行政改革推進事務局申し入れ
--「政治主導」の公務員制度改革に反対し申し入れ

(「国公FAX速報」2001年3月27日付)
 国公労連は本日午後、今朝の閣議に併せて行われた「行政改革推進本部」に報告された「公務員制度改革の大枠」に対して、行政改革推進事務局へ申し入れを行いました。
 申し入れには、堀口委員長、小田川書記長、黒田書記次長、飯塚独法対策部長外2名が出席し、行政改革推進事務局からは、春田公務員制度等改革室長、堀江企画官外が出席しました。

○ 冒頭、堀口委員長は、「本日示された大枠に沿って6月に基本設計がなされるならば、職場の不安と混乱を招く。@大枠の内容では、公務員が全体の奉仕者となるのか、甚だ疑問である。A手続きについても、当該労働組合との話し合いの結果出されたものではない。この大枠については反対であることを改めて表明する。我々の主張を踏まえ公務員制度を検討すべき」と今回の政治主導の公務員制度改革について反対の立場を主張しました。

● これに対して、春田室長は、まず大枠のポイントを説明したいと、以下の説明を行いました。
 公務員制度改革に反対であるということだが、まずは大枠の説明をさせてもらいたい。我々は、昨年12月1日の「行政改革大綱」の閣議決定を受けての具体化ということで、これまでどう具体化するかを検討してきた。
 本日の行政改革推進本部(新たに1月6日内閣に設置)で大枠を報告的に提出した。関係の府省の大臣が出席されている席で説明し、これからの協力を橋本大臣がお願いした。これから具体の検討に入る。基本的方向に沿って更に具体化を進めることになる。

