国公労新聞 号外 |
2005年人事院勧告特集号
●2005年勧告の主な内容○ 本年の給与勧告のポイント〜平均年間給与は減額(行政職(1)平均 △4,000円、△0.1%) 給与構造の抜本的な改革を実施(1957年以来約50年ぶりの改革) (1) 官民給与の逆較差(△0.36%)を解消するため、2年ぶりに月例給の引下げ改定 ‐ 俸給月額の引下げ、配偶者に係る扶養手当の引下げ (2) 期末・勤勉手当(ボーナス)の引上げ(0.05月分) (3) 俸給制度、諸手当制度全般にわたる抜本的な改革の実施 ‐ 俸給水準の引下げ、地域手当の新設、給与カーブのフラット化、勤務実績の給与への反映等 ○ 本年の給与改定 1 官民給与の比較
〈月例給〉官民較差△1,389円 △0.36% 〔行政職(1)…現行給与382,092円 平均年齢40.3歳〕 俸給 △1,057円 扶養手当 △214円 はね返り分 △118円 〈ボーナス〉民間の支給割合 4.46月(公務の支給月数 4.40月) 2 給与改定の内容 〈月例給〉官民較差(マイナス)の大きさ等を考慮し、月例給を引下げ (1) 俸給表 1) 行政職俸給表(一) すべての級の俸給月額を同率で引下げ (改定率△0.3%) 2) 指定職俸給表 行政職俸給表(一)と同程度の引下げ (改定率△0.3%) 3) その他の俸給表 行政職俸給表(一)との均衡を基本に引下げ (2) 扶養手当 配偶者手当支給月額を500円下げ(13,500→13,000円) 〈期末・勤勉手当等(ボーナス)〉民間の支給割合に見合うよう引上げ 4.4月分→4.45月分 (一般の職員の場合の支給月数)
[実施時期等]公布日の属する月の翌月の初日(公布日が月の初日であるときは、その日)から実施。 本年4月からこの改定の実施前日までの官民逆較差相当分を12月期の期末手当で調整する措置は、2003年勧告時の「定率方式」を踏襲 〈その他の課題〉 (1) 特殊勤務手当の見直し 2004年に6手当9業務、2005年に9手当14業務の見直しを実施、今後も引き続き手当ごとの業務の実態等を精査して所要の見直しを検討 (2) 官民比較方法の見直し 民間企業における人事・組織形態の変化に対応できるように、官民比較方法について、学識経験者の研究会を設けて検討 (3) 独立行政法人等の給与水準の把握 専門機関として、独立行政法人等における給与水準の在り方等の検討において今後とも適切な協力 ○ 給与構造の改革 1 俸給表及び俸給制度の見直し (1) 行政職俸給表(一)の見直し ・地域別の官民較差の3年平均値を参考として、俸給表の水準を全体として平均4.8%引下げ ・若手の係員層については引下げを行わず、中高齢層について7%引下げることにより、給与カーブをフラット化 ・現行1級・2級(係員級)及び4級・5級(係長級)の統合。従来の本府省課長の職責を上回る職務に対応した級の新設(11級制→10級制) ・きめ細かい勤務実績の反映を行うため現行の号俸を4分割 ・現在在職者がいないか、在職実態が極めて少ない初号等の号俸をカット ・現時点の最高号俸を超える者の在職実態を踏まえ、号俸を増設 ・最高号俸を超える俸給月額に決定し得る枠外昇給制度を廃止 ・中途採用者の初任給決定の制限、昇格時の号俸決定方法について見直し (2) 指定職俸給表の見直し 現行の行政職俸給表(一)11級と同程度引き下げるとともに、現在在職者がいない1号俸から3号俸までの号俸をカット (3) 行政職俸給表(一)及び指定職俸給表以外の見直し 行政職俸給表(一)との均衡を基本として、職務の級及び号俸構成、水準是正などの見直し (4) 俸給の調整額の見直し 2 地域手当及び広域異動手当の新設 (1) 地域手当の新設 ・賃金構造基本統計調査による賃金指数を用いた指定基準を基本として、支給地域及び支給割合を決定 ・支給区分は、18%、15%、12%、10%、6%及び3% ・大規模空港区域内の官署に在勤する職員について、当該区域内の民間賃金等の事情を考慮して、特例的な地域手当を支給 ・現行の調整手当の異動保障と同様の制度を引き続き措置 (2) 広域異動手当の新設 ・官署を異にする異動を行った職員のうち、異動前後の官署間の距離及び異動前の住居から異動直後に在勤する官署までの間の距離がいずれも60キロメートル以上となる職員について、広域異動の日から、原則3年以内の期間支給 ・手当額は、俸給、俸給の特別調整額及び扶養手当の月額の合計額に、異動前後の官署間の距離区分に応じて、60キロメートル以上300キロメートル未満の場合は3%、300キロメートル以上の場合は6%を乗じて得た額 ・地域手当が支給される場合には、地域手当の支給額を超える部分の額の広域異動手当を支給 3 勤務実績の給与への反映 (1) 勤務成績に基づく昇給制度の導入 ・特別昇給と普通昇給を統合し、昇給の区分を5段階(A〜E)設けることにより、職員の勤務成績が適切に反映される昇給制度を導入 ・年4回の昇給時期を年1回(1月1日)に統一。昇給号俸数は、A(極めて良好)で8号俸以上、B(特に良好)で6号俸、C(良好)で4号俸、D(やや良好でない)で2号俸、E(良好でない)は昇給なし。ただし、管理職層は、C(良好)を3号俸昇給に抑制。B以上は分布率を設定。D以下については、該当事由に関する判断基準を別に設定 ・55歳昇給停止措置に替えて、55歳以上の昇給については昇給幅を通常の半分程度に抑制 (2) 勤勉手当への実績反映の拡大 査定原資を増額(2005年の引上げ分0,05月分のうち0,03月分を平成18年の6月期、12月期の勤勉手当の査定原資として配分)し、「優秀」以上の成績区分の人員分布を拡大。新たに「特に優秀」及び「優秀」の成績区分に係る人員分布率を設定 (3) 昇格基準の見直し 昇給及び勤勉手当に係る勤務成績の判定結果を活用 (4) 給与決定のための勤務成績の判定についての改善 当面、各府省の現行の判定手続を明確化、成績上位者の判定尺度を例示、標準的な勤務成績に達しない場合の統一的な判定基準を設定 4 その他 (1) スタッフ職活用のための環境整備 3級程度の簡素な級構成の専門スタッフ職俸給表を新設 (2) 俸給表の特別調整額の定額化 定率制から俸給表別・職務の級別・支給区分別の定額制に移行。地方機関の管理職に適用される三種〜五種の手当額については、改善を行った上で定額化 (3) 本府省手当の新設 本府省の課長補佐(俸給の特別調整額(8%)は廃止し、手当の水準は維持)、係長及び係員を対象とした本府省手当(役職段階別・職務の級別の定額制)を新設 5 実施スケジュール (1) 俸給表等の実施時期と経過措置 新俸給表は2006年4月1日から適用。同日にすべての職員の俸給月額を新俸給表に切替え。経過措置として新旧俸給月額の差額を支給。2006〜09年度までの間、昇給幅を1号俸抑制。俸給の調整額の改定も2006年4月1日から施行 (2) 手当の新設等の実施方法 地域手当は2006年度から、広域異動手当は2007年度から段階的に導入。俸給の特別調整額の定額化は2007年度から実施。専門スタッフ職俸給表及び本府省手当の新設は2010年度までの間に実施 (3) 給与への勤務実績反映 新昇給制度は2006年4月1日から実施(新制度による最初の昇給は2007年1月1日)。勤勉手当の勤務実績反映の拡大は2006年の6月期から実施。昇格運用の見直しに係る措置については2007年4月1日から実施。新昇給制度における勤務成績の判定に係る改善措置等の活用は、2006年4月1日から管理職層について先行して行い、引き続きその他の職員について行う |
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●公務員人事管理に関する報告の骨子
