<国公労新聞・第948号97年3月1日付より>

国民本位の民主的行政改革にむけた
「国公労連の提言」(第1次案)の解説


 国公労連は、さる2月3日〜4日の第99回拡大中央委員会で、「国民本位の 民主的行政改革にむけた『国公労連の提言』(第1次案)」(以下、「提言」と 略称)を発表しました。
 この「提言」は、第2次臨調が発足した1982年に国公労連が提起したもの( 「旧提言」)を基本に、これまでの運動や要求、今日の行財政の実態をふまえて 再編集したものです。その意味では、行財政改革について、今時点での国公労連 の政策面の到達点を明らかにしたものといえます。
 なお、この「提言」は、国民各層や組合員の意見を受けて、8月に開かれる 国公労連の定期大会で確定し、行政改革にかかわる国公労連の政策としていくこ ととしています。

【提言の目的】国民的共同で真の行政改革を
 「提言」では、最初に、国民本位の行財政確立をめざす運動を国民と共同し てすすめる国公労連の立場を鮮明にしています。
 21世紀を目前に、わが国の行政・財政の行きづまりは深刻です。96年度末で442 兆円にまで膨らんだ政府の借金、阪神淡路大震災の被災者救済には背を向けな がら住専処理には税金をつぎ込む冷たい行政、相次ぐ高級官僚の不祥事からも明 らかな「政・官・財」ゆ着の実態などからして、行財政の改革は待ったなしの状 況です。
 しかし、橋本内閣が、「火だるまになってすすめる」とする行財政改革は、 消費税率引き上げや医療保険制度の改悪などで9兆円もの新たな負担を国民に求 めながら、旧態依然とした「ムダ遣い」を改めようとしない97年度予算でも明ら かなように、これまで以上に国民に犠牲を強いるものです。
 それだけに、今日の情勢では、「橋本行革」反対や個別の改悪攻撃を阻止す るたたかいと並行して、「誰のための、何のための行政改革か」を問うことが必 要となっています。そのことから、国公労連は「提言」を組識内外に明かにし、 国民生活重視の行財政にかえていくための課題を国民とともに考え、国民本位の 行政改革の実現にむけた共同の取り組みを積極的に追求したいと考えます。
 職場や地域での「橋本行革」阻止の取り組みの際でも、積極的な活用をお願 いします。

【行革の視点】内外両面の行政民主化を
 「提言」では、行政改革は、@時代と社会の状況に応じたナショナル・ミニ マムの確立などで基本的人権が実現を目的とした「民主・公正・効率的な行政」 の確立めざすこと、A行政内部からの民主化も同時にすすめることの2点に言及 し、行政の内と外両面での改革が同時にすすめられる必要があることを述べてい ます。
 そして、行政改革を国民の立場ですすめるためには、国民諸階層の意見が十 分に反映できる民主的手続きと国民の合意が不可欠なことを主張しています。
 また、国公労連が行政改革についてこのような「提言」をおこなうのは、労 働条件の改善と国民本位の行政確立を同時に追求することの「責任」をふまえた ものであり、国公労働組合の主体的な運動課題として行政民主化の取り組みがあ ることを表明しています。そして、特に、「政・官・財」ゆ着を一掃のとりくみ は、今日の行政の実態からも、職場の状況からも、重要な運動であることを強調 しています。

【行革の基本点】7つの課題を総合的に
 「提言」では、行政改革の基本的な課題として7点に触れています。
 @政・官・財のゆ着を根絶。
 A国民にひらかれた民主的な行政の実現。
 B自衛隊など不要不急部門の機構の縮小あるいは廃止。福祉、教育、医療な ど国民生活に必要な部門の拡充。
 C人間らしい生活に必要な労働分野の規制や最低基準、公正な競争を維持す るための企業活動の規制、環境保護など国民共通の利益を保護する規制の強化。
 D大企業・高額所得者優遇の不公平税制の是正と、軍事費や大型プロジェク ト中心の公共事業のムダ遣いの見直し、大企業への補助金の整理など全般的な歳 出の見直による財政再建。
 E国と地方自治体の関係は対等・平等なものに。
 F高級官僚の天下りの禁止、特権優遇人事の撤廃など民主的な公務員制度の 確立。 これらは、国民本位の行財政改革にとって欠けてはならない課題であり 、総合的に改革をめざすことを確認していくことが大切です。

