<国公労新聞・第959号1997年7月1日付より>

【連載】海外調査団「行革」見聞録A

イギリス公務員労組−安易な民営化は断固反対


 5日間滞在したイギリスでの調査は、とても充実したものでした。12名の調査団員は、4つの班に分かれ、政府機関や労働組合への訪問、登記や特許などの各エージェンシーの実態調査など、それぞれの目的にしたがった行動を精力的にこなしていきました。

立派な組合事務所

 ロンドンでは、CPSA(文官・公務労組)とPTC(公務・税・商業労組)の二つの公務員労組と交流しました。両組合は、十数万人程度の組織ですが、どちらも単独の建物に広い事務所をかまえています。  CPSAの調査部長マット・フリン氏は、ご夫人が沖縄県出身の日本人だそうで、日本語に翻訳した資料まで用意してもらい、異国の地で見る手書きの漢字には感謝感激でした。

身分は公務員でも士気の低下まねく

 フリン氏は、エージェンシーについて、身分はそのまま公務員でも、本省から組織的に分離されるため、どうしても公務員としての意識が薄れがちとなり、そのことが民営化を安易に考えさせてしまう傾向があること、また、かつては省内の部局間の人事交流が可能だったものが、現在は、エージェンシーをとびこえた異動ができなくなってしまい、そのことで、職員が他の部門の業務に無関心になることや、エージェンシーで新たなカベができ、省全体の施策が見えにくくなっているなどの問題点をあげました。
 さらに、フリン氏は、それらが職員の士気の低下をうみだしていることも指摘しました。また、エージェンシーにはある程度理解は示しても、安易な民営化には断固反対するとの立場が強調されました。

同じ職種でも月2万円の差別が

 また、PTCのジム・マッコウスラン書記次長からも、行政の効率化によって、ある税務署で税務相談の担当が廃止され、その地域の納税者への負担となっている例や、業績によって、同じ職種でも月に100ポンド(約2万円)もの給与の違いがあることなど職員への影響も聞くことができました。

国民共同を重視

 特徴的だったのは、両組合ともに、国民の支持・共同を何よりも重視していることでした。
彼らは、「公務員労働者が公共サービスに果たす役割や、民営化が国民生活にあたえる影響を国民にわかりやすく示すべき」「たえず国民を味方にし、運動への協力を求めることが大切だ」と口々に語ってくれました。まさに、国公労連の「大運動」と相通じる点です。
 両組合ともきわめて友好的で、機会があれば今後とも交流をはかっていくことを誓い合い、協力への感謝の言葉をのべて事務所をあとにしました。(国公労連・黒田記)

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