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●解説 またもや「不利益遡及」を勧告マイナス勧告は民間にも悪影響今年の給与改定 水準 人事院は、本年4月時点で官民逆較差「△0・36%、△1389円」が生じたとする「マイナス勧告」を行いました。 05春闘が前年を上回る賃金改善の状況(表1)となったことをはじめとして、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」5月速報値で、基本給に相当する所定内給与が前年同月比0・5%増となり2カ月連続で増加していること、7月26日に出された中央最低賃金審議会の「目安」が4年ぶりに有額(2〜3円)の引き上げ答申であったことなど、賃金改善の兆しが見え始めていました。 人事院が調査した民間における給与改定、賃金カットの状況でも、一般の従業員でベースダウンを実施した事業所の割合が04年2・4%、05年0・8%と減少傾向にあること、賃金カットを実施した事業所も同様の傾向にあることなどが明らかになっています。何とか賃下げを回避しようとする方向に、民間企業がむきはじめていたことが伺えます。 「マイナス勧告」は、こうした状況に水を差し、逆行するものです。政府・財界の総人件費削減方針に迎合した結果といわざるを得ません。 人事院は、この間の交渉において、統計の違いや、公務の制度増(昇格時の1号上位や勤続期間の長期化など)が影響していると説明しています。 しかし、今年の官民比較方法では、比較給与種目のうち通勤手当と俸給の特別調整額(管理職手当)の入れ替えをおこなっており、この点の検証を求めましたが、それは拒否しました。2002年勧告時と同様、「比較方法変更によるマイナス勧告」の疑念は払拭できません。 配分 マイナス較差の「配分」は、俸給1057円、扶養手当214円、率の手当へのはね返り分118円となっています。 俸給は、すべての級のすべての号俸について、一律0・3%の引き下げが行われています。 これまでの俸給表改定では、初任給周辺での民間との較差解消が重視されました。しかし、今回勧告では、給与構造の「見直し」における俸給水準の引き下げが同時に行われたこともあり、同率の引き下げとなっています。 扶養手当については、配偶者にかかる額を500円削減し、1万3000円にしています。 民間企業の「家族手当」の内、配偶者のみの支給額を公務が上回っていることを理由にしています。配偶者扶養手当は、02年の2000円、03年の500円に引き続いて引き下げられることになりました。 一時金 一時金については、民間支給月数が、4・46月であったとし、0・05月引き上げて年間支給月数を4・45月に改定することを勧告しています。改定分は勤勉手当に配分し、05年は12月期に、06年は6月期と12月にそれぞれ0・025月にするとしています(表2)。なお、勤勉手当の対象外となっている指定職については、12月の期末特別手当を0・05月加算しています。 一時金の改善は、99年から03年までの5年間で0・85月削減されています。昨年、一時金の官民比較方式を変更し、直近の民間実態の把握になっています。民間企業では、業務成績の伸張を一時金に反映させる動きが強まっていると言われますが、今回の勧告から考えれば、そのことが実証されているとは言えない結果です。 なお、月例給減と一時金増との関係での年収ベースへの影響は、平均0・1%・四千円のマイナスとなっています。ただし、一時金支給月数の改定割合との関係で、指定職だけは年収ベースで増になるという「お手盛り」の結果も明らかになっています。 不利益遡及 「マイナス勧告」とかかわって、3度目となる「調整措置」という不利益遡及についても勧告しました。 人事院は、官民給与を4月時点で比較しているということを口実に4月から給与改定実施の前日までの期間の官民較差相当分を解消するため、12月期の期末手当で減額する調整をおこなうことが情勢適応の原則にもかなうとしています。 調整方法は、一昨年の定率調整方式でおこなうとしています。 現在控訴審にある国公権利裁判おいて、「国公法第28条に基づく勤務条件法定主義が国家公務員労働者に不利益不遡及原則の法理の適用を否認する根拠にならない」と、国公労連は主張しています。 一度支払われた賃金を4月に遡って取り戻すという「調整措置」は、民間でも公務でも決してあってはならないことです。 