国公労新聞 第1233号

◆公務破壊の悪法は許すな!

「5%純減」反対の政府追及と一体で

 衆院行革特別委員会は4月17日、「行革推進法案」「市場化テスト法案」で参考人質疑を行いました。参考人の永山利和・日本大学教授(行財政総合研究所理事長)は、「(営利企業が行政を直接担う)私行政」が生まれ、その「私行政」の中で「(公務に必要な)専門性が十分確保できるか」と耐震偽装事件も例に、問題指摘しました。
 「小さな政府」の問題点を訴え、反対の世論を広げた全国キャラバンを確信に、職場・地域からの反撃が求められています。

 公務員の総人件費削減や公務の民間開放など、公務破壊を狙う「行革推進法案」、「市場化テスト法案」が4月3日から衆議院の「行政改革特別委員会」で審議され、19日にも採決が狙われています。
 緊迫する情勢のもと国公労連は、4月14日の中央行動で「くらし安心(請願)署名」を持って全国会議員への要請行動を実施。社保庁改革問題での全厚生や、地元選出議員に対する東北ブロック国公のとりくみとあわせ、「行革推進法案」の成立阻止に向けた追い上げを図りました。このとりくみも背景に、委員会傍聴を含めた連日の国会行動を継続しています。

 ◇「純減計画」策定、配置転換も検討

 法案審議に先立つ3月30日、行政減量・効率化有識者会議は「国の行政機関の定員の純減方策について中間取りまとめ」を決定しました。この「中間取りまとめ」をもとに、職業紹介、社会保険庁、医療センター、登記・供託、自動車登録、官庁営繕、国土地理院、気象庁などを「重点15事項」と決めつけた「純減計画」の策定を迫っています。
 また、この「純減計画」策定ともかかわり、府省を越えた配置転換や新規採用の抑制策も検討されています。さらに、IT化や地方支分部局の統廃合による「定員合理化」についても行政管理局が検討を開始しています。

 ◇議会要請、署名積み上げ運動を

 国公労連は、「5%純減ありき」の立場で、行政ニーズや職員の労働実態を顧みない検討に反対し、「重点15事項」にかかわる行革推進事務局追及や、総務省・行政管理局交渉などを強めています。6月にも「5%純減計画」を取りまとめようとする政府への反撃強化が必要です。
 使用者・政府追及はもとより、地元選出国会議員、地方議会、自治体要請などや、署名、宣伝行動などの強化で、世論の「流れ」を変える運動が鍵を握っています。


◆許すな!行革推進法案

 4.14中央行動に2000人

 国公労連は4月14日、全労連「もうひとつの日本」闘争本部等による全国キャラバンの集結集会と結合した4.14第2次中央行動を実施し、全国から2000名(国公労連は800名)が結集。東北ブロック・宮城国公は、バスで20名の仲間が駆けつけました。
 「行革推進法案」の審議が重要局面を迎えるもと、国会前座り込み行動と行革推進事務局前要求行動を展開。民間や市民団体、金融共闘の仲間1000名が財務省を包囲した「財務金融行動」や、「06春闘勝利!国民のいのちと暮らしを守れ!『もうひとつの日本』をめざす中央集会」で、悪法強行に反対してたたかう決意を固め合いました。


◆労働基本権付与する法改正を

 ILO、日本政府に3度目勧告

 ILO理事会は、3月29日(現地時間)、労働基本権回復にかかわる全労連などの提訴に関し、3度目の結社の自由委員会「報告」を了承しました。

 ◇公務員制度の民主的改革を

 「報告」では、日本政府に対し「(行政改革推進法案の中で)ILO勧告に沿った公務員制度改革」を具体化するよう求め、団体交渉権や争議権をはじめとして「結社の自由原則に則った(公務員法)改正」についての「早急な合意」を迫っています。
 国家公務員の「5%純減」や賃金水準ひき下げなどを目論む政府が、公務員労働者の権利回復には背を向け続けていることが、国際機関からあらためて批判されました。
 全労連は、この「報告」にしたがった労働基本権回復の協議を開始するよう政府に求め、その実現に日本の労働組合が共同するよう呼びかける事務局長談話を3月30日に発出しました。
 同日、連合も、民主的な公務員制度の実現に「日本の労働運動を代表する立場でとりくむ」とする「談話」を出しています。


