国公労新聞 号外

  2006年人事院勧告特集号

  ◆実質的な引下げ勧告《水準改定行わず》
  従来方式なら1.12%(4,252円)、一時金0.05月の改善が
  〜官民比較企業規模「50人以上」に改悪〜


●2006年勧告の主な内容

◎ 本年の給与勧告のポイント
  〜 月例給、ボーナスともに本年は水準改定なし
(1) 官民給与の較差(0.00%)が極めて小さく、月例給の水準改定を見送り
(2) 期末・勤勉手当(ボーナス)は民間の支給割合とおおむね均衡し、改定なし
(3) 比較対象企業規模など官民給与の比較方法の見直し
(4) 給与構造の改革の計画的な実施
  − 広域異動手当の新設、俸給の特別調整額の定額化等


◎ 本年の給与改定
1 比較方法の見直し(月例給)
(1) 比較対象企業規模 従来の「100人以上」から「50人以上」に変更企業規模50人以上100人未満の企業の各役職段階との対応関係の設定
(2) 比較対象従業員  ライン職の民間役職者の要件を変更
要件変更後のライン職の役職者と同等と認められるライン職の役職者及びスタッフ職に拡大
(3) 比較における対応関係の整理 給与構造の改革による俸給表の職務の級の新設・統合に伴う対応関係の整理


2 官民給与の比較
約10,200民間事業所の約43万人の個人別給与を実地調査(完了率89.1%)

〈月例給〉官民の4月分給与を調査し、主な給与決定要素である役職段階、年齢、学歴、勤務地域の同じ者同士を比較
○ 官民較差 18円 0.00%〔行政職(一)…現行給与 381,212円 平均年齢 40.4歳〕
※ 官民較差が極めて小さく、適切な俸給表改定が困難であること、諸手当についても民間の支給状況とおおむね均衡していること等を勘案して、本年は月例給の水準改定を見送り
〈ボーナス〉比較対象企業規模の見直しを行った上で、昨年冬と本年夏の1年間の民間の支給実績(支給割合)と公務の年間支給月数を比較
○ 民間の支給割合 公務の支給月数(4.45月)とおおむね均衡
〈その他の課題〉
(1) 特殊勤務手当の見直し   引き続き手当ごとの業務の実態等を精査して所要の見直しを検討
(2) 独立行政法人等の給与水準 専門機関として、独立行政法人等における給与水準の在り方等の検討において今後とも適切な協力


◎ 給与構造の改革
 昨年の勧告時において表明。地域間給与配分の見直し、職務・職責に応じた俸給構造への転換、勤務実績の給与への反映の推進などを柱とする俸給制度、諸手当制度全般にわたる改革を平成18年度以降平成22年度までに逐次実施

1 平成19年度において実施する事項
(1) 地域手当の支給割合の改定
 地域手当は、平成22年度までの間に計画的に改定することとしており、職員の地域別在職状況等を考慮し、平成19年4月1日から平成20年3月31日までの間の暫定的な支給割合を1〜3%引上げ
(2) 広域異動手当の新設
 広域的に転勤のある民間企業の賃金水準が地域の平均的な民間企業の賃金水準よりも高いことを考慮し、広域異動を行った職員に対して手当を新設
・ 異動前後の官署間の距離及び異動前の住居から異動直後の官署までの距離のいずれもが60q以上となる職員(異動の態様等からみて、広域異動手当を支給することが適当でないと認められる職員を除く。)に支給
・ 手当額は、俸給、俸給の特別調整額及び扶養手当の月額の合計額に、異動前後の官署間の距離が、60q以上300q未満の場合には3%(平成19年度は2%)、300q以上の場合には6%(平成19年度は4%)を乗じて得た額。異動の日から3年間支給
・ 地域手当、研究員調整手当、特地勤務手当に準ずる手当と所要の調整
・ 諸手当(超過勤務手当、期末・勤勉手当等)の算定基礎に
・ 平成19年4月1日から実施
(3) 俸給の特別調整額の定額化
 年功的な給与処遇を改め、管理職員の職務・職責を端的に反映できるよう、定率制から俸給表別・職務の級別・特別調整額の区分別の定額制に移行。地方機関の管理職に適用される三種〜五種の手当額については、改善を行った上で定額化。平成19年4月1日から実施
(4) 勤務実績の給与への反映
 新たな昇給制度及び勤勉手当制度における勤務成績の判定に係る改善措置等の活用について、管理職層以外の職員についても平成19年度からの実施に向けて準備
(5) 専門スタッフ職俸給表の検討
 専門スタッフ職俸給表の新設は、各府省において検討が進められている複線型人事管理の具体的内容等を踏まえ、引き続きその具体化について検討

2 その他の改革
 少子化対策が我が国全体で取り組まれている中で、扶養手当における3人目以降の子と2人目までの子の手当額の差を改める必要があることから、平成19年4月1日から3人目以降の子等の支給月額を1,000円引上げ(5,000円→6,000円)、給与構造の改革とあわせて実施

【別記1】 育児のための短時間勤務の制度の導入等についての意見の申出の概要

 少子化対策が求められる中で、公務においても、職員の育児を支援するため、人件費や定員の増加を伴うことなく、(1)育児のための短時間勤務、(2)後補充としての任期付短時間勤務、(3)並立任用の仕組みを導入し、長期間にわたる育児と仕事の両立を可能とするとともに、男性職員の取得拡大にも資するよう育児休業法を改正。

