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昨年9月11日の「同時多発テロ」を契機にアメリカは、テロ行為までも「戦争」と規定し、一部の国家を「悪の枢軸」と名指しするなど、武力による「力の支配」を露骨に行おうとしている。そのアメリカへの従属を強める小泉内閣は、世界各国に先駆けて、その「戦略」への全面的な賛同を明らかにし、昨年の臨時国会では「テロ特措法」を強行成立させた。そして現国会では、日本近海での「不審船」事件も最大限利用し、年来の願望であった「有事法制」制定の道を一気に突っ走ろうとしている。 国会で審議されている「有事3法案」では、「武力攻撃の事態の認定」基準を曖昧にし直接日本が攻撃を受けた場合に限らず、攻撃が「予測」される事態にも法を発動することができるとした「アメリカとの共同戦争」が想定されている。政府が「武力攻撃事態」と認定すれば、医療、放送、運輸空港・港湾、電力、ガス、通信など、あらゆる分野において「(戦争遂行のための)首相の統制」が及ぶことが規定されている。さらに、国民に戦争への協力を義務づけ、協力を拒否した者への「罰則」をも規定している。当然のこととして、国家公務員は「統制」を具体化する「手先」として位置づけられ、国民と対峙することが「業務」とされる。この法案は、戦争の放棄を宣言した憲法第九条はもとより、国民主権、基本的人権の享有など、憲法原則と真っ向から衝突するものであり、法の前に国民の自由も人権も存在していない。まさしく、国民の権利、自由を制限し、財産を戦争遂行のために徴用する「国民総動員」法である。 戦後の民主化で多くの公務員は、「二度と戦争遂行の手先にはならない」とする決意を胸に労働運動に立ちあがった。それは、公務員が国民を戦争に駆りたてたことへの自責の念があったからに他ならない。「戦争をする国への転換」が行政改革や公務員制度改革を伴なって進められている今、国公労働者は、その決意をあらためて確認する。 有事法制に対するこれまでの世論は、「テロ」や「不審船」の影響もあり、「備えは必要ではないか」とする賛成派が反対派を上回っていた。しかし、防衛庁、外務省の「情報公開申請者リスト」の作成問題、福田官房長官ら政府首脳の「非核三原則の見直し」発言が明らかになったことで、反対派が賛成派を逆転しはじめている。政府首脳が日韓共催のワールドカップサッカーの開幕日に、「非核三原則の見直し」を発言したことは、過去の戦争責任、アジア諸国との外交を軽視している表れであり、有事法制を「備え」ではなく国家戦略を進める上での「武器」として制定しようとしている証拠である。 この間、4万人を超える「STOP!有事法制5・24大集会」をはじめ、各地域・職場でナショナルセンターや思想信条、階層の違いを超え、さまざまな行動が展開されてきた。6月にも、労働組合、宗教団体などを中心とした大規模な団結集会の開催が予定されている。国公労連は、広範な民主団体、国民と共同し、「有事法制」の制定を阻止するため、全力をあげてたたかう決意である。 右決議する。 2002年6月8日 日本国家公務員労働組合連合会第114回拡大中央委員会 |