<国公労新聞第975号1997年12月21日付より>

 【98春闘】行革闘争を軸に大きな共同で国民生活まもろう


  「財政構造改革法」の成立をはじめとして、橋本「改革」の内容が明らかになるにしたがって、橋本「改革」に対する国民的な批判が広がっています。
 国公労連が配布したリーフレットを見た方から、「矛盾だらけの政治や行政をなんとかしてほしい」「国民の声をうけとめて労働組合はがんばって」という声が、電話で寄せられました。
 消費税率を引き上げて法人税率を引き下げる、阪神・淡路大震災の被災者には自己責任を求めながらバブル経済に踊った金融機関には公的資金をつぎ込もうとする、財政難だからといって社会保障費は削りながら沖縄での海上基地建設の費用は惜しげもなくつぎ込もうとする、「行政改革」を公務員べらしにすりかえる等々。そして、一部の大企業がボロもうけを続けるために、規制緩和で労働者の雇用や労働条件、そして中小零細企業の営業を破壊する。こんな国民いじめ、公務員いじめの「改革」をやめさせるために、一人でも多くの国民のみなさんと手をつなぐ運動をすべての職場と地域で展開する、それが98年春闘のたたかいです。

◆労働者の生活改善はいっそう切実な要求に

 民間では、日経連の「新時代の日本的経営」に示された雇用形態の再編成や能力給賃金体系、年俸制の導入など、徹底した業績・成果給が導入される中で、いっそうの賃金抑制が進んでいます。とりわけ中高年層に賃金抑制の傾向があらわれ、公務においても厳しい高位号俸・高齢者への抑制攻撃がかけられています。
 こうした動向を反映して、労働者の実質賃金は目減りを続けています。国税庁の民間給与実態調査によれば、年間の平均給与(一時金・賞与込み)は92年の455万円から停滞を続け、96年は460万円と4年間でわずか1%しか増えていません。この間に、消費者物価は1.9%上昇していることから、0.9%のマイナスとなっています。
 このように実質賃金が目減りする中で、税金や健保・年金の掛金負担は年々増え、手取り賃金(可処分所得)をさらに減少させ、これに公共料金、教育費などの引き上げも加わり、労働者の生活を悪化させており、大幅賃上げの実現が切実な課題となっています。

◆高まる雇用不安、引き続く景気低迷


 日本経済は、バブル崩壊後から引き続く長期不況から抜け出せないばかりか、不良債権の償却に失敗した金融機関の倒産なども重なり混迷の一途をたどっています。しかし、大企業の多くは不況下にあっても、リストラ「合理化」による大量の人べらし、人件費削減や下請け単価の切り下げなどのコストダウンにより、「減収増益」あるいは「増収増益」を続けています。
 この結果、97年7月の完全失業者数は229万人、失業率は3.5%と、比較可能な調査がはじまった44年間で最悪となっており、雇用不安が高まっています。とりわけ20歳代の青年と50歳以上の高年齢層は7%を超える高率となっています。
 景気低迷の大きな要因の1つとして、内需の6割を占める個人消費の冷え込みがあります。労働者の賃金が目べりするなかで、今年4月からの消費税率の引き上げ、特別減税の打ち切りで、個人消費はさらに冷え込んでおり、景気回復に悪影響を与えています。
 総務庁の家計調査では、97年4〜6月期の勤労世帯の前年同期比は、可処分所得で名目0.5%増ですが、消費者物価が2%上昇したため、実質1.5%マイナス、消費比率は名目0.8%マイナス、実質2.7%マイナスとなっています。

 ◆大企業の内部留保のわずか2.1%で大幅賃上げは可能

 世は不況一色と思いきや大企業437社の内部留保は、96兆5,536億円(97年3月期決算)で、前年比3兆1,347億円(3.4%)の増となっています。利潤追求至上の大企業の横暴の固まりが、この内部留保です。  437社の従業員数は326万2,342人で、内部留保は1人あたり2,960万円です。3万5,000円以上の賃上げ(ボーナス6カ月を含む18カ月分)には、内部留保のわずか2.1%を取り崩すだけでよいのです。
 GDP(国内総生産)の6割近くを占める国民の消費支出が増えなければ景気回復はのぞめません。主要437社の労働者に3万5,000円の賃上げを実施すると、労働者の年間収入増は2兆552億円で、その60%が消費にまわると、1兆9,055億円の新たな生産が誘発されます。全雇用労働者5,322万人に3万5,000円の賃上げをすれば31兆845億円の生産が誘発されます。全産業の内部留保は218兆円。財源は充分にあります。

 ◆通常国会は国民いじめの悪政オンパレード

 海外進出を強めながら、同時に、円安のもとで輸出を伸ばしている自動車や電機、商社などの大企業は、「賃金は世界のトップ水準」とする「高コスト論」をふりまきながら、賃金・雇用破壊を強めています。  このような大企業の利潤追求を国が保障しながら、国民生活の保障から国が「撤退」をする「逆立ち」した制度改悪が、通常国会では目白押しです。
 金融機関救済のための「10兆円」の公的資金導入、法人税率の実質3%程度の引き下げ、国鉄長期債務等25兆円以上の新たな国民負担、入院費等の引き上げを始めとする5,200億円もの社会保障費の削減、福祉関係を始めとする補助金の全面的な削減、65歳以上の高齢者への失業給付打ち切りや労働諸法制の改悪、大店法廃止を始めとする規制緩和、国立大学授業料引き上げ、そして「行政改革基本法(仮称)」など、あらゆるメニューが準備されています。
 このようなときだからこそ、「国民生活まもれ」の要求をかかげてたたかうことが必要です。