1 育児短時間勤務
(1) 任命権者は、職員が小学校就学始期に達するまでの子を養育するため請求したときは、公務運営に支障がない限り、短時間勤務を承認するものとすること。
(2) 1日当たり4時間(週20時間)、週3日(週24時間)等の型から決定。
(3) 同一の常勤官職に2人の週20時間勤務の育児短時間勤務職員を任用(並立任用)し、空いた官職に常勤職員を採用できること。
(4) 俸給、地域手当、特別給は勤務時間に応じた額。


2 任期付短時間勤務職員
(1) 任命権者は、育児短時間勤務職員が処理できない業務に従事させるため、任期付短時間勤務職員(非常勤職員)を任用できること。
(2) 勤務時間は週10時間から20時間までの範囲内で定めること。
(3) 俸給表を適用し、俸給、地域手当、特別給は勤務時間に応じた額。月例の手当は原則として非支給。


3 実施時期
 公布の日から起算して1年を超えない範囲内の日から実施。

【別記2】 自己啓発等休業に関する法律の制定についての意見の申出の概要

 職員の自主的な幅広い能力開発や自発的な国際ボランティアへの参加を可能とするために、職員としての身分を保有しつつ、職務に従事しない(無給)制度を創設。

1 自己啓発等休業制度
(1) 任命権者は、職員が次の事由による休業を請求したときは、公務運営に支障がある場合を除き、勤務成績等を考慮した上、承認できるものとすること。
・ 修学のための休業 国内外の大学の大学院若しくは学部等の課程に在学。 ・ 国際貢献活動のための休業 独立行政法人国際協力機構が実施する国際貢献活動等に従事。
(2) 休業の期間 1回につき3年(修学の場合は原則2年)を超えない期間。
(3) 休業の効果 身分は保有するが職務に従事せず、給与は非支給。

2 実施期間
 公布の日から起算して1年を超えない範囲内の日から実施。


●公務員人事管理に関する報告の骨子

1 本院の基本認識

(1) 今後の公務・公務員の役割
・ 公務は、国民生活を支える社会的基盤。高い質の維持・安定的運営が必要
・ 公務志望者層の変化が懸念される中、多様で有為の人材確保・育成が重要。行政の専門家集団として、高い倫理観と市民感覚の下、誇りと志をもって公務従事できる環境整備が課題
・ 定員純減・配置転換を円滑に実施する上でも、公正の確保・職員の利益保護への留意が重要

(2) 公務員人事管理の向かうべき方向 − ライフサイクル全体に即した検討
・ 外部人材の登用を進めると同時に、行政の中核を担う人材は、職業公務員として確保・育成・活用していくことが引き続き基本
・ キャリア・システムへの批判を受け止め、幹部要員を計画的に確保・育成する仕組みを幅広く検討。当面、節目節目の選抜強化と採用試験の種類にとらわれない人材登用を推進
・ 専らジェネラリスト重視から、特定分野の高度専門職など業務の必要性と職員の適性等に応じた人材の確保・育成へ
・ 仕事と家庭生活の調和を図るため、職員本人の意向にも配慮した多様な勤務形態を用意
・ 早期退職慣行の是正等のため、複線型人事管理の導入が肝要。生涯設計の在り方につき幅広い検討が必要


2 主な課題と具体的方向

(1) 能力・実績に基づく人事管理
・ 体系的な人事評価制度の着実な実現に向けて、評価の試行の対象職位等を段階的に拡充
・ T種職員の選抜の厳格化とU・V種等職員の登用の促進
・ 分限制度の適切な運用 − 手続や留意点等の対応措置についての指針を早急に作成

(2) 多様な有為の人材の確保
・ 人材供給構造が変化し、公務志望者層の意識の変化が看過できない状況。人材確保の在り方について強い問題意識を持って検討
・ 新たな経験者採用システム(募集や能力実証の一部を人事院が実施)を本年秋から導入
・ 官民人事交流の促進

(3) 勤務環境の整備
・ 育児のための短時間勤務制度、自己啓発等休業制度の導入について、勧告と併せ意見の申出(別記参照)
・ 超過勤務の縮減に向け、政府全体としての業務量の削減、在庁時間等の適切な把握、命令要件等を指針に盛り込むこと等の取組を推進。週所定勤務時間については引き続き検討
・ 心の健康づくりの対策の推進、苦情相談の充実

(4) 退職管理
・ 営利企業への再就職規制制度を厳正に運用。職員の能力を活用した再就職は「公正な人材活用システム」により公正・透明に推進
 早期退職慣行是正のため、複線型人事管理の導入など能力・実績に応じた昇進管理を強化。専門スタッフ職俸給表は引き続き検討
・ 内閣の要請を踏まえ、退職給付の官民比較、外国調査。まとまり次第、見解を表明



●解説 人事院「代償措置」の役割を放棄

政府・財界の圧力に屈し、拙速・一方的に変更

比較企業規模見直し

 3度にわたる閣議決定(昨年9月、12月、本年7月)など、政府の比較方法見直し圧力が強まる中で、人事院は比較方法の在り方に関する研究会と給与懇話会で検討を重ねる一方、今年の民間給与調査の対象企業を50人以上にまで先行的に拡大。研究会の最終報告がでると、組合との十分な話し合いもしないまま、短時日のうちに見直しを強行しました。

比較企業規模を引き下げ
 今回の比較方法見直しで最大の問題は、比較企業規模を従来の100人以上から50人以上に引き下げたことです。政府の圧力や国会での論議、マスコミ論調などに屈したもので、中立第3者機関としての役割をみずから放棄するものです。しかも、従来方式であれば月例給で1・12%(4252円)、特別給で0・05月の改善が見送られたことになり、その不利益(年間51000円)は一方的に職員に押しつけられます。
 比較規模を50人以上に拡大する理由として、人事院は「民間準拠の原則を今後とも維持しつつ、同種・同等の者同士の比較が必要」だとした上で、「国民の納得を得るためにはより広く民間給与実態の反映に努める必要がある」と説明しています。
 100人規模以上では民間企業の従業者の過半数(55%)をカバーできるが、50人規模以上では6割以上(64・8%)となること、50人規模以上では最低の県でも従来の3割強(33・8%)から約5割(49・2%)に改善されること(図表3)、100人未満の企業においても公務と同様の役職段階(部長、課長、係長といった)がみられ、調査実施率も84%をこえ、調査実人員も十分確保できたことなどもあげています。

