<国公労新聞・第970号97年11月1日付より>
国民生活軽視・人権抑圧の政府づくりねらう「橋本行革」
行政改革会議の論議が、大詰めを迎えています。11月17日の週には最終報告に向けた「集中審議」が予定されており、11月26日(もしくは12月3日)に、最終報告をおこなうことが確認されています。
中間報告が出されて以降の状況は、自民党を中心に、いわゆる「族議員」が、郵政3事業の国営維持をもとめ、建設省の河川局分離に反対するなど、党利党略の動きが強まっています。このような中で、橋本首相が「1府12省の枠組みが維持できれば」と述べたとも伝えられており、理念のない省庁再編であることが明らかになっています。
首相権限の強化で人事管理掌握狙う
同時に、首相権限の強化(内閣法の改正や内閣府への権限集中)は、当初案よりさらに踏み込んだ検討がおこなわれており、特に人事管理機能を首相周辺におこうとする動きが強まっています。
また、独立行政法人についても、その対象業務の検討はおこなわないままに、制度として実施することを既定事実にして、独立行政法人の職員の身分が検討されています。
実施部門「民営化」で公務員2割削減
この点では、最終的な合意にいたっていないものの、将来の民営化を前提に当分の間「暫定公務員」とすることも検討されています。政府や行政改革会議がいう「行政のスリム化」が、行政サービスを提供する事務実施部門の「民営化」であることが改めて示されており、「公務員2割削減」などの手段としてこれが検討されていることが明確になってきました。
政治的支配ねらう
これらの動きからも明らかなように、今回の省庁再編論議の内容は、「肥大化した官僚システム」と非難される本省庁の企画・立案部門は、温存するばかりではなく一層強固なものにすること、その官僚機構を人事管理をテコに首相とその周辺が政治的に支配する仕組みを作ること、そしてそのためにも、事務執行部門を独立行政法人や外局に切り離し、将来の民営化の「芽」を作り出すこと、などにあるものと考えられます。
このような中央集権的な政府がおこなう行政は、「ガイドライン(日米防衛協力指針)」見直しにも見られる「軍事大国」としての役割であり、国民生活軽視、国民の人権抑圧の政府となる危険性をもっています。そして、この点は、「族議員」の暗躍はあっても、一貫して目指されていることに着目する必要があります。
公務員労働者の雇用問題の側面があることは、検討の内容からして当然のことです。しかし、省庁再編の最大の問題点は、「国民全体の奉仕者」と規定される公務員の本質や、国民の基本的人権実現の役割を負う国の責任、国民への行政サービス提供のあり方などが問われている国民的な問題であるということです。この点をしっかり押さえた産別運動が、何よりも大切になっていることが、中間報告以降の省庁再編論議でも明らかになっています。
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