給与構造見直し 俸給表水準引下げ カーブフラット化 (1)俸給水準を平均4・8%引き下げ 2006年4月から実施されることになる、俸給構造見直しについて、行政職(一)を例に解説します。 まず、民間賃金の最も低い地域(北海道・東北ブロック)の官民較差の3年平均を指標に俸給表水準が平均4・8%引き下げられます。他の俸給表についても、同様です。 (2)昇給カーブをフラット化 さらに、地方の高齢層では官民で少なくとも7%程度の水準格差があるという前提で、中高年層がいる級・号俸について2%程度カットする昇給カーブのフラット化が行われます。 具体的には、4級以上の高位号俸の水準が最大7%程度引き下げられる一方、3級以下及び中位級前半号俸の引下げは4・8%を下回る改定にとどめられます。 以上の俸給水準引き下げとカーブのフラット化は、「4級のままでも7級中位号俸の水準までいけるような年功的なカーブ」によって「職務より昇給が給与決定でウエイトを占め、若年層が割を食う結果となっている」という認識の下、それをなんとか見直したいという人事院のねらいが基本的に貫徹されています。 俸給構造(級・号俸)の再編 水準、カーブの見直しと同時に、俸給構造(級・号俸)が全面的に再編されます。 (1)級の再編 (1)級の統合 「職責の同等化が進み、人事管理上も別々の級として存続させる必要性が少なくなった」との理由から、1級と2級及び4級と5級が統合されます(他の俸給表についても同様に整理されるものがあります)。 (2)級の新設 新10級(現行12級相当)が新設されます(他の俸給表についても同様に整理されるものがあります)。 人事院は「本省の課長等が適用されている現行11級の職務・職責には相当の幅が認められ、従来の本省課長の職責を上回る職務が生じてきていることから、これらの職務を適切に評価するため」と説明しています。要するに指定職に抜けることのできない現11級滞留者を処遇するキャリア優遇策にほかなりません。 (2)号俸構成 (1)号俸を4分割 号俸構成も大幅に改変され、まず「勤務実績を反映させやすくする」ためにと、現行の号俸が4分割されます(査定昇給の内容等は後述)。 (2)号俸カット 一部の級の号俸カットも行われます。新3級以外の級について、1号上位昇格制度の導入の効果などにより、現在在職者がいないか極めて少ない初号等を6号俸カットします。他の俸給表もこれに準じてカットされます。なお、指定職は3号までカットされます。 (3)号俸を最大3号延長 今回の見直しの中で、枠外者の抜本解消と号俸延長を強く求める国公労連にたいし、人事院は逆に枠外在職者の最高号俸への引き戻しを表明していました。しかし、最終盤の交渉で、現行号俸の延長(最大3号俸、4分割後で9号)を認めてきました、これにより、行政職(一)で9割、全体で少なくとも過半数の枠外者が新俸給表でカバーされることになります。 (以上の級・号俸の再編成の全体像は、表3のとおり) 表 3 新俸給表への切り替え方法 新俸給表への切り替え日は2006年4月1日です。旧俸給表の級・号俸と経過月数に応じて新俸給表の格付け号俸が決まります。その詳細は別途切り替え表(給与法付則で定める)によって示されます。そのポイントは以下の3点です。 (1) 統合級の下位級からの切り替えは、統合前の俸給額でみた単純な直近上位の号俸を基礎に、経過期間に応じて切り替え(なお上位号俸と双子、三つ子関係等になる場合は対応号俸数と経過期間に応じて切り替え号俸を調整) (2) 新設級への切り替えは新制度の昇格方式(後述) (3) 2006年4月1日時点での経過期間に応じて、3月経過に4分割後の1号ずつ積み増しして切り替え 俸給構造見直しの 諸制度への影響 以上の俸給構造の見直しに伴い、以下の関連諸制度も見直されます。 (1) 初任給決定の見直し 行政職(一)1、2級の統合により、高卒(3種)・大卒(2種)の初任級がともに新1級になります。しかし、初任給基準には実質的な変更はなく、級の統合・号俸分割に伴う形式的整理に留まります。