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2000年6月26日 国公労連中央執行委員会 人事院の「能力、実績等の評価・活用に関する研究会」は6月16日、昨年9月以降8回の討議結果を「中間報告」にまとめた。この研究会は、人事評価制度の検討に留まらず、その活用によって能力・業績を重視した人事管理システムの改革を推進することをめざし、管理局長の私的研究会として昨年7月にスタートしたものである。こうした研究会の性格から、中間報告では、@評価システム整備の必要性、A今後の人事管理の方向と人事評価の果たすべき役割、B新たな評価システム整備の方向など、評価制度の検討方向についての大綱的な内容が示されている。全体として個人の評価を賃金、昇進、配置などにむすびつける民間類似の能力・成果主義に基づく人事制度にシフトしようとの意図が貫かれており、内容的にも総務庁の研究会と大同小異のもので、両者の関係は不明確でありながら、両方あいまって今後の人事行政の検討に大きな影響を与えることはまちがいない。 問題は、従来の人事管理のメリットやデメリットを検討し、勤務評定制度が事実上機能停止状態にあることについての真剣な反省のうえに立って、民間の人事管理制度が公務でも有効なものであるかどうかについて、十分な検証がなされたかどうかである。その点で報告はきわめて不十分としかいいようがない。以下、その問題点をあげる。 第1に、新たな評価システムを整備して処遇、昇進、能力開発等に反映する「新たな人事管理」に移行する必要性が不明確なことである。行政ニーズに対する国民の要請の変化、個人の価値観や就労意識の変化などを上げているが、現行制度でなぜ対応できないのかについての説明もない。また、報告を読む限り、評価システムを組み込んだ新たな人事管理システムがめざす方向性も、結局は現行昇進制度や給与・手当制度の一定程度の手直しや「弾力化」にすぎないのではないかと思われる部分もあり、さらに不明確さを増している。 第2に、新たな評価システムや評価技法には確かに「目新しさ」があるが、いずれも民間で普及している手法であり、民間で普及しているからといって公務でも有効だということにはならないということである。公務の特性にも一応は言及しているが、官民の「差異」ではなく「共通性」を強調して民間の評価制度や評価手法を活用した人事管理をめざそうとする姿勢だけが鮮明である。 第3に、新たな制度が、公務組織の現実や圧倒的多数の公務員集団の業務の実態と乖離した評価制度になりかねないことである。大多数の公務員は組織や集団のなかで、指揮・命令による他律的な働き方と法令に基づく精確で公平な職務遂行が求められる点を考えると、成果以前にそうした仕事を的確に執行する重要性はいうまでもない。公務員は国民全体の奉仕者であり、国民の権利や安全と不可欠な業務の執行にあたり、商品開発のように個人の創意を存分に発揮するとか、リスクにチャレンジして失敗も許されるということはありえない。また、変化への対応を口実に、明確な展望もなしに安易な組織・業務の見直しなどの「リストラ」を進めるわけにはいかない。 第4に、全体に従来の人事慣行である長期的評価や集団主義を過小評価し、短期的評価や個別管理を強化する傾向が強く、そうした発想の押しつけが、従来の職場慣行・職場秩序を破壊し、職員の意欲とやる気を阻害し、職員同士の信頼や協力関係を損ない、公務能率の面でもマイナスの影響を与えかねないことである。 第5に、恣意的評価につながらない評価の公平・納得性の担保が不十分であることである。自己申告や目標管理といいながら、個別面談で評価者と被評価者が対等ではありえず、事実上一方的な目標の押しつけにもなりかねない。まして評価結果への本人の同意原則もなく、労働組合の評価基準や評価方法決定への関与なども想定されていない。 国公労連は中間報告にさきだって4月に「意見書」を提出し、公平性、客観性、納得性をそなえた公務にふさわしい評価制度の検討を求めるとともに、職員の理解の得られる改革方向について提案した。報告内容は、部分的にはこれに配慮した面も見られなくはないが、全体としては以上のように、きわめて不十分な内容にとどまっている。 今後、研究会では、来年3月の最終報告をめざし、評価システムの具体的な内容や実施にむけての「指針」の検討に入ることが予定されている。国公労連は、先の見える安定的な給与や昇進のあり方、「小さな給与格差」など、現行の人事管理や職務執行のあり方にマッチし中長期的視点にたった人事行政や、安定的な公平で納得性のある評価制度の検討を求めており、その立場から討議経過を明らかにさせ、研究会の討議内容への意見反映を強く求めていきたい。 |