 ◆行革闘争を国民生活まもるたたかいの柱に

 国の役割を防衛、治安、外交などに「純化」し行政サービスを切り捨てる「行政改革」を許さず、国民生活重視の行財政への改革をめざす行革闘争は、国民春闘の中心的課題である「国民生活まもれ」のたたかいそのものです。
 景気の低迷や、金融不安が広がる中で政府・与党は、「財政構造改革の棚上げ」を言い始めています。しかし、その中味は、先にも述べているように、バブル経済崩壊後の不良債権処理にあえいでいる金融機関救済や、国債発行が不可避な公共事業にかたよったものであり、社会保障費など国民生活関連の歳出は「棚上げ」の枠外においています。
 また、労働者に雇用不安が広がっているもとで、「企業にとって使い勝手の良い労働力」への転換をせまる労働法制の改悪は、さらに不安を拡大するものです。しかし、政府のこのような姿勢は、「国の役割を純化」しようとする橋本「改革」の流れからすれば当然のことです。
 国民生活重視の「福祉国家」か、大企業本位の「中央集権国家」か、そのことが「行政改革」の最大の争点なのです。この点をふまえたたたかいこそが、独立行政法人や民営化を許さず、「労働福祉省」などの省庁再編案の撤回をせまる運動となります。春闘での国民課題の前進が、行革闘争勝利の可能性を切り開くと言っても過言ではありません。

 ◆賃上げと差別賃金反対のたたかいを一体で

 民間では、職能資格制度、目標管理、人事考課制度を一体的に運用して、従来の年功的な賃金制度の厳しい見直しをおしすすめています。その中で労働者は成果・業績にかりたてられ、互いに孤立化させられ、上司の主観的な査定で賃金が大幅に左右される事態に追い込まれています。
 行革会議が掲げた「独立行政法人」は「効率性の追求」をねらうものですが、所長や監事など外部人材の活用をテコとしながら、定員、業務など合理化の「数値目標」を押しつけ、職員管理は民間の手法を大胆に導入することをねらっています。
 また公務員制度「見直し」でも、「能力・実績に応じた処遇の徹底」をはかるため、昇進管理の厳格化、人事考課と給与との連動、複線型人事制度などについて検討しようとしています。まさに民間の能力主義管理そっくりの制度を公務員制度にも導入しようというのです。
 情実や恣意を廃した公平な任用、給与・処遇における公平取り扱いと差別禁止、これらは、国民に対して中立・公正な行政を保障するためにどうしても必要なものです。
 積極賃上げと同時に、恣意的で不公平な賃金決定を許さない運動を一体で進めていくことがいっそう重要となっています。

 ◆200万人総行動など壮大な国民共同を

 国民春闘共闘・全労連は、98春闘での諸要求前進に向けて、壮大な「国民共同」の実現をめざし、200万人総行動の全国統一行動や大規模な中央行動の配置、大企業の横暴規制のためのビクトリーマップ運動、地域や地域経済に対する「社会的責任」を求める運動などの積極的な運動・行動提起をおこなっています。
 こうしたなかで、国公労連が97全国連鎖キャラバン行動でかかげた「社会保障を切り捨てる『行革』はゴメンです」のスローガンは、行く先々で多くの人に共感をよびました。いま国民の間で、国民に犠牲を転嫁する橋本「改革」の本質が明らかになるにつれ、いままでの枠を大きく超えた共同が広がる条件が強まっています。
 国公労連は、ブロック・県国公とともに、県労連・地域労連中心の「地域春闘」に結集し、自らの要求課題と結合して奮闘します。

 ◆職場から、地域から、たたかいの輪広げよう

 大幅賃上げを実現するためには、「わたしの要求アンケート」の広がりを基礎に、職場でアンケートに回答を寄せたすべての仲間と、結果にもとづく要求案をもって対話をすすめ、共同を広げながら春闘に臨むことが必要です。
 また、私たち公務員労働者の賃金は、その決定のしくみのうえからも春闘での民間賃金の動向と無縁ではありません。春闘では賃金決定方式のちがいを超えて、官民一体で労働者全体の賃上げをめざして地域から共同をすすめる必要があります。
 そして、これまで述べてきたような国民総犠牲の攻撃を打ち破るためには、労働組合の所属を超え、官民のちがいを超えて、職場、地域で幅広い人々と共同して、たたかいの輪を広げることが重要です。
 多くの自治体での首長や議員選挙の結果が示しているように、こうした国民生活を擁護する立場の人たちが、主義・主張や党派のちがいを超えて、結集をしはじめています。私たちの春闘も、こうした国民共同の一翼をになって、大きな発展をめざしましょう。


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