<国公労新聞・第965号97年9月11日付より>
【連載】海外調査団「行革」見聞録E
<イギリスのエージェンシー>業績給制度で賞与規定なし
全法務編その1
失業者は400万人
全法務独自のイギリスでの調査活動は、3つの内容(@土地登記庁の実態、A会社登記庁の実態、B弁護士の意見聴取)で、5月28日からおこないました。
調査初日、弁護士からの意見聴取のため、3つの法律事務所を訪問しました。
イギリスでは弁護士(ソリスター。日本の司法書士に該当する)が登記手続きの代理をおこなっており、一般市民が直接登記庁を利用することはほとんどありません。そのため、常時登記庁を利用している弁護士6人から意見を聞きました。
弁護士の登記庁に対する評価が「手数料の引き下げ、電話による謄本請求・登記事項照会、登記庁の定期的な情報提供などはよいことだ。さらに、最近職員に奉仕の気持ちが見られるようになった」など、比較的よかったのはエージェンシー化後、独立会計制度になったことと業務のコンピュータ化でサービスが改善されたことが主な理由でした。
調査2日目は、土地登記庁(本庁)と登記現場であるハーロウ地区登記局を訪問しました。
土地登記庁はロンドン市内の司法関係の庁舎が立ち並ぶ一角にあり、庁舎はレンガづくりの風格のある建物でした。登記庁ではコリン・マッケンジー第2人事課長がわれわれを迎えてくれ、評価に説明してくれました。
組織の概要
@土地登記庁は1862年設置、1990年7月エージェンシー化。長官は、公募により採用された経営の専門家で民間人のスチュアート・ヒル氏でした。
A組織は本庁のほか19の地区土地登記局で出先機関はありません。地区土地登記局の長は全員登記局出身者です。
B職員はすべて国家公務員で弁護士資格を有する者も配置していました。
C定員は89年度1万1,617人が97年度7,980人と約3,600人減少していました。
財政の概要
@93年4月独立基金となりました。歳入財源は手数料・申請料で、近時歳入が歳出を上回っているので手数料の引き下げを実施しているとのことでした。
A職員給与体系は独自に設定しており、賃金改定は労働組合との交渉で決定しています。制度的にボーナスはありませんが、年に1回支給していました。給与は業績給制度でした。
業務処理
@現在の登記簿数約1,600万冊で未登記の土地も多く残っています(登記対象は土地の所有権・賃借権のみで日本と大きくちがう)。
A申請は、電話による検索・登記事項照会・謄本交付申請を実施。登記申請も郵送でおこなわれていました(日本は申請人が役所におもむく出頭主義)。
B業務処理はコンピュータ化されており、利用者はオンラインで情報取得が可能になっています。
(全法務・岩波薫記)
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