国公労新聞 第1237号 |
◆公務労働者に熱いエール 「構造改革」の虚妄明らかに森田実氏(政治評論家)/山口二郎氏(北海道大学教授)いま、5年間の小泉政治の「光と影」、小泉「構造改革」に対する世論の批判が広がっています。国会終盤に開催された国公労連中央労働学校、北海道と宮城で開催されたシンポジウムでは、各界の識者から、「小さな政府」反対の発言や、公務労働者への激励が寄せられています。◆「小泉改革」はアメリカのため 森田実氏(政治評論家)国公労連中央労働学校で講演 ◇小泉改革を総批判 国公労連2006年中央労働学校が6月4日、都内で開かれ、88人が参加しました。専修大学教授の晴山一穂氏が「公務の民間開放と公務員の権利」を、政治評論家の森田実氏が「小泉構造改革総批判」を講義しました。 森田氏は、「郵政民営化の本質は、国民の共有財産をアメリカの巨大資本に売り渡すもの。小泉首相の公務員攻撃に便乗しているマスコミは権力にすり寄っている。私はみなさん方の応援団だ」とのべました。 ◆「小さな政府」は民意ではない 山口二郎氏(北海道大学教授)北海道シンポで講演 ◇「官から民」で道民守れるの? 「もうひとつの北海道」シンポに250人 【北海道国公発】北海道国公は、北海道公務共闘と国民大運動北海道実行委員会との共催で「『官から民』で道民のいのち・くらし・安全は守れるの?」「格差拡大・地方切捨てからもうひとつの北海道へ」とするシンポジウムを6月14日、札幌市内で開催。一般市民やナショナルセンターの枠組みを超え約250人が参加しました。 冒頭、北海道大学の山口二郎教授が「小泉構造改革の虚妄―『小さな政府』は人間を幸せにするのか?」と題して基調講演。続いて、全労働、全気象、高教組の3人のシンポジストから、「行革推進法」などの具体化の過程における道民生活への影響を発言しました。 会場からは、社会保険事務所や法務局、福祉保育、航空管制の仲間が職場実態を告発。最後に、アドバイザーの山口二郎教授が、「『小さな政府』は決して民意ではなく、立場を超えて、広く国民に訴えていくことが必要」と強調しました。 ◆〈宮城〉「小さな政府」を職場から検証 「格差拡大」「地方切り捨て」を考えるシンポ 【宮城国公発】宮城県公務関連共闘は5月31日、「『格差拡大』『地方切り捨て』を考える市民シンポジウム」を気仙沼市内で開催し、気仙沼46人、仙台15人が参加。市議会議員、一般市民も駆けつけました。 シンポでは、「小さな政府」について活発な討論を展開。「監督署の廃止・統廃合問題」を宮城国公・高橋副議長が、日産自動車工場「三陸ハーネス解雇問題」を宮城一般・山内支部長が問題提起。高教組の加藤さんは、学区制廃止と学校間の格差が広がる実態を報告しました。 会場からは、郵便局集配場の削減、消費税増税問題など発言も。最後にコーディネーターの菊池・高教組委員長が、「競争と効率を優先させた弱者・地域切り捨ての政策が原因。みんなで連帯を」と呼びかけました。 |
◆つくろう!国際ルールにそった公務員制度動き出す政府の労働基本権論議政府は、6月16日の閣議で、「行革推進法(簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律)」の施行日を6月23日とする政令とあわせ、同法第78条に規定する行政改革推進本部の設置令を決定しました。この設置令の第1条で、「公務員の労働基本権等に係る制度」を専門的に調査する「専門調査会」の設置を決定しました。公務員制度審議会(1965年10月〜1973年9月・総理府)、公務員制度調査会(1997年9月〜2002年3月)に続き、公務員の労働基本権問題が、本格的に議論されることになります。◆日本政府に3度目のILO勧告 「日本の公務員制度は結社の自由に反する」 ◇発端は「公務員制度改革大綱」 「1府12省庁」の中央省庁再編がスタートした2001年1月、政府は、「新しい革袋には新しい酒が必要」だとして、公務員制度改革を開始しました。 同年12月、政府は、「公務員制度改革大綱」を閣議決定しますが、そこでは、公務員の労働基本権について「現行の制約を維持」としました。 その一方で、「能力等級制」の導入ともかかわって、政府の人事管理権限の強化と人事院機能の縮小を盛り込むという、手前勝手な内容であったことから、2002年3月、国公労連は全労連の力も借りながら、ILO結社の自由委員会に「提訴」しました。連合も同時期に同内容で提訴し、国際機関も巻き込んだ労働基本権回復闘争に日本国内の労働組合が足並みを揃えることになりました。 ◇労働基本権を制約し続ける日本政府に内外から批判 ILOは、2002年11月と翌2003年6月の2回、現行の日本の公務員制度が、ILO87号、98号条約に定める「結社の自由原則」に反しており、その是正のため「関係者との協議」を開始するよう日本政府に「勧告」していました。 