 大枠の1〜3Pまでは理念なので省略して、今回の公務員制度改革全体の性格は、4Pの2の『公務員制度改革の基本的方向』の最後の2行、『「行政改革大綱」の完全実施を含む抜本的な改革を行うべく、次のような基本的方向で、今後更にその具体化に向けた検討を進めていく』ことである。
 5P以下が具体的内容だが、5〜9Pが、その際目指すべき公務員像、10〜12Pが目指すべき行政組織像である。
 5Pでは、□で囲った、目指すべき公務員像について、@の『信賞必罰の人事制度の確立』に向けて、新たな給与制度・給与論は、下から3行の『これらを踏まえ、現行の職務給原則に基づく給与制度を廃止し、例えば、給与を「職務遂行能力に基づく部分」、「職務の責任の大きさに基づく部分」、「具体的にあげた業績に基づく部分」等の要素に対応する支給項目に分割することにより、能力、職責、業績をバランスよく反映し、能力向上や業務達成に対するインセンティブを高める新たな給与制度を構築する。』の部分だ。
 6Pの『能力本位で適材適所の任用の実現』では、4行目の『新たな給与制度及び公正で納得性の高い新たな人事評価システムの導入を契機として、T種・U種・V種や事務官、技官の別など採用段階の区分にとらわれない能力本位で適材適所の任用を実現する。』こと。『さらに』で、勤務成績が良くない公務員や官職に必要な適格性を欠く公務員等に対する厳正な処分も記述している。
 6P下の『公正で納得性の高い新たな人事評価システムの整備』で、下の3行の『新たな人事評価システムについて』例えばで、『能力評価と業績評価の二本立てのシステムとし、企画、実施等業務の実態に応じて、能力評価においては求められる能力・行動基準を定めてその基準に照らした評価を行う』とあり、7Pで業績評価については『一定期間ごとに組織の目標を踏まえた個々人の業務目標を設定してその困難度や達成度等の評価を行うことなどを検討する。』とある。さらに、納得性を高めるために、本人との面談にも記述している。また、基準の明確化も記述している。
 7PのAの『多様な人材の確保・育成・活用』では、2行目の『各府省の業務の実態に即して多様で質の高い人材を確保する観点から、採用試験制度の本質論に立ち返って、その在り方を抜本的に見直す。』よう考えている。
 『個々人の育成計画の作成等による多様な人材の育成・活用』では、『個々人の育成計画に関し本人と話合いの機会を持ち、職員が具体的目標を持って主体的に能力向上に取り組める仕組みを導入する。』よう考えてる。例えばで、『職員の適性・志向に配慮した複線型の人事コースを設定することや一定のポストへの公募制を導入して本人の選択の幅を増やすことなどにより、多様なキャリア・パスを個々人が選択できるような仕組みを導入』してはどうかと触れている。
 8Pの『女性の採用一登用の拡大』では、女性職員等に対するヒアリングで色々な意見を頂いたが、『まず女性の採用を増やすことが必要』であり、『採用試験制度の見直しや公募制など多様なキャリア・パスを個々人が選択できるような仕組みの導入』や『勤務環境の整備』が必要であると考えている。
 『超過勤務の縮減などによる勤務環境の改善等』については、これは恒常的な長時間超過勤務の状態を何とかしないといけないという重要なテーマだ。国会議員の先生方にも知っていただきたいことだが、『こうした現状を改善するとともに、個々人が専門能力の向上を目指し、自己研鑽を行うことを促進するためにも、超過勤務を縮減することとし、国会関係、法令審査、予算折衝、各省協議などの業務の徹底した見直し、外部に委託して支障のない事務についてのアウトソーシングの推進など』を図ってはどうかと考えてる。
 Bの『適正な再就職ルールの確立』では、3行目の『関連性の強い営利企業への再就職については、明確かつ厳格な承認基準を設け、大臣の直接の承認を必要とするとともに、再就職先との関係等の情報を詳細に公表することにより国民の監視下に置く。』とし、加えて、『再就職後の行為規制を導入するなど実効性のある制度を確立』するよう考えている。
 10Pの『目指すべき行政組織像』では、『政治主導の下での国家的見地からの戦略的な政策立案、中立公正で簡素・効率的な業務執行を実現する、機動性に富んだ「組織」』を目指し、@の『国家的見地からの戦略的な政策立案機能の向上』ということで、このための2行目の『総合的・戦略的な政策立案を行う機能を高めるため、内閣・内閣総理大臣を支えるスタッフとして、各府省や民間企業等から選抜されたメンバーから成る「国家戦略スタッフ群(仮称)」を創設するとともに、各大臣を政策立案面で直接補佐するスタッフ』を当てるよう考えている。
 Aの『企画実施両機能の強化』では、11Pの中段『これからのことにかんがみて』の『中立公正の観点に配慮しつつ、公務員の民間企業等への出向の機会を増大させる一方、民間企業等からの任用を円滑に行い、任期付職員制度等の見直しにより、各府省の判断で、求められる人材にふさわしい処遇での任用を可能にする仕組みを整備』してはどうかと考えてる。
 『業務遂行規範の作成等』については、2行目の『各府省が組織・業務の目標や職員の行動基準を明確にする業務遂行規範を作成し、個々人に徹底する。』この内容について、『管理職員の評価・処遇に反映する仕組みなどの導入』を図ってはどうかと考えている。
 Bの『責任ある人事管理体制の確立』では、12Pの『責任ある人事管理体制の確立と自由度の拡大』の『各府省の組織・人事管理の自由度を拡大し、各府省ごとの総定員・総人件費などの枠内であれば、』2行飛ばして『各府省が自らの判断と責任において、組織・人事制度を設計・運用できる仕組みを整備する。』よう考えている。またで、『内閣としても公務員制度の在り方に主体的に責任を持つことが必要であり、国家公務員制度の企画立案機能や統一保持上必要な総合調整機能を適切に果たすこと』とした。
 『府省の枠を超えた人員の再配置』では、2行目の『特定分野への機能強化が必要な場合には、府省の枠を超えて、ダイナミックに人員の再配置を行うことができる』ようにし、『中央人事行政機関等の役割の転換』では、4行目の『人事院については、人事管理に係る事前承認、協議制度を廃止することを基本とする』方向に改め、更に、『今後求められる役割について検討を行う。』こととした。
 13Pの3の『公務員制度改革への今後の取組み〜新たな制度の基本設計に向けて〜』では、はじめの段落で『国家公務員法等の改正を行う』よう考えている。またで、『公務員制度全般にわたる抜本的な改革のための検討を進める中で、労働基本権の制約の在り方との関係も十分検討する。』よう考えている。
 今回の大枠は、主として一般の行政職員を念頭に置いており、『一般の行政職員以外の職員についても大枠に示された考え方を基本としつつ、それぞれの職種の特性に応じた検討を行っていくことが必要』である。それから、地方公務員制度についても、『地方自治の本旨に照らしつつ、国家公務員制度の抜本的な見直しに準じた見直しが必要となると考えられる。』と記述している。
 最後に、『本年6月には新たな公務員制度の基本設計を取りまとめ、その後、法改正作業等に早急に取り掛かることとするが、基本設計の取りまとめに当たっては、関係者からの意見も幅広く聞きながら、中央省庁改革の趣旨を踏まえ、「政策調整システム」に基づき、公務員制度全般にわたる抜本的な改革の具体化に向けた検討を迅速に』行わなければならず、今後6月に向けて、基本設計に入る訳だが、内閣官房としての役割を果たしていきたい。

