府が進める公務員制度「改革」との関係は、早急に整理することが必要、などの点を指摘しました。
 この日の提案を受けて、「給与構造の基本的見直し」での人事院との交渉が本格化することになります。
 国公労連は、(1)「地域給」再編など、賃金引き下げとなる配分見直しには反対、(2)査定昇給など、短期評価の結果を直接反映させ、個々人の給与処遇の格差拡大となる給与制度見直しには反対、(3)民間準拠を強調する一方で、いいところ取りで公務の事情を強調して新設がめざされる本府省手当には反対、の3点を「基本的な見解」にたたかいを進めます。
 人事院の提案の矛盾、問題点を労働組合の立場から明らかにし、使用者・当局追及も強めながら、人事院による一方的な「見直し」作業に歯止めをかけるとりくみを進めることとします。
 現在とりくんでいる「全県学習会」などを通じて、「給与構造の基本的見直し」の内容と、人事院の狙い、三位一体改革など「構造改革」との関係などへの理解と共通認識を深めます。
 そして、(1)たたかいを全国闘争として発展させること、(2)地域での共闘組織づくりなどたたかいの基盤づくりが早急に求められていること、を確認し、今秋闘から来春闘にかけた運動構築をはかります。



●給与法、寒冷地手当「改正」法が成立

 10月27日、給与法案および寒冷地手当法「改正」法案は、参議院本会議で共産党を除く各党の賛成多数により可決・成立しました。
 この間の審議では、寒冷地手当にかかわって「国会付帯決議で燃料費価格変動に応じた改定としている。灯油価格が高騰するこの時期に引き下げるべきではない」「手当は寒冷生計費補填を主旨としている。民間準拠にともなう『見直し』には矛盾がある」などの追及に対して、政府・人事院は「当初から民間準拠の考え方はあり、それが大前提である。あらゆる影響を考え、経過措置を設ける配慮はしている」など民間準拠を根拠とする「見直し」の答弁に終始しました。
 また、地域給与の「見直し」にかかわっては「同一賃金同一労働の原則にそむく『見直し』ではないか」「人事院が代償機関であれば、公務員が安心して職務に専念できる環境を作る責任がある」などの追及に対し、人事院は「同一労働同一賃金の原則は基本給にかかわるもの」「国民から公務員賃金が高いとの指摘を受けている」などと強弁しました。



●安全・生活支える部門充実を
  要員確保で総務省交渉

 国公労連は10月7日、定員確保に関わって総務省交渉を行いました。
 国公労連は、連年の定員削減にともなう長時間過密労働の深刻化などを追及。「骨太の方針」で言及された地方支分部局に焦点をあてた新たな定員削減計画の策定を行わず、生命・安全・生活を支える部門の充実を主張しました。
 これに対し総務省は、「現行の定員削減計画は法律に基づき実施されており、やめるわけにはいかない。さらに、定員削減について与党から要請されるなど、定員をめぐる状況は非常に厳しい」などと回答しました。
 回答は、従来の域を出ないものであったことから、引き続き、査定山場に向けた追及を強めることとしています。



●競争より公正な社会を!
  「公共サービス商品化反対」行動月間

 05年度開始がめざされている「市場化テスト」のモデル事業にかかわり、規制改革・民間開放推進会議が、11月17日まで公募を行っています。
 また、政府は「今後の行政改革の方針」を12月にも決定しようとしています。
 国公労連は、「競争より公正な社会を」をキャッチフレーズに国民に呼びかけるため、11月を「公共サービス商品化反対」行動月間に設定し、11月17日を全国一斉街頭宣伝日として、世論に訴えることにしています。



●国公権利裁判 東京高裁に控訴 不当判決は許さない

 「原告らの請求をいずれも棄却する」――国公権利裁判の東京地裁による不当判決(10月21日)に対し、国公権利裁判の原告のうち107人は、11月2日、東京高等裁判所に控訴しました。今号は、控訴にいたる国公権利裁判についての特集です。職場・地域で学習し、新たな段階に入った国公権利裁判のたたかいを進めていきましょう。

