国公労新聞 第1201号

●賃下げの制度改悪許さない
  05春闘統一要求提出
  政府、人事院交渉スタート

 2月10日、国公労連は政府と人事院に対し、「05年統一要求書」を提出、春闘期の交渉をスタート。これに先立ち人事院は、11月2日に提案した重要課題の「給与制度見直し」の素案の補強説明も行いました。賃下げとなる「給与制度見直し」反対のたたかいが本格化します。

 ◇政府・人事院の責任発揮求める

 国公労連は2月10日の交渉で「05春闘統一要求書」と「全労連統一要請書」を提出し、要求に対する真摯な対応を求めるナショナル・センターの意思もあわせて伝えました。
 交渉にあたって、堀口委員長は、「公務員労働者に対する政府・人事院の責任発揮」を強く求めました。また、「1万2000円、3.1%」のベースアップ要求を強調するとともに、賃下げとなる「給与制度見直し」反対や非常勤職員の均等待遇の実現、長時間過密労働の規制強化と要員確保、「市場化テスト」をはじめとする「公共サービス商品化」反対などの重点要求を強調し、とりわけの検討を求めました。そして、3月17日の回答指定日にむけた各級レベルでの交渉・協議の誠実な積み上げを確認し、交渉を終えました。

 ◇「給与制度見直し」補強説明行う

 要求提出に先立つ2月8日、人事院は、重点課題である「給与制度見直し」にかかわって、昨年11月2日の提案の補強説明を行ってきました。
 その主要な点は、地域給「調整」にかかわって、(1)東北・北海道地域の官民給与比較を考慮し、5%程度、俸給表水準を引き下げ、(2)俸給表水準引き下げと調整手当の廃止分を原資に、新たな地域手当と転勤手当を新設、(3)新たな地域手当の支給地域、割合は市町村単位で指定、としました。

 ◇実績反映強化をすすめる人事院

 また、(1)俸給表構造を「10級」に再編、(2)各級の高位号俸の水準を2%程度切り下げ、昇給カーブをフラット化、(3)査定昇給、勤勉手当の実績反映強化のため、人事院が「(実績反映の)分布割合」を設定、(4)本府省課長補佐の特別調整額を本府省手当に改変、なども含まれています。補強説明では、査定昇給などは現行の勤務評定制度で実施する方向も示しています。
 公務員制度「改革」が中断しているもとでも、賃金抑制と実績反映強化の「給与制度見直し」を強引に進める姿勢を露骨にしたものです。「賃下げとなる給与制度見直し反対」の一点での闘争強化が求められます。


●トヨタは社会的責任を果たせ
 「05春闘トヨタ総行動」に1500人

 2月11日、日本経団連の奥田会長が会長を務めるトヨタ自動車に対し「05春闘トヨタ総行動」が愛知県豊田市で展開され、全国から1500人(国公140人)が集まり行動を展開した。愛知県労連などでつくるトヨタ総行動に、昨年から全労連が呼びかけに加わりました。
 市内の公園で開いた集会では、愛労連の見崎徳弘議長や全労連の熊谷金道議長が「もうけの独り占めは許さない。日本経団連の会長企業として、利益を還元して社会的責任を果たすべきだ」と訴えました。参加者はトヨタ工場前までの市内をデモ行進し、各系列会社の前でアピールを続けました。
 また、前日には、名古屋市の愛知労連会館でトヨタシンポを開催し、派遣労働者や外国人労働者が増えている実態や、「トヨタが賃上げしなければ、うちは無理」というように全国的に影響していること等が話され、あらためてトヨタの社会的責任を問う意義を確認


●労働条件改善をめざそう
  〈独法労組〉要求提出決起集会ひらく

 国公労連は2月4日、東京都内で独立行政法人労組要求提出決起集会を開催しました。
 はじめに、全労働森崎書記長が講師となり「労働安全衛生法の概要と活用」について学習を深めました。集会では、国公労連統一要求書もふまえた要求、独立行政法人での05春闘賃金闘争や、労働協約締結のとりくみを強化、「全労連統一要請書」提出を確認。3月の回答日に統一闘争を展開するとともに、各省・政府追及を強めることを確認しあいました。


