<国公労新聞・第962号1997年8月1日付より>

【連載】海外調査団「行革」見聞録C

まねできない実情ちがうイギリスのエージェンシー


 イギリス調査の最終日、私たちは、ウォーリック大学のマッケルダウニー教授を訪ねました。
 ウォーリック大学は、ロンドンから特急で一時間ほどのコベントリーという街にあり、駅前はきれいな花壇に飾られ、のどかな地方都市といった雰囲気でした。

世紀末には95%のエージェンシー化

 マッケルダウニー教授は、行政法が専門で、エージェンシー制度を中心に「講義」をうけました。学術的でやや難しいところもありましたが、たとえば、大臣は政策に、エージェンシーの長官は日常業務にそれぞれ責任を持つという責任分離の原則や、現在、国家公務員全体の7割程度のエージェンシーの職員数は、今世紀末には95%までにもなるとの予測も教授から示されました。

カネがないから国立病院の病棟閉鎖

 イギリスでの日程を終え、短い期間でしたが、さまざまな人の話から、イギリス行革の一端をかいま見ることができました。
 エージェンシー化の一つの問題点として、執行部門の独立化やコスト重視の経営手法が、国の仕事の切り捨てをより簡単にさせていることがあげられます。たとえば、カネがないからといって突然、ロンドンの国立病院の病棟閉鎖が検討されるなど、住民のいのちにかかわる事態もおこっています。
 さらに、「マーケットテスティング」とよばれ、競争入札によって行政機関の一部門を民間に切り売りする手法が、すでにエージェンシー化の次の段階としてすすめられています。マーケットテスティングによって、これまで36億ポンドもの仕事が競売にかけられ、その結果、強制解雇された公務員もいたそうです。
 EU通貨統合を目前にひかえ、ヨーロッパ各国が行革を競うなかで、本来ならば国が責任を持つべき仕事がタタキ売りされたり、切り捨てられたりしているのが実態です。

日本の行政は、イギリスより効率的

 「橋本行革」は、日本型エージェンシーをめざしています。  たしかに、イギリスでは一定の改革は達成されているものの、日本の公務員数は、人口比でイギリスのわずか2分の1にも満たず、行政の効率化では、はるかに先を行っています。
 エージェンシーだけをまねることに、どれほどの意味があるのでしょうか。  日本の行政改革の方向は、行政のゆがみや財政のムダ遣いをあらためることが第一歩です。
 外国の模倣では、行革は決してできません。
 モノマネならばサルにもできる! そんな思いを胸に、愛着がわいてきたロンドンの街に別れをつげました。(国公労連・黒田記)

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