国公労連第124回拡大中央委員会・中央執行委員長あいさつ

2005年12月8日
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 堀口士郎

 拡大中央委員会にご出席いただいた皆さんの日頃のご奮闘に心より敬意を表します。
 また、大変ご多忙のなか、激励にかけつけていただいたご来賓の皆さまに心よりお礼を申し上げます。
 この中央委員会は、春闘方針と要求案の決定が主たる任務でありますが、運動の立ち上がりを早く、旺盛に展開する決意を固め合う総決起の場でもあります。
 小泉政権は総選挙の結果も受けて憲法改悪の動きを加速させるとともに、公務員攻撃もテコとして国民各層の分断をあおりながら、「官から民へ」「国から地方へ」など、新自由主義的「構造改革」の仕上げともいうべき諸制度の「改革」を加速する状況にあります。
 全労連は小泉「構造改革」によって国民の格差拡大がすすみ、貧困化がいっそう深刻になるもとで、「はたらく仲間が元気の出る社会」・安心・平等・平和な日本をめざすたたかいを提起し仲間の総決起を呼びかけています。
 来春闘は「構造改革」の流れにストップをかけ、勤労国民全体の生活と権利を守ると同時に、日本の進路と行財政・司法の未来をかけたたたかいになることは必至であります。
 国公労連は公務員攻撃と正面から対峙し、国民共同の発展によって世論を変え、国民のための公務労働を守るとともに、勤労国民全体の要求を前進させるために奮闘する決意であります。

 その上でまず強調したいことは憲法改正をめぐる動きについてであります。
 11月22日に自民党が新憲法草案を発表し、これと歩調をあわせる形で民主党が憲法提言を発表しました。
 また、総選挙の結果を受けて衆議院に特別委員会が設置され、国民投票法案の国会提出に向けた審議が開始されています。
 自民党と民主党の協議の進展如何では、国民投票法案が通常国会に提出される危険も強まるなど、憲法改正をめぐる動きは緊迫の度を増しています。
 しかし、草案の発表によって自民党と財界がどのような国づくりを目指しているのかがはっきりしてきたことから、情勢はよりわかりやすくなってきたと思います。
 草案では憲法前文を全面的に書き換え、侵略戦争の反省の上に明記された不戦の決意も平和的生存権の保障も削除されています。
 そして、これまで海外での武力行使の歯止めとなってきた9条2項を削除し、自衛軍の名称で軍隊の存在を明確にしています。
 この内容は、これまで憲法上許されないとされてきた武力行使を目的とした海外への自衛隊派遣や、集団的自衛権行使の歯止めを取り払い、海外での戦争を可能にするものであることは明らかです。
 また、一般の司法や警察が踏み込めない軍事裁判所の創設や、在日米軍の再編・機能強化の動きとあわせ考える時、単に自衛隊を憲法に明記するというにとどまらず、アメリカや多国籍企業の要請に沿って、海外で戦争できる国につくりかえようとする意図がはっきり見えてくると思います。 
 さらに草案では、国民が国家権力を縛るという立憲主義の大原則と、公共の福祉に反しない限り基本的人権や自由は最大限保障されるべきとする人権保障の理念を否定し、国家の利益、公の利益に基本的人権を従属させるものとなっています。
 この考え方には戦争できる国をつくり、その国家利益のためには基本的人権や自由を制約するという狙いが示されていると思います。
 そこには新自由主義的「構造改革」にもとづく弱肉強食の競争社会では、基本的人権の実現を行政の責任とする考え方や、国民の生活基盤を支え、権利を守る公共サービスを提供する行政は不要だという考えが根底にあると思います。
 いま強められている「小さな政府」論にもとづく公務の公共性破壊と、公務員労働者の総人件費削減の攻撃はそれを具体的に先取りする方向だと思います。
 その点では憲法改正による国づくりと「構造改革」による公務破壊の攻撃は一体であり、この国をアメリカや財界の意図する方向につくり変えるものであることを見ておきたいと思います。
 一方、憲法を守る運動も大きく広がっています。
 9条を守る会は全国で3,600に達し各地で多様なとりくみがすすんでいます。
 私たちにいま求められていることは、改憲の内容と狙いを職場の仲間に知らせ、現行憲法が戦争のない平和な国際社会と社会保障の充実による人権と民主主義の発展を希求する羅針盤であるとの世論を大きくすることだと思います。
 そして、職場9条の会の立ち上げや署名の推進など私たちの思いを具体的な形にして草の根的な運動を発展させることだと思います。
 私たち一人ひとりが歴史の重要な岐路に立つ主人公としてその使命と責任を自覚し、奮闘していきたいと思います。