国公労連は今回、高卒・大卒間の初任給格差を修学年数の違いに応じて4号に短縮することを求めていましたが、高卒(3種)・大卒(2種)間の初任給水準差は現行のままとなりました。 中途採用者の初任給では例えば経験5年を超える期間の12月評価(現在18月)、初号制限撤廃という改善が図られます。 (2) 昇格制度 俸給構造の見直しに伴い、昇格制度は次のように変更されます。 ▽ 昇格時の号俸決定方式=「1号上位昇格」を見直し、基幹号俸(現行号俸)に定額(上位級の最高間差額)を加算し、現行方式(特定号俸あり)で直近上位に格付け、その間の分割号俸は機械的に対応させる方式に変更。 具体的には別途「昇格対応関係」一覧表で示される予定。 ▽ 級別資格基準表=職務の級の再編等に応じた修正の上で、「必要在級年数」を「昇格のための勤務成績を総合的に判断するための期間」と位置付けて、当面存置 ▽ 従来通達で規定されていた、昇格にあたっての「勤務成績良好」要件を規則に格上げし、「昇格の勤務成績判定に勤評記録書や昇給・勤勉手当の勤務成績判定結果を活用すること」「昇格前1年に昇給・勤勉の下位判定に当たる事実がないこと」などを運用基準で明記。(この部分については2007年4月1日から実施)。 (3) 俸給の調整額 調整基本額の算定基礎となる俸給月額が俸給構造の見直しによって改定されることから、調整基本額についても改定され、現行俸給表の中位号俸に対応する新俸給表の号俸の俸給月額の3%に相当する額に改められます。 専門スタッフ職俸給表 今回の給与制度見直しの一つの「目玉」とされた専門職スタッフ俸給表新設については、5年間の経過期間中の実施を目途に準備が進められることになりました。級構造については補佐級から課長級に対応する3級程度の簡素な仕組みとなることが検討されています。 |
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●本切り下げで地域給も再編矛盾だらけの民賃指標 追及を受け一定の修正も地域手当など 地域手当は、俸給表水準の引き下げ分(4・8%)と現行調整手当分の原資を元に、地域の民間賃金水準を反映させる手当として新設されています。 支給対象は、民間賃金の高い地域に勤務する職員で、東京都特別区の現行調整手当水準を維持する18%を上限に、「3、6、10、12、15」の6段階の支給区分です。 民賃の高い地域に 支給地域の指定基準は、人口5万人以上の市について、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(賃金センサス)の特別集計による賃金指数(94〜03年の10年平均指数)を算出し、全国平均に対する指数95・0以上の市を支給地域としました。当初は、指数96・5以上としていましたが、最終盤で引き下げてを回答しました。 また、地域の一体性を考慮するとして、民賃基準による支給地域の県庁所在地または人口30万人以上の市へのパーソントリップ(通勤者率)を考慮した基準も持ちこまれています。3%の支給対象地域に区分しています。(図表1) 図表2の指定地域一覧のうち、ゴシック体で示している地域は、現行調整手当の支給地域で、地域手当の対象にならない地域および現行支給割合に達しない地域です。当分の間、既定の割合の地域手当を支給するとしています。最終交渉で、人事院が明らかにしました。 勧告では、地域手当の性格を「物価等も踏まえつつ、主に民間賃金の高い地域に勤務する職員」に支給する手当だとしました。 「空港手当」も新設 地域手当にかかわって、異動保障を設け(1年目を100%、2年目を80%の2年間保障)、官署指定制度(現行官署指定が継続されるわけではありません)についても設けるとしています。 また、関西空港、中部国際空港などの大規模空港を対象にした「空港手当」とも言える地域手当の特例規定を新たに整理措置するとしています(なお、支給率は10%を検討)。これも、最終交渉で人事院が明らかにしたものです。 