弱肉強食・国民犠牲貫く政府・財界の「行政改革」

(国公労新聞・第944号・1997年1月21日付)


 政府・財界が進めようとする行財政改革の内容が次々と明らかになっていま す。昨年の12月25日には、「行政改革プログラム」が閣議決定されました。主要 な報告の概要を明らかにしておきます。

行政改革委員会

 昨年の12月16日に、行政改革委員会は、「行政関与のあり方に関する基準」 、「創造で造る新たな日本(規制緩和推進計画の見直しについて)」、「情報公 開法制の確立に関する意見」の3つの文書を首相に提出しました。
 この内、「情報公開法制」は、94年12月から2年間の検討結果を「情報公開 法要綱案」として取りまとめたものであり、情報公開請求を「国民主権の理念」 にのっとった「国民の権利」と規定するなど、不十分さは指摘されるものの行政 の密室性を変えていく上で、積極的な意義を持っています。政府は、今年度内に 法案を提出するとしています。すでに、日本共産党が議員立法として同種の法案 を提出しており、市民団体等からも早期制定の要望が出されています。
 「創造で造る新たな日本」は、規制緩和推進計画に対する見直し意見であり 、これを受けて政府は、通常国会での法案提出を含む計画見直しを3月にむけて 進めるとしています。
 この意見では、規制緩和を経済政策の側面からとらえ、運輸、情報通信、金 融等の経済的規制は「活力ある新規参入者を歓迎するとの考え方を抜本的に転換 」することをもとめ、「厳しく検討」するとしています。
 医療・福祉、雇用・労働などの社会的規制に関しても「経済社会の発展」「 自己責任と個性重視といった国民意識の変化」「将来の日本の姿」などをふまえ た根本的な見直しを求めています。
 このような立場から、たとえば運輸での需給調整の緩和、裁量労働性や有期 雇用、女子保護規定など労働基準の緩和、病院経営への営利企業の参入などを求 めています。「競争の結果生じるのは、弱者ではなく敗者」と言い切っているこ とに示されるように、市場原理万能の姿勢にたった内容となっています。
 「行政のあり方に関する基準」は、規制緩和でのそのような考え方を基本に 、「行政活動の必要性の説明」「行政関与の社会的費用の勘案」「行政関与は最 小限に」「行政関与はできるだけ弱く」といった「基準」を示し、各行政組織の 見直しを求めています。これまでの行政の役割を否定し、国民生活への行政関与 を「限定」する「小さな政府」を迫る内容です。橋本首相は、これを中央省庁再 編の「基準」にする考えといわれており、軽視できないものです。  

地方分権推進委員会

 昨年の12月20日に、「第1次勧告(分権型社会の創造)」を首相に報告して います。
 その内容は、機関委任事務制度を廃止し、地方自治体が国の関与を受けずに おこなう「自治事務」への移管を基本に、国がおこなうべき事務の内、利便性・ 効率性の面から地方自治体が受託しておこなう「法定受託事務」との仕分けをお こなうとともに、国と地方の関係を明確化するよう求めています。
 地方事務官等の扱いは、今回明らかにされていません。また、大きな問題で あった補助金や地方自治体の財源については、今年の六月の最終勧告に先送りさ れています。
 機関委任事務の廃止そのものは、地方自治の原則からしても当然のことです が、たとえば、生活保護での国の指揮監督権が廃止されるなど少なくない問題を があり、国の固有事務の整理がおこなわれていないことから地方事務官制などで は引き続く課題を残しています。  

経済構造の変革と創造のためのプログラム

 政府が、昨年の12月17日の閣議で決定したもので、橋本首相が直接作成を指 示したといわれています。 その内容は、「新規産業創出」の観点から、規制緩 和などを求めるものであり、有料職業紹介の原則自由化、労働者派遣事業の抜本 検討、持ち株会社の解禁、社会保障制度での民間活力の活用など、財界の要望に 真正面から応えるものとなっています。 これらの内、いくつかは通常国会に法 案を提出するとしています。また、研究開発分野での「産官学の連携」が強調さ れており、新規産業創出に役立つ研究をこれまで以上に国立研究機関などに迫る 内容となっています。  

行政改革プログラム

 従来の「行革大綱」に変わるものとして、中長期の行政改革「計画」を含ん だ内容で、12月25日に閣議決定されました。その中には、97年度の定員査定結果 も含まれています(図2)。
 中心となる内容は、「中央省庁改革」であり、中央省庁再編と官邸機能強化 の具体策を、行政改革会議で1年以内に策定するとしています。
 そして、その結果にもとづいて、98年の通常国会に法案を提出し、「できれ ば2001年1月1日」に開始するとしています。先にも述べているように、中央省 庁の再編は「行政のあり方」と一体での検討になることは確実であり、「数あわ せ」にはとどまらない検討がすすめられる状況となっています。


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