 次に、総人件費削減、公務員攻撃とのたたかいについて申し上げます。
 経済財政諮問会議は国家公務員の総人件費を対GDP比で10年間で半減させることを長期的目安として設定し、当面、5年間で5%以上純減するとの基本指針を決定しました。
 政府はこれをうけて年末にも行革方針を決定すると同時に、行政改革推進の基本法案を通常国会に提出する動きを強めています。
 いわゆる「小さな政府」論にもとづく攻撃は、公務員の大幅削減や市場化テスト・民営化により公共サービスを変質させ、また切り捨てながら大企業のもうけの対象にする一方で、定率減税の廃止や消費税の増税、社会保障制度の改悪などで逆に国民に大きな負担を押しつけるものです。
 一連の公務員攻撃は国民へのさらなる負担を強いる思想攻撃そのものであり、すべての労働者や国民にかけられている攻撃であると思います。
 その意味では、今日の攻撃は公務リストラの枠にとどまらず、戦後一貫して築きあげてきた平和な福祉国家建設のための行政や公務労働の役割を否定し、大企業による大企業のための国家改造計画ともいうべき全面的なものだと思います。
 全労連はこれらの動きに対し、「小さな政府」論の正体を明らかにして世論形成をはかり、公務・公共サービスの充実で国民生活の安全・安心を求める立場から、おおがかりで長期的な運動を推進するため闘争本部を立ち上げました。
 国公労連はナショナルセンターが反動的な国家改造攻撃に正面から立ち向かうとの方針を積極的に受け止め、事務局に中央執行委員を派遣するとともに、運動の実践においてもその中軸を担って奮闘する決意であります。
 全労連規模の運動を全国で展開し、公務の公共性に対する国民の理解と賛同を広げ、公務員攻撃にストップをかけ、国民の安全・安心を守るために全力をあげたいと思います。
 運動をすすめるうえで重視したいことは、主たるたたかいの場は国民・住民と日々接する立場にある職場・地域になるということです。
 それぞれの業務分野から、定員削減は行政サービスの低下につながり国民を切り捨てるものであること、公務の民間化は行政責任を放棄し、国民負担の増大につながること、などを職場の知恵と力で実証し、今日の攻撃が国民生活とこの国の将来をいかに危うくするものであるかということを社会的に情報発信し、世論の支持を拡大していくことが大切だと思います。
 これらの行動をつうじて公務に対する信頼と共同を広げていくこと抜きに、賃金引き上げをはじめとする諸要求に対する国民的支持も得られないことは明らかだと思います。
 行政の専門家として全国津々浦々に職場と組織を有する仲間たちの総力をあげたたたかいをお願いするものです。
 
 次に、賃金引き上げのたたかいであります。
 連年の賃金引き下げ攻撃のもとで仲間の生活悪化が進行し、加えて給与構造見直しの強行とも相俟って将来不安が高まっています。
 その一方で、大企業が史上空前の利益を上げ、内部留保はバブル期の2倍に達するといわれるもとで、切実な要求を前進させる条件は拡大しており、公務・民間共同の力で情勢を変える運動が求められています。
 とりわけ未組織の不安定雇用労働者層が増大するもとで、最低賃金の引き上げ、非正規労働者の時給の改善、公契約運動の前進は組織された労働者・労働組合の重要な使命であります。
 全労連は、すべての労働者の積極的な賃上げをめざすとともに、パート、派遣などを含む青年・女性労働者の要求実現をめざす社会的運動の前進を呼びかけています。
 国公労連は、公務全体の底上げをはかる趣旨も含めた初任給改善など統一要求の前進をめざすとともに、非正規や委託職員など、公務ではたらくすべての仲間の労働条件改善に向けたとりくみを強めたいと思います。

 次に組織拡大の課題であります。
 国公労連は「チャレンジ30」のとりくみ経過と教訓をふまえ、その第2ステージ(案)を提起しています。
 その基本は、「企業内主義」を克服し、国公関連のすべてのはたらく仲間を対象とした組織拡大と産別センターとしての機能の強化であります。
 総人件費削減攻撃のもとで私たちが手をこまねいていれば組織減少がさらにすすみ、国公産別センターの社会的影響力が後退することは明らかであります。
 いま、日本の労働者の約33%はいわゆる非正規・不安定雇用労働者層であり、国公の職場も同様の傾向が強まっています。
 来春闘では各職場でこの人たちとの連帯を強め、国公労連組織に迎え入れるとりくみのテンポを早めたいと思います。
 国公労連30年の歴史のなかで、組織拡大はいまや最大かつ緊急の課題であり、国公労働運動の将来をかけた挑戦であります。
 「組織拡大こそ最大の要求闘争」ともいわれます。
 新たな発想のもとすべての職場で、継続的なとりくみに全力を上げる決意を固めていただくようお願いするものです。
 積極的な討論とその実践を期待してあいさつを終わります。

以上

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