介護保険制度の抜本的改善を求める決議
 今年4月からスタートした介護保険制度は、市場原理への流し込みをめざす拙速な制度設計によって、介護を必要とする人やその家族だけでなく、福祉職場に働く労働者にもさまざまな問題を生じさせている。
 要介護認定を受けても高額な利用料負担のために「ケアプランを作成しない」、「一定額に収まるプランにする」など、平均利用額が限度額の30〜50%にとどまっているうえ、特別養護老人ホームなどのサービス基盤整備の遅れや民間事業者の撤退などから、全国各地で希望するサービスが受けられない事態も起きている。
 また、制度の周知が十分でないことから、認定申請が当初の想定より下回っていること、「自立」判定や「痴呆」の人の要介護度認定の不適切さなどの問題も指摘されている。さらに福祉労働者は、低い介護報酬と補助金打ち切りなどによって人員削減やパート・アルバイト化がすすむとともに、ケアマネージャーの過密労働も重大な問題となっている。10月から65歳以上の保険料徴収が始まれば、事態はいっそう深刻なものとなることは必至である。

 自治体によっては、運動の反映もあって独自に利用料・保険料の減免措置を講じたり、市長会として要望書を提出するなどしているが、政府はこうした問題に誠実に対応しようとしていない。そればかりか政府は、賃金スライド廃止によって4月から給付減となった年金制度の改悪につづき、高齢者医療費の1割負担導入などを内容とする健康保険制度の改悪、さらには消費税の大増税をも狙っている。こうした施策は、社会保障・社会福祉制度を根本から転換し、憲法25条に定められた国民の生存権に対する国の責任を放棄するもので、断じて容認できない。
「公共事業に50兆、社会保障には20兆」といわれる逆立ちした税金の使い方を改め、国庫負担を増額して社会保障を拡充し、すべての国民が安心して介護・医療・年金を受け、生活できる社会を確立することが求められている。

以上のことから、政府に対して次の事項を強く要求し、その実現をめざして全労連や中央・地方の社保協に結集しつつ、広範な国民・団体とともに運動を強化するものである。
(1)住民税非課税者など低所得者の保険料・利用料を免除、軽減すること。当面、緊急に在宅介護利用料を3%に引き下げること。
(2)要介護認定方法を身体機能偏重でなく、本人の実態、住環境、家族の状況・意思など、総合的な介護の必要度にもとづく方法に改めること。
(3)国庫負担を50%に引き上げること。また、「介護予防・生活支援事業」枠の拡大をはかるとともに、市町村に対する財政措置を強めること。
(4)特別養護老人ホームの建設やホームヘルパーの増員など、介護サービス基盤を緊急に整備すること。
(5)健保の介護保険料の上限枠(95/1000)の引き上げは行わず、これを超える部分は「徴収猶予」でなく、国の責任で「免除」とすること。
以上、決議する。


  2000年 8月30日
日本国家公務員労働組合連合会
第46回定期大会

トップページへ  前のページへ