広域異動手当 広域異動手当は、人事異動にともなって、異動前後の官署間の距離および異動前の住居から異動後の官署までの距離がいずれも60キロメートル以上の距離基準を満たす職員に支給されます。「転居」は要件としませんでした。 手当の支給区分と支給割合については、距離区分に応じたものになっており、距離が60キロメートル以上300キロメートル未満の範囲に及ぶ場合は3%、300キロメートル以上の範囲に及ぶ場合は6%となりました。手当額は、地域手当と同様に、俸給と俸給の特別調整額、扶養手当の計に支給割合を乗じた額になります。 支給は3年間を限度、地域手当および特地勤務手当に準じる手当との調整がおこなわれます。 その他の手当 管理職手当を定額化 俸給の特別調整額(管理職手当)については、現行の定率制を定額制に移行します。その際、定額とする手当の算出にかかわる支給区分別の支給率のうち、地方機関の管理職に適用される3〜5種の支給率について、地方機関における超過勤務手当の支給実績を考慮した見直し(3種16%→17・5%、4種12%→15%、5種10%→12・5%)をおこなっています。災害発生時などの時間外勤務について、超過勤務の併給を求めた国公労連の要求が一定反映しています。 なお、手当額を算出するために支給率を乗じる基礎号俸月額については、定額化実施の際の各職務の級の人員分布の中位にあたる号俸としています。 本府省手当 「勧告」先送り 本府省手当については、本府省内部部局等に勤務する課長補佐、係長および係員のうち、行政(一)、専行、税務、公安(一)(二)の各俸給表の適用者を対象に、課長補佐に対しては、現行の特別調整額(8%)の水準を維持した額で、係長以下では各職務の級の人員分布の中位にあたる号俸の俸給月額に一定率を乗じた額で2010年度までに検討し、別途の勧告を行うとしました。国公労連などの慎重意見もあり、結論を先送りしています。 |
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●評価制度未整備で査定昇給導入査定昇給など人事院は、現行の勤務評定が十分に機能していないことを認めながら、新たな評価制度が確立しないもとで、勤務成績反映の給与制度に言及しました。その一つが査定昇給制度です。役職段階で三区分 これまでの普通昇給と特別昇給が統合され、新たな昇給幅と昇給枠が弾力化されます。各職員層毎に5段階の成績判定区分毎の昇給幅を人事院が設定します。その上で、職員層(3区分)毎、成績区分毎の昇給幅と分布率が設けられます。例えば、行政職(一)では、初任層(現行1〜3級)、中堅層(現行4〜8級)、管理職層(現行9級〜)の3区分の職員層毎に、成績に応じた昇給幅と分布率が決まります。(図表3) 分布率を設定 昇給幅毎の分布率は、中堅層では、8号(A)が5%、6号(B)が20%となり、4号(C)は全体の75%となります。上位の昇給区分の原資は、現在の特別昇給15%と同じです。 初任層については、8号(A)と6号(B)の上位の昇給区分は全体の20%で設定され、4号(C)は全体の80%の設定となり、成績反映が中堅層、管理職層と比較して少なくなっています。 管理職層は、8号(A)が10%、6号(B)が30%と上位の設定率が高くなる一方、3号(C)が60%と、初任・中堅層と比較して成績反映が大きくなっています。 経過期間中の特例 経過措置期間中は、段階実施による調整が行われ、昇給号俸数は全て「マイナス1号俸」となり、例えば初任・中堅層が7号(A)、5号(B)、3号(C)となり、2011年1月1日から調整がなくなります。 下位の昇給区分は、分布率を設定せず、該当事由に関する統一的な判定基準を人事院が定めるとしています(後述)。 なお昇給時期は、1月1日に統一されます。 55歳昇給停止を緩和 枠外昇給が廃止となるため、各級の最高号俸に到達すれば、それ以上昇給することはありません。 なお、55歳昇給停止について、人事院は「最近の民間の動向をみれば、現行の昇給停止を変更する必要はない」としていました。しかし、国公労連の追及が反映して、昇給幅を半分程度に抑制する55歳昇給抑制措置を導入することを最終盤で回答してきました。 