◆とどまらない高齢者いじめ

 「小さな政府」がもたらすものは…

 4月1日から、暮らしにかかわる制度のいくつかが変わりました(図表1)。介護保険料は800円も増額され、障害者「自立支援」法では、障害が重くサービス利用が多い人ほど負担が重くなる「応益負担」に変わりました。病院の初診料、国民年金保険料もアップし、生活保護の「母子加算」は半減されました。毎年のように繰り返される小泉「構造改革」の国民いじめのあらわれです。
 社会保障給付の削減を目的にした制度の連続改悪の悪影響が、高齢者に集中してきています。



 ◆連続する高齢者の暮らし破壊

 年金・医療・介護など社会保障の改悪が連続し、生活保護、障害者福祉など最低限の生活を支える制度まで、予算削減の対象にされ始めています。
 02年の医療改悪では、サラリーマン本人の医療費負担を3割にする改悪と同時に、高齢者の1割負担が徹底されました。
 04年には、年金保険料の引き上げを2017年度まで続ける一方で、年金の給付額は毎年0.9%抑制する年金改悪がおこなわれています。
 97年に成立した介護保険制度では、それまで国の福祉制度であった高齢者介護を、保険料を払わなければ利用できない「保険制度」に改変するとともに、実施責任を市町村に丸投げ。その結果、保険料・利用料負担が高齢者の生活と市町村財政を圧迫し、地域間の格差を拡大する要因になっています。
 05年からは、減り続ける年金から所得税が徴収されることになり、05、06年に強行された定率減税の廃止が追い打ちをかけています。小泉「構造改革」は高齢者いじめの政治、「小さな政府」は高齢者を疎外する政府、というのが実態です。

 ◇襲い続ける負担増

 92年3月5日の衆院予算委員会で、渡辺美智雄大蔵大臣(当時)は、高齢者医療は「枯れ木に水を注ぐようなもの」と答弁。これは、いまに続く「構造改革」の基本的な認識でしょう。競争原理を「最善」とし、働く場から「排除」された国民は「負け組」とされ、自己責任を迫ろうとする動きは加速しています。
 06年度予算は、高齢化の進展による社会保障関係費の自然増分(8000億円)を圧縮する方針のもと編成され、伸びを1931億円にまで抑制するため、高齢者の医療費負担増などの医療改悪がとりまとめられました。生活保護の国庫負担金は「三位一体改革」の口実で4分の3から3分の2に引き下げられています。
 06年は高齢者・国民を多くの負担増が襲います。1月には所得税の定率減税半減、4月には介護保険料引き上げ、生活保護の老齢加算廃止、国民年金保険料引き上げ、6月には住民税の定率減税半減、高齢者非課税限度額廃止、公的年金等控除縮小、老年者控除廃止、9月には厚生・共済年金保険料引き上げ、そして10月には医療制度大改悪。とどまるところを知りません(図表2)。昨年10月から介護保険利用者の食費・居住費が全額自己負担になった影響で「一気に7万円も負担が増えた」、老年者控除廃止、定率減税の半減などで「年間10万円近くの負担増になる」、「本当に長生きしていいのか」―高齢者の生活に対する不安は深刻です。



 ◆医療改悪で「所得の格差」が「命の格差」に

 小泉内閣は、通常国会に医療制度の大改悪法案を提出し、成立を狙っています(図表3)。公的医療制度の土台を崩す大改悪を許せば、お金の払えない人は公的医療から排除され「所得の格差」が「命の格差」に直結する社会となってしまいます。



 ◇高齢者負担が一気に3倍も

 改悪案の中で重大なのが高齢者の負担増です。これは、(1)70歳から74歳の一般所得者、低所得者の窓口負担を1割から2割に引き上げる、(2)70歳以上の現役並所得者(標準報酬月額28万円以上、課税所得145万円以上)は、窓口負担を2割から3割に引き上げる、(3)患者自己負担の上限を引き上げる、というのが大きな柱です。
 例えば71歳で高血圧と狭心症の場合、1560円から3110円へ、仮に「現役並」所得に区分されれば、4680円へと一気に3倍の負担を強いられます。

