国公労新聞 第1213号

●総人件費の削減阻止を
 6.24中央行動に2千人が結集

 国公労連は6月24日、全労連の「最賃デー」行動とも連動させて、夏季闘争中央行動を展開。800人(全体で2000人)の仲間が参加し、給与構造「見直し」阻止、「骨太方針2005」での総人件費削減反対、最賃引き上げ、郵政民営化法案の廃案などの課題を掲げ、猛暑の中、要求実現を求め、一日行動を展開しました。

 朝9時30分、厚生労働省前で「第2次最賃デー」行動がスタート。地域最賃の引き上げと産別最賃の廃止反対などの要求実現を求め、座り込み行動を行いました。
 引き続く昼休み行動では、公務と民間労働者が一体で最賃と人勧期要求の実現を求め、厚生労働省・人事院前での行動を展開。東北・近畿・九州ブロック代表が、地方で働く者の怒りを人事院に訴え、給与構造「見直し」改悪の断念を強く迫りました。
 この行動も力に、内閣府、総務省、財務省前要求行動、日比谷野外音楽堂での決起集会を展開。デモ行進終了後、市場化テストや公共サービス商品化に反対し、国公労連独自の規制改革・民間開放推進会議への要請行動を行いました。
 切実な職場実態を訴えながら決議、連判状等を関係機関に提出。郵政民営化反対の紹介議員獲得に向けた国会議員要請にもとりくむなど、終日の行動に奮闘しました。


●地方の切捨て許さへんで!
   1000人が人事院近畿を包囲

 【国公近畿ブロック発】近畿公務共闘・国公近畿ブロックは6月16日、人事院近畿事務局包囲総行動をとりくみ、かつてない規模の930人以上が参加。「なんで賃下げやねん、地方の切り捨てゆるさへんで」の「のぼり旗」を持って集まった仲間が合同庁舎前を埋め尽くしました。一人ひとりが個人請願書を手渡し、職場から寄せられた9000人分を提出しました。参加者は「今回の見直しには、まったく納得できない」「私たちは、国民のための仕事がしたいのであって、隣の人より早く昇進したいのではない」など、それぞれが強い憤りを人事院にぶつけました。


●「国公権利裁判」が結審
  〈判決は9月29日〉全力で運動の追いあげを

 6月14日、国公権利裁判控訴審が、東京高裁での2回の弁論で結審しました。
 控訴審では、「国家公務員に不利益不遡及原則の法理が当てはまらない」とする根拠を、勤務条件法定主義に求めたことを批判。「勤務条件法定主義が採用されているのは、労働基本権制約の代償としての意義しかなく、国家公務員法28条は不利益遡及することまで予定していない」、「(控訴人らの代表である)国公労連と交渉して同意を得る努力を行うことなく不利益遡及の勧告を行ったことは人事院の責務に反しており、かつ、憲法28条、ILO87・98号条約に保障された団体交渉権を侵害する違憲・違法行為であること」等、第一審判決の不当性を様々な角度から批判してきました。
 注目の判決言い渡しは、9月29日に決まりました。高裁に国公労連の主張をふまえた審理を求め、勝利判決を勝ち取るため、ぎりぎりまで権利裁判の意義を内外に広め、裁判所要請などを強めます。


●給与構造改悪反対のたたかいと結合し総人件費削減を許すな
  7.26中央行動に最大限の力で結集しよう
  〈特集〉政府「骨太方針05」のウソとゴマカシ

 小泉内閣は6月21日、「骨太方針2005」を閣議決定しました。その内容は、公務の民間開放や公務員の総人件費削減を押し進め、社会保障給付の抑制と負担の増大を国民に迫り、その先の消費税・所得税・住民税の大増税路線を打ち出したものです(下図参照)。特に公務員の総人件費削減を強調しているのが特徴です。


 ◇消費税率アップのために総人件費削減

 社会保障費の削減や、三位一体改革による地方交付税・交付金削減以上に、総人件費削減が強調されるのはなぜでしょう。
 それは、「歳出削減なくして増税なし」の考え方に端的に示されています。ここでいう「増税」が、政府税調が打ち出した「サラリーマン大増税」と、2007年度以降の消費税率引き上げであることは言うまでもありません。
 大増税と社会保障費削減の口実が総人件費削減です。