比較企業規模見直しの問題点
 要するに、人事院の理由は「民間従業者のカバー率が増えることで、国民の理解が得られる」ということにすぎないことがわかります。これには、
 ・ 職員が納得できる合理的な見直し理由が示されていないこと
 ・ 使用者政府の要請だけを考慮し、民間準拠の根幹部分を変更したこと
 ・ 公務の組織や業務実態、人事政策の共通性、新規採用市場における競合関係などからみてより適切な比較対象規模を検討しなかったこと
 ・ 企業規模100人以上との比較をほとんど唯一の労働条件決定の指標としてきた立場を自ら覆したこと
 などといった重大な問題点が指摘できます。

特別給比較でも規模を引き下げ
 特別給(ボーナス)についても、人事院は月例給と同様、企業規模100人未満の企業を比較に加えることにふみきり、結果として公務の特別給は現行水準に据え置かれました。  特別給の官民比較は、事業所単位で前年冬と当年夏の支給額を調査の上、特別給の平均支給額を平均所定内給与月額で除して年間平均支給月数を求め、公務の年間支給月数と比較するやり方がとられています。
 このような方法は、民間の特別給水準の迅速な反映の要請や調査上の制約によるもので、当面は現行方式を維持せざるをえないというのが、人事院の基本認識です。しかし、この現行方式のままでは、比較規模の見直しが特別給の官民較差に直接的に影響することから慎重な検討が求められていました。しかし、月例給との整合性のみを理由に、規模50人以上という機械的判断を下したという点は改めて人事院の姿勢が問われます。

役職対応関係も見直し
 公務と民間企業という異なる集団間の賃金比較を正確に行うためには、職種(役職)、学歴、年齢など賃金を決定する要素をそろえて、同種・同格のもの同士の賃金を比較する手続きが必要になります(同種・同等比較)。
 年齢や学歴はともかく、役職となるとそう簡単に同等性は判断できません。単に職名が同じでも職務の困難性や組織における責任の大きさが同じとは限らないからです。ライン職とスタッフ職の混在もあります。
 そのため、これまでは、企業規模500人以上の民間企業の役職段階や構成員の大きさなどをみながら官民の対応関係を決定し、500人未満については、段階を下げた対応関係を決定しています。この官民の役職対応関係について、今回、(1)級編成の再編等に伴う対応関係の整理、(2)スタッフ職や部下数の満たない同等役職を比較に加える措置、(3)新たに100人未満企業の役職対応関係を定めることなどの大幅な見直しが行われました(新たな対応関係は図表4)。  注目されるのは、企業規模「100人未満」の課長以下の役職対応関係を「100人以上500人未満」のそれと横並びにしたことです。100人以上500人未満の対応関係は従来の「500人未満」の対応関係と実質的に変わりませんので、500人未満全体の課長以下との賃金比較に小規模事業所の賃金水準が反映していると考えられます。

勤続要素は無視
 同種・同等比較を強調する以上、賃金を決定する要素としての「勤続年数」の重要性は否定できません。
 人事院はこれまで、(1)「年齢」要素がある程度「勤続」要素の代替え要素になりうること、(2)勤続年数調査は民間企業の協力を得られにくい、(3)勤続を加えると比較の対応関係の組み合わせが膨大となりサンプル数も限られるので比較の精度に影響を与えること、などと説明し、比較要素に加えることを拒否してきました。研究会の報告書では計量経済学の手法を用いて、勤続が所定内給与の変動に与える影響は年齢より小さいとも述べています。年齢か勤続のどちらかだけを取り出せば、年齢の方が賃金決定に与えるというのです。しかし、公務員に標準労働者が多く、年齢と勤続をそろえた官民比較を行えば公務が有利になり、勤続要素の重要性は明らかです。前記のような説明では排除できません。

官民比較方法の残された課題
 「骨太方針2006」では、地方公務員の人件費改革の一環として、地域の民間給与のさらなる反映、「ボーナスの支給月数の地域格差の反映」「特殊勤務手当の削減」「級別職員構成の是正」「教職員等人件費の削減」(教職員給与優遇分の削減を含む)などを強く求めています。今後人事委員会等に対する抑制圧力が一段と強まることが予想されます。
 地方人事委員会勧告の場合、県や市単位という限られた地域の調査となるため、比較対象企業規模の変更の影響が強く及ぶ懸念があるだけに、マイナス勧告をださせない取り組みが重要です。
 同様に独立行政法人についても、今回の人事院勧告を機械的に反映させ人件費を抑制しようとする動きに対する反撃を強める必要があります。
 また、人事院の研究会は、官民比較をめぐる今後の検討課題として(1)本省職員の比較については東京23区本省の千人以上とすること(特別給を含む)、(2)特別給比較の在り方についてのさらなる検討などについてふれています。これについては、(1)配分の改悪を許さず、あくまで全体水準の改善につながる方向での検討を求めるとともに、(2)個人別支給額の把握による精緻な比較が真の特別給の制度・水準改善につながるのかどうかも含め慎重な検討を求める必要があります。



