<国公労新聞・第956号97年6月1日付より>
シリーズ「行革」を考えるB
民営化に限りなく近いエージェンシー化
行政改革会議が検討している「エージェンシー」とは、どのようなものでしょうか。5月28日に、同会議は、「エージェンシーの基準」について討議することを明らかにしていますが、これまでのマスコミ等の報道などをもとに、その内容を探ってみましょう。
民営化への次善策
行政改革会議が検討している内容は、@本省庁の企画立案部門と地方出先機関などの事務執行部門を分離、A事務執行部門のうち、現業的な業務などは「独立行政法人」(エージェンシー)に、B事務執行部門でも、監督行政や公権力の行使をともなうものは「外局」とすることなどが言われています。その目的は、中央省庁の「スリム化」と行政の「簡素化、効率化」にあります。
国の役割を防衛、外交、治安などに限定する「手法」として、「エージェンシー」が検討されています。このことから、「エージェンシー」の対象となる行政分野は、「国が直接おこなわなくてもよい事務」とされ、民営化や地方移管が引き続き検討されることは明らかです。
国民生活に密着した部門がエージェンシーの対象に
行政改革会議の「省庁ヒアリング項目」や、マスコミ報道によると、「エージェンシー」の対象として検討されている部門は、登記・供託、社会保険、自動車等の検査、気象庁、職業紹介などの業務、公共事業の直轄部門、統計業務、研究機関、国土地理院、国立病院、国立大学などです。
これらの業務は、国民が直接に行政サービスを受ける分野であり、拡充と体制強化が求められているところです。
また、「受益者負担」を名目に、一定の「収益」が見込まれる分野が多くを占めています。
公共性を投げ捨て国の責任を曖昧にするエージェンシー
5月11日付の日本経済新聞は、エージェンシーは国が全額出資する「法人」とし、民間と同じ会計制度を導入して、運営評価のための「委員会」を設置して「経営改善」の効果を高めることなどが検討されていることを報道しています。 この報道を前提にすると、日常的な運営でエージェンシーが「稼ぐ」必要があり、しかも収支のバランスがとれないときには定員削減などの合理化が迫られることになりかねません。エージェンシーの実態は、「民間経営」に限りなく近いのです。その結果として、全国一律の行政サービスを確保することなどの「公正さ」が損なわれる危険があります。また、このような運営では、政府の責任が極めて曖昧です。
事務執行部門に税金を使わず、運営には「委員会」を通じて口を出すという、民間の「分社化」といえるエージェンシーは、「誰のため、何のため」かを厳しく問うことが必要です。
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