 ◇総人件費削減=「賃下げ」と「純減」

 「骨太方針05」が、総人件費削減の「メニュー」として示しているのは、下表の8点です。


 定員と賃金の両方を減らせと迫っています。そして、これらの「メニュー」具体化のため、05年秋に、「総人件費改革の基本指針」を策定するとしています。

 ◇労働基本権無視の財務省

 財務省が賃下げを目的に、「官民給与比較のあり方」について、人事院に協議を申し入れた、と報じられています。
 財務省は、一般会計に占める人件費の割合が、文教・科学振興費に次ぐ支出項目と発表するなど、公務員賃金が財政悪化の主因、とでもいうような「宣伝」を強めています。その上に、公務員賃金決定に直接介入するという労働基本権無視の姿勢を露骨にしているのです。

 ◇「ウソとゴマカシ」の削減主張

 政府・財務省の主張は、事実をゆがめています。財政悪化と、人件費との関係です。その点は、経済財政諮問会議で麻生総務大臣も主張しました。
 下図は、一般会計予算に占める総人件費の割合です。一貫して低下していることは一目瞭然です。しかも、この数年は絶対額が低下しています。


 下図は、特別会計も含め、議員歳費等を除いた国家公務員だけの人件費の経年変化を見たものです。一般職国家公務員の人件費は急減しています。


 公務員の総人件費を国際比較したものが、下図です。日本の政府(国、地方、独法など)の人件費支出(対国内総生産比)は、今でも低水準です。


 国家公務員の定員と公債残高の関係が無関係なのは、下図を見れば明白です。1967年度にはじめて発行された赤字国債は、05年度末で3万3千倍強と天文学的に増加しています。一方、国家公務員数は3分の1に減少しているのです。



 ◇定員削減で後退する行政サービス

 これまで、総人件費抑制のための最大の方策は、定員削減計画でした。行政需要に関わりなく、一律的に定員を削減し、そこで生じた「原資」を新規増員の財源にあてるとし、近年は合理化減を上乗せして「純減を達成」してきました。
 その結果は、例えば、10年前には全国に一千カ所あった法務局の登記所が、今年度末には634カ所まで減少(下図参照)。気象台の測候所も15年前の96カ所が昨年度末で51カ所にまで減少し(下図参照)、さらに5カ所の廃止が決まっています。



 これらに代表されるように、定員削減の強行は、地方出先機関の統廃合に直結し、行政サービスを後退させてきたのです。下図は、人口千人当たりの公務員数比較ですが、軍人を除いても日本はイギリスの約半分、ドイツの6割にしかすぎません。

 ◇「純減目標」なんてとんでもない

 極端に「小さな(日本)政府」をさらに小さくしようと言うのが、「5年間10%以上の定員削減」に加えた「純減目標策定」です。
 その主要なターゲットは地方支分部局で、廃止・統合、民営化、民間委託、地方移譲などをより強めようとしています。また、民間開放手法としての「市場化テストの本格導入」も強調しています。
 05年度の削減率が1.66%、純減数は624名でした。進められている削減計画は、これを上回る毎年2%以上です。ですから、(省庁間)配置転換なども強調されています。これ以上の地方支分部局の統廃合は、雇用問題にもなりかねません。加えての「純減目標」などとんでもありません。

 ◇政府部内からも削減に異論

 総務省の麻生大臣は、「諸外国と比較しても極めて小さな政府を人件費の上でも実現している」と発言。純減目標についても、「民間のリストラと同じようには論じられない」とする発言を経済性諮問会議の場で行っています。

 ◇人勧期から秋にかけてのたたかいが重要

 政府・経済財政諮問会議は、05年人事院勧告や、「5年間10%の削減計画」の内容を見て、さらに人件費の削減を強化しようとしています。
 消費税などの増税と社会保障費削減のために総人件費削減攻撃を強めている政府のねらいを、職場と地域に明らかにし、具体化に反対するとりくみを最大結集の7.26中央行動など人勧期のたたかいと一体で秋にかけて強力に進めることが求められます。


●劣悪な環境の改善を自らの手で!
  第39回行(二)労働者全国集会ひらく

 国公労連は6月16、17日の2日間、第39回行(二)労働者全国集会を都内で開催し、9単組87名が参加しました。

 ◇不補充政策下でも昇格要求を実現

 全体討論・分散会を通じた討議では、政府の行(二)不補充政策の下、職場実態などをねばり強く訴えるたたかいで昇格が実現したなど前進面での報告がされた反面、「給与が安い上に、休暇が取りにくい」「行(一)職の業務までさせられている」「危険な業務が行(二)職員に集中する」「ペーパーレス化でもパソコンが貸与されない」「休憩室が倉庫の片隅だ」など、劣悪な職場実態が報告されました。
 また、処遇や職場環境の改善が進んでいる単組では、行(二)職員が自ら組合の役員になってとりくんでいることが紹介されました。