しかし、政府が、その「勧告」を無視し続けたまま公務員制度改革を強行しようとしたことから、ILO勧告にそった公務員制度改革は、政府と労働組合の間の「最大争点」になっていました。このような中、2004年11月に政府は、「公務委員制度改革大綱」の「棚上げ」を事実上宣言し、2005年12月の「行政改革の重要方針」で、労働基本権を含む公務員制度全般について「幅広く検討」することを決定し、行革推進法でも同様の内容を盛り込みました(同法第63条)。 ILOは、このような日本政府の動きもみながら、本年3月29日に3度目となる「勧告」(図表1)をおこないました。 6月16日の閣議で決定された「専門調査会」の設置は、労働基本権を制約し続ける政府への国内外の批判の高まりや、全労連とともにたたかってきた私たちのとりくみの一つの到達点です。 ◇政府のサボタージュを許さないために 5月31日から6月16日まで開催されていた第95回ILO総会で、日本政府は、「公務員制度改革について組合と協議を続け、5月29日に、公務の範囲、公務員の類型化とそれぞれの在り方、それらを踏まえた労働基本権を含む労使の在り方について具体的な議論をおこなう『検討の場』の設置で合意した」と発言しています。 3度の「勧告」に対する答案が、公務の範囲から議論をはじめて「労働基本権を含む労使関係の在り方」の「検討の場」の設置だというのです。これが、労働基本権回復を国際公約したものではないこと、3度の「勧告」の完全履行を確約したものではないことは明らかです。 しかも、ILO「提訴」の一方の当事者である全労連との「公務員制度改革の協議」もないまま推移するという、差別状態も続いています。 公務員の労働基本権を、一部の労働組合との「政労協議」や職員団体など関係者を排除した「検討の場」の論議だけで結論づけさせるわけにはいきません。 「公務の範囲」の論議が延々と続き、公務の民間化が進む中で、労働基本権が保障される公務労働者が拡大した(図表2)、というような「ブラックジョーク」を受け入れるわけにはいきません。 過去2度の労働基本権論議が、結局、十分な結論が得られないまま終わってしまったことへの「反省」ももとに、政府のサボタージュを許さないための監視と働きかけなどの運動が求められています。 ◆共同ひろげ労働基本権回復へ ◇国際ルール違反の労働基本権制約 OECD(経済協力開発機構)に加盟する30カ国のうち、労働基本権を制約しているのは日本と韓国だけです。公務員の労働基本権だけをみれば、日本は後進国です(図表3)。 韓国は05年に「韓国公務員組合法」が成立し、争議権は否認されているものの、団結権、団体交渉権(賃金関係を除く)が認められています。しかし、この内容ですら「1.5権」の保障だとし、ILOやOECDが批判をしています。 ILOの結社の自由原則からすれば、「労働基本権の付与」とは、労働三権(団結権、団体交渉権、争議権)を全面的に認めることなのです。 その「原則」の上に、「国家の運営に従事する職員」の団体交渉権、「国家の名において職権を行使する公務員」の争議権、など職務の内容や責任に応じた制約を「例外的」におこなうという考え方です。 公務員だから争議権は全面禁止、公務員だから団体交渉権は制約などを「原則」に、一定の条件のもとで労働基本権を「付与」する、という議論は、ILO勧告の前では成り立ちません。 ILO勧告のこのような点での意義をふまえ、日本政府の主張の矛盾を徹底して追及し、安易な結論付けを許さない立場での運動は、「専門調査会」が設置された今こそ大切な点です。 ◇公務の範囲や公務員の類型論議の落とし穴 「公務とは」と問われたら皆さんはどう答えるでしょうか。広辞苑では、「国家または公共団体の事務。公務員の職務」だと規定しています。しかし、これでは、現実に合わない説明だ、と思われる方も少なくないでしょう。郵便事業は民営化されたら公務ではなくなるのか、非特定独立行政法人の職員が実施する職務は公務とは言えないのか、いくつもの疑問が浮かびます。公務の民間開放がすすむもとで、民間企業の労働者が公務に従事する例(例えば民間委託)も増えています。 このような点に目を向けると、労働基本権問題とかかわって「公務の範囲」を論議することは、公務だからという理由での民間労働者の労働基本権制約という別次元の問題が浮上する危険性を持っています。 今年5月に「行革700人委員会」(代表世話人・塩川清十郎氏など)は、公務員制度改革にかかわって政府に「提言」を行いました。 その中では、「三つのカテゴリーに分けて公務員制度の検討を」としています(図表4)。 公務員の類型論議は、戦前の官吏と雇員・傭人の身分制度への回帰や、政治的任用の拡大による「公務員の政治化」の危険性を内在しています。いずれも、公務員を「国民全体の奉仕者」とする憲法第15条の具体化に抵触する問題であり、労働基本権を認める範囲という目先の議論だけで整理できる課題ではありません。 ◇対案を明確にし全労働者の力を結集 連合は、ILOの3度目の「勧告」をふまえた事務局長談話で、「日本の労働運動を代表する立場」に立って「検討の場」にとりくむとしています。全労連は、政府に対しては「政労協議」を迫りつつ、「日本の労働組合全体が一致して(国際労働基準に沿った公務員制度改革)の実現のため共同」するよう呼びかけています。 「3度目の正直」で、政府に、公務員の労働基本権制約の「鎖」を外させるよう、力を集中する時期です。 そのことから、全労連は、公務員制度改革にかかわる「見解」を公表しました。この「見解」もふまえながら、国公労連としても、「労働基本権回復構想素案(国公労連第50回大会確認)をさらに精緻なものにして、具体的な制度設計を政府にせまるとりくみを開始する必要があります。 |
◆〈人事院勧告期要求書を提出〉比較企業規模問題が争点総人件費削減阻止を強調 国公労連は6月12日、「2006年人事院勧告にむけての要求書」を人事院に提出し、交渉を行いました。 国公労連側は、「職員のおかれた厳しい状況に、人事院が勧告でどう応えるかが問われている。給与構造見直しが一段落した段階で、なぜ比較企業規模の見直しなのか。1965年以来定着してきたものを見直す合理的理由はなく、職員が納得できる説明が求められる」などと主張し、財政事情などを背景とする政府の総人件費削減抑制方針に左右されない勧告が行われるよう人事院の姿勢と説明責任を追及しました。 これに対して、人事院の山野事務総長は、「諸課題については勧告にむけ引き続き検討していきたい。民間給与実態調査については、小規模企業を含め現在調査中であり、今後研究会の検討状況や組合の意見も聞きながら検討を進めていきたい」などと応じました。 堀口委員長は、「職員の期待に沿う結論か、政府の要請に応える方向かで重大な判断が求められ、昨年以上に人事院の責任は重い」と強調し、要求実現に向けた努力を強く求めました。 |
◆〈社会保険庁不正免除問題〉大阪労連など緊急集会ひらく「ノルマ主義」と年金制度の矛盾◇マスコミも注目した大阪労連・大阪国公・大阪自治労連は6月16日、「社会保険庁『解体』でくらしはどうなる―不正免除問題の真相は―」と題し、大阪市内で緊急集会を開催。約100人が参加し、朝日放送テレビ、NHK、朝日新聞、読売新聞など取材がありました。 国会で「行革推進法案」などが審議されていた5月中旬、大阪労連内で「社会保険庁の解体は、国の社会保険事業の責任放棄だと国民に伝えなくていいのか」との声が巻き起こり、企画が急浮上。その後、「国民年金保険料の免除処理問題」が持ち上がったこともあり、急遽、そのテーマも取り上げました。 集会では、全厚生から「年金保険料の免除処理問題」についても報告し、国民のニーズ体制に応えられる制度と行政の確立に向けてとりくみをすすめる決意を表明しました。 ◇現在の年金制度は不十分 集会では、佛教大学社会福祉学部の岡崎祐司教授が、「『構造改革』で社会保障がこわされる―国民のための社会保障再生の課題―」と題して講演。「現在の年金制度は不十分。国民生活の実態にあった負担と給付の制度改革をしなければならない」とし、国民のための年金制度改革の必要性を強調しました。 会場の参加者からは、最低生活保障ができる年金制度の拡充を求める声や、政府の「改革」に隠された狙いを明らかにする必要性が強調されるなど、国公労働者にとって勇気を与える集会となりました。 ◇全厚生が「見解」を表明 全厚生労働組合は、6月16日付で「見解」を発表しました。 「見解」では、「(6月13日時点で)29都道府県110社会保険事務所」で不正免除が行われていたことに、全厚生として「監視と問題提起が十分ではなかった」ことを反省するとしています。 その上で、05年11月に、社会保険庁・村瀬長官が出した「(収納率)緊急メッセージ」や、社会保険事務所ごとの「必達収納率」の設定などで競争主義が強まり、職員に雇用不安をあおって「ノルマ主義」を徹底したことが、問題の原因にあると指摘しています。 また、パート・フリーターなどの不安定雇用の拡大で国民年金制度が空洞化する矛盾を指摘し、「最低保障年金制度」創設を求めています。 |
◆インドネシア・ジャワ島地震被災者救援義援金を 5月27日、インドネシア・ジャワ島中部で発生した地震による死者は5782人、負傷者数も約3万6300人、13万戸以上が全半壊し、約64万7000人の被災者が避難所やテントなどで避難生活を送っています。国公労連は、全労連と友好・協力関係にあるインドネシア福祉労働組合連合(K-SBSI)を通して、被災したインドネシアの労働者・国民に最大限の連帯と援助のために、救援義援金にとりくみます。 |
◆読者のひろば
◇国が責任もつからサービス向上!(全法務の仲間から) |
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