 ◇入院患者に過酷な仕打ち

 入院の場合は、いっそう深刻です。改悪案は病院の平均在院日数を短縮することを提起。加えて「介護保険との均衡」を口実に、療養病床に入院する高齢者の居住費や食費の患者負担を打ち出しています。これが実施されると、70歳以上で現行より月額3万2000円、年間38万4000円もの負担増となります。すでに実施された介護施設では、高齢者が退所を余儀なくされる事態が全国で広がっています。病院で同様のことが起これば、命にかかわる重大な事態です。

 ◇保険がきかない治療拡大

 改悪案は、保険がきく診療と保険がきかない診療を組み合わせる「混合診療」を本格的に拡大する方向を明記しました。「保険証1枚あれば、必要な医療はすべて受けられる」のが日本の医療制度です。この間も、人工透析、眼内レンズ、臓器移植など、最初は保険のきかない高額の医療が、保険の中に組み込まれてきたのは、この「国民皆保険」の考え方があったからです。
 今回の改悪案は、この仕組みを壊そうというものです。「よりよい医療技術や新薬は保険の対象外に。受けるためには高額の治療費が必要」「お金のない人は保険のきく範囲で」―こんな「混合診療」が導入されれば、保険証だけで病気を治すことができなくなってしまいます。

 ◆せめてヨーロッパなみの企業負担に

 4月7日の経済財政諮問会議では、6月に取りまとめるとされている「骨太方針2006」の中心的な課題である「『歳出・歳入一体改革』中間とりまとめ」が論議されています。
 その内容は、06年度までの「改革」を引き継ぎ、国債償還費などをのぞく「基礎的財政収支(プライマリーバランス)」の黒字化を2010年代初頭までに達成し、ひきつづき財政再建を達成するための「方策」論議です。
 「歳出改革」の中心は、地域間の財政の不均衡是正を目的としてきた地方交付税制度の「改革」と、社会保障給付の水準と範囲、負担の「見直し」であり、「歳入改革」の内容はいうまでもなく「消費税の税率引き上げ」です。
 地方交付税の「改革」が、地方独自の福祉制度や社会保障の「上乗せ」給付、「30人学級」などの切り捨てにつながることは、この間の「三位一体改革」の結果でも明らかです。
 社会保障給付のひき下げは、医療・年金・介護の制度改悪を、この先10年以上も続けることを宣言するものです。
 しかも、政府は、6月の「骨太方針2006」に続き、12月までには07年度税制「改正」答申をとりまとめて、07年1月の通常国会に消費税増税法案の提出を狙っています。
 いま、政府は、在日米軍の再編とかかわって、海兵隊のグアム移転費用9000億円の負担論議もおこなっています。黙っていたら、「国民生活より米国との関係」という構図が、一層強まることになります。

 ◇日本はすでに「小さな政府」

 OECDの調査では、GDPに対する医療や介護に対する社会的支出の割合は、「アメリカ26%、イギリス27%、スウェーデンとドイツ30%」です。「小さな政府」のアメリカも、「大きな政府」のスウェーデンも、医療や介護に対して支払う費用には大差がありません。これらの国々の、社会的支出での公的支出は、アメリカ16%、イギリス24%、スウェーデン28%、ドイツ29%です。結局、「小さな政府」とは、医療や介護に対して私的に支払う金額の大きな国と同義なのです。
 日本の状況は、社会保障関係に占める政府支出が「20.4%」であり、イギリスよりも小さな政府です。その分、社会保険料や患者負担が大きいと考えられます。図表4は、各国の政府支出の対GDP比の割合を費目別に図式化したものですが、公共事業費をのぞき、いずれも「小さな政府」です。「歳出改革」を言うのであれば、社会保障への政府支出を増やしてこそ、国際水準に合致するというものです。