 ◇地球のすみずみに憲法の花を

 続いて、漫談家の木藤なおゆきさんが「地球のすみずみに憲法の花を」と題し、特別講演。木藤さんは、テンポのいい語りで笑いをとりながら情勢を的確に話し、「戦争はいけない!憲法9条改悪に反対してたたかおう」と訴え、参加者の共感を呼んでいました。
 集会のまとめで岸田書記次長は、定年延長など制度改善の必要性を強調、給与構造問題では、今でも劣遇されている行(二)職員の賃下げをするなとの要求を前面にたたかうことを強調。「厳しい情勢だが、あきらめたら前進はない。国民的に公務の必要性をどう合意形成するかだ。職場を守り要求前進のため、引き続き奮闘しよう」と呼びかけました。


●研究政策、労働条件改善を
  第23回国立研究機関全国交流集会ひらく

 国公労連と学研労協でつくる実行委員会主催の第23回国立試験研究機関全国交流集会が6月15日、つくば・農林研究団地で開催され、173人が参加し、統一要求の討議を深めました。
 集会は、国公労連盛永副委員長が主催者あいさつ、池内了早大教授が「21世紀と科学〜体験的研究論を交えて」と題して記念講演し、「生産と消費・廃棄を近づけられ、災害に強い、小型化・多様化・分散化の技術体系を構想すべきではないか」と問題提起しました。ついで、国公労連・飯塚徹中執が基調報告を行いました。

 ◇評価システムの問題が論議に

 午後は、三つの分科会に分かれて討議。予算分科会では、運営費交付金による研究予算の重点化や、競争的資金化が進み、長期的視野の研究やシーズ研究の阻害要因になっている、評価システムも問題があることなどが確認されました。
 研究政策分科会では、大学院修了者を採用するポストドクターは、1所で何百人もいるのに当局が責任を放棄し、人材の使い捨て状態が指摘されました。
 労働条件処遇分科会では、研究職5級昇格が難しくなり、かつ、基準が不透明化していることなどが指摘されました。

 ◇科学技術会議との交渉を予定

 集会で出された意見を踏まえた要求書をもとに、総合科学技術会議との交渉を予定しています。




●連載 検証・憲法調査会報告(2)
 焦点は9条2項

 衆参の憲法調査会とも、論議の焦点は「9条2項」でした。
 1946年、憲法案の国会審議で吉田首相は「9条2項に於て一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、又交戦権も放棄したものであります」と答弁しています。「国権の発動たる戦争の放棄」という9条1項の目的を達成するため、軍備、交戦権否認の9条2項があることを率直にのべています。
 ところが、「参議院の報告書のポイント」が、「平和主義の維持及び9条1項の維持は概ね共通の認識。2項改正については意見が分かれた」と述べるように、衆参の調査会とも1項と2項を別々に論議しています。

 ◇憲法を現実にあわせろ?

 衆議院の「報告書」は、「自衛隊の存在や海外におけるその活動と9条との関係」などが憲法と現実とのかい離として論議された、と述べています。
 そして、「現実にあわせて憲法を改正」という意見と、「現実を憲法にあわせて是正」という意見の違いが、「9条をめぐって表れた」としています。
 憲法調査会が設置された1年後、2001年に「9.11テロ」が発生しました。その年末、衆院調査会に出席した中曽根元首相は、「米国のアフガニスタン戦争は、(日本の)集団的自衛権の対象になるべき」と主張しています。03年3月、イラク戦争開戦当日に衆院調査会が緊急招集され、4カ月後のイラク特措法の道筋をつけました。
 現実を先行させて改憲論議を加速する動きが繰り返されたのが、憲法調査会の5年間でした。

 ◇海外で武力行使したい!

 調査会での9条2項の具体的な論点は、「自衛隊の存在を憲法上明記するか否か」と「(他国が武力行使を受けたとき共同して防衛にあたる)集団的自衛権行使が認められるか否か」の2点です。
 今、イラクに派遣されている自衛隊は、非戦闘地域でしか活動できない建前になっています。アメリカ軍などと一緒に武力を行使する「集団的自衛権」が、「9条2項」で否認されているからです。これを変えたい、改憲を主張する側の思惑が「報告書」では露骨です。
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