【国公労連第51回定期大会】 |
2005年8月24日 |
中央執行委員長あいさつ |
日本国家公務員労働組合連合会 中央執行委員長 堀口士郎 |
大会にご出席いただいた皆さんと全国の仲間たちのご奮闘に心より敬意を表します。 本日の大会には各界からご来賓の皆さまにご出席いただいております。大変ご多忙な中、激励のためにかけつけていただいた皆さまに、日頃のご指導とご協力に対する感謝とあわせて心よりお礼を申し上げます。 さて今年は、第二次世界大戦の悲惨な歴史から60年、国公労連結成30年の節目の年であります。 私たちの先輩は、戦争の惨禍と反省の上に立って国公労働運動を立ち上げ、平和憲法の理念に即して働く者の生活擁護、行政と官庁の民主化、日本と世界の平和を守る立場を一貫して追求し、日本労働運動の大道を歩んでまいりました。 歴史の節目にあたる本大会の議論をつうじて、国公労連の新たな未来を築いていく決意を固め合いたいと思います。 国公労連はこの1年間、全国の仲間たちに「私たちはどのような時代に生きているのか」と呼びかけ、小泉「構造改革」による市場原理優先、弱肉強食の競争社会づくりを許すのか、それとも平和憲法を守り、安心、平等、平和な国づくりをめざすのか、私たち一人ひとりが歴史の重大な岐路に立っているということを強調してまいりました。 いま、解散・総選挙という激動する情勢に直面するもとで、歴史の岐路にふさわしいたたかいが求められていると思います。 今回の総選挙は、私たちの要求はもとより働く者の雇用とくらしを守り、平和な日本を築いていく上で重要な分岐点となるものです。 国公労連は憲法を守り、「構造改革」路線にストップをかけるため、総選挙闘争に全力を上げることを表明するものです。 重視したいことの1つは、解散・総選挙という状況をつくり出したのは国民共同の力であり、私たちもその一翼を担ったということです。 国公労連は、小泉首相が郵政民営化を「構造改革の本丸」と位置づけるもとで、郵政民営化の信を問うことは「構造改革」路線への賛否を問うことになること、また、郵政民営化が公共サービス切り捨て、民間化攻撃の焦点であることをふまえ、全労連の民営化反対運動の中軸を担ってきました。 すべての都道府県議会をはじめ2,616もの地方議会で民営化反対・慎重審議を望む意見書が採択されるなど、「構造改革」路線に対する国民の批判の高まりも背景に、与党多数のなかで国会を動かしたことは国民世論の勝利だと思います。 その点では、解散・総選挙は4年余にわたる「構造改革」反対運動の重要な結節点であり、みずからの奮闘によって勝ちとった局面を生かすため、すべての仲間が選挙闘争に決起することを呼びかけるものです。 2つは、「構造改革」による国民生活破壊の現状を検証し、小泉自公政治に審判を下すことが総選挙の重要な焦点になることです。 いま、非正規労働者が過去最高の1,600万人近くに達し、年収200万円未満の国民が2,500万人、生活保護受給は100万世帯を超えて過去最高となり、国民平均所得は7年連続して減少しています。また、自殺者は4年間で13万人にも達しています。 小泉「構造改革」は結局のところ、大企業を優遇し、リストラを支援する一方で、労働者にはかつてない雇用不安や賃金破壊、年金・社会保障制度の大改悪、庶民大増税など大変な痛みを押しつけるものであり、こうした方法では雇用と賃金の上昇をともなう真の景気回復も持続的な成長も生み出さないことは明らかです。 この国の主人公である労働者・国民のくらしの現状を直視し、自公連立政治に厳しい審判を下すことが求められています。 3つは、公務の公共性破壊、公務員の総人件費削減が「構造改革」の焦点に位置づけられると同時に、総選挙の争点にもなってきたことです。 小泉内閣が決定した「骨太方針2005」では「小さくて効率的な政府」をつくるとして、資金の流れを「官から民へ」転換し、市場化テストの本格導入による公務の民間開放をすすめ、行革を徹底し公務員の総人件費を削減するとしています。 これは「構造改革」路線の行き詰まりが顕在化するなか、大企業の利益擁護を目的とする「小さな政府」論を改めて強調し、私たちの賃下げ、定員削減、公務の民間化・商品化を中心課題として位置づけながら、公務員と国民の分断をはかり、社会保障の改悪、消費税増税など国民に新たな負担を強いる政治をすすめることにその狙いがあります。 その方向は、公共の福祉の実現・国民の人権保障を目的とする行政が利潤追求の道具とされ、受益者負担の増大による公務の公共性破壊、定員削減によるサービス低下を加速し、国民の基本的人権さえ損なわれる状況をもたらすことは明らかです。 国公労連は、国民のいのちと暮らしの安定を損ない、公務員労働者と国民にいっそうの苦しみを強いる「骨太方針」には断固反対であり、「構造改革」の本質を国民に知らせながら反撃のたたかいを大きくしていきたいと思います。 また、民主党の公務員人件費2割削減をはじめ、自民、公明の各党が公務員人件費削減を選挙公約に掲げています。 しかし、一般会計に占める人件費の割合は減少し、主要先進国の中でも公務員数や人件費の割合は最低であり、公務員の人件費が財政赤字の原因でないことは明らかです。 公務の役割を否定し、公務員労働者と国民に痛みを強いる政策をすすめようとする政党に、私たちの未来を託すことはできないと思います。 