<国公労新聞・第966号97年9月21日付より>

【連載】海外調査団「行革」見聞録F

ものまねエージェンシーでは職場の混乱必至

全法務編その2



 前号につづいて、全法務がおこなったイギリス登記庁とドイツの行革実態について報告します。

職員の労働実態

 @職員は60歳までの終身雇用が中心です。A実労働時間は週36時間です。B定員は激減していますが、事務量の減少と機械化でゆとりある勤務実態となっています。
 午後からは、登記の現場である土地登記局を訪問しました。
 ハーロウ地区土地登記局の職員数は320名で、約7割が女性職員でした。職員はゆとりをもって執務しており、午後4時頃にはほとんどが帰宅していきました。
 行革でスリム化したとはいえ、登記庁は、業務量にくらべても、相当大きな組織として運営されており、業務の一部を民間委託し、定員削減を実施してきたわが国とは、基本的に大きなちがいがあります。
 イギリスで登記がエージェンシー化されているので、わが国でもと早計に考えるのは、たいへんなまちがいであることを痛感しました。
 翌5月30日は、会社登記庁を訪問しました。
 本庁はカーディフにあり、調査団はロンドン市内の支庁を訪ねました。
 調査の概要はつぎのとおりです。

組織運営の概要

 @会社登記庁は、1988年10月イギリスで2番目にエージェンシー化されました。
 A組織は、会社登記庁本庁のほかロンドンに支庁をもち、情報提供窓口が6カ所で構成されていました。
 B長官(登記官)は公募により採用された民間人で、管理の専門家でした。
 C96年度定員は955人(89年2月1,162人)であり、定員減は自然退職の不補充などで対処していました。
 D給与体系は独自に設定しており、ボーナスも年に1回で400ポンド(約8万円)支給されていました。

財政の概要

 @91年10月に独立基金となっていました。
 A財源は会社設立登記手数料・情報登録料・情報提供手数料などです。

業務処理の実態

 @イギリスの会社数は約100社あり、会社情報を登録し利用者に提供することが、主たる業務です。
 A会社情報は、窓口にあるコンピュータ端末機を利用者が操作することで閲覧でき、必要な場合は関係書類の写しも交付されます。
 Bパソコン通信会社との契約で、登録利用者にはオンラインによる直接情報が提供されていました。
 C申請・情報登録などの業務は、すべて弁護士が郵送でおこなっています。
 D業務の民間委託は実施していませんが、期限付雇用・非常勤職員の雇用などを積極的におこなっていました。
 会社登記庁は、エージェンシー化による民間的運営手法の導入で業務の合理化を積極的に推進しており、情報収集・効率的提供への努力は民間会社そのものでした。
 しかし、行革により不安定雇用者が増加していることは、会社登記庁の多様な採用形態からも理解できました。
 職員の労働条件について、ロンドン支庁を見た限りではゆとりがあり、わが国と大きなちがいでした。

 イギリスでの調査を終え、6月3日にはつぎの訪問地ドイツを訪れ、ケルン区裁判所(登記行政部)の行革実態を調査しました。

職場実態などの概要

 @土地登記事務は、州が管轄するすべての区裁判所でとりあつかっています。
 A増加する登記事件対策のため、コンピュータ化に着手していました。
 B登記手続きは、ほとんどが公証人(代理人)によってなされています。

職員の労働条件など

 @ドイツの公務員資格は、官吏・職員・労働者に区分されており、ケルン区裁判所の登記行政部も同様でした。
 A超過勤務手当は、職員および労働者に支給されますが、超過勤務はほとんどないとのことでした。
 B給与支給額は、基本給と業績給で構成されています。

行政改革の特徴

 行政改革で、裁判所では2003年までに1300人の定員削減が課せられていました。

おわりに

 ドイツの裁判所でも定員削減による行革が具体化してきており、公務員労組と連帯したたたかいの必要性を認識しました。 (全法務・岩波薫記)

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