●民間改善の中で公務は据え置き

扶養手当(第3子等から)を改善

給与改定

水準
 人事院は、本年4月時点で官民較差が18円、0・00%と極めて小さく、俸給表改定は困難、諸手当も官民の状況が均衡しているとして月例給の水準改定は行わないことしました。
 特別給についても官民の支給月数がおおむね均衡(民間支給実態4・43月分に相当)しているとして、年間4・45月の支給月数を据え置くこととする勧告を行いました。これらは、前述しているとおり、官民比較方法の「見直し」が大きく影響した結果です。
 2年連続での「マイナス勧告」は避けられましたが、従来方式で勧告作業がすすめられれば大幅な賃金改善となっていました。国家公務員の利益擁護のための人事院勧告本来の役割を放棄し、公務員賃金を「引き下げる」ための勧告であることは言うまでもありません。
 06年春闘が前年を上回る賃金改善の状況(表1)となったことをはじめとして、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」4月確報値で、基本給に相当する所定内給与が前年同月比で0・6%増加し、2月から3ヶ月連続で増加していること、7月26日に出された中央最低賃金審議会の「目安」が2年連続で有額(2〜4円)の引き上げ答申となり、これを受けた地域別最賃では目安額に上乗せして改定する地域(東京・宮城など)が出始める状況にあることなど、社会全体が賃金改善方向にむかっています。
 また、人事院が調査した民間における賃金改定(表2)の状況で、一般の従業員でベアを実施した事業所の割合が05年20・5%、06年25・7%(従来の100人以上でみると25・8%)と増加傾向にあること、定期昇給を行っている事業所の過半数の事業所において、昇給額が昨年より増額となっていることが明らかになっています。厳しい情勢を脱し、賃金改善をはかろうとしている民間の状況があらわれています。
 こうした状況のもとで、人事院勧告が社会的に大きな影響を持つことをふまえれば、人事院が賃下げにつながる官民比較方法の「見直し」を強行し、「引き下げ勧告」を行ったことは重大な問題です。人事院は、賃下げを目的とする「見直し」ではないと言い続けてきましたが、従来の官民比較方法による結果と、「見直し」による結果の「較差」は、それが言い訳にしかすぎなかったことを示しています。

扶養手当
 給与構造の「見直し」にかかわる原資(昇給の1号俸抑制分)を使って、扶養手当のうち第3子以降の子等にかかる手当額(現行5、000円)を第2子までの手当額(6、000円)に合わせる改善が行われます。給与構造の「見直し」とかかわることから、実施時期は07年4月からとなっています。
 扶養手当の改善は、官民の均衡を図るものではなく、少子化対策などが国全体で推進する課題であるとの問題意識で、人事院が検討を進めてきたもので、子ごとの手当額のバランスに配慮したものです。
 なお、この改善を検討する一方で、配偶者手当の引き下げがねらわれていました。この間の交渉で、配偶者手当を約5割の職員が受給しているという実態をふまえ、引き下げに反対したことに対して人事院は、配偶者にかかわる民間の支給状況が年々減少傾向にあると回答しています。来年以降について注視する必要があります。



●広域異動手当を来年度から実施へ

「見直し」2年目の措置

給与構造見直し

地域手当
 地域手当は、昨年の勧告で、俸給表水準の引き下げ分(4・8%)と調整手当廃止の原資をもとに、地域の民間賃金水準を反映させる手当として新設されました。
 支給割合は、改正給与法で1〜6級地別に定められています。段階的実施のため附則で読み替えが行われ、2010年3月31日までの間、暫定支給割合が定められます。
 2007年度の暫定支給割合は、図表3のとおりです。


広域異動手当
 広域異動手当は、人事異動にともなって、異動前後の官署間の距離及び異動前の住居から異動直後の官署までの距離が、いずれも60キロメートル以上となる職員に、異動の日から原則3年以内の期間支給されます。
 手当額は、俸給、俸給の特別調整額及び扶養手当の月額の合計額に、異動前後の官署間の距離区分に応じた支給割合を乗じて算出されます。2段階に分けて導入されることから、支給割合は、2007年度は60キロメートル以上300キロメートル未満は2%、300キロメートル以上は4%、2008年度以降は60キロメートル以上300キロメートル未満は3%、300キロメートル以上は6%となります。
 地域手当が支給される場合には、広域異動手当が地域手当の支給額を超える場合に限り、超える部分の広域異動手当が支給されます。特地勤務手当に準ずる手当が支給される場合には、特地勤務手当に準ずる手当の支給割合が2%減となります。調整手当の異動保障(図表4)や、研究員調整手当とも調整措置がとられます。
 なお、この手当は諸手当(超過勤務手当、期末・勤勉手当等)の算定基礎になります。
 また、異動前後の官署間の距離のみが60キロメートル以上となる職員などで支給対象職員との権衡上必要と認められる者についても支給されます。ワンタッチ異動(6か月以内の異動等)には支給されません。なお、再異動の取扱いについては別に定めるとし、施行日前に広域異動を行った職員に対し経過措置がとられます。


特別調整額の定額化
 俸給の特別調整額(管理職手当)については、「年功的な給与処遇を改め、管理職員の職務・職責を端的に反映する」ことを目的に、2007年4月1日から定額制に移行します。
 手当額は、「職務の級別の算定基礎号俸」(各職務の級の人員分布の中位(2006年4月1日現在)に当たる号俸)の俸給月額に「区分別の算定割合」を乗じて算定されます。算定割合のうち、地方機関の管理職に適用される3〜5種について、地方機関における超過勤務手当の支給実績を考慮して図表5のとおり見直され、引き上げた上で定額化されます。
 なお、定額化に伴い減額となる職員については4年間の経過措置が設けられます。また、職務の級における最高号俸月額の100分の25を上限とすることとされています。