●憲法改悪・大増税反対、平和と社会保障を守れ
  2.10中央決起集会に3500人

 「憲法改悪・大増税反対、平和と社会保障を守れ」を掲げ2月10日、「2.10中央決起集会」を東京・日比谷野外音楽堂で開かれ3500人が参加。定率減税廃止や介護保険の改悪を許さず、憲法改悪反対運動と合わせたたかおうと集会後、国会と銀座をデモ行進しました。


●国民の安心より大企業のもうけを優先するな
  公共サービス商品化を許さない国民共同ひろげよう

 「官から民へ」、「国から地方へ」は、小泉「構造改革」の中心的なスローガンです。そのスローガンにもとづく「公共サービス商品化」の攻撃が、かつてなく強まっています。国公労連は、“競争より公正な社会を”のキャッチフレーズで、「公共サービス商品化」反対キャンペーン運動を全国で展開しています。今号は、この課題を考える特集です。


●“郵政民営化”突破口に公務大リストラ

 1月21日の施政方針演説で小泉首相は、「官から民へ」の「改革の本丸」の位置づけで、郵政民営化法案の成立をめざす並々ならぬ意欲を表明しました。同時に年末の閣議決定(「今後の行政改革の方針(新行革大綱)」)にふれ、(1)独立行政法人22法人の再編、非公務員化、(2)05年度から5年間で10%の定員削減、(3)市場化テストの本格導入を強調しました。
 郵政民営化を突破口に、聖域なしで公共業務の民間開放を強めようというのです。

 ◇民間開放は企業のビジネスチャンス

 日本経団連が昨年12月に公表した「経労委報告」を含め、財界は、民間開放が企業の新たなビジネスチャンスであることを隠そうともしていません。
 進められる民間開放施策が、企業の新たなビジネスチャンスの創出(=企業による税金の分捕り)である点に、これまでの「行革攻撃」との違いがあります。

 ◇給与制度改悪や定削と表裏一体

 昨年末、政府の規制改革・民間開放推進会議は、4月以降の論議をとりまとめた「第1次答申」を公表しました。
 その中で、民間開放策の目玉である「市場化テスト(官民競争入札)」の「モデル試行事業」として3事業(表1)と、本格実施に向けた検討対象の36事業を示しました(表2)。


 この「市場化テスト」では、「民でやって良いのか」ではなく、「官で行わなければならない」理由の説明を求めています。加えて、「公務員自らが行わなければならないか」という視点での見直しも求めています。
 民間化攻撃を強めながら同時に、給与制度「見直し」も含めた「公務員たたき」や「10%定員削減」の強行がねらわれています。これらの攻撃と「市場化テスト」は表裏一体の関係です。

 ◇民間開放施策の転換求める運動を

 すべての公共サービスを例外なく、「もうけの対象(商品化)」とすることがあらたな民間開放施策の目的です。
 このような施策(政策)の転換を求めなければ、個別業務の民間化阻止は困難です。「公共サービス商品化」に反対し、社会の安定帯である公共サービスを国が実施する意義を「自分の言葉」で国民に訴えるとりくみ強化が運動のカギになっています。


●専門性ある人材確保、良質のサービスが危機に
   〜民間開放の3つの疑問〜

 ◇民間化は効率的?

 Q 民間企業にまかせれば効率的だといいますが?
 A 民間経営がすべて効率的とは言えません。職業紹介の例では、神奈川・藤沢市が委託した民間企業による就職率は公共職業安定所の半分の2〜3%台、1人当たりの費用は公共職業安定所の8万円に対し、40万円にのぼると推計されています(表3参照)。利益を出すために、人件費を大幅に引き下げるリストラが当然とする風潮が広がっています。民間開放で、賃下げや雇用流動化が進み、専門性を持った人材確保ができなくなります(表4参照)。



 ◇安くなればいい?

 Q 民間開放で、安価で良質なサービスになるのではないでしょうか?
 A 国民生活に不可欠な公共サービスは、いつでもどこでも公平に提供することが求められます。一方、営利企業が担うサービスは、対価に応じ提供されます。
 たとえば、社会保障費の抑制を理由に公的医療保険を縮小し、民間企業を参入させると、いずれアメリカのように貧富の差によって受けられるサービスが大きく異なることになりかねません。
 また、郵政事業の民営化論議でも指摘されるように、営利企業は、効率が悪い地域は切り捨てます(表5参照)。


 ◇財政赤字は減るの?

