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科学技術研究は、いま、激動にさらされています。 国立試験研究機関の独立行政法人化は、すでに研究条件や労働条件に多くの問題を生じさせています。国立大学もまた法人化の波をかぶろうとしており、国公私立を問わずトップ30大学を世界最高水準に育成するという「遠山プラン」の下、選別淘汰が強行されようとしています。また、特殊法人研究開発機関も、特殊法人改革の中で大規模な事業・組織の再編の波にさらされています。 政府は、この1月に新たに総合科学技術会議を設置し、第2次科学技術基本計画に基づき、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の4つの「重点分野」、エネルギー等の4つの「重点領域」以外の研究を切り捨てようとしています。また、任期付き任用の拡大、競争的資金倍増、産業技術力強化と産学官連携の仕組みの改革などをはじめとする科学技術システム改革を打ち出しています。こうしたことを通じ、日本の科学技術研究全体をトップダウン的な手法で管理しようとする方向が強まっています。しかし、この手法は、プロジェクト研究にはなじんでも、研究者の創造性に依拠する地道な科学研究や基礎研究にはなじまないものであり、将来を見すえた研究活動を後退させる自殺行為とも言うべきものです。 研究は、短期的視野や経済的観点のみで見てはならないと考えます。去年と今年のノーベル化学賞受賞者である白川筑波大学名誉教授、野依名古屋大学教授の例をみても明らかなように、永年の地道な研究も、やがては人類に大きな福祉をもたらすものになります。しかし、最近の政府の政策は、産業技術力強化に焦点を絞り、目先の成果の上がる研究偏重と地道な科学研究や基礎研究を軽視しているのではないか、という批判が広範な大学人、研究者、技術者、広範な国民に広がりつつあります。 本日のシンポジウムでは、研究・教育の充実強化を求める立場から、日本の科学技術政策はどうあるべきかについて議論を深めました。シンポジウムに参集した私たちは、日本と世界の将来を支える科学技術研究の調和のとれた振興を実現するため、当面、以下の諸点を政府に強く求めるものです。 1.科学研究や基礎研究と応用・開発研究のバランスのとれた振興をはかる方針を明確にすること。 2.人材と予算の重点配分により、科学研究や基礎研究にしわ寄せがされないよう、科学技術予算全体を十分に増額し、高等教育への公費負担を増額すること。 3.研究・教育活動の後退と歪みをもたらす法人化、大学の選別育成、特殊法人改革は行わないこと。 4.科学技術政策立案にあたって、一方通行なパブリックコメントでなく、決定前に回答を返すなど、現場の教員・研究者・技術者や国民の声が反映できる双方向的な仕組みを作ること。 以上決議します。
2001年11月17日 「科学技術政策シンポジウム」
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