国公労新聞 第1197号 |
●非常勤職員と心ひとつ〈全労働北海道支部〉 組織化スタート 4カ月で126人が仲間に 「行政の第一線に立ちながら、低賃金で不安定な雇用状態にある非常勤職員の問題を放置し続けることは人権問題」と、ハローワークや労働基準監督署の労働組合、全労働北海道支部(組合員1140人)は、「相談員」等として働く非常勤職員の組織化をめざしました。昨年8月からの加入は126人。歴史的な北海道支部の組織拡大運動は始まったばかりです。(教宣部・中田智子) ◇求職者の笑顔が見たいから 「就職できない、求職者の心はズタズタに傷つきます。職業相談は人生相談そのものです」と語るのは札幌東公共職業安定所で働く相談員のAさん。窓口業務の緊張感が伝わってきます。 Aさんは昨年秋に、『組合員』として加入。正規職員と協力しあって職場の連携がスムーズになったといいます。Aさんは「求職者が早く仕事について、笑顔をとり戻してほしいです。そのお手伝いがしたい」と仕事への思いを話してくれました。 全労働北海道支部は、お互いの仕事の悩みと、理解しあえる「つながり」を大切にする職場をめざして、対話を重視し、昨年8月から非常勤職員への加入呼びかけをスタート。50ヵ所以上ある職場にオルグに入り、機関紙を活用しながら、「ともに働く権利を守るために行動しましょう」と熱い呼びかけを重ねました。 「『組合員』になって、正直な気持ちを伝えることができて嬉しい」とは札幌公共職業安定所で働く相談員のBさん。「この仕事に就く前、私も求職者だったから求職者の気持ちは痛いほどわかります。私の雇用は来年度どうなるのかわかりませんが、次の相談員の労働条件改善のためにも、労働組合運動にかかわりたい」と元気に語ります。 ◇非常勤職員は一緒に働く仲間 全労働札幌職安分会長の阿部匡さんは「相談員の雇用不安をなくすことが最大の課題です。しかし、当局は『予算の関係で4月以降の雇用はわからない』と逃げる。制度的な壁が打ち破れないのです」と悔しさをにじませます。そして「今は賃金単価の改善や通勤手当支給など当局の責任で改善できる要求実現をめざしています」と語りました。 「総定員法」と定員削減で職員が削減され続ける一方で、非常勤職員は増え続けています。労働行政の職場では、全国で1万2000人、北海道では800人以上が働いています。 委嘱契約で給与も「謝金」として支払われ、任用形態はあいまいです。低賃金のうえに雇用期間も1年更新であるなど、労働条件は低く抑えられています。 ◇自らを変えよう! 全労働が非常勤職員の組織化に本格的に踏み出したのは3年前。『構造改革』で北海道の経済は、低迷し深刻な失業問題に直面していました。 「行政民主化を国民に訴え、構造改革に立ち向かうには、非常勤職員の仲間の力が必要でした。これまでのアンケートに寄せられた非常勤職員の声を真摯に受けとめ、組合自らを変えていかなければならなかったのです」と、北海道支部副委員長の柏樹勝正さんは振り返ります。 |
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●厳しい雇用状況のもとで 労働行政の第一線で奮闘〈全労働北海道支部の仲間たち〉 広大な北海道。厳しい雇用状況におかれている北海道で、労働行政の第一線を担う全労働北海道支部の仲間の現場では…。労働行政に厳しく期待の目を向ける地域の仲間は…。 ◇炭鉱閉山で失業受給が1月切れる 働きたくても仕事がない…。 北海道の完全失業率は5.3%で、有効求人倍率は0.59で(下図参照)いずれも全国平均を下回る雇用状況です。 釧路市は炭鉱・漁業・酪農などの基幹産業が低迷。生活保護世帯の増加など社会問題も深刻化しています。「太平洋炭砿閉山で失業し、就職が決まっていない400人の給付は05年1月で切れます。