<国公労新聞・第963号1997年8月11.21日合併号より>
【連載】海外調査団「行革」見聞録D
日本の6倍の職員数−充実度がまるでちがうドイツ行政
旅先で6月をむかえた私たちは、引き続きドイツの行政の実態について調査をすすめました。
失業者は400万人
東西の統一から七年がたち、いまドイツは、400万人といわれる失業者をかかえ、国内企業の倒産や業務整理・縮小もつづき、経済的にも困難な状況におちいっています。
また、間近にせまったEUの通貨統合では、財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以内に抑えることが条件とされており、行財政の改革は急務の課題となっています。
しかし、イギリスのエージェンシーのような「目玉」もなく、ドイツの改革は、緩やかなペースですすめられているようです。
調査団の一行は、まずドイツ官吏同盟(DBB)を訪問しました。DBBは、110万の公務員労働者を組織しており、事務局は圧倒されるほどの大きな建物で、敷地には噴水までありました。本部では、シュミッツ氏とシェーンバッハ氏の二人の役員が対応してくれ、ドイツの行革の実態などが聞けました。
定員削減・能力主義強化に反対
そのなかで、行政組織の簡素化がさかんにいわれるもとで、毎年2%程度の公務員削減が続いていることや、今年7月より施行される「業務改革法」では、公務員制度において能力主義を強化する内容がふくまれ、DBBは強く反対していることなどが語られました。
日本の6倍の職員数
また、調査団は、職業安定所や登記の職場などへも訪れました。印象的だったのは、各行政機関の職員の多さです。ドイツ連邦雇用庁は、全国で9万5000人が働いており、単純に比較しても日本のおよそ6倍の人数です。
また、実際にフランクフルトの職業安定所に行ってみて、その大きさにはびっくりしました。五棟の堂々とした庁舎がたち、およそ日本の「職安」のイメージからはかけはなれたものでした。職員はすべて個室を持ち、相談者のプライバシーが守られます。各自の部屋のレイアウトも自由で、職員はのびのびとしています。
行革の現状をあげれば、たとえば、全法務の代表が訪れた登記の職場(裁判所)では、コンピュータ化による事務処理の効率化が計画されても、本格的な運用は先の話とのことでしたし、雇用庁ですすめられている「2千年の職安」と題した行革プログラムも、入口にはいったばかりという感じでした。
このように、実際に職場を訪問した感想は、イギリスと比較すれば、ドイツの行政改革の本格化はまだまだこれからという印象をうけました。(国公労連・黒田記)
※5回にわたって国公労連・黒田健司中央執行委員による海外調査団の報告を連載してきました。次回からは、調査団に参加した各単組からの報告を連載します。ご期待ください。
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