○ 以上の説明に対して、小田川書記長から「公務員制度改革の大枠にかかわる申し入れ」(別紙)に沿って、国公労連の現時点の考えを以下のように主張しました。
 1つ目は、行政執行に日夜奮闘している50万国公労働者全体が視野に入っているのか疑問である。大枠で示されている問題設定で公務員制度改革が決めきれるのか疑問である賃金の3つの要素への分割などは公務になじまない。
 2つ目は、労働基本権を回復することは当然だと考えているが、人事院による給別定数制度は廃止し各省権限にするなどは、この間政府が回答してきた、人事院勧告制度は労働基本権の代償措置と言ってきたことと齟齬する。そうなるとこと労働基本権をすぐに回復せざるを得ないはすだ。
 3つ目は、人事院の機能について言われているが、第三者機関のチェックはそれなりの意味がある。全労働条件の問題とは別に、公務員制度の公平性・民主性を担保するために必要だ。最近の官僚の不祥事などを考えると、一定の人事裁量を各府省が持つのは、国民合意がとれないのではないか。
 4つ目は、民間企業との人材交流の促進が書かれているが、採用自由、帰るのも自由では、官民癒着の温床になるだけだ。
 5つ目は、一般職の公務員と特別職の公務員との関係を明確に議論すべきだ。大枠の中で、国家戦略スタッフ群を創設するとあるが、本来、公務員はどうあるべきかの議論があって、一般職はこうあるべき、特別職はこうあるべきという議論が先ではないか。
 最後に、「政策調整システム」の具体的イメージが分からない。今回、改革の大枠が示されて、各省での人事管理や運営上の問題や労働組合との問題に対して、どの段階で誰がどう調整するのか。今までにないシステムで動いている。

 以上の主張と質問に対して、以下のようなやり取りを行いました。

● 最後の質問については、実は、「内閣機能の強化」の初めての発動と言われている。内閣官房は、政府全体の政策を示し、戦略的調整を行うと閣議決定されている。冒頭で申したが、大枠をまとめる作業を行い、今朝ほどの(行革推進本部)会議で、内閣としての政策の方針を示した。これに基づいた具体化を進め総合調整していくことになる。
 今回示した大枠が政策の基本方針ということで、内閣官房は調整役だ。具体的には各省が自らの判断で具体的に取り組み、内閣全体では総務省が人事管理制度を担当しているが、方向はこれに従って考えていて、人事院の関係でも、昨年12月の行政改革大綱でも示しているとおり、事前規制から事後チェックへと転換する。どういう役割を果たすのかという問題がある。それぞれ検討していただき、私どもが調整する。
 今までは、各省が検討して持ち寄るということだったが、今回は、基本方針を内閣として示して、各省で検討して、それをまた調整していく内閣機能の強化の発動だ。

○ 今回の大枠は、政府として決定したということか。

● 内閣として基本方針を示すということは決定しないといけない。内閣総理大臣と相談して固めた。それは、決定したということだ。

○ 今回の大枠から外れた各省の検討は、否定されるということか。

● 具体化を検討するには、色々な意見が出ると思うが、基本的方向に沿った調整ということで、180度異なった方向に行くことはあり得ないのではないか。中味は確定的なものではなく、4P以下の「公務員制度改革の基本的方向」で、「今後更にその具体化に向けた検討を進めていく」と書いているので、各省はその方向に沿って咀嚼していくことになる。

○ そうすると、給与制度の見直しなど大変な作業となるがどうするのか。

● 『現行の職務給原則に基づく給与制度を廃止して、例えば、給与を「職務遂行能力に基づく部分」「職務の責任の大きさに基づく部分」「具体的にあげた実績に基づく部分」等の要素に対応する支給項目に分割しインセンティブを高める新たな給与制度を構築する』と書いて あるが、数値化は困難な面があり、民間のものを簡単に持ち込んでもダメだ。能力・業績の処遇反映は、基本設計の中で検討していく。いきなり組み立てるのではなく、どういう要素をどう組み合わせるかをこれから検討する。頭の中では色々なことが駆けめぐっているが、具体的にはこれからの検討だ。

○ 今の話だと、もう一度疑問が出てくる。給与制度を見直すという方向がある。その具体的な設計は推進事務局が検討するのか。人事行政に関わっては、総務省もあれば、人事院もある。

● これからどうやったら良いかは、各省の皆様とも積極的な意見交換もし、議論を深めないといけない。どこがリーダーシップを取るかはあるが、こういうものだというあらましがあるわけではない。私のところだけで決めるわけではない。

○ そういう方向がありながら、6月までに基本設計を出すとある。膨大な設計なり、検討なりがあり乱暴すぎる。今後、各論部分に入ってくると当該労働組合の意見を聞かないといけない。

● 精力的に作業を進めないといけない。労働組合の立場は立場として分かる。我々も、キャリヤのための制度を考えるつもりはない。公務員の皆さんが、働いてよかったという気持ちになれるよう検討したい。

 以上のやり取りを受けて、最後に堀口委員長から、引き続き協議の場を持つよう再度要請し締めくくりました。

(以 上)


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