胸が痛みます」と釧路職安分会書記長の渡部祐司さんは地域の厳しさを訴えます。 有効求人倍率0.41が道内で最下位の旭川市。 「とにかく元気な産業がないのです。紙パルプ・家具などの事業所は閉鎖し、建設業も厳しい」と話すのは旭川職安分会書記長の佐藤貴幸さん。求人はパート・派遣・契約社員ばかりだといいます。 ◇労働者からの投書や相談続出 札幌中央基準監督署で働く野上浩一さんは「リストラの強行、長時間過密労働や不払い残業を告発する投書や相談が相次ぎ、個別労働紛争処理件数も急増。経営側と比べて労働組合の弱体化を痛感する」と語ります。 規制改革で労働者保護が緩められ、権利侵害が強まる今、監督官への期待を感じるといいます。 ☆職場=分会活動を基本に 全労働北海道支部は、職場を基本にした分会活動を重視。全46分会での要求書の提出・所属長交渉・集会や、職場新聞発行も重視し、一人ひとりの組合員を大切にしています。 労働行政の「民間開放」の攻撃のなか、「憲法に定められた労働者の重要な諸権利を保障する国の責任を果たしたい」と全労働北海道支部副委員長の柏樹勝正さんは強調しました。 ☆北海道の非正規は80万人 3人に一人がパート・派遣 「切実な労働相談ばかり。雇用保険未加入にするため週20時間未満の契約の強要や、不払い残業が横行。不況を口実に労働者を酷使するひどい働かせ方です」と、道労連のパート・臨時労組連絡会事務局長の佐藤美智子さんは告発します。 パート・アルバイト、契約社員、派遣・請負等の非正規労働者は増大し、北海道内の全労働者244万人のうち80万人に。3人に一人の割合です。 公務職場でも、旭川市立病院では「交通費は賃金に含むので出さない」、定時制高校の調理師は非常勤しか雇わず「予算が決まっているからこれ以上働くな」と命令され、持ち帰り残業が蔓延しているなどの実態がありました。 道労連執行委員の吉根清三さんは「保育士は臨時・パートへの置き替えが進んでいます。介護や福祉分野の『営利化』が加速している」と危惧します。 |
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●憲法が活きる職場 軍事目的の研究はしない 平和研究所宣言から15年 風化させまいと毎年記念行事 〈全運輸労働組合運輸研究機関支部〉 「軍事研究に従事しない!」と表明した「平和研究所宣言」は、15年前の1989年6月15日、船舶技術研究所(現・海上技術安全研究所)・電子航法研究所・交通安全公害研究所(現・交通安全環境研究所)で働く職員すべての87%以上の賛同を得て宣言。その後、この宣言を守るための運動がスタートしました。 04年6月、全運輸運輸研究機関支部は、「平和研究所宣言」15周年週間行事を開催しました。情勢も反映しイラク問題を考える記念集会や、交流会にはOBや日本科学者会議、武蔵野三鷹地区労、三鷹市被爆者の会も駆けつけ、平和のために力を合わせることを確認しました。 全運輸運研支部書記長の安達雅樹さんは「憲法改悪の動きなど危険な情勢だからこそ『宣言』は重要です。多くの仲間に訴えるため、機関紙『週報』や『うんけん』を活用し、教宣活動を重視しています」と語ります。 ◇軍拡の強まりのもとで 平和宣言を行った1989年当時も、軍拡の動きや企業が軍事指向を急速に強めるなど、国立研究機関が軍事技術開発に動員されることの危機感が高まっていました。 そのことから、「宣言」は「自らの研究を人類の福祉と生活の向上のために行い、軍事を目的とした研究は行わない」と呼びかけたのです。 「運動の出発点は『宣言』を職場集会やニュース配布で全職員に訴え、賛同署名を集めることでした。わずかひと月で3つの研究所の87%を越えたのは感動的でした」と書記次長の堀重雄さんは振り返ります。 ◇平和のとりくみとして継続 89年以降、毎年6月に平和展示、講演、記念集会など、「平和宣言を風化させない」ととりくみを進め、「宣言」は職場に定着してきました。平和行進とともに平和を大切にする運動として継続しています。 また、「宣言」公表後、全国の労働組合や日本科学者会議などから連帯・支持署名とメッセージが続々と寄せられました。支部長の星野邦弘さんは「公表によって不当な圧力があるかもしれません。全国の仲間と確認しあえたことが、運動での確信を大きくしました。団結と連帯こそ圧力に抗する最大の武器です」と語ります。 ◇憲法と「宣言」の根本は同じ 政府は昨年9月、有事法制・国民保護法を施行し、海上技術安全研究所を「指定公共機関」としました。堀さんは「戦前のきな臭さ」に危惧を感じるといいます。 星野さんは「現憲法の基本的人権の保障、9条がある限り、憲法に違反した研究の強制、義務化はできません」と力強く語ります。「研究所の『憲法』で働く者の規範が平和宣言です。平和を誓い自らの仕事を通じて人々の幸福を実現していくことが大切だと思います。「宣言」の根本にある憲法擁護のとりくみを、職場・地域から運動を強めたい」と星野さんは抱負を語りました。 ★船研・電子研・交通研 平和宣言 船舶技術研究所、電子航法研究所、交通安全公害研究所に働く我々は運輸交通機関の発達と安全の確保、ならびに運輸交通機関による環境破壊の防止のための研究を通じ、人類の平和と幸福に寄与することを願い、個人の良心に基づき以下を宣言する。
「船研・電子研・交通研 平和宣言」宣言集会 ☆全運輸運輸研究機関 支部の紹介 海上技術安全研究所(海技研)、電子航法研究所(電子研)、交通安全環境研究所(交通研)の3つの研究機関の労働組合が一つの支部として活動をしています。
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●新春インタビュー〈作家・小田 実さん〉 憲法九条、いまこそ旬 ★九条は夢想じゃなく世界に現実的な力持つ 今年の新春インタビューは、作家の小田実さんです。小田さんは、9条を中心とした憲法改悪に反対する「九条の会」を04年6月に発足させた9人の著名人のひとりです。国公近畿ブロック副議長・全労働近畿地協議長の秋山正臣さんが、兵庫県西宮市の自宅にうかがって、インタビューしました。 おだ まこと 1932年、大阪生まれ。東京大学文学部卒業。東大大学院在学中にハーバード大学大学院へ留学。1961年、アメリカ、ヨーロッパ、アジアを歩いた体験を綴った『何でも見てやろう』がベストセラーになり、青年のバイブルといわれる。1965年には、「ベトナムに平和を!」市民連合(ベ平連)の代表としてベトナム戦争に反対する市民運動にとりくむ。1995年の阪神淡路大震災後は被災地に公的援助を求める市民立法の実現にとりくむ。ベルリン自由大学、ニューヨーク州立大学、メルボルン大学などで教鞭を取る。『HIROSHIMA』(1987年、アジア・アフリカ作家会議ロータス賞受賞)、『「アボジ」を踏む』(1997年、川端康成文学賞受賞)など著書多数。 ◇平和願う人々の気持ちを代弁
◇各地で会場あふれる「九条の会」講演会
◇「テロ」よりも災害の対策を国の基本に
※2004年12月1日、「九条の会」の講演会が沖縄県那覇市で開かれました。小田実さん、大江健三郎さん、奥平康弘さんの話を聞こうと、与那国島、宮古島、八重山などから船や飛行機で参加した人もいて、会場は超満員の2000人の熱気であふれました。翌日、地元紙の『沖縄タイムス』が1面トップ、『琉球新報』も3氏の講演要旨を大きく報道しました。 |
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