 Q 財政再建には公務員の人件費抑制や社会保障費の抑制が必要ではないですか?
 A 財政再建は、公共事業のムダなど、根本原因にメスを入れなければなりません。人口1000人当たりの公務員数はフランス96.3人に対し、日本は35.1人で約3分の1、社会保障の税負担のGNP比は、21.5%のアメリカよりも低く、17.9%にすぎません。
 公務員の人件費や社会保障費は財政赤字の本当の原因ではないため、公務員を減らしても、社会保障費を抑制しても財政赤字は増え続けているのです(表6参照)。



 ●全国キャラバン行動、議会要請、宣伝に全力を

 郵政民営化に反対するうねりを起こそうと、全労連の全国キャラバンが各県をめぐります。郵政民営化は、「公共サービス商品化」反対キャンペーンに位置づけ、宣伝行動や集会などに結集し、それぞれの地域で成功させることが求められています。また、民営化反対署名のとりくみも強めましょう。
 この間の各県国公の奮闘で、市場化テスト反対等の意見書を「3月議会」の案件とする地方議会も増えています。引き続き世論に訴えるとりくみが重要になっています。
 単組や職場の課題も持ち寄って、第1、3水曜日の宣伝行動を「目に見え、耳に聞こえる」ものとして実施しましょう。また、新聞投書にもとりくみ、「何でも民営化でいいの」と国民に問いかけるとりくみを強めましょう。


●国民の命と暮らし守る共同のたたかいを広げましょう

 郵産労 広岡元穂書記長
 国民の命と暮らしをおびやかす「公共サービスの商品化」は許せません。
 郵産労は、国公労連の「公共サービス商品化」反対キャンペーンと連帯し、「小泉構造改革」の本丸である「郵政民営化」と「公務リストラ」阻止のため、国民との共同の運動を前進させます。

 自治労連 松本利寛書記長代行
 自治体では、複数施設を丸ごと民間委託するなど公務リストラがエスカレートしています。いま、公共業務の市場化を許し、公務を営利企業のくいものとするのか、住民サービスを守り、公平公正な運営を確保するのかが問われています。共同のたたかいを進めましょう。

 日本医労連 西川活夫書記長
 これ以上の負担増と公的責任放棄を許さない国民的なたたかいは、混合診療導入や介護保険改悪を狙い通りにはさせていません。民間開放、医療の営利化・市場化に歯止めをかけ、国民の基本的人権、健康権を擁護し、公共サービスを守り抜くためともに奮闘しましょう。


●ストップ!公共サービスの商品化〈シリーズ5 地方自治体〉
  公共施設の運営を営利企業に丸投げ
  「指定管理者制度」とたたかう自治労連

 公共施設の管理・運営を営利企業に丸投げしているのが「指定管理者制度」。自治労連教宣部長の西岡健二さんに、寄稿いただきました。

 政府は、地方自治体における「官製市場の民間開放」推進を目的に、2003年、公共施設の指定管理者制度を導入しました。
 公共施設とは、福祉、衛生、体育、社会教育、会館、病院など自治体が設置する住民のためのさまざまな施設をいいます。その公共施設の管理・運営を営利企業にも丸投げできるのが指定管理者制度です。
 制度では、指定管理者が施設利用方法を決定し、利用料を決め、さらには施設を使った事業もできるなど、利益をあげるための運営が認められています。利潤追求が重視され、労働者の雇い止め、職種転換の強要などの事態もおきています。

 ◇民間委託攻撃を跳ね返した堺市

 自治労連は、このような指定管理者制度導入の動きに対する住民共同のとりくみを全国で展開しています。
 東京・練馬区は昨年6月、勤労者福祉会館に指定管理者制度を2005年4月から導入することを突如として発表。これに対し、区内の労働4団体が共同で要求書を提出し交渉を進めています。
 大阪自治労連婦人部は、大阪府の女性総合センターに2006年4月から制度導入する動きに対し、直営の継続を基本とする幅広い女性団体との共同のとりくみを行っています。
 大阪・堺市では、図書館の指定管理者制度を視野に置いた民間委託が提案されたことに対し、堺市職労教育支部が利用者ともに「図書館を考える会」を結成。シンポジウム開催や1万を超える反対署名を提出。2005年度の実施を撤回させています。

