「国公権利裁判」の控訴審判決にあたって(談話)

 本日、東京高等裁判所(民事第4部)は、国公労連加盟の100名が控訴していた「国公権利裁判」について「控訴棄却」の不当な判決を下した。判決理由は、概略、次のようなものである。

 第1に、期末手当での「減額調整措置」が、不利益不遡及原則の脱法行為とする我々の主張に対し、「勤務条件法定主義のもとにおかれる国家公務員であっても、すでに発生確定した部分について、後の立法によって処分し、又は変更することは、無前提に許されるものではない」、「減額調整措置は、差額を返戻させること、期末手当と相殺することと同一の結果を招来し、国家公務員に相応の苦痛を与えるもの」などとし、国家公務員への不利益不遡及原則適用を認めた。
 しかし、その上で、「4月に遡及させないで年間の官民の給与を均衡させるという目的は正当」であり、「勧告後の期末手当で4月からの1年間で均衡を採るように措置する方法は相当」として、人事院勧告で「減額調整措置」を選択したことは「合理的根拠」があり、「(国家公務員が)受容するのもやむを得ない」として、「脱法する措置ではない」と結論づけた。
 第2に、「減額調整措置」を勧告、法案化した人事院や総務省が、憲法28条やILO条約が保障する団体交渉権を侵害したとの主張に対し、「脱法行為を犯していないから、人事院は責務を果たしており、憲法28条やILO条約で規定される団体交渉権も侵害していない」「国家公務員の給与に関する団体交渉権は制約されている」などとして、主張を退けた。
 そして、「減額調整措置」には違法事由がないとして、損害賠償請求を棄却した。原告及び国公労連は、このような不当な判決に強く抗議する。

 本件裁判は、国(人事院、政府、国会)を相手に、史上初の賃下げ勧告となった2002年8月の人事院勧告とそれにもとづく「給与法改正」で、一度支払われた4月以降の給与にも賃下げを事実上遡及させる「12月期末手当での減額調整措置」が一方的に採られたことから、これが労働基本権(団体交渉権)を侵害し、不利益不遡及法理を脱法する行為(減額調整措置)によって発生した損害の賠償を求めるものであった。
 すでに支払われている賃金を遡って減額することは労働者には耐え難い不利益な措置であり、それと同様の内容を持つ「減額調整措置」という脱法行為を内容とする人事院勧告と、その勧告にもとづく法案の作成、法律制定は、立法裁量の逸脱にほかならない。控訴審では、「減額調整措置が脱法行為」であることを中心に主張をおこなった。
 本日の判決は、我々の主張を受け容れることなく、国側の主張に迎合したものである。

 国公労連は、2003年3月5日の提訴以来、原告を先頭に、労働基本権制約の不当性や、「減額調整措置」の脱法性を全国各地で訴えてきた。
 このようなとりくみは、一方で、「労働基本権制約の現状維持」を前提にした「公務員制度改革」の不当性を明らかにし、「公務員制度改革大綱」を頓挫させる結果にもつながっている。
 本日の判決をふまえ、たたかいはあらたな段階に移ることになる。不当な判決を乗りこえ、公務員労働者の労働基本権回復を実現し、不利益不遡及法理の後退を許さないため、引き続き奮闘する。
 「総人件費削減」攻撃と軌を一にして強まっている政府のルール違反と不法行為をただし、これに反撃する職場のとりくみと態勢固めに全力をあげる決意である。
 2005年9月29日
日本国家公務員労働組合連合会 
書記長 小 田 川 義 和

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