| |
本日、人事院は、2年連続で年収がマイナスとなる一時金0.2月の引き下げや、0.12%・447円の官民較差を扶養手当のみに配分し、俸給表改定を見送ることなどを内容とする勧告をおこなった。
官民較差が史上最低となった99年をさらに下回る一方で、一時金が2年間で0.5月分切り下げられたことにより、その支給月数が1970年代初頭まで一気に後退するという極めて異例となった本年勧告は、国公労働者と家族の生活を直撃するとともに、人事院勧告の影響をうける750万労働者の賃金に悪影響を与えることが必至である。「平均5000円」の賃金改善要求に全く応えず、国公労働者に生活切り下げを迫る勧告を、国公労連は到底認めることはできない。 国公労連は、今夏勧告にむけて、1)昨年来の民間一時金が低下傾向にあること、2)2000年春闘での民間賃上げが史上最低を更新したこと、3)そのような民間動向をふまえつつも、政府・人事院が従来どおりの春闘回答を繰り返したこと、4)人事院が、調整手当「見直し」改悪の早期決着姿勢を強めていること、などの状況をふまえて、切実な賃金改善要求の実現を正面に掲げながら、賃金のトリプル(月例賃金、一時金、調整手当)改悪に強く反対するたたかいを展開した。 たたかいでは、賃金改善署名や職場決議などの文書戦、定時退庁行動などを背景にした使用者責任追及、中央・地方での人事院包囲行動などの職場内外の取り組みを強化した。また、人事院が、2年連続の一時金切り下げ強行の姿勢をさらに強め、超低額ベアの取り扱いが争点となった最終盤には、一週間に渡り人事院前に座り込み、要請行動を繰り返すなど、公務労組連絡会に結集しながら、勧告直前まで粘り強くたたかいを展開した。 そのようなたたかいで、給与局長が勧告前に3回の交渉に応じざるを得ない局面をつくったが、人事院はあくまで「民間賃金準拠」に固執し、年収切り下げ勧告を強行した。この勧告は、以下のような点でも問題がある。 一つは、人事院が、早い時期から2年連続の一時金切り下げは不可避とする判断で、勧告作業を進めたと思われる点である。それは、2年越しとなった調整手当改悪にかかわって、当初の改悪案を数次にわたって後退させたものの、勧告直前までの対応を避け、7月6日に14地域の指定解除・支給区分引き下げを含む「最終回答」を強行したことにもあらわれている。 二つには、民間企業での賃金抑制攻撃が強まるほど、人事院が民間準拠の姿勢を強めていることである。民間企業における賃金水準の決定では、人員削減等の「合理化」も重要な判断要素となっていると考えられる。しかし、あらたな定員削減計画が策定され、組織再編等での労働強化が強制される公務では、「合理化」は人事院勧告をおこなう理由としてしか扱われていない。労働強化と同時に賃下げが強行されるという事態が2年連続することは、労働基本権制約の「代償機能」としての役割への疑問を拡大するものである。 三つには、現行の勧告方式となった1960年以降では初めて、俸給表の改定を見送ったことである。人事院は、その理由として「早期立ち上がり型の賃金体系をめざした配分は困難」をあげている。しかし、異例な低額ベアのもとで、人事院が考える賃金施策を「改善があればその効果は全員に」とする要求に優先させる合理的な理由があるとは考えられない。 本年の勧告では、以上のような賃金勧告にくわえ、1)個人の能力・実績をより重視した給与体系への転換をめざすとする俸給体系の再構築について、「早期に成案を得る」とする姿勢を示したこと、2)「民間人材の任期付採用」や「若手研究員の任期の弾力化」、「能力・適性に基づく人事管理の推進」、「新府省への移行と適切な管理」などに言及し、行政改革会議最終報告を強く意識した「公務員人事管理の改革」報告をおこなっていること、3)介護期間の延長や子の看護にかかわる休暇についての検討姿勢を示したこと、などの特徴点がある。 とりわけ、俸給体系「見直し」作業と、能力・実績に基づく人事管理推進のための評価システム検討を本格化させることを同時に言及したことは重大であり、賃金体系改悪反対、公務員制度民主化の取り組みの強化が求められる。 いま、官民問わず強まっているリストラ「合理化」が、旧来の賃金、雇用制度を「破壊」し、社会を混乱させている。企業の利潤追求のために、効率化と競争原理の貫徹を最善とする状況は、一方で安全などの公益を損なう事件を相次いで引き起こしている。このような、「ルールなき資本主義」といわれる民間動向に準拠するだけの人事院の姿勢では、公務労働の重要な要素である民主性や公正さを損なう危険性さえある。 また、近年、自治体で相次ぐ、財政危機を口実とした賃下げの事態は、住民にあらたな負担を押しつけるための突破口とされている側面もある。同様に、今次勧告による国家公務員賃金の引き下げが、消費税増税など国民負担増の露払いとされることも考えられる。 国公労連は、以上のような状況認識から、「年収切り下げとなる給与法『改正』反対」の要求を掲げ、この間のたたかいの到達点にたって、政府、国会闘争を展開する。そのような国公労働者の主体的なたたかいと、公務労組連絡会規模での賃金確定闘争や全労連規模での雇用確保などのたたかいと結び、2000年秋闘に全力をあげる決意である。 国公労連中央執行委員会は、現下の厳しい情勢のもとで奮闘された全国の仲間に心から敬意を表明するとともに、引き続くたたかいへの決起を呼びかける。 2000年8月15日 日本国家公務員労働組合連合会 中央執行委員会 |