勤務実績の反映
 昨年の人事院勧告で、勤務実績の給与への反映について、(1)査定昇給制度(図表6)の導入、(2)勤勉手当への実績反映の拡大、(3)昇格基準の見直し(昇給及び勤勉手当の勤務成績判定結果の活用)が行われました。
 すでに、査定昇給については、管理職層の「判定基準」が示されています。勤勉手当については、「上位判定基準」は一般職員・特定幹部職員ともに共通ですが、「下位判定基準」は特定幹部職員の基準となっています。
 今年の報告では、査定昇給制度及び勤勉手当制度における勤務成績の判定改善措置の活用について、2007年度からの一般職員への拡大に向けてこれまで示された基準をベースに準備をすすめるとしています。


●週所定時間短縮を継続検討

育児のための短時間制度導入

勤務時間

短時間勤務制度
 人事院は、勧告と同日付で「育児のための短時間勤務制度」と「自己啓発等休業制度」を新たに導入する『意見の申出』を国会と内閣に行いました。なお、この「育児のための短時間勤務制度」については、介護とともに要求していた制度要求の実現ですが、「介護のための短時間勤務制度」については、介護休暇のあり方も含めて更に検討するとしました。

 育児のための短時間勤務制度の導入
 育児のための短時間勤務制度は、職員が育児休業などのように完全に職務を離れることなく育児を行えるようにするために設けられる制度で、職員に対する「育児短時間勤務職員」と、その後補充の「任期付短時間勤務職員」の2つで構成されています。

 1 育児短時間勤務職員
 育児短時間勤務を選択する職員は、「1日4時間(週20時間)勤務」、「1日5時間(週25時間)勤務」、「週2日半(20時間)勤務」、「週3日(24時間)勤務」の4パターンの中から、「1月以上1年以下」の単位で選択し、子が小学校就学始期に達するまで、期間の延長を請求することができます。
 その間、俸給、地域手当、特別給は時間割した額が支給され、住宅手当など生活関連手当は全額支給されることが予定されています。昇給については、短時間勤務を選択したからといって不利には扱わないとしています。
 なお、「週20時間勤務」を選択した職員が複数いた場合、2人で1つの官職を占めること(並立任用)ができ、その場合は、空いた常勤官職に常勤職員を当てることもできることになります。
 育児のための短時間勤務制度の導入に伴い、育児休業期間の給与に関する復職時調整が1/2から2/2に変更されます。また、部分休業の名称を「育児時間(仮)」に変更し、対象となる子の年齢も「3歳」から小学校就学始期に改めるとしています。
 なお、退職手当や共済組合、宿舎の取り扱いについては、育児休業との均衡等を考慮しつつ、検討が継続されています。

 2 任期付短時間勤務職員
 任期付短時間勤務職員は、短時間勤務職員が処理しない職務のために任用されるもので、原則、公募及び厳格な能力実証に基づき採用されます。
 勤務時間は、週10時間〜20時間の範囲内で定められ、給与は、俸給表が適用され時間割した額が支給されます。手当については、職務関連手当は時間割した額が支給されますが、扶養手当、住居手当、単身赴任手当は支給しないとしています。
 身分は、定員外の非常勤職員ということですが、以上のとおり、俸給表が適用され、一定の手当も支給されるなど、新たな概念の非常勤職員が誕生することになります。なお、任期付短時間勤務の官職には、60歳台前半の再任用職員の活用も想定されています。

自己啓発等休業制度
 自己啓発等休業制度は、職員の能力開発を促進していくためには、自発性を重視する必要があるとして、修学や国際貢献活動に参加する職員に休業を認めるというものです。1回につき3年を超えない期間で給与は無給です。
 この休業制度について、当初、人事院は、公務貢献目的に限定しようとしていましたが、交渉等の結果、「職員の自発的な修学と国際貢献活動への参加」に認められる制度となりました。
 なお、この制度が設けられることにより、職員の能力開発が個々の職員の責任とされ、組織としての責任である研修等がおろそかにならないように、組合として注意を払う必要があります。

所定労働時間
 週所定労働時間については、超過勤務縮減問題への対応の「なお書き」で、「引き続き民間の動向把握を行うとともに、勤務時間の短縮が各府省の行政サービスに与える影響等についても調査を行うなど必要な検討を進める」と表現してるに止まっています。
 人事院は本年、所定労働時間の調査を行っており、その結果、平均所定労働時間は、「1日単位:7時間45分」、「1週間単位:38時間53分」とのデータを明らかにしています(図表2)。
 公務の場合は、「1日8時間、週40時間」であり、民間が公務を上回っていることが明らかです。にもにもかかわらず、これを改定しない理由を人事院は交渉の中で、「1日あたりでは7時間45分だが、1週間あたりでは39時間弱であり、38時間45分にはなっていないこと」、「これまでは、週休2日制での対処であったが、今後は、勤務時間の短縮であり、行政サービスに与える影響等も考慮しなければならない」等を挙げています。
 給与が民間準拠というのであれば、勤務時間についても民間に準拠すべきで、データが出ている以上、早急に必要な措置をとるべきです。