【具体的課題】制度や機構の改革
 「提言」で触れている制度や機構の改革では、次のようなものがあります。
 @「政・官・財」のゆ着をたちきるための改革事項 「すべての団体からの 政治献金の禁止」、「本省庁の局長及び相当職以上の公務員などの「天下り」禁 止」、「国会の任命する『行政監視委員(オンブズマン)制度(仮称)』の創設 」、「公務員労働者への『内部告発権』、『意見表明権』の保障」など、行政の 内と外の改革。
 A国民に開かれた行政にするための改革事項 「審議会制度の抜本的改善」 、「惰報公開法の制定」、「職員代表と当局代表による『行政運営協議会』(仮 称)の設置」など、透明性の確保。
 B行政機構等の改革課題 「首相への行政権限の集中は慎重な検討を」、「 政策立案部門と執行部門の分離には反対」、「自衛隊、公安調査庁、警備・公安 警察、機動隊など、軍事、弾圧、治安機構等は改組または縮小・廃止」、「機関 委任事務の廃止と国と地方の役割に見合った事務配分の見直し」、「特殊法人な どの独立性保障、政治的利用の禁止」など中央集権化を否定し、国民参加の行政 確立。
 C財政再建の改革課題 「消費税の廃止、大企業優遇の是正」、「軍事費の 大幅削減」、「公共事業の抜本的見直し」など歳入、歳出両面での改革。
 D規制緩和や民営化についての課題 「労働基準の形骸化、雇用流動化につ ながる規制緩和に反対」、「『解雇規制法(仮称)』の制定」、「福祉、医療、 年金などの分野への営利企業の参入の規制」など、ナショナルミニマムの実現で の国の責任の明確化。
 E公務員制度の改革課題 「労働基本権の回復」、「特権優遇人事の撤廃」 など、公務員制度の民主化。

【提言の活用】賛同署名と一体で国民総対話を
 改革とは「目的が国家の基礎に動揺を及ぼさない変革」(広辞苑)と意味付 けられています。国の基礎に、国民一人一人の生活にあることはいうまでもあり ません。
 大企業の経済活動の保障や、沖縄の基地問題にも見られるアメリカの利益を 優先することが行政の改革と言えるのでしょうか。ナショナル・ミニマムが確立 しているとして社会保障制度の切り捨てなどをおこない、国民に「痛み」を分か ち合うことを迫ることが行政の改革なのでしょうか。
 今、橋本内閣が進めようとしている行政改革の強行を許すならば、国民生活 に多大な犠牲をもたらすとともに、行政の役割さえ変質させ、とりわけ国民生活 関連の行政分野の存在さえ否定されかねません。 それだけに、それぞれの行政 の役割の必要性を積極的に国民に訴え、理解を得て真の行政改革の課題を明らか にし、国民本位の行政改革を政府に迫るたたかいを大きくしていくことが求めら れています。
 「提言」は、真の行政改革の課題を明らかにしていくための素材であり、国 民との対話で内容を豊かなものにして立場で、積極的なとりくみをすすめること が必要です。今回、国公労連は、インターネットにホームページを開設したのも 、できるだけ広範な国民から、「提言」への意見を寄せてもらいたいと考えるか らです。
 「橋本行革」のスケジュールは、2001年には新しい「行政の仕組み」でスタ ートすること目標に、98年通常国会に関連の法案提出をめざすとしています。そ のことも念頭に、行革闘争の重要な武器として「提言」が活用されるような積極 的な職場論議をお願いします。


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