◆国公権利裁判とは


 2002年、史上初めてのマイナス勧告で人事院は、「官民給与を年間で均衡させる必要」があるとして、12月の期末手当で「減額調整する措置」も求め、国会はこの改正法を成立させました。
 国公労連は、この「調整措置」の決定過程、内容が違法だとして、2003年3月5日に提訴しました(下表「裁判の経過」「争点整理・対比表」参照)。





◆公務員の人権を侵害する判決
◇請求棄却の不当判決
 東京地裁判決は、憲法が財政民主主義や勤務条件法定主義も規定しているから、「国会の民主的統制を全く排除する団体交渉権」を国家公務員に認めることは「憲法上許容されない」、不利益遡及を違法とした判例は国家公務員には「直ちに当てはまるとはいえない」などとして、人事院や使用者・国の違法行為をみとめず、国会議員は注意義務を果たしたとして、請求を全面的に棄却しました。

◇ILOの指摘を無視
(1)  判決は、団体交渉権について、全逓名古屋中郵事件判決(1977年5月4日)を引用しています。この判例は、団体交渉権(ひいては争議権)と、財政民主主義、議会制民主主義の要請とを「二律背反」の関係で捉え、議会制民主主義の要請を優位のものとする点で、「(労働基本権制約の)射程が余りにも広すぎる」との批判が強いものです。(『国公労調査時報』03年11月号所収の渡辺賢帝塚山大学教授論文)。
 そのため、その後の最高裁の判決でも余り引用されず、本件訴訟の国の主張でも引用されていません。にもかかわらず、無批判にこの判例を引用した問題判決です。
(2)  結社の自由委員会の勧告などは「強制力をもたない国内措置の指針」と判決はのべています。ILOが聞いたら憤慨するのではないでしょうか。
 2002年11月20日、ILO結社の自由委員会勧告は、日本の裁判所の解釈も含め、「指針を与える」ことは「委員会の権限の範囲内」として、日本の公務員法がILO条約に「違反」していると指摘。団体交渉権や代償措置のあり方の改善を強く求めたのです。判決は、このようなILOの指摘をまったく無視しているのです。

◇公務員の人権を侵害
(3)  「不利益不遡及の原則」にかかわる判決の判断は、団体交渉権以上に問題です。
 「具体的に発生した賃金請求権を事後に締結された労働協約などの遡及適用により処分変更することはできない」(1996年3月26日・朝日火災海上保険事件最高裁判決)との判例は私企業に対するもので、国家公務員には「直ちに適用されない」、「減額調整措置」は不利益遡及ではないなどとして、二重にも三重にも「減額調整措置」の違法性を否定しています。
 このような論理に立てば、国会の関与さえあれば、国家公務員の労働条件は無制限に変更できる、ということになります。最低限のルールさえ破壊し、公務員の基本的人権を侵す判決です。

◆控訴審をどうたたかうか
◇法治国家では許されない
 「一度支払った給与を後から取り戻す行為は、法治国家では許されない」、国公権利裁判の原点は極めてシンプルです。その原点を大切に、国公労連はあらたな決意で控訴審にとりくみます。

◇国民共同を広げよう
 たたかいをすすめる上で、重要な点は次の2点です。
 一つは、地裁判決の不当性を指弾する声を国公職場はもとより、ナショナルセンター規模でも広げるとりくみです。
 判決の不当性を訴え、官民ともに広がっている労働者いじめ、雇用・権利破壊を許さない運動を大きくしていくため、目前の05年春闘でも、官民一体のとりくみを地域から追求します。

◇労働基本権回復と一体で
 二つは、公務員労働者の労働基本権回復のとりくみをさらに強めることです。隣の韓国では国会に、協約締結を含む団体交渉権を国家公務員に保障する法律案が提出されました。
 国際的な流れも背景に、日本政府に対し、ILO勧告にそった公務員制度の実現を求めるとりくみを、裁判闘争と一体で強めます。