超勤縮減
 超過勤務縮減問題への対応では、「政府全体として業務量を減らすとともに、現場における厳正な勤務時間管理や管理者・職員の意識改革が必要である」、「各府省において在庁時間及び勤務した時間等を適切に把握することが肝要」とした上で、人事院としては、「明確な超過勤務命令の要件、明示的な命令の徹底、他律的な業務における上限時間等を『超過勤務の縮減に関する指針』に盛り込む」としています。
 国公労連は、超過勤務の縮減に関する要求で、勤務時間管理の徹底と不払い残業の根絶を要求してきました。
 霞国公が、本年行った「中央省庁に働く国家公務員の残業実態アンケート」の調査結果では、月平均残業時間が38・9時間、残業手当の支給実態では「不払いがある」が71・1%に達しています。
 こういう異常な現状から、人事院も、各府省に、職員の勤務した時間の適切な把握を求めるとともに、明確な超過勤務命令の要件等を「超過勤務縮減指針」に盛り込むことなどのとり組みを進めるといわざるを得なかったものといえます。
 指針の発出だけでなく、その後の厳正な実施の確認を人事院に求めていくことと、各職場での実効あるとり組みが求められます。


●年金・退職金の見直し表明


公務員制度改革

 近年、給与勧告と同時に、公務員制度全般について、当面の検討課題などの「報告」を行うことが恒例になっています。今年は、政府が「専門調査会」を設置して、公務や公務員の範囲、労働条件決定システム(労働基本権)などの検討を開始していることを意識した「公務員人事管理に関する報告」をおこなっています。

 人事院の基本認識1 「公務・公務員の役割」
 人事院に設置された「給与懇話会」の「14の意見」もふまえて、「今後の公務・公務員の役割」に言及しています。
 まず、公務は、「国民生活を支える社会的基盤」として、「高い質の維持と安定的な運営」を強調しています。そのような公務を支える「多様で有為の人材確保・育成」を強調し、そのためにも「誇りと志をもって公務に従事できる環境整備」が人事行政の課題だと述べています。その点とかかわって、定員純減・配置転換という行政改革の強行にあたっての「公正の確保・職員の利益保護への留意」にも言及しています。
 官民賃金比較企業規模の引き下げが、環境整備なのか、定員純減への事後対処だけが人事院の役割なのか、という問題は残ります。

 人事院の基本認識2 「公務員人事管理の向かうべき方向」
 現在の公務員制度の運用実態や、それに対する国民的批判も念頭に、5点に言及しています。一つは、実施部門も含め、行政の中核は、新規採用と長期勤続の「職業公務員」が担うとし、そのための人材確保・育成・活用をとしています。二つは、1回の採用試験で幹部選抜をする現状の「修正」だとしています。三つに、ゼネラリスト重視の人材育成からの「修正」です。四つに、仕事と家庭生活の調和を図るための「多様な勤務形態」の用意です。最後に、早期退職是正等を目的にする「複線型人事管理の導入」です。
 特段の目新しさがある訳ではありませんが、専門家としての公務員確保や育成を従来以上に強調しています。

 当面の検討課題とその方向
 基本認識も前提に、具体的な制度検討などをおこなう4つの課題に言及しています。
 第1は、「能力・実績に基づく人事管理」です。より具体的には、(1)体系的な人事評価制度の着実な実現、(2)1種職員の選抜の厳格化、(3)分限処分にかかわる指針の早期作成、に触れています。キャリア特権制度の「修正」と、能力・実績評価は「一体」という姿勢です。
 第2は、「多様な有為の人材の確保」です。具体的には、(1)公務員希望者の減少などへの対応、(2)30歳以上の「中途採用者」拡大のための経験者採用システム導入、(3)官民人事交流の促進です。公務で育成が困難な人材をこれまで以上に外部に依存しようというのです。
 第3は、「勤務環境の整備」で、先に解説している短時間勤務制度など、勤務時間・休暇制度などを課題としています。なお、メンタルヘルス対策や処遇への苦情相談の強化にも言及しています。
 第4が「退職管理」です。「天下り」規制の厳格な運用と、複線型人事管理のための「専門スタッフ職俸給表」の検討に言及しました。
 見過ごせないのは、民間企業の企業年金と退職金と、共済年金の職域年金についてです。公務員の退職金の「水準比較」及び、外国の公務員年金調査の結果をふまえ、人事院としての見解を表明するとし、単なる調査にとどめない姿勢を示している点です。06年秋の重要な運動課題となることは必至です。


職員の給与に関する報告(抄)

 報告の概要
 本院は、国家公務員の給与水準に関して、国家公務員法に定める情勢適応の原則に基づき、毎年、公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行ってきている。
 この民間準拠による公務員と民間企業従業員の給与の比較方法の在り方について、本院は、昨年の勧告時に、学識経験者の研究会を設けて、検討を行っていくことを表明した。
 その後、本院は、学識経験者による「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」を設置し、同研究会においては、官民給与の比較方法について、専門的、技術的な観点からの検証、検討が行われ、報告書が提出された。さらに、各界有識者による「給与懇話会」を設置し、給与懇話会においては、公務及び公務員の役割や公務員給与のあるべき姿等について、7回にわたる議論を経て、意見がとりまとめられた。また、本院は、官民給与の比較方法について、各府省の人事当局や職員団体から意見聴取を行いつつ、慎重に検討を進めてきた。
 その結果、本年の勧告の基礎となる官民給与の比較方法について、比較対象企業規模を従来の100人以上から50人以上に改めるとともに、月例給の比較対象となる民間企業の従業員の範囲を見直すなど抜本的な見直しを行うこととした。(中略)
 本院が行った本年の春季賃金改定後の民間企業の給与実態調査においては、ベースアップを実施している事業所の割合が昨年より高くなっていたほか、定期に行われている昇給を実施している事業所の過半数の事業所において昇給額が昨年より増額となっていた。
 このような状況において、前記の官民給与の比較方法の見直しを行った上で、本年4月に支払われた月例給について官民の比較を行った結果、公務員の月例給と民間の月例給がほぼ均衡していることが明らかとなった。したがって、月例給についての改定を行わないことが適当であると判断した。
 一方、特別給については、前記の比較対象企業規模の見直しを行った上で、民間の特別給(ボーナス)の昨年冬と本年夏の1年間の支給実績を調査し、官民の比較を行った結果、本年は、民間の年間支給割合が公務の年間支給月数とおおむね均衡していたことから、改定を行わないこととした。(以下略)

