2002年6月8日 国公労連中央執行委員長 堀口士郎 |
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まず冒頭に、有事関連3法案の廃案を勝ちとるとりくみについて訴えます。 有事法制の目的は、アメリカが引き起こす戦争に日本が国をあげて協力・参戦し、そのために、国民の自由と人権に大きな制約を加え、戦争協力を強制する国づくりをしようとするものであり、平和と民主主義、人権保障を基本とした日本国憲法を蹂躙するものです。 「備えあれば憂いなし」といった宣伝や「有事」ということを考える時、歴史の事実をみればその欺瞞性ははっきりします。 日本は明治7年の台湾出兵以来、朝鮮出兵、日清・日露戦争などほぼ10年ごとに戦争し、その規模は満州事変、太平洋戦争へと拡大していきます。 これらの戦争はいずれも外国に攻め込む戦争であり、「有事」ということで国民を守るための戦争ではありません。 この戦前の日本軍国主義によるアジア諸国に対する侵略と殺戮の加害体験、ヒロシマ・ナガサキにおける人類史上初の核兵器による被害体験の教訓から、再びあやまちを繰り返さない誓いが、平和憲法に結実されたのです。 また、私たちの先輩は、国公労働者が戦争遂行に協力させられたにがい経験をふまえ、憲法にもとづく平和な国づくりを国公労働運動の中心にすえてきました。 それは国民のいのちとくらし、安全を守ることを基本的な使命とする、国公労働者の重要な役割です。 小泉政権の「戦争する国」づくりは、戦争犠牲者への冒涜であり、今を生きる私たちのみならず、未来に生きる日本国民への重大な挑戦です。 この間、陸・海・空・港湾20労組や宗教者などの共同、日弁連や日本ペンクラブなどの反対声明などにみられるように運動は大きくひろがり、連合も今国会成立反対を表明しています。 このような運動の拡がりに確信を持ち、廃案にむけて全力をあげることを訴えます。 次に申し上げたいのは、小泉「構造改革」の反国民性と破綻の方向がいまやはっきりしてきたことです。 小泉内閣に国民が求めていたのは利権・腐敗政治の糾明と、経済危機の打開による生活の安定であり、高い支持率は期待の反映でもありました。 しかし、この1年間で明らかになったのは、鈴木疑惑をはじめとする構造的な一連の金権・腐敗政治の実態であり、小泉政治が旧来の自民党政治そのものであることに、国民が気づきはじめたことです。 国民生活の面では、世帯主の失業者が108万人に達するなど、過去最悪を更新し続ける雇用情勢や、中小企業の倒産、自己破産の増大など、国民の状態はますます悪化し続けています。 国公労連は、小泉「構造改革」は市場原理優先の「強きをたすけ、弱きをくじく」ものと批判してきましたが、そのことが国民の目にはっきりしてきました。 同時に、自民党政治の危機の深まりを端的に示したのが、財政制度等審議会の予算編成に対する建議です。 この建議では国民の「将来不安の解消」を掲げながら、社会保障、雇用、教育など国民生活のほぼ全般にわたって削減、負担の増大がうたわれ、小泉内閣は国民にさらなる痛みを強いる予算を編成しようとしています。 しかし、いま政治に求められているのは、国民の生活不安・将来不安を解消して個人消費の活性化をはかり、経済再生を確かなものにしていく政策であり、この点が夏期闘争の重要な争点です。 さらにこの建議には、「公務員給与のあり方を検討、総人件費の抑制につとめるべき」ということが盛り込まれ、経済財政諮問会議においても同様の検討をしていることが、担当大臣の発言として報道されています。また、小泉首相の税・財政方針の指示の中にも人件費抑制が盛り込まれています。 この動きは小泉内閣の危機意識の反映であり、またもや公務員攻撃をテコにして、国民に痛みを強いる「構造改革」を推進しようとする、新たな意思表示です。 国公労連は公務員の人権とルール無視の動きに対し、抗議の書記長談話を発表していますが、国民連帯のたたかいをすすめる上で次のことを重視します。 1つは、政府の狙いが国民生活関連予算の削減と消費税率引き上げなどの増税による、国民からの大収奪にあることです。 そのために一部官僚の不祥事件なども利用しながら、国民との分断をはかり、公務員賃金の抑制によって「政府も血を流している」式の世論誘導を強める狙いがあります。 しかし、公務員賃金の抑制は民間労働者の賃金引き下げなどに連動し、いわゆる「賃下げの悪循環」を加速させ、日本経済をさらに悪化させることは明らかです。 この60年間の世界経済を見たとき、このようなデフレがおきているのは日本だけともいわれています。 人件費コストを削減することで所得が減り、消費が減り、売り上げが減るという悪循環がデフレ地獄をつくりだしているのであり、民間労働者を含めた国民連帯の絆はこの点からも大切です。 今年の人勧期闘争は、春闘での「ベアゼロ」攻撃を背景にすると同時に、このような政治状況と厳しく対決していく運動が必要です。 もう1点は公務員制度改革との関連です。 「公務員制度改革大綱」では労働基本権について、「相応の措置を確保しつつ」としながら現状の制約を維持する方向となっています。 しかし、今回のように経済政策の動向によって、現行のルールさえ軽視しようとする姿勢は矛盾もはなはだしいといわざるをえません。 公務員の権利やルールが政府の恣意的判断によってふみにじられることがあってはならないのは当然であり、労働基本権確立の重要性がこのことからもはっきりします。 このことを、はたらくルールの確立と一体で訴えていくことが大切です。 このような情勢のもとで、この時期の賃金闘争と民主的公務員制度確立のたたかいは、民間労働者や国民生活ときわめて密接に関連していることに確信を持ち、2つの署名行動をつうじて支持・連帯の輪を大きくしていくことが重要です。 同時に、各省当局の使用者としての責任をこの時期徹底して追及することが大切です。 「大綱」決定とその後の動きに対して、使用者としてどのような問題意識をもちどのように行動するのか、政府の賃金抑制の動きに対して私たちの生活と行政運営に責任を持つ当事者としてどのように責任を果たすのか、管理者1人ひとりの姿勢と良心を明確にさせていくとりくみが重要です。 局面打開の展望を切り開くため、全国の仲間のご奮闘をお願いしあいさつを終わります。 以上 |