 ◇住民と共同し公共性を確保

 自治労連は昨年11月23日、東京都内で「指定管理者制度とたたかう全国集会」を開催しました。(1)施設や各種団体の訪問活動を展開し、(2)住民・利用者との共同を力に前進してきたこと、(3)指定管理者制度導入の条例化にあたって、公共性の確保、雇用、賃金、労働条件維持のたたかいを進めてきたこと、などこの間のたたかいと、運動強化を確認しました。
 現在運営管理が委託されている公共施設は、2006年9月までに指定管理者制度を導入するか否かの選択が求められています。この1年間がたたかいの正念場です。


●国公労連青年協05春闘拡大代表委員会
  初任給改善に力を入れて

  国公労連青年協は1月29〜30日の2日間、東京都内で04年度拡大代表委員会を開催し、9単組・6県国公、26人が参加しました。
 討論では、定員削減で業務量が増えメンタルヘルスに係わる青年の職場実態や、仲間と楽しく『要求川柳』づくりなど文化レクのとりくみ、模擬交渉ビデオ作成、とりわけ、平和や憲法学習会を開催して学ぶことの重要性が多くの単組から指摘されました。
 また、給与構造「見直し」反対のたたかいと初任給改善の運動に結集する決意を固めるとともに、間近に迫った国公青年交流集会の成功をめざし意見交換を行いました。
 青年協は、3.4中央行動で提出する「初任給改善署名」のとりくみ強化や、青年運動の態勢を早期に立ち上げること、05春闘から夏の人事院勧告にかけて、初任給課題に力を入れてとりくむことを確認しました。



●国公労連女性協05春闘拡大代表委員会
  憲法改悪反対で共同を

 国公労連女性協は、2月5〜6日、05春闘拡大代表委員会を開催しました。14単組4ブロック19県国公の52名が参加し、のべ36名から発言がありました。
 長時間・ただ働き残業や「平等」の名の下に行われる異動が働きにくさを増していること、流産の増加など母性破壊の状況など職場の実態が報告されました。とりわけ大学や病院では労働条件が大きく後退させられています。県国公からは、単組を越えた交流の大切さが強調されました。
 また、「給与制度見直し」を学習し、私たちにかけられている攻撃についても学びました。
 05春闘では、改正された人事院規則を活かせる職場とするため知らせる運動をすすめること、憲法改悪に反対する運動を、職場から仕事とかかわって討議をすすめ、憲法遵守職場宣言や署名運動にも結集し、全国で女性の共同をすすめることを確認しました。




●連載 憲法のはなし(4)
  Q 仕事と憲法

◇基本的人権実現めざす行政を

 「官から民へ」の具体化を先導する規制改革・民間開放推進会議は、「民間でできるものは官では行わない」とし、「官で行わなければならない」理由の説明責任を求めています。

 ◇憲法否定の「官から民へ」改革

 憲法でいう 「第25条が規定する生存権を具体化する社会保障制度の運営は国の責任」、「27条にもとづき国は、国民の働く権利を保障し、働くルールの維持、改善をはかる責任がある」など、国の行政は憲法にもとづき執行する、との主張を受け容れようとはしません。
 昨年末、日本経団連が公表した「経労委報告」は、「労働条件決定は労使自治が原則」と決めつけ、労働監督行政の「弾力化」や労働基準法などの規制緩和を求めました。
 企業と労働者個人の契約は、働くルールの確保という公益(基本的人権擁護にかかわる行政責任)に優先すると主張しているようです。
 市場化テストなど「官から民へ」の改革を財界が主導し、「構造改革」の下で、300万人をこえる失業者や3万人を超える自殺者の存在に目を向けることなく公共サービスが後退し続け、社会保障改悪が相次ぐ状況は、改憲の動きとも無関係ではありません。

 ◇公共サービス商品化と改憲はメダルの表裏

 「行きすぎた利己主義を反省」(世界平和研究所「憲法改正試案」)、「(戦後の日本社会は)権利や自由に重きが置かれすぎていた」(日本経団連「わが国の基本問題を考える」)など、改憲を主張する側は、基本的人権制約の姿勢を共通して示しています。
 弱肉強食の競争社会では、基本的人権の実現を国の一義的な責任とする現在の憲法は邪魔なのです。国民の生活基盤を支える公共サービスを提供する政府機関は不要な存在です。
 「公共サービス商品化」と改憲はメダルの表裏、国公労働運動の重要なポイントです。


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