1 給与勧告の基本的考え方

2 官民の給与較差に基づく給与改定

 1 官民の給与の実態(略)
 2 官民給与の比較方法の見直し

 (1) 見直しに至る経緯
 官民給与の比較は、公務員と民間企業従業員の同種・同等の者同士を比較することを基本として、公務においては行政職俸給表(一)、民間においては公務の行政職俸給表(一)と類似すると認められる事務・技術関係職種の者について、主な給与決定要素である役職段階、年齢、学歴、勤務地域を同じくする者同士を対比させ、精密に比較を行うものである。このラスパイレス方式による比較方法は、昭和34年に導入したものであるが、長年の経緯を経て、公務員の給与決定方法として定着している。その間、昭和39年に比較対象企業規模を50人以上から100人以上に引き上げたほか、比較職種、比較における対応関係、比較給与種目等について、適宜、見直しを行ってきている。
 しかしながら、これまで比較方法の見直しについての全般的な検討を行っていないこと、近年、スタッフ職の従業員の増加等民間企業における人事・組織形態が変化してきていること等を踏まえ、本院は、昨年の勧告時に、学識経験者の研究会を設けて、比較方法の検討を行うことを表明した。
 また、官民給与の比較方法については、国会において、比較対象企業の範囲を拡大すべきとの議論が広くなされたほか、昨年9月、12月及び本年7月の3度にわたる閣議決定において、人事院に対し、比較対象企業規模の見直し等についての要請が行われている。(中略)
 本院は、これらの報告書等の内容を踏まえ、各府省の人事当局や職員団体から意見聴取を行いつつ、民間企業の給与水準をより適正に反映する方法として、従来の官民給与の比較方法をどのように見直すことが適当かという観点から検討を行った。

 (2) 比較方法の見直しの考え方
 本年の官民給与の比較においては、比較対象企業規模を従来の100人以上から50人以上に改めるとともに、月例給の官民比較について、比較対象従業員であるライン職の従業員の要件を改め、スタッフ職の従業員等を比較の対象に加えた上で、比較における対応関係を見直すこととした。

 ア 比較対象企業規模
 公務と比較を行う民間企業の規模については、月例給における同種・同等の者同士を比較するという原則の下で、民間企業の従業員の給与をより広く把握し反映させることが適当である。
 月例給の官民比較においては、公務における役職の責任の大きさを基本に公務と民間の同種・同等の判断を行っているが、企業規模100人未満の民間企業のうち企業規模50人以上の民間企業については、多くの民間企業において公務と同様の役職段階(部長、課長、係長など)を有していることから、公務と同種・同等の者同士による比較が可能である。また、企業規模50人以上の民間企業であれば、これまでどおりの精緻な実地調査による対応が可能であり調査の精確性を維持することができる。
 本年の職種別民間給与実態調査においては、企業規模50人以上の民間事業所を調査対象としたが、結果として、企業規模50人以上100人未満の民間事業所においても、84・3%の事業所において調査を完了し、官民の給与比較の対象となる役職段階別の調査実人員も十分に確保することができた。
 これらを踏まえて、比較対象企業規模については、50人以上とすることとした。

 イ 比較対象従業員
 月例給の官民比較において、公務と比較を行う民間企業の役職者は、これまでライン職に限り、ライン職についても部下数等の要件を満たす者に限定してきたが、比較対象従業員の範囲についても、民間の実態をできるだけ広く把握し反映することが適当であることから、公務及び民間企業の双方において、人事・組織形態が変化してきていることを踏まえ、所要の見直しを行うこととした。
 具体的には、ライン職の民間役職者について、公務における役職者の部下数等を考慮してその要件を改めることとし、スタッフ職及び要件を満たしていないライン職の役職者のうち、要件を改めた後のライン職の役職者と職能資格等が同等と認められる者についても比較の対象に加えることとした。

 ウ 比較における対応関係
 月例給の官民給与の比較の対応関係については、給与構造の改革において、本年4月に俸給表の職務の級の新設・統合を行ったことに伴い、対応関係を整理することとした。
 また、企業規模50人以上100人未満の民間企業の各役職段階と公務の各職務の級との対応関係については、現在も企業規模500人以上と500人未満の民間企業で対応する役職段階に一定の差を設けていること等を踏まえ、特定の役職段階について、企業規模100人以上500人未満の民間企業との間で一定の差を設けることとした。
 これらにより、本年の官民給与の比較における対応関係は、図表4のとおりとした。

 エ 特別給の比較方法
 特別給の比較方法については、民間給与の実態調査において、月例給に加えて個人別に年2回分の特別給の支給額を調査することが困難であること、民間企業の特別給は企業全体の利益の配分として個々人の実績に応じて支給されており、同種・同等比較になじまない側面も有していること等を踏まえ、当面、事業所単位で調査を行っている現行の枠組みは維持することとした。
 なお、比較対象企業規模については、アのとおり、月例給の官民比較において、企業規模50人以上の民間企業としたこととの整合性を考慮し、特別給の官民比較においても、企業規模50人以上の民間企業を比較対象とすることとした。

 3 官民給与の比較(略)
 4 本年の給与の改定(略)

 3 給与構造の改革(略)

 4 給与勧告実施の要請(略)


公務員人事管理に関する報告(抄)