 ◇税金のとり方と使い方を改革する「もう一つの日本」を

 図表5にあるように、この間の「税制改革」では、一貫して、法人税の税率引き下げが進められてきました。ちなみに、所得税についても、最低税率(10%)を据え置いたまま、最高税率は37%へと半減しています。企業、大金持ち優遇の「勝ち組のための税制改革」です。
 2000年度の比較で、社会保障財源にしめる企業の負担割合は、日本12.3%、イギリス16%、ドイツ17.7%、スウェーデン25.8%となっており、ここでも「小さな企業負担」です。
 消費税の税率論議の前に、税金や社会保障にかかわる企業の負担(=企業の社会的責任)のあり方を国際水準に合わせることが先の課題です。


 

◆〈制度を知って職場で活用を〉

 勤務時間、年金はどうなる?
  −−職業生活と家庭生活の両立を

 ◇人事院 学童保育の迎えにも利用、早出遅出勤務対象を拡大

 人事院は3月22日、職員の早出遅出勤務の対象範囲を拡大し、学童保育に託児している小学生の子の帰宅時の迎えのためにも利用できるとする人事院規則(10―11)の改正を行いました。
 小学生等に対する凶悪事件が多発している最近の社会情勢をふまえたものです。
 休息時間廃止問題ともかかわって、職業生活と家庭生活の両立の観点から、育児、介護を行う職員と同様の措置をそれらの職員に求めてきた国公労連のとりくみの反映でもあります。

 ◇年金一元化「基本方針」閣議決定の危険性

 被用者年金一元化に関する政府・与党の協議が急ピッチで進められ、4月末までに「基本方針」の閣議決定が行われる状況となっています。
 具体的には、「できる限り速やかに共済年金を厚生年金に合わせる」という「一元化」方針のもと、保険料水準は「速やかに厚生年金(18・3%)に統一」、職域部分は「公的年金としての職域部分は廃止」などの内容で進められています。

 企業年金と退職金調査を人事院に依頼

 また、「職域年金の廃止」ともかかわって、「公務員の企業年金」論議も浮上する中、総務省は、民間の企業年金と退職金の支給実態調査を人事院に依頼しました。年金一元化とともに退職手当の「見直し」も、という動きが表面化しています。
 総人件費削減の一環としての公務員の労働条件改悪の動きであり、一方的な不利益変更を許さないためにたたかう体制の整備が求められています。

 

◆核廃絶の願い広島へ

 国民平和大行進に参加を


 2006年国民平和大行進が5月6日、東京・夢の島を皮切りにスタートします。
 国公労連は、平和行進を通して核兵器廃絶と憲法を守ることを国民にアピールするために、すべてのコースに独自の「リレー旗」を出し、組合員の「手から手に」つなげることにしています。
 本年は、高木博文・国公労連顧問が東京→広島コースの通し行進者として参加を決意。例年に増した位置づけで、全国に職場をもつ国公労連の仲間が、積極的に行進に参加し、平和の願いを06年原水禁世界大会につなぎましょう。


◆〈北から南から〉

 宮城 地元紙が報道したキャラバン

 【宮城国公発】全国キャラバン宮城は4月12日、仙台繁華街と気仙沼市の2カ所を中心に街頭大宣伝行動を展開しました。
 仙台市では、雨の中の早朝をはじめ、昼の中心部大宣伝行動では全労働、全法務、国土交通共闘が作製したティッシュ1500個を配布。県・市・郵政公社・宮城労働局への要請行動を実施。夜の大集会・デモは総勢200名の仲間が参加し、仙台市中心部で市民にアピール。
 労働基準監督署の廃止問題で揺れる気仙沼市では、前日の夜に意思統一交流会を開催。12日早朝、気仙沼市役所前の街頭宣伝をはじめとする宣伝行動、気仙沼市・労働基準協会・商工会議所要請行動にとりくみました。労働基準協会では「労働基準監督署廃止に反対し、住民の要望書を携え、大臣交渉まで行った」と語りました。
 気仙沼コースには地元新聞社の三陸河北新報社、仙台コースでは河北新報社から取材を受けるなど、注目を浴びました。
 2カ所の地域で同時に開催・成功させたことは、民間の仲間とともに、「全国津々浦々にいる国公の組合員の支え」を感じました。



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