勤勉手当の成績率拡大 05勧告による勤勉手当の支給月数の引き上げ分(0・05月分)のうちから、6月期、12月期に各0・015月分を充て、上位の成績区分の拡大をはかるとともに、人事院がその分布率を設定します(図表4)。 当初人事院は現行標準の成績率70/100の引き下げを狙っていましたが、05年での勤勉手当の支給月数引き上げもあり、標準の成績率は71/100としました。 勤務成績の判定 査定昇給と勤勉手当に反映する成績判定基準は、現行勤務評定を前提に「当面の措置」として検討されています。 上位の成績判定の尺度は、人事院が例示する一方、標準に達しない場合の判定について、人事院が懲戒処分、無断欠勤等、全府省共通の判定基準を示します(図表5)。 査定昇給の勤務成績判定は、管理職層が06年4月から先行し、一般職員については、07年4月から行うとしています。
秋以降のとりくみ が重要に 勤務成績判定基準等については、人事院規則制定にむけての交渉協議と運用に関わる各府省との交渉協議が今後のの課題となります。 勤務成績判定に苦情のある職員は、苦情処理手続きとして、人事院に給与決定に関する審査の申立が検討されています。 経過措置 06・3・31時点の 俸給額を「保障」 給与構造「見直し」の結果、現在よりも水準が下がる給与について、勧告では、06年3月31日時点で支給されていた「額」との差額を保障する「現給保障」の措置が盛り込まれています。「給与構造見直しによる賃下げ反対」との国公労連の要求が一定反映したものです。 現給保障の中心は、「俸給の現給保障」ですが、例えば一時金や新設される地域手当などの定率手当の算出基礎に「現給保障」が含まれる、詳細な措置となっています。 「俸給の現給保障」は、図6のように、個々人が制度切り替え前日(06年3月31日)に受けていた俸給額を「保障」とし、06年4月1日以降もその額を支払うというものです。民間企業でも、賃下げをおこなった場合など「調整措置」として、多くの企業で実施されているものです。ちなみに、勧告では、この保障期間を5年としています。5年の間に、昇給や昇格があっても、「保障額」に届かない場合は、俸給額は変わりません。 新設手当は段階的に 図表7のイメージ図のように、今回の「見直し」は、俸給水準の引き下げ分で、地域手当などの新設・再編をおこなうものです。したがって、俸給を現給保障している間は、新設・再編手当の全てを実施することができません。人事院は、保障期間中の昇給、昇格の抑制だけでは、5年経過後にも、3分の2程度の新設・再編手当の具体化しかできないとしています。そこで、勧告では、制度切り替え後の5年間(2010年度まで)に実際に昇給する場合の標準を新制度での「3号俸」にとどめるとしてます。俸給構造の「見直し」で、水準が下がらない3級以下の職員や、図表6の(A)のように、保障額をこえた後の昇給が、この措置の対象となります。 また、新設される地域手当は最長5年(例えば、新たな15%の地域手当の支給対象地域では、05年が3%など)で完成させる、広域異動手当は07年度以降に実施する、さらには焦点の一つとなっていた「本府省手当」については、2010年度までに結論を出す、などの措置も、現給保障の反射効です。 俸給の調整額の経過措置も 現給保障とは異なりますが、いくつかの経過措置も勧告されています。 一つは、俸給表水準の引き下げにともなって「減額」となる俸給の調整額と、定額化が予定されている「管理職手当(俸給の特別調整額)」の経過措置です。両方とも、旧制度と新制度の「差額」について、その25%相当額ずつ逓減することとしています(図表8)。 二つは、廃止される調整手当の経過措置です。06年4月1日時点でも、00年の調整手当「見直し」で暫定支給となった地域は、その経過措置が残っています(例えば、小樽、伊東など)。この経過措置は、そのまま残すこととなっています。 | ||||||||||
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