1 本院の基本認識

 (1) 今後の公務・公務員の役割
 現在、政府において「簡素で効率的な政府」の実現に向け、厳しい財政状況の下、定員の純減やそれに伴う全府省規模の配置転換・採用抑制等の実施、官民競争入札の実施などが本格的に進められることになっている。
 このような状況の下における公務・公務員の役割について、本院としては次のように考えている。
 ア 公務の果たすべき役割の領域やその業務遂行形態については、時代の要請に応じた見直しは必要であるが、公務は、国民の安全・安心に係る分野をはじめとして、国民生活を支え、国家の長期的戦略を策定し、実施していくための社会的基盤であり、今後とも、高い質を維持しながら安定的に運営される必要がある。
 イ このため、公務を担う公務員については、公務に対する魅力の減少等による志望者層の変化が懸念される状況にあるが、その質の低下を招くことなく、多様で有為の人材を確保し、育成していくことが、極めて重要である。その際、公務員は、政策決定を支えるとともに、国民本位のより良質で効率的な行政サービスを提供できるよう、所管行政にかかわる高い専門性や高い倫理観と市民感覚を備えた行政の専門家集団となっていく必要がある。このような職員をどのように確保・育成し、誇りと志をもって公務に従事できる環境をいかに整備していくのかが、これからの人事行政に課された課題であると考える。
 いずれにせよ、定員の純減や職員の配置転換等に当たっては、公正の確保と職員の利益保護に留意することが、全府省規模での配置転換等を円滑かつ適正に実施していく上においても極めて重要であり、本院としても適切にその使命を果たすべく対処していきたい。
 なお、今般、政府と労働団体との協議を踏まえ、政府に専門調査会が設置され、公務の範囲の在り方をはじめ、公務を担う従事者の類型化及びその在り方や、これらを踏まえた公務員の労働基本権を含む労使関係の在り方について検討が開始された。本院としては、これらの問題は、国民生活にも大きな影響を及ぼす重要な事柄であり、専門的で幅広い見地から掘り下げた議論が必要であると考えており、その検討状況について注視していきたい。

 (2) 公務員人事管理の向かうべき方向
 公務員人事管理に関しては、前記のとおり、様々な指摘や意見がある。これらは相互に関連するものであり、採用から育成・選抜を経て退職に至るまでの公務員のライフサイクル全体に即し、次のような点を踏まえて検討していく必要があり、本院としては、関係各方面と意見交換を行いながら、施策の具体化を図っていきたいと考えている。
 ア 我が国社会の雇用の流動化が、今後、進んでいくと考えられる中、公務においても、新たな行政分野や専門的・時限的な業務等を中心に、外部から幅広く、多様な勤務形態により人材を確保していくことがますます必要となるが、多くの民間企業と同様に、行政の中核を担う人材については、新規学卒後、採用試験を通じて確保し、職業公務員(行政の専門家)として育成し、活用していくことが、引き続き基本となるものと考える。
 イ いわゆるキャリア・システムに関しては、1回の試験で幹部要員の選抜が行われるとして、様々な批判がある。他方、国家の全体戦略の策定を支え、行政執行に係る管理能力に優れた幹部要員を計画的に確保・育成することは今後とも極めて重要である。そのための仕組みについて、現状に対する批判を正面から受け止めつつ、民間企業の例や諸外国の公務員制度を参考にしながら、幅広く検討していく必要がある。現在のシステムにおいても、採用後の節目節目において厳正な選抜を行い、採用試験の種類にとらわれず、職員の能力や適性に応じた幅広い人材登用を進めることが重要である。
 ウ また、従来、1種採用職員を中心に専らジェネラリストとしての育成に重点が置かれてきた面があるが、行政ニーズの複雑・高度化や多様化の中で、例えば、国際的にも活躍できる特定分野の高度の専門職(エキスパート)を養成するなど、業務の必要性と職員の適性等に応じた人材の確保・育成を図っていくことが重要である。
 エ 公務においても、今後、職員意識の変化や女性の登用等が進んでいくことが見込まれる中、職業生活と家庭生活の調和を図りつつ、有為の人材を確保していくためには、職員本人の意向にも配慮した多様な勤務形態を用意するなど勤務環境の整備を図ることが重要である。
 オ 退職管理については、広く国民の理解を得ながら、活力ある公務組織を維持しつつ、職員が安んじて公務員としての職業生活を全うできるものとしていく必要がある。このため、年次一律的な昇進管理や早期退職慣行を是正し、専門的な能力・経験を活かした多様なキャリアを目指していくことができるよう、各府省・職員双方の意識を改めつつ、複線型人事管理の導入を図ることが肝要である。あわせて、退職後を含めて生涯設計の在り方について幅広い検討が必要である。

2 主な課題と具体的方向

 (1) 能力・実績に基づく人事管理
 ア 人事評価制度の整備
 イ 能力・実績に基づく任用の推進
 (ア)1種採用職員の選抜強化、2種・3種等採用職員の登用促進
 (イ)女性職員の採用・登用の拡大
 ウ 分限制度の適切な運用
 (2) 多様な有為の人材の確保
 ア 人材の供給構造の変化等を踏まえた採用
 イ 経験者採用システムの導入
 ウ 官民人事交流の促進
 (3) 勤務環境の整備
 ア 弾力的な勤務形態の導入
 (ア)育児のための短時間勤務の制度の導入
 (イ)自己啓発等休業の制度の導入
 イ 職員の健康の保持等
 (ア)超過勤務縮減問題への対応
 (イ)心の健康づくりの対策の推進
 (ウ)苦情相談の充実
 (4) 退職管理
 ア 「天下り」問題への対応・早期退職慣行の是正
 イ 退職給付の調査検討

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