<国公労新聞・・第957号97年6月11日付より>
シリーズ「行革」を考えるC
時代に逆行する省庁再編
事務執行部門を外局やエージェンシーとして切り離し、「スリム」になった中央省庁は、「政策目的別に再編成」する方向で行政改革会議の検討が進められています。
五月二八日に行政改革会議が明らかにした「新たな中央省庁の基本的在り方について(討議素材)」では、「中央省庁における政策機能の重点化(純化)」が必要とする立場から、実施(事務執行)部門を組織的に分離した政策部門は、「国として取り組むべき政策目的、任務に即した編成」をおこない、「縦割りの弊害排除」のために政策目的に照らした「省への横断的調整機能」の「付与」を検討するとしています。
労働と福祉行政を一元化、一方で防衛省を設置
「省庁ヒアリング項目」で示されている再編の検討内容は、「治安、保安関係行政機構の一元化(警察、海上保安、労働安全、出入国管理など)」、「交通行政(運輸、道路、交通警察など)」、「経済関係行政組織の一元化(外務、大蔵、通産、経済企画、通信放送行政など)」、「公共事業関係の一元化(農林水産、運輸、建設、国土など)」、「国民生活にかかわる行政(労働、福祉など)」などとなっています。
また、「防衛庁が総理府の外局であること」に問題意識を表明する一方で、「環境庁が独立した行政機関として存在すること」に疑問を投げかけています。
行政改革会議で検討されている省庁再編は、「国の存続」、「国の富の拡大」、「国民の暮らし」、「教育・文化」に国の役割を四分類し、「大くくり」の再編を提起した「橋本ビジョン」を前提にしていることは明らかです。
しかも、「憲法違反の存在」との批判が強い自衛隊を軍隊として認知することになりかねない「防衛省」を示唆する一方で、「諫早湾干拓」問題でも明らかなように独立した機能と権限強化が求められている環境行政を軽視する姿勢を示しています。
また、「治安、保安」という権力の集中は、国民の基本的人権を侵す危険性があります。
「政策」重視の危険性
六月八日に日米両国政府は、日本周辺有事を念頭におき、事実上の「安保改定」といえる「日米防衛協力に関する指針」見直しの中間報告を公表しました。
これによれば、武器輸送や有事の際の空港、港湾使用、物品調達などとともに、有事立法の検討も含まれています。
このような検討は、極めて政策的なものです。国の役割を有事の際の機能発揮を中心とすることにおき、政策目的別に省庁組織を組み替えたとしたら、国民の自由や権利は誰が保障するのでしょうか。
この点からしても、国の基本法=憲法との関係を抜きに、省庁の在り方を検討することは極めて問題です。
わが国で最初の内閣が成立した明治憲法下の行政組織(省庁編成)では、主権者国民のための行政を宣言した現行憲法の要請に応えられないことは明らかです。
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