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厚生労働省は9月5日、健康保険組合、政府管掌健康保険組合、共済組合など被用者保険に加入するサラリーマンの医療費本人負担割合を、現行の2割から3割に引き上げる方針を固めた。通常国会に法案を提出し、2002年度の実施を目指している。加えて、高齢者医療制度の対象年齢を、現行70歳から75歳に引き上げる方針もすでに明らかになっており、政府管掌健康保険の保険料率の引き上げも検討されている。 小泉首相は就任以降、「聖域なき構造改革」と称して「社会保障の自立・自助」「不良債権の最終処理」「規制緩和と国営事業等の民営化」などを次々と打ち出してきた。その具体化として8月に示された2002年度予算の概算要求基準では、社会保障費の削減をはじめ、中小企業・教育・農業予算の減額など、国民生活を容赦なく切り捨てる内容となっている。 今回の医療費負担増についても、首相が1997年の厚生大臣当時に作成した「医療費改革」に基づくものであり、国会でも「その実現にむけて全力をつくしたい」と答弁していた。 1997年に医療費本人負担が1割から2割に引き上げられ、消費税増税などともあわせた国民負担増は9兆円にものぼり、現在の不況の引き金となったことは記憶に新しい。完全失業率が過去最悪の5%となり、企業倒産、有効求人倍率、消費支出などいずれの指標をも日本経済の危機的状況を現しているこの時期に、さらに景気を冷え込ませる愚策と言わざるをえない。 首相が掲げる「構造改革」は、予算のみならず、いのちとくらしを守る国民サービスを提供する国の機関にも向けられている。国立病院・療養所は、1986年の「再編成全体計画」から、48施設の統合と39施設の経営移譲の計画が策定され、これまで44ケースが強行された。これらは「官から民」へ「国から地方」に経営責任を移すという手法により、国の行政サービス提供の責任を放棄する象徴的な「構造改革」を言わざるをえない。 さらに見過ごせないのが、2004年度の独立行政法人化をめざして、その手法がきわめて乱暴な内容に変化していることである。4月20日、厚生労働省は、これまでの「統廃合・経営移譲」から「廃止も含む」として、稚内、弟子屈、登別、秋田の4施設の廃止を決定した。地元では、地域医療を守るために国立病院・療養所が不可欠になっているにもかかわらず、反対する自治体を恫喝し、押し切って決定を強行した。すでに、これらの施設は「立ち枯れ作戦」と言う名の「予算削減」、「医師の引き上げ」、病棟閉鎖や入院停止が行われており、意図的に「不採算」が作り出されている。また、地域医療を守るために奮闘する職員に対して、様々な人権侵害をともなって計画が進行していることを許すことはできない。 失業率が過去最悪の5%になったと報じられたその日、小泉首相は「失業はやむをえない」と言い放った。この国の為政者が、国民が直接さらされている「痛みをともなう苦しみ」にこれほど鈍感であったことはかつてない。国公労連は、特定の大企業やゼネコン、大銀行など特定の利益を最優先し、社会保障を次々と切り下げる小泉内閣の「構造改革」を許さないため、広範な労働者国民と連帯してたたかう決意である。この、道理も大儀もない「いのちとくらしに対する攻撃」に反撃するたたかいに、すべての国家公務員労働者の結集を強く呼びかける。 2001年9月17日 日本国家公務員労働組合連合会 |