2001年人事院勧告にあたって(声明)
本日、人事院は、一時金0.05月の引き下げや、0.08%・313円の官民較差があるもとでも俸給表改定を再び見送り、原則同額の「暫定的一時金」として3月に3756円を支給することなど、3年連続で年収がマイナスとなる勧告をおこなった。
国公労連は、2001年春闘結果が史上最低を「更新」した状況や公務員攻撃の強まりなどをふまえつつも、2年連続の年収切り下げ勧告で悪化し続けている生活実態や、行政改革の強行による労働強化の実態などから強まっていた組合員の賃金改善要求をふまえた「平均5000円」の賃金引き上げと、本俸・初任給改善重視の配分要求などを掲げ、職場・地域からのたたかいでその実現を迫ってきた。 このような要求と運動にてらし、3年連続の賃下げ勧告を受けいれることはできない。
また、勧告では、各地域に勤務する公務員の賃金水準が、民間給与に比べて高いとする「指摘」にこたえるとして、「民間給与の実態把握及び公務部内の配分の在り方」について、速やかに検討することを表明した。昨年勧告で、調整手当について、14地域の指定解除・支給区分引き下げを強行した際にも論議となった公務員賃金での地域間格差の拡大、同一労働同一賃金原則への攻撃を、人事院が本格的に着手することを宣言したものと言える。地方交付税交付金の「見直し」などにもみられるように、地域間格差をいたずらに煽りながら進められようとしている「構造改革」に迎合した公務員賃金「見直し」の表明である。公務員制度「改革」での賃金制度改悪を先導しかねないものであり、検討の中止を人事院に迫ること含め、厳しい対応が求められる課題である。
なお、本年勧告では、公務における男女共同参画の推進をめざす制度改善として、育児休業期間の3年への延長、介護休暇の取得期間の6月への延長を求めるとともに、育児、介護をおこなう職員の超過勤務の上限時間短縮や、子どもの看護のための休暇導入に言及した。休業期間中の所得保障や代替要員確保などの重要な課題を残してはいるが、大幅な制度改善の勧告をおこなったことは、全労連や公務労組連絡会に結集してたたかってきた女性協を始めとする国公労連の運動の成果である。引きつづき、早期の法整備等を求める政府追及と、実効ある運用を迫る職場段階からの取り組み強化が重要となっている。
国公労連は、今夏勧告にむけて、使用者・当局への一斉要求書提出や上申闘争、ジャンボハガキ行動や賃金改善署名などの文書戦を強めるとともに、賃下げ勧告の危険性が強まってきた7月末から8月初旬にかけては、中央・地方での人事院前座り込み行動や、要請行動などを配置し、最終局面までねばり強くたたかいを展開した。そのようなたたかいを背景に、人事院交渉を強めてきたが、民間準拠に固執し、僅少とはいえ較差が生ずることが明らかになった以降も、配分交渉にさえ、まともに応じない人事院の姿勢を変えさせるまでには至らなかった。
政府・財界の賃下げ、ベアゼロ攻撃が強まり、賃金水準が前年を下回る事態すら生まれはじめているもとで、本年勧告は、人事院勧告制度の本質と矛盾をあらためて露呈した。民間準拠を口実にした3年連続の年収切り下げは、人事院勧告が、この国全体の、賃金抑圧の仕組みであることを再確認させるものである。
同時に、僅少の較差を合理的な根拠もないままに、「暫定一時金」として配分したことは、民間均衡を口実にして配分まで「人事院の権限」としてきたことの矛盾が限界にきていることをしめした。較差配分については、勧告直前の局面で国公労連が主張したように、初任給周辺を中心とした青年層への重点的な配分も賃金底上げの観点からは道理ある選択肢であった考える。人事院自らが説明するように、いずれの手当も民間給与と「均衡」し、この数年強調されてきた「早期立ち上がりの政策配分」もできない状況のもとで、国公労連の主張を排除する合理的理由はどこにも存在しない。「賃下げまで勧告にゆだねていない」、「較差の配分は職員合意の尊重を」とする立場での国公労連の主張は、労働基本権に根ざしたまっとうなものである。配分にかかわる人事院の従来の主張が崩れた今回は、国公労連との「協議」の結果にもとづく配分にふみだす好機であった。しかし、その点での人事院の対応は極めて不誠実であった。較差の配分についてさえ、労働組合との交渉・協議の余地を認めないことの不合理性は、政府との交渉でも重視した追及をおこなうことが必要となっている。
いま、「聖域なき構造改革」を旗印に、中小企業の経営破壊、雇用破壊の攻撃が強まっている。国際競争での一部の多国籍企業が勝ち残るために、労働者・国民、中小企業、農業などに耐え難い「痛み」を強いる「改革」の一環として、公務員制度改革をはじめとする行政改革の攻撃も一段と激しさを増している。公務労働そのものを否定するまでの激しさをもった攻撃のもとで、公務員賃金切り下げを含む総人件費抑制攻撃が強まる危険性をもっている。また、公務員制度「改革」とのかかわって、「労使の交渉・協議」にもとづく公務員の労働条件決定を、くり返し政府に迫ることも重要な運動上の課題である。
国公労連は、以上のような状況認識から、「3年連続の年収切り下げとなる給与法『改正』反対」のまっとうな要求を掲げ、「もの言わぬ公務員づくり」をねらう公務員制度「改革」や「25%定員削減」などの行政「リストラ」と対峙する使用者・政府追及を主体的に強めつつ、小泉内閣が強行しようとする「構造改革」に反対し、雇用確保、社会保障の充実など暮らしと労働をまもるための国民的運動と結んで、要求前進をめざし2001年秋闘の諸行動の成功に全力をあげる。
国公労連中央執行委員会は、切実な要求実現のため奮闘されてきた全国の仲間に心から敬意を表明し、引き続くたたかいへの決起を心から呼びかける。
2001年8月8日
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員会
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