大事なことは、公務員の給与引き下げによって格差拡大の不平等社会は是正されるのか、若者のニート問題の解決、フリーターなど不安定雇用問題の改善に結びつくのか、公務員削減は国民の貧困化を改善し社会の安定につながる方策なのかなどの観点も含めて、いわれなき公務員攻撃に反撃し、行動を起こしていくことだと思います。 このため国公労連は、国民的な立場での「公務の公共性」の重要性を再確認する世論づくりを目標に、行政民主化闘争の活性化をめざすとともに、「国の責任でいのちとくらしを守り、安全・安心な社会の実現を求める」運動を発展させていきたいと思います。 次に憲法改悪に反対するたたかいであります。 自民党の新憲法起草委員会が第1次案を発表するなど改憲論議が加速しています。 自民党の新憲法案は、戦力不保持・交戦権否認を定めた9条2項を完全に削除して「自衛軍」を保持すると明記しています。 これは海外での武力行使はできないという歯止めを取り払うものであり、日本を海外で戦争する国に逆戻りさせることを意味しています。 また、起草委員会などの議論では、「国防の責務」など幅広い分野で国民の「責務」が検討される一方で、国民の権利より国家・社会秩序を優先する考え方が強く打ち出されるなど、「制限規範性」という近代憲法の本質を否定する方向が強まっています。 これらの動きは公務員労働者の役割を国民の人権実現の担い手から、人権を制約する側への変質を迫るものであり、断じて容認できるものではありません。 一方、憲法を守ろうとする国民的な運動も着実に広がっています。 この1年間で「9条の会」が各地・各界で3千を超して結成されるなど草の根的な運動が広がり、これらの運動とも相俟って、戦後民主教育の柱である教育基本法改悪法案を通常国会に提出させなかったことは国民的運動の成果だと思います。 国公労連は、憲法改悪と大企業本位の「構造改革」が一体ですすめられていることをふまえ、この1年間「あらゆる課題と結合し、あらゆる課題に優先して」改憲反対・憲法理念を活かす運動に全力を上げる決意です。 次に賃金闘争について申し上げます。 国公労連は、賃金改善とあわせて「賃下げをともなう給与構造の見直し反対」「1人の賃下げも許さない」との立場で人事院闘争をたたかってきました。 申し上げたいことの1つは、人事院が3度めとなる賃下げ勧告と不利益遡及を強行したことです。 春闘結果やさまざまな周辺状況を見るとき賃下げ勧告は政府・財界の総人件費削減方針に迎合した結果であることは明らかです。 とりわけ不利益遡及は、勤務条件法定主義が不利益不遡及原則の法理適用を否認する根拠にならないとする行政法令不遡及原則にてらしても不当であります。 「調整」などということは公務においてもあってはならないものであり、この点からも控訴中の権利裁判勝利をめざしたいと思います。 2つは、給与構造見直しを強行した不当性です。 人事院は全国一律の官民比較の原則を変更し、現に支給されている俸給水準を引き下げて、地域給再編や俸給のフラット化を強行しました。 地域間のいびつで不安定な民間賃金格差を公務員賃金の決定指標にすることとあわせて、当該労働者の合意と納得を得ないまま、労働基本権剥奪の「代償措置」によって労働条件の不利益変更が強行されるなどということは容認できるものではありません。 したがって、国公労連は給与構造見直し勧告は賃下げ勧告同様に実施すべきではないとの立場で対政府・国会闘争を強めたいと思います。 また、賃下げ勧告に対して政府がさらに不当な介入をおこない、労働条件切り下げを強行する場合には、実力行使を含めたたたかいに立ち上がる決意であります。 経済財政諮問会議は「骨太方針」に基づき秋口にも総人件費削減の「基本指針」を策定するとしています。 財界の圧力も含めた人件費削減は、給与構造の見直しによる水準引き下げ、定員の純減による絶対数削減、市場化テストなど行政の民間開放の3つの方向での具体化が狙われています。 このことを本年勧告の不当性とあわせて考える時、公務員労働者の基本的権利があまりにもないがしろにされているといわなければなりません。 公務員も労働者である以上その基本的人権を保障する立場から、公務員の労働基本権は国政の場においても最大限尊重されるべきは憲法上の要請であります。 国公労連は要求闘争に全力を上げるとともに、この間の2度にわたるILO勧告をふまえ、労働基本権回復要求前進のとりくみを強めたいと思います。 最後に組織拡大の課題であります。 国公労連は30年前の結成大会において「後世の歴史的検証に耐えうる労働組合にするため全力を上げる」ことを確認し今日までその実践に努力してまいりました。 このことを今日的に再確認し、強固な組織建設をめざすことは私たちの重要な使命だと思います。 その立場から組織拡大中期方針を提起しています。 その基本は、全省庁・すべての機関に国公労連の組織を確立すること、非常勤、相談員等国公関連のすべての労働者を対象として職場の多数派形成をめざすことにあります。 国公職場の就業状況が大きく変化するもとで、従来の発想を転換し幅広い労働者に対して求心力を持つ組織をめざしていくことは、今日の運動に責任を持つ私たち一人ひとりの歴史的任務だと思います。 歴史の岐路に生きるものとして確固たる国公労連組織を確立し、次の時代に引き継ぐ責任を果たしていきたいと思います。 国公労働運動の歴史と伝統をふまえ、本大会を契機に新たな挑戦を開始していくことを全国の仲間に呼びかけ、あいさつを終わります。 以上
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