税関賃金差別賠償裁判の公正判決を求める決議
 税関賃金差別賠償裁判は、1974年6月に東京・横浜・大阪・神戸の四地裁に提訴して、既に26年が経過する長期の裁判になっています。
 現在、大阪・神戸・横浜事案は最高裁第一小法廷で係属され、貴裁判所では東京事案が第一民事部で審理がすすめられ本年3月27日結審となりました。
 裁判の経過では、1986年及び1988年に差別の重要な証拠となる当局作成の秘密文書 「全国税関長会議・総務部長会議・人事課長会議資料」「東京税関幹部会議議事録」が相次いで摘発され、四地裁ともこれらが当局作成の文書であることを認めています。そして1995年2月の東京地裁では、「大蔵省・東京税関当局は差別意思を持って昇任・昇格などの人事差別扱いをした」と、原告勝訴の判決を下しました。
 大蔵省・税関当局はこれを不服として、貴裁判所に控訴しました。控訴審では、当局側証人は具体的証拠も示さず、「原告は勤務成績が悪かった」などの証言を行ってきました。しかし、1998年、東京税関の元幹部職員が大蔵省・税関当局による全税関労働組合への組織破壊攻撃の手口を「エコノミスト」など三誌で生々しく告発したように、大蔵省・税関当局が組合を破壊する目的をもって、人事をはじめあらゆる差別を行ったことは一層明らかになっています。
 昨年二月、東京高裁第十一民事部荒井史男裁判長は、「組合所属による格差・差別の存在、組合に対する国の不当労働行為を認め、慰謝料の支払いを命ずる」と横浜地裁の不当判決を取り消し、原告勝訴の判決を下しました。また、裁判長は判決言い渡し後、「双方が裁判の内外で早期に終束する事を希望」するとの異例のコメントをしました。
 税関は、貿易の第一線で国民の健康や安全、経済秩序の維持などをはかる重要な行政官庁です。職員は、国民全体の奉仕者として複雑・多岐にわたる業務を行っています。このような職場で、憲法・国家公務員法に違反した組合所属による差別が行われていては、国民のための民主的な行政を期待することはできません。
 貴裁判所が、税関賃金差別賠償裁判東京事案について、原告の主張を充分理解され、公正な判決を一日も早く下されるよう要請するものです。

 以上、決議する。

  2000年 8月30日
日本国家公務員労働組合連合会
第46回定期大会
 東京高等裁判所第一民事部
         江見弘武   裁判長  殿

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