●不誠実で詭弁に満ちた判決
  国公権利裁判弁護団長・岡村親宜弁護士

 今回の判決は、原告の請求を棄却するに足る理屈がまったくない、不誠実で詭弁に満ちた判決です。政府の言いなりになる“ヒラメ司法”はいらないと断じたい。
 判決は、「不利益不遡及原則」の確定判決は、民間労働者にのみ適用される判例であって、国家公務員には「直ちに当てはまらない」とした。
 実質的に不利益遡及が行われたことに対しては、「既に発生した具体的権利を一方的に処分、変更させるものであると一義的にいうことはできない」とした。
 そして、裁量権についても、何の論拠も示さずに「立法裁量の逸脱があるということはできない」としました。一体なぜそうなのかの理由は空っぽである。
 このような不当判決を許すわけにはいかない。弁護団は高裁控訴審で一層奮闘する決意である。



●新潟中越地震 求められる被災者支援
  一日も早い復旧を

 新潟県中越地震の被災地は、生活再建へのめどが立っていません。全労連は11月1日、長岡市に「中越地震救援・復興被災地労働者センター」を立ち上げ、ボランティア活動をスタートさせました。それに先駆け被災現地に入った全建労の仲間から投稿が寄せられました。

 【全建労教宣部発】私は10月30・31日、新潟県中越地震の被災現地に行ってきました。
 国道では各所で段差ができており、崩れている斜面が国道からも見え、地震のひどさを物語っています。

◇被害を最小限にくいとめる事業を
 市内では、各戸の玄関先に「倒壊寸前」の赤ステッカーを貼った家が多く、避難所から一時自宅に戻った被災者が、家財の片付け作業を黙々と処理する姿が被災地の各所でみられました。
 周辺道路では、舗装が浮き上がっているところ、山が崩れて、かろうじて片側だけ通しているところ、接合部が浮き上がってしまっている橋梁、マンホールが浮き上がり、陥没した歩道など、現場はひどい状態でした。
 現地で働く職員は、寸断された道路や崩壊した道路・堤防などの緊急復旧活動を懸命に行っています。災害列島日本では、復旧支援の体制を整備し、インフラの早い回復や、被害を最小限にくい止める事業の重要性を痛感しました。
 亡くなった方々のご冥福を祈るとともに、現地の状況をみんなに知らせて、支援活動をがんばらなければ…と、切に思いました。



●大阪国公に新たな組合 関西空港検疫所労組を結成
  人間の尊厳を守りたい!

 大阪国公に新たな組合が誕生しました。「労働条件を改善し、健康的に働きたい」と、10月27日、関西空港検疫所労働組合の結成総会を大阪国公書記局で開催しました。
 検疫所は、厚生労働省の施設等として全国に13カ所あり、海外からの感染を未然に防ぐとともに、輸入食品の防疫を行う機関です。
 関空検疫所では、上司による一方的な業務命令や嫌がらせなどが横行。「やっぱり労働組合が必要」と、さまざまな困難を乗り越え、結成にこぎつけました。結成総会をうけ、早速11月1日に当局に通告し、要求書の提出も行いました。
 関西空港検疫所労組の仲間は、「職場では、労働者の権利や人間の尊厳が守られていません。いろいろな困難があると思いますが、みなさんのご支援をお願いします」と語りました。



●賃下げに怒りの声!
  地域給学習会で九州行脚

 国公九州ブロックは地域給与学習会を、10月26日の福岡に始まり、大分、宮崎、鹿児島、30日の佐賀で終了する「九州一周」で展開しました。(熊本、長崎は別日程で開催)。
 学習会では、人事院が民間賃金の地域差反映を口実に、地方に勤務する公務員の賃金を引き下げようとしていることに怒りの声が上がり、実績反映の給与制度への転換については、「成果主義賃金の導入で成功した企業はない」、査定昇給は許せないとの決意を固め合いました。
 宮崎県国公は、他の産別にも要請し、自治労、建交労、公企労の3単産からも参加。72名の参加で成功させました。佐賀県国公は、青年部と共催で「憲法学習会」とともに開催しました。【記・岸田書記次長】




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