本日、政府は、第2回給与関係閣僚会議とその後の閣議において、2002年人事院勧告の「完全実施」を決定した。合わせて国家公務員の退職手当の水準見直しについても決定した。国公労連は、その閣議決定に厳しく抗議し、不当なマイナス勧告「完全実施」に反対して引き続きたたかいを強める決意である。
史上初の本俸切り下げや、賃下げの4月遡及実施などを内容とする本年勧告の「完全実施」決定には、見過ごせない問題がある。
その一つは、深刻な消費不況の現状にも照らした人事院勧告の社会的な影響という「国政上の問題」である。地方公務員をはじめ人事院勧告の直接の影響を受ける750万労働者や、民間労働者の賃金への悪影響も含め、「賃下げのサイクル」を政府が主導し、不況をさらに深刻化させることへの懸念が広がっていた。また、政府が、公務員賃金切り下げを口実に、年金給付額の切り下げなどの動きを顕在化させていたことから、あらたな国民負担増を強行するための突破口としたマイナス勧告を扱うことへの危惧も広がっていた。
政府は、2003年度予算編成で、社会保障費の自然増分2200億円をカットするため、年金、介護、雇用保険などで1兆数千億円規模の給付減・負担増の施策を示している。医療改悪での1兆5100億円の国民負担増を含めると、2003年度での国民負担増は、総額3兆2400億円にものぼることになる。地方公務員の賃金にかかわっても、政府が「主導」する形で、賃下げを求める地方人事委員会の勧告が相次いでいる。深刻な消費不況をさらに深刻にする「構造改革」の一環に、マイナス勧告が位置づけられたことは明らかである。
二つには、政府の検討が、連年にわたる年収マイナスや長時間・過密労働、過労死の続発という国家公務員の厳しい生活と労働の実態を踏まえないままに行われたことである。
閣議決定では、「一層の新規増員の抑制及び定員削減の実施」にも言及している。ただ働き残業が放置されているように、使用者としての真っ当な責任は果たさないまま労働強化と「合理化」のみを公務員労働者に押しつける姿勢である。50万国公労働者の雇用主としての責任、私企業の範となる「模範的雇用主」としての自覚のない政府であることをあらためて示した。
三つには、賃金引き下げを4月に遡って実施するという「脱法」の勧告をまともな交渉もおこなわないままに一方的に決定したことである。
人事院が主張した「情勢適応の原則」を「オウム返し」にするばかりでなく、「年間給与を官民均衡させることは1972年以来のルール」とする後付の理屈まで持ち出し、不利益遡及を正当化しようとする政府の姿勢は、使用者の都合で労働基準はどのようにも変更できるとする社会的風潮をさらに強めるものであり、民間の労使関係への影響もはかりしれないものである。
四つには、労働基本権を制約したままで、賃金や退職手当の引き下げを一方的に決定する政府の対応は、労働条件決定は「労使対等の立場で決定」とする近代的労使関係の原則を維持しようとする立場にないことを明確にした。
特に、退職手当について、政府自らが行った「民間企業退職金実態調査」のみを根拠に、「支給水準の見直しと、これに伴う関係法律の改正案を次期通常国会提出」を決定したことは、言語道断である。退職手当が重要な労働条件であることは言うまでもなく、人事院の勧告権が及ばない制度である以上、労使協議をつくすことは必須の条件である。政治的な思惑のみで引き下げを一方的に決定することは、労働基本権侵害にほかならない。このような暴挙をおこなうのであれば、政府が検討を進めている公務員制度改革での「労働基本権制約は現状維持」とする決定を変更し、基本権回復を検討すべきである。
政府は、閣議決定で、国家公務員のみならず、地方公務員や独立行政法人職員、特殊法人職員に対しても、「準じた措置」を求めている。国公労連は、それらの法人等の労働者との共同の追求も含め、賃金引き下げや退職手当引き下げなどの生活破壊に反対するたたかいを強める。
また、生活破壊、労働条件破壊の攻撃の根に、小泉「構造改革」の強行という国民いじめの悪政があることから、構造改革」の流れを変える国民的な運動に、国公労働者の要求を掲げながら積極的に結集する。
当面、ブロック連鎖キャラバン行動など、確認している秋闘方針にもとづく運動の前進、成功に全力をあげる決意を重ねて表明する。
2002年9月27日
国家公務員労働組合連合会
書記長 小田川 義和
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