<国公労新聞・第958号1997年7月1日付より>

シリーズ「行革」を考えるE

人件費抑制は国民いじめの突破口
    勧告実施とひきかえに定員削減


 新人事院総裁の中島忠能氏が、6月24日の就任記者会見で「人件費を減らすことが給与の抑制につながるというのは考える必要がある。公務員数を減らすなどいろんな方向から検討していただきたい」(6月25日付朝日新聞)と述べたと報道されています。
 人事院のトップが、労働基本権の「代償機能」である勧告の完全実施をもとめることは、その役割からしても当然のことです。
 しかし、労働条件の最重要の要求課題ともなってきている定員問題について、削減を求めるかのような発言を同時におこなったことは重大な問題です。

人件費は高い?

 96年度の一般会計予算の内、人件費が占める割合は14.3%(10兆7千億円)です。少し古くなりますが、91年の法人企業の経理状況では、売上高に占める従業員給与の割合が、製造業(43万3,970社)で14.13%、サービス業(30万2,344社)で16.64%となっています。また、96年度予算では、防衛費6.45%、公共事業費12.71%、国債償還費にいたっては21.8%の割合になっています。このような状況や、職場第一線の行政需要、公務員労働者の生活実態などと比較して、総人件費は過大なのでしょうか。
 また、定員についても人事院が発行している「国家公務員給与のしおり」でも、「国家公務員の数は行政需要の増大にもかかわらず、計画的な人員削減により、漸次、減少」、「我が国の人口あたりの公務員数は、欧米諸国の3分の2以下」と記述しているのです。  

80年代の第二「臨調」と同じ

 財政再建を口実にした人件費抑制は、80年代の第二臨調路線のもとで、82年以降の人勧凍結・賃金値切りや定員削減計画強化の形で押し進められました。その結果、負担した税金に見合った行政サービスが提供されないとする国民の怒りも高まりました。
 また、公務員攻撃を突破口に、その後、年金、医療などの制度改悪が相次ぎ、民間労働者の労働条件にも悪影響をおよぼしたことは記憶に新しいところです。
 今回の財政構造改革でも、「痛みをわかつ」とする主張のもとに、社会保障の全面改悪と総人件費抑制が同時に仕組まれようとしています。また、「企業はリストラで血を流している。だから政府も」とする宣伝も強められています。民間企業のリストラで、血を流しているのは労働者です。
 このような民間企業の状況を引き合いに、公共事業や軍事費のムダ遣いのツケを国民や公務員労働者に負担させようとしているのです。
 「橋本行革」をくい止めるための労働者・国民との共同追求は、このような